宜しくお願い致します。
殴り書きで、量が少ないです。スイマセン。
厳冬期を潜り抜けたモノだけが味わうことが出来る、蒼く美しいアレルドォリア山脈の空。もっとも、其の蒼さに感動するような者達の侵入を拒み続けたアレルドォリア山脈には、空を気にする者は少なかったが・・。
「秀人さんは、なんでついて来なかったんですかねぇ?」
雪が所々に残っている斜面を登りながら。黒髪の少女が、前を行くザンバラな髪をした男に話しかけていた。
「『加護』について分からない事が多いから、イロイロと試したい事があるんだと。それに、俺の研究室のモノを調べたいんだとさ?」
後ろも振り返らずに陽気な調子で答える男。危険が潜むアレルドォリア山脈にあっては、信じられない程に無警戒であった。
「グアゥルゥ!」
男と少女の遣り取りを聞いて、少しは真面目にやれ!!と、言わんばかりの吠え声を上げる先頭を行く雪豹。どうやら、このパーティの中では一番権威を持っている様だった。
「いかん・・・雪白先生に怒られる・・。」
「ごめんなさい!雪白さん!?悪気は無かったんです・・。」
叱りつけるような吠え声を聞いて。それまでの会話の音量を低くし、周辺に対して警戒をする二人。
「雪白がいるから、警戒を任せてしまっていたなぁ・・悪いね、アカリちゃん?」
「いえ・・。これが狩りだと忘れていました。蔵人さんが居ない時は、私は狩に同行できませんでしたから・・嬉しくなっちゃって・・。」
そう言葉を交わしながら、先頭を行く雪白に頭を下げる二人。こと、狩に於いては雪白と勝負にならないどころか。狩の授業を担当する先生であるため、ミスを犯せば容赦ない尻尾の攻撃を受けるのである。
「グルゥ」
長い尻尾をユラッとまわして、しっかりしなさいよ?と、前を向く雪白。その耳の下には緑色に光る見慣れない装置がついていた。
『そうだぞ?二人とも。今回は雪白先生に狩の授業を教えていただいているんだ?しっかり励んでくれよ!』
反省の色を濃くしている二人の耳元にも、雪白先生と同じ装置が光っていて。その装置から、野太い壮年の男の声が流れていた。
「へ~へ~・・。分かりやしたよ・・。しかし、この装置は便利だな?どこまで電波が飛ぶんだい?」
『中継用のドローンが間に入れば、ドローンの数まで跳ばすことが出来る。が、実用では半径100km程度だな。作戦行動中に使用するモノだから、敵対勢力に発見されると即座に破壊されるし。今回飛ばしてるドローンは一個だけだから。』
「でも、凄いです!!これで、連携した行動が取り易くなります!この世界のパーティは、かなり訓練を積まないと上手く連携できないし。即座に連携できる範囲も、風精で声を運べる距離に限定されますので・・。」
『でも、アレルドォリア山脈では警戒に警戒を重ねても足りることは無いぞ?しかし、警戒し続けるのも気力を削っていくから。その辺りの力加減も実地で教わって来い!!』
「で・・失敗したら?」
『まず、雪白先生の愛のムチが跳んで来るだろ?そんで、今夜の飯のオカズの品が一品ずつ減ってゆく。さらにミスをした場合、飯抜きで魔法の同時行使訓練を3時間休みなしで行ってもらう!!』
「うわぁ・・・。厳しいですねぇ・・。」
「俺達だけ厳しくないか・・・?」
『当たり前だ!!この世界には『復活の呪文』や『エリクサー』なんてモノは無いんだぞ?それに、何時も雪白先生や俺が居る訳じゃない。生き残るために、ヤレルことはやっておくんだ!死んでから後悔は出来ないからな?』
「グゥア・・。」
三人の遣り取りを聞いていた雪白が、そうだぞ!と、同意の呻きを上げる。
「分かりました!!頑張りましょうね!用務員さん!!」
「アカリちゃんは元気だね・・。でも、2人の言っている事は正しい。しっかりやってくるよ!!飯の支度よろしくな?」
『ああ!保管庫にも色々な肉が在るから、当分飯には困らん。三人が帰ってきたら、俺も修行がてら雪白先生と探索に出かけたいな?地図も作りたいし。』
「それじゃ、頂上のトラモラ草に向けて、頑張りましょう!!」
アカリの元気な掛け声に反応して、気分を一新して頂きを目指す三人。視線の先の空は、吸い込まれるような碧空があった・・・・。
アレルドォリア山脈の中腹に出来た岩棚。その岩棚の上に見慣れない風体の男が、誰かと会話をするかの様に喋っていた。風精魔法を使用した遠距離会話にしては、魔力の発動が感じられなかった。
しかし、男の耳元には緑に光る装置があり。会話に合わせて明滅を繰り返していた。
「それにしても…アカリちゃんまで『魔法』をシッカリ使えるのね…。普通、4000m級の山脈だったら普通に行動出来ないんだけど…異世界に飛んできて、身体能力も強化されたんだろうか…?」
先程までの会話を終えて、話先の三人の事を考える秀人。
「もしそうなら、神様も人情を持ち合わせて居るのかも?ウチのアホブラックも見習って欲しいよ…」
ブツクサと文句を言いながら、無造作に振り返り。いつの間にか装備した大きな銃を構える。その銃口の先には、この場所には似つかわしくないゴスロリちっくな衣装を纏った女性が佇んでいた。
「誰だい?一応、この辺りは雪白先生の縄張りなんですけどね?それと…寒くないの?」
スメラギ社製12式強化ライフルをしっかりと構え、いつでも発砲できる様にトリガーに指がかかる。
