AZAZE   作:A茶

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校正に時間掛かっちゃった。
次話も早い内に投稿できると良いなあ。


二話――孤祝非孤

 「な、なあ、今日家に来ないかってばよ。」

 今日の授業が全て終わって、教科書やノートを仕舞いながらこの後何処に寄ろうかと色めき立つ教室で、俺も帰り支度をしていた時ナルト君の声が聞こえて来た。

 「メンドくせーからパス。」

 「僕も、今日は新発売のポテチが出るんだ。」

 シカマル君とデブ道君を家に招待しようとして素気無く断られた様だ。

 「つーかお前は遊んでる暇あんのか、昨日のテスト全部マルだったろ。」

 「上手い事言うなキバ。」

 三人の会話に入って来たキバ君がナルト君の昨日の筆記テストを揶う。言う迄も無いがナルト君のテストの結果は全部見事に零点だ。シカマル君が言う様に確かに上手い事言うが、クラスでどべ二のお前が言うなよキバ君。

 

 さて、何処かで自称神様に貰っていた力を確認しようかと考え、鞄を肩に掛けた時、シカマル君、デブ道君、キバ君に振られたナルト君と目が合った。

 「アザゼ、今日家に遊びに来ないかってばよ。」

 三人はもう帰った様だ。原作知識を思い出す前の俺は親が居らず一人暮らしで、九尾をその身に宿すナルト君を迫害する様な親の悪意に触れて来なかった為、ナルト君を只同じクラスの勉強が出来ない金髪悪戯小僧としか認識していなかった。特に思う所も無く、挨拶されれば返す程度に普通に接していた。だから急に家にお呼ばれして少し驚いたが、よく考えたらナルト君を落ち毀れだと馬鹿にせず一緒に馬鹿やってる友達は先の三人くらいで、次いで自分と普通に接していた俺に声を掛けたのだろう。ともすれば友達になれると考えてくれているのかも知れない。因みに俺は、良く言えば冷めてる、悪く言えば協調性に難ありな性格だから、クラスメイトに乗っかってナルト君を見下さなかったし、それを見兼ねて積極的に友達になろうとも思わなかった。つまり、十年間生きて来て友達は、薬草の授業の時に偶々声を掛けて仲良くなったアミ一人しか居ない。一人ぼっちの辛さを知ってる、なんて言っていたナルト君よりナチュラルに友達が少ない俺。笑える。…話がずれたな。

 「いいよ、家近いの?」

 黙っていた俺を不安そうな顔で覗き込んでいたナルト君に肯定の意を伝えると、一転して笑顔になる。原作開始より二年程早く、ナルト君も俺も前世で言う所の小四くらいだが、これくらいの年齢の子供の笑顔が男女問わず一番輝いていると俺は思う。そんな風に思うと云う事は前世での俺の歳はもっと上だったのだろうか。こんなこと考えても詮無いが。あとナルト君は既に原作と同じオレンジ色のツナギを着ているが、サイズ調整出来るのか、原作開始前に仕立て直したのか、同デザインの物を新調したのか、はたまた身長が伸びなかったのだろうか。…これも詮無いな。

 

 「アザゼ、そんな奴と仲良かったの?。」

 嬉しそうなナルト君を眺めながらくだらない事を考えていると、アミに声を掛けられた。

 「特別仲が良い訳じゃないけどね、今から遊びに行くんだ。」

 「ねえ、あたしと一緒に帰ろ。」

 俺がそう答えるとアミはナルト君を一瞬睨み、俺に下校の同伴を提案して来た。聞いたナルト君も眉を顰めて睨み返すが、直に悲しそうな顔になって目を伏せた。

 「あー、アミ、また今度で良い?先に約束したから。」

 予想道理と言うとあれだが、断ると見るからにアミの機嫌は悪くなる。

 「ふーん、私よりそんな奴選ぶんだ。」

 アミは俺の唯一の友達ではあるが、帰りに誘われる様な事は今迄無かった。学校で話す程度の仲だ。今日に限って誘って来たのは多分、クラスの落ち毀れに友達を取られたくない独占欲とかからだろう。子供にはよくある事なのだと思う。

 「もういい、私帰る。」

 何か言いたそうに俺を睨んでからナルト君を一瞥すると、アミはふんと鼻を鳴らして教室を出て行った。アミの中で俺の存在が独占して置きたい程の友達と見做されている事を期せずして知れ、内心で小躍りしているとナルト君が怪訝な顔で此方を見ていた。

 「…なんでアミと一緒に、帰らなかったんだってばよ。」

 「?、これからナルト君の家に行くんでしょ?」

 俺がそう言うとまた喜色に覆われた顔になって、

 「じゃあさ、じゃあさ、一緒に帰るってばよッ!」

 そうはしゃぐナルト君の後を追う形で、俺も教室を後にする事にした。窓の向こうでは六限目が始まる頃には小降りになっていた雨は既に上がり、何時の間にか雲間からは綺麗な西日が射していた。

