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アレルドォリア山脈に、暖かい日の光が照らされる。氷の精霊と相性の良い者達だけしか侵入できない季節は、終わりを告げ。
日に光の加護を背景に、豊かな自然の恵みを獲得しようとする者達が動き始める季節が到来していた。
「あ~あ・・・。二人っきりってのも良いんですけども・・。こう?モシャモシャとかですねぇ・・モフモフなんかは・・駄目だったんですよねぇ・・・」
山脈の中腹にある岩棚の上で。春の朗らかな日差しを受けつつも、表情の沈んだハイティーンの見た目の少年・・・・『うごぉ!!!』
「何か聴こえたかしら・・?あれ?自然と棍棒が振るわれたのだけど?気のせいよね?」
・・・・・・ハイティーンの見た目の・・美少女・・が・・・。本人にしかわからない独り言を呟いていた。
「蔵人さんや秀人さんが出かけてからほぼ2週間・・。雪白さんと狩に出かけられるようになったのは良いんですけど・・・尻尾で叩かれてばかりですぅ・・・。」
蔵人や秀人が下界の世界に向かう日の朝。二人それぞれに言葉を遺していた。
『俺達が居ない間、雪白さんに稽古を付けて貰った方が良いな?食料は十分な量を『商店』で購入しているが、ハンターとして雪白先生に教わることは多いぞ。』
深いフードを被りながら、アカリに声を掛ける秀人。
『ああ、その方が良い。この山は訓練するにはうってつけだ。雪白に注意され無くなれば、触らしてくれるかもしれんよ?』
相も変わらずの用務員ルックで声を掛ける蔵人。
『みぎゃお?』
そんな事には絶対にならないから?とでも言う様に小さな吠え声をあげる雪白。
「はぁ~・・今頃は触っていられるかもと考えていたけど・・上位魔獣はムリゲーですぅ・・。いや!!諦めたらゲーム終了です!!また午後から頑張らねば・・・」
独り呟きながら、秀人が残した食料が保存されている冷蔵室に向かうアカリ。氷の精霊の力が強いのか、蔵人さんが住み着いた頃からその場所だけは低温が保たれていた。
ちょうど洞窟内に入ろうとしたところで、雪白が素早い動きで塒から外に走り出していた。
「ちょっと?!雪白さん?!」
一緒にすごす様になって一か月近く経つのだが、一日ごとに成長する雪白さんは一回りも大きくなっていた。その成長速度に憧れる一方。自分の肉体に変化が無い事に、ゲンナリしていた。
「ぐるぅ・・。」
そんなつまらない事を考えるな!とでも言う様に岩棚の上で警戒態勢に入る雪白。
「そうでした!ますますモフモフが遠くなってしまいます!!」
雪白と適度な距離を保ちながら警戒するアカリ。命精による強化は密やかに、でも素早く行う。その魔力を感じた雪白が、悪くは無いわね?とでも長い尻尾を揺らす。
そんな可愛らしい尻尾に目を釣られ、尻尾の一撃を貰うアカリだった。
『すまない。警戒させてしまったか?十分距離が離れていると思ったが・・流石、雪白先生だ。アカリちゃん。今そちらに到着するね。お客もいるから、よろしく頼むよ。』
アカリの頭部に装着された通信ユニットから聞き慣れた男性の声が漏れる。
その通信に答えようとした時に。岩棚の上空から甲高い音が響いてきていた。
「いやぁ~申し訳ない。蜘蛛共の領域を一々抜けてる時間が惜しくてね。
山岳迷彩のカラーパターンの
「なんだい、それは?いきなり魔法の鎧を着たと思ったら・・・あたし達を両脇に抱えて、そ・・空を跳ぶなんて・・・アタシも大抵の事には驚かないけどさ・・流石に応えたよ・・?それにイルニークなんてね。」
女性にしては大柄な、雌ライオンの様な雰囲気の金髪の野性味あふれる美女が。肩を竦めながら秀人に話しかけていた。