「何故気付いたのかしら?質量や体積を感知させないように現れるつもりだったのだけど…?」
銃の照準の先に現れた女性が、疑問を口にする。
「女性にイキナリ迫られるのは、どうにも苦手でねぇ?事に美しい女性とあっちゃな?」
「質問に答えてないわよ?」
「オーライ…気の短い
「あら?あなたの世界では美しいモノの鑑賞にはお金が必要でしょ?今回はお釣りは要らないわ。」
「エライ自信過剰なネエちゃんだ…」
「何か言ったかしら?」
「いえいえ…独り言でごぜぇますだ。貴女と同じ様な存在に一度会っていまして。見る事は出来るが、それ以外には反応がなく。気配すら感知がとても難しい。しかし、ホントにごく微量の空間歪曲が感知できたのさ?誤差といっても良い数値だけどね。」
「空間歪曲はしょうがないわね…。力を発現させるには、どうしても何かしらの『存在』にならなければいけないから…。でも、一回だけの出来事で備えるなんて…?」
「2回も出し抜かれちゃ商売あがったりさ?誰かさんが異世界に飛ばしてくれたお陰で、間抜けにならない様に心がけているんでね。」
「そう…?良い心がけね。確かにコッチの世界のお馬鹿さんがしでかした事は『罪』に値するわ。でも、偶然の産物は管理できないの。貴方の世界のクロマッチョさんも同じよ?」
「やっぱり、神様ですかい?」
「驚かないのね?」
「貴女が現れてから時間の進みが極端に遅くなっているからな。いや…アンタと俺の周りだけ時間が流れていると言ったほうがいいか。」
「ふ〜ん…馬鹿ではないみたいね?いいわ…本題に移りましょう。」
明らかに変わった雰囲気に、秀人も銃を降ろす。神様相手に銃が効くかどうかも分からないし、敵意のない存在に銃を向けるのは賢い行動ではない。何より礼儀に悖る。
「本題ですか?どの様な要件でしょうか?」
少し脚を開き、後ろで手を握りあわせる姿勢を取って女性に正対する。
「アラ…?いい態度ね。自己紹介が未だだったわね、この世界の女神…一応『月の女神』と呼ばれているわ。まぁ、勝手にこの世界の人間がつけた名前だけどね。」
「何とお呼びすれば良いのでしょうか?」
「勝手にすれば良いわ?名前は在るのだけど、発音出来ないでしょうしね?そうね…ジェーン・ドゥでどうかしら?」
「では、ジェーン。初めまして…私は…」
「いいわ。名前は知っているわ秀人。それに、今回の用件は私の案件じゃ無いし。」
「……?」
「この世界で主神をやっていると豪語しているアホの代わりに来ただけだから。そうよ?貴方が考えている通り。免取りになったアホ神よ!まったく…トウキョウでファッションアイテムを探していた最中なのに…あのアホ…」
「……で、用件とは?」
「ああ…取り乱しちゃったわね…限定品を逃したから少しナーバスになってしまったわ…。まず、巻き込まれた事に関してはコチラのミスよ。それと、あなたの力は制限出来ないからお願いになるかしら?」
「迂遠な物言いですね?」
「モノには順序があるの。女の子にモテないわよ?余り派手にやってほしく無いのよ…アイツにとってはイレギュラーな存在でしょ?計画が狂うんですって?免取りのくせに笑っちゃうわよね〜。」
「派手…とは?私はこの世界で生き残る為に、其れなりに力を振るう所存ですが?何より、魔法が使えない存在ですので。」
「貴方に魔法が必要かしら?所詮、『お願い』だから。私には関係無いし?」
「分かりました。善処します。あ…。それと本題からは外れますが、ジェーンが欲しい限定品『ポケット』に出品されてますよ?」
「マジで!!!チョイと見せろよ⁈……ホントだ⁉︎ホントにある!!!ナンボで譲ってくれる⁉︎」
「いや…知り合ったのも縁ですし…。タダですと失礼かもしれませ…」
「イヤイヤ…そんなに改まるなよ?アタイとお前の仲じゃないか?な⁉︎」
先程までの高貴な雰囲気の佇まいは何処へやら…。客寄せの娼婦よろしく。ゴスロリファッションの胸元をはだけ、腕と脚を絡めて秀人にしなだれ掛かるジェーンさん…。
「うっ…ま…まぁ…其処まで言っていただけるなら…お譲り致しましょう…。」
この世界に来て、初めて女性からの色っぽいアプローチに冷静さを喪う秀人。一応、男ですからね…。
「ナンカ悪いねぇ!今度も頼むよ?あ…一応、女性を守護する女神だから御礼を兼ねて教えとく。アカリが危ない。この世界の精霊が暴走すると手がつけられないから、早めに行ってあげたほうがいい…よ…」
ゴスロリファッションの限定品をゲットして、上機嫌にチョイと先の未来を秀人に告げると。先程までの雰囲気が一瞬で無くなり。神である自身でさえ、一瞬身慄いする気をはなっていた。
「ありがとうございます。では、またお会いできる時まで。失礼します。」
言い終わると同時に、撃ち放たれた弾丸の様に飛び出して行く秀人。その手には先程の銃が携えられていた。
「待ちな。チョイと女神の祝福を与えておくよ。跪きな!」
女神に呼び止められて即座に戻り、跪坐く秀人。その頭に手を置き、何事かを呟くジェーン。接触した場所から暖かい光が溢れる。その光が治ると同時に、再び飛び出して行く秀人。
「ふ〜〜ん…いい漢じゃないか?しかし、来て良かったぁ!早速帰って試着しようっと!ま、恩返しじゃないけど。オーフィアに神託でも下ろしておくかね…」
手に入れたゴスロリアイテムを大事そうに抱えながら、一人呟くジェーンだった…。