 

 

 泥濘んだ地面に足を取られながら鼻歌を歌うナルト君の背中を眺めて考え事をする。何故ナルト君は俺を誘ったのかという事だ。俺を誘う前にシカマル君達を誘っていたという事は今日、何かあるのだろうか。昨日テストだったから復習、違うか。イルカ先生に仕掛ける悪戯の相談、特に仲が良い訳でも無い俺に持ち掛けたりしないか。同じ理由でサクラちゃんの恋愛相談も無いな。日付に意味が在るのか?今日は十月十日、体育の日施行日、宇宙条約発効日、日本でニッポニアニッポンが絶滅した日、鮪の日、トマトの日、どれも違うな。風刺画家ジョルジュ・ビゴーの忌日、も違うか。…ああ、誕生日、十月十日だったか。

 アカデミーから南下してすぐ、食糧品店や食事処からアカデミー生の為の文具店、果ては忍具を扱う店まで揃った、木の葉で一番大きな通りである木の葉商店街は十年前の九尾襲撃という災厄の被災者の御霊を鎮める慰霊祭で一週間程前から活気付いていた。普段よりも賑わっている木の葉商店街に差し掛かった時、此方を向いて歩きながら夢は火影になって里のみんなに認めて貰う事だのお色気の術という新術を開発しているだのと嬉しそうに話すナルト君の後方、つまり進行方向から薄手のコートを羽織った十六くらいの男がニヤ附いた顔でナルト君に向かって歩いてきた。恐らく人柱力のナルト君にぶつかって因縁を付けようとしているのだろう。俺はナルト君の肩を掴んで引き寄せ二人の間に割って入り、男とぶつかった。衝撃で派手に尻持ちを付いた。

 「だ、大丈夫かい?」

 アカデミーには日向や猪鹿蝶等の大家の子息も多い為、そんな御子息に怪我をさせた可能性を考えたのだろう、ぶつかって来た男は焦りながらも丁寧な言葉遣いで手を差し伸べて来た。

 「いえ、余所見していてすみません、大丈夫ですよ。でも気を付けてくださいね。護衛の方達が殺気立つと面倒なので。」

 差し出された手を取って立ち上がった俺が笑顔でそう言うと男は血の気の引いた顔で何度も謝って走り去って行った。俺に親は居ないし、まして大家なぞでも全く無いが三代目火影が呆けていなければナルト君には暗部の護衛が付いているだろうし、会った事も無い暗部が殺気立ったら面倒臭いに決まっているので俺は嘘は付いていないよ、と一人脳内で理論武装していると、さっきまで騒がしかったナルト君が急に静かになっている事に気付いた。何か考え込んでいるのか、難しい顔をしているので声を掛けようとすると。

 「おれってば先に帰って家片付けないといけないから、アザゼはゆっくり来てくれってばよッ!」

 返答も待たずに走って行ったナルト君を見送りながら俺は、

 「家の場所聞いてないんだけど。…やはりナルトか。」

 そんな益体も無い事を呟いていた。多分家を片付けるってのは口実だろう、今みたいに里の人間に悪意を向けられている姿を俺に見られたくなかったか、あるいは仲良さげに自分と一緒に居る所を見られると俺まで謂れの無い中傷や白眼視に巻き込まれるかも知れないと気を使ったのだろう。

 

 ナルト君に置いて行かれた俺は、活気に満ちた商店街を中程まで歩くと丁度ケーキ屋さんが目に入ったので先程コートの男から掏り取ったお金で誕生日ケーキを買う事にした。悪銭身に付かずなんて言うしね。因みに三百両しか入ってなかった。懐が寒い。俺の懐じゃないけど。

 ナルト君がなにケーキが好きか分からなかったから、ラーメンケーキなんて無いし無難に苺のショートケーキとチョコレートケーキを買った俺は、商店街を抜けてそのまま直進して、勘に任せて目に付いた路地に入り、行き止まりに当たって、来た道を戻って、また路地に入ってを一時間くらい繰り返していると空が暗みを帯びてきた頃、原作で見覚えのある、船みたいな形のアパートが目に入った。そろそろ保冷材があってもケーキがやばかったとホッとしてアパートの階段を上っていくと、玄関の前でナルト君が何かしていた。足元にはバケツがある。

 「家の片付けって、中じゃなくて外だったの?」

 俺が声を掛けると一瞬肩を震わせて此方を向くナルト君。どうやら日中描かれたのか描かれっ放しにしていたのか落書きを雑巾で消していたみたいだ。原作知識からナルト君が木の葉でどんな扱いを受けているか、ある程度の状況を知っている俺は別に驚かないが、ナルト君は恥ずかしかったのだろう。