「まぁ・・・秀人は、いつもこんなもんだよイライダ・・。流石に俺もビックリしたが・・。」
赤毛の女性・・イライダ・・にむけて、諦めろと言わんばまりに言葉を投げかける蔵人。
「すまんなぁ二人とも。でも、いい経験になったろ?たかだか300m級のジャンプを12回繰り返しただけだぜ?」
装備していた
「なんだい・・・その魔法は?聞いた事も見た事も無いよ・・。」
状況の急激な変化に対応できないイライダが、目を白黒させながら溜め息をつく。
「イライダ…覚悟を決めて付いて来てくれたことについては、素直に感謝する。」
優しげな表情で、イライダに感謝する秀人。
「な…なんだい?やぶからぼうに…アタシは自分の気持ちに素直なだけさ?後悔はしたく無いからね。」
いきなり真剣な表情で、思ってもみない言葉をかけられて少し動揺する。
「そろそろ気付いていると思うが…蔵人、覚悟を決めろ。前にも言ったろ?独りでは生きてはいけんと。」
秀人が何を言い出すのか予想のついた蔵人が口を挟もうとするが、その前に一言貰ってしまう。
確かに、今までは良かったが。こうまで雪白との棲家に…自分達の生活圏内に様々な立場の者達が関わってくるとなると、状況は変わる。この世界に願ったのはヒトと関わらない事だったが、生きていくためにはヒトとの交じり合いが必要だった。
秀人との出会いが、意固地になっていた自分を変化させるキッカケになったのかも知れない。いや…多分、自分でも分かっていたのだろう。ただ、認めたくは無かった…気づきたくは無かった…安寧の中でまどろんでいたかったのだ。
しかし、そんな自分の中に革新を望む心が在ったのを見つけてしまった。その心の声は、様々な人達との関わりで一層存在感を増してきていた。
だからこそ、以前迄の自分だったら明確に拒絶してただろう秀人の言葉に。黙り込んで同意するしか出来なかったのだ。
「秀人…俺が伝える。」
イライダは二人の男の遣り取りを、慈愛のこもった目で見ていた。
イライダにとっては上を目指す為だけに訪れたサレハドだった。『巡国の義務』の中の通過点。さして気になると思われなかった場所。いや…辺境を巡り、魔獣被害に脅える者達の暮らしを守る事には意義があるが。自分の人生が影響を受けるなど思いもしなかったのが正直なところだった。
しかし、目の前の男2人…今まで出会ったことのないタイプの人間だった。確かに二人それぞれ全く違う印象だが、何故か興味を惹かれてしまっていた。ハンターとしての経験と勘と、女としての感性が大きく働いていた。
「イライダ。まずは紹介しよう。察しの通り
二人をそれぞれ指し示しながら紹介する蔵人。
「は・・・!!初めまして?!アカリ・フジシロですっ!!訳あって蔵人さん達に匿われていますっ!!え・・えええと・・『蜂撃』で名高いイライダさんに会えるなんて・・感激ですぅ!!」
思っても見ない出会いに、上ずった声で自己紹介するアカリ。
「みぎゃ・・・・」
雪白は、一瞥しただけで。座り込んでしまう。
「
「俺だって驚いてるよ。それと…俺も『勇者』のうちの一人さ…。ああ、勇者が皆持っている加護は無い。勇者の中の一人に奪われてしまってな。見捨てられた存在だったわけだが、其処の薄毛のオッサンに諭されてね…どうにかひん曲がるのを止める事が出来たよ。まぁここら辺は聞き流してくれ」
覚悟を決めた表情の後に、声の調子も変えずに自分の境遇を語る蔵人。重大事を告げたにも関わらず、憑き物の落ちた顔つきになっていた。
「まったく…もう少し丁寧に説明できんのかよ?蔵人。アルバウムで有名な…いや、この世界で影響を与えつつ有る勇者のうちの一人が蔵人さ。アルバウムのアホ魔法姫の実験の結果、『異世界』から召喚されちまった哀れな流浪人…と言ったところか。質問があればどうぞ?」
「アンタの説明も大概なっちゃいないね。勇者の噂は聞いていたけど、そんな事があったなんてねぇ。サンドラ教が『世界を救う勇者』って、宣伝してるけどアタシには関係が無いからね。それにしても『異世界』とは…アンタの見たことも無い装備もソレかい?」
美しい髪を無造作にかきあげ、秀人に目を向ける。
「さすが『蜂撃』、読みが良いねぇ。そのとうり、俺も『異世界』から来た。詳しく言うと巻き込まれたんだがな?そこら辺はコッチノ世界の召喚者本人に聞いてみないと分からん。蔵人達の『世界』とは、また違う『世界』だ。」
「なんだかよく分からないねぇ・・?どんな境遇でも、アタシの考えは変わらないさ。秘密を打ち明けてくれたんだ。ご先祖様に誓って他言はしないよ。」
真剣さを滲ませた口調で約束するイライダ。
「そう言ってくれると嬉しい。秘密なんてのはそのうちに漏れるもんさ。それと・・・蔵人にはまだ秘密があってな?状況次第によっちゃ、危険に巻き込まれかねない。」
さらに一歩踏み込んだ内容を告げる秀人。
「そうなんだ。これは言っておかなければならない。俺は、イライダ達が言う所の『加護』を勇者に奪われた・・そいつの名前はハヤト・イチハラ。」
普段では見せない真剣な表情で告げる蔵人。
「ああ・・・ハンター協会月報に載っていた色男か。なかなかに度胸が据わっていそうだったねぇ。人様の物を奪うようには見えなかったけどさ。確かに、蔵人の言うとうりかもね。アルバウムでは『勇者』の存在感は別格だから、『勇者』がそこら辺のゴロツキと同じ盗みを働いていたんだと発覚したら・・・アタシだったら相手をほっとかないね。」」
首を傾げて思い出したように、ハヤトについての感想を口にする。
「良かったな蔵人?現地の有望なハンターの確約付きだぜ。ハヤトってヤツがどんな考えを持っているか分からんが。取り巻きの連中や、利害関係のある奴等にとっちゃ良いマトだぜお前?モテル男はつらいねぇ・・・?」
『ポケット』の商店の品揃えを確認しながら、ニヤケタ笑みを向ける秀人。
「・・・そんなっ!?いくら何でも、同じ世界の仲間ですよ?命を奪うなんて・・・。」
秀人の言動にショックを受けたアカリが。自分の学校の仲間に、蔵人の命が奪われる未来を想像してか細い声をあげる。
「おいおい・・忘れちまったのか?奴は一度やっている。二度目が無いとは言えんだろ?この世界に来て『勇者』様になっていても、本質は即座に変わらんもんだ。余程の事が無い限り・・。それに、この世界の凶暴さは身をもって味わって居る筈だぞアカリちゃん?」
「・・・っつ?!」
秀人に指摘され二の句も告げずに絶句する。確かに同じハンター同士でさえ殺しあう世界なのだ。常に最悪を考えなければ、いつ寝首を掻かれるか分からない・・。それは指摘されるまでも無く自分自身が経験していた。
その状況より酷い状態の蔵人さんだったらどうなるか・・・いい展望は期待できそうになかった。
「まぁ、そんなに考え込むな?それより朝から飯を食ってないんだ。中に入って遅い昼食にしないか?」
先ほどまでの昏い雰囲気を霧散させた秀人が提案する。
「みぎゃぉ」
同意の声を漏らす雪白。
「じゃ、中に入ろうぜ。お土産もあるしな?・・あっと・・蔵人は用意してなかったか?雪白先生用の。」
皆に声を掛けながら洞窟に向かう秀人。ちょっと余計な一言を放っている。
「おい?!いや・・・その・・イロイロとイソガシくてな?いや・・こっちくんなぁ!!?」
雪白に言い訳は通じない・・・。そのことを身をもって証明する蔵人だった・・。
春の日差しを浴びていたアレルドォリア山脈に陽が落ちる。長く厳しい冬が去り。暖かい陽の光を受けて、様々な植物が芽吹き。アレルドォリア山脈を生息域とする者達に分け隔てなく恵みを与える季節。
そんな