 「取り敢えず、家に入れてくれ。」

 先生に怒られる様な顔で此方を見ていたナルト君に、なにか慰めの言葉でも掛けようかと思ったが面倒臭くなったので、もといケーキを守る為に家に上げて貰う事にした。

 

 「おじゃましまーす。」

 「おれが呼んだんだから別に邪魔じゃないってばよ?」

 友達が居ないとこういう定型文も分からないものなのだと感心してしまう。

 「――と、その前に冷蔵庫借りていい?」

 「台所はそっちだけど、何も入って無いってばよ。」

 疑問がるナルト君を置いて、冷蔵庫にケーキをしまった俺はリビングに入れて貰った。

 

 「上がり~。」

 ナルト君の家に招待された俺はトランプくらいしかゲームが無い為、ババ抜きをしていた。俺とナルト君二人でだ。わー誰がババ持ってるんだー(棒)。将棋か囲碁でもあれば良かったんだが、この家には無いしそもそもナルト君はルールを知らないらしい。何かパーティーゲームでも買ってくれば良かったな。せめてババ抜き以外の、二人で出来るトランプゲームを、ということで明日の昼食のオカズを賭けに神経衰弱をやったら思いの外白熱した。ナルト君は賭け事全般に強い様だ。もっと運が大きく絡む勝負なら完敗していた。

 「あのさ、あのさ、ご飯食ってけってばよ。限定品のカップラーメンがあるんだってばよ!」

 何時の間にか午後七時を過ぎ、外は季節柄薄暗くなっていた。どうしようかな、と呟き立ち上がるとナルト君は俺が帰ろうとしていると思ったのか暗い顔になるが、

 「いや、折角だから外に何か食べに行こう。」

 俺がそう言うと、ぱあっと明るい表情を取り戻して行きつけのお店があると言ったので、二人でそこに繰出すことにした。御存じ、らーめん一楽である。

 

 「おっちゃーん、味噌ラーメン大盛りねッ!」

 十月十日の薄暗い夜道、遠くで聞こえるお囃子をBGMに歩いて程なく屋台のらーめん屋さん一楽に入り注文を告げるナルト君。もう一度言おう、十月十日の夜である。寒い。そんな時期の屋台。寒い。おじさん、そっち側は暖かそうですね。このお店の主人テウチさんと娘のアヤメさんは数少ない木の葉の良心だ。入るなりメニューも見ずに人当たりの良さそうなテウチさんに注文したナルト君に倣い俺も前世での経験に則って注文する。

 「俺はチャーシューメンと餃子下さい。」

 「ぎょうざ?なんだい、そりゃ?」

 テウチさんの口振りからすると餃子を知らない様で、らーめん屋の主人が知らないという事は木の葉では、最悪この世界では、餃子が存在しないらしい。前世の記憶が戻って一番俺の心を動かしたのは食に関する事である。餃子が存在しないという事はハンバーガーやオムライスも存在しないのかも知れない。軽く絶望したが材料は多分手に入るので、何時か自分で作る事にしよう。

 「なら、チャーシューメンお願いします。」

 「あいよッ」

 湯気の向こうのテウチさんの作業を眺めながら俺はそう決意した。

 

 「はー、美味かった。」

 ラーメンで暖まった。一楽を出てナルト君と二人で夜道を歩いている。ナルト君の味噌ラーメンはたっぷりのもやしと玉蜀黍、メンマとナルトが乗っており、俺のチャーシューメンは厚く切られた叉焼が七枚と葱、メンマ、ナルトが、それと一見さんサービスだとアヤメさんにおまけして貰った茹で卵が乗っていた。茹で卵はナルト君の丼にも乗せられていたから、多分ナルト君の誕生日という事でのサービスなのだろう。

 

 冷気を引き剥がす様にナルト君の家の扉を潜り、暗い廊下を通ってリビングに入る前に、台所に寄って冷蔵庫からケーキを取り出す。

 「ところで今日、なにか用事でもあって俺を招待してくれたのかい?」

 ケーキの入った箱を卓袱台の上に置き、ナルト君の対面に座り聞いた。

 「あ、えーと、アザゼと遊んでみたかっただけだってばよ。」

 「ふーん、…そう言えば今日は十月十日だね。」

 「…。」

 自分の誕生日で呼んだと言う事がそんなに気後れするものなのかとも思ったが、俺は特別仲良くしていた訳でもないし、自分で言うのもなんだが俺は愛想も良くないから、そういうものなのかも知れないな。ナルト君は何か言いたそうにして此方の顔を伺ってくる。もう面倒臭いから直接聞くか。

 「ナルト君って誕生日いつ?」

 なんかすっごい吃驚した目で見てくる。今日一日のナルト君の表情が豊かで笑ってしまった。

 

 一頻り笑った後、羞恥心を孕んだ苦い顔で俺を睨んでいたナルト君が話題を変えようとしたのか机の上の箱について聞いて来た。だがそれは話題変わって無いぞ。

 「そういえば、それなんだってばよ?」

 「どっちが好い?」

 問いに箱からショートケーキとチョコレートケーキを机に並べ、どっちか好きな方を選んで貰おうと思い聞く事で返すがナルト君はきょとんとした顔で見てくる。

 「何でケーキなんだ?デザート?」

 「なんでって、ナルト君、今日誕生日でしょ。」

 ナルト君がなにを疑問に思ったのか分からなかったから聞いてみると、どうやら誕生日とケーキが結び付いていなかった様だ。劇場版本編でイルカ先生がナルト君の誕生日をケーキで祝っていたけど、現時点ではまだ誰かに祝われた事が無いのかも知れないな。このケーキを買った店に誕生日おめでとうプレートも置いてあったから、この世界では誕生日にケーキを供することが珍しいなんて事も無い筈だ。

 ナルト君に誕生日にはケーキでお祝いするのが普通なのだと教えると、へーとか、ほーとか感心して、選んだ苺のショートケーキを美味しいと目をキラキラさせながら食べていたが、半分ほど食べたあたりで急に泣きだした。

 「ふぐっ、うぐっ…」

 「急にどうしたッ、アレルギーでもあったッ!?」

 「ケーキは美味いってばよ。おれってば、今まで誕生日を、祝って貰った事なんて無かったから…。」

 「そっか…、誕生日おめでとう。」

 成程。ナルト君は淋しさに対する感受性が高い、あるいは閾値が低いのだ。原作で描かれた様に本質的に明るいナルト君は、常に周りに誰かが居ないと人一倍悲観するのだ。それに輪を掛けて彼は正直で感情を表に出し易く、相手が自分よりも壮絶な悲壮を背負っている可能性を想像しないから、相手も自分と同じ哀しみを経験していると思うと「わかるってばよ」なんて宣えてしまうのだろう。

 

 「アザゼは、家の人とか心配しないのか?」

 二人共ケーキを食べ終え、折角美味いケーキだったんだから一緒に紅茶でも買って来るんだったなと思っていた時ナルト君が聞いて来た。そう言えば話していなかった。

 「家も親居なくて一人暮らしだからね。」

 ナルト君は今日一番驚いた顔で見て来る。家族が居るなんて言った事無いのになんでそんなに驚けるのだろう。自分程不幸な人間は居ないとでも思っていたのだろうか。まあ俺はナルト君の様に里の人から冷遇されている訳ではないし、外の世界から転生したが為に、生まれた時から親が居なかったのだと知る前から、親が居ない事が普通であって特に不幸だと思った事も無かったから、その通りなのだが。これは自称神様にお願いした「良い感じで~」のお陰か、今迄生きて行く上で不都合を感じた事が無かったからかも知れない。

 「とは言っても、流石にこんな時間だし、俺はそろそろ帰るよ。」

 そんなに衝撃だったのか、まだ復帰出来ていないナルト君にそう告げ、俺はケーキを乗せていた皿を持って立ち上がった。

 

 二人分の食器を流しで洗い、ナルト君に挨拶する為にリビングに戻る。

 「今日は楽しかったってばよ。あとおれの誕生日祝ってくれてありがとだってばよ。」

 すげー嬉しかったと言うナルト君は本当に嬉しそうで。もしかしたら、自分と同じ親が居ないという親近感から嬉しく思っているのかも知れないな。なんにしろ、やっぱり子供は笑顔が一番だと思う。

 「じゃあ、ナルト君また明日。」

 「おう、あとナルトで良いってばよ。」

 「あー、だったらナルって呼んで良い?」

 呼び捨てでも構わないが、どうせなら二文字の方が呼び易いのでそう提案すると快諾してくれた。

 

 「じゃあ、ナル。また明日。」

 「おう!」

 玄関まで見送りに来てくれたナルに別れを告げ、暗い夜道を自宅に向かう。

 

 季節柄既に空は真っ暗だが慰霊祭はまだ続いており、大通りでは夜店も出ている。祭りの喧騒とお囃子の中を一人で歩きながら家に帰る。祭りの中を通った方が家に近いからだ。擦れ違う女の子三人組が綿飴とたこ焼きを手に楽しそうに騒いでいる。夜風が寒い。

 

 俺は夜店で買ったたこ焼きを食べながら家路に就く。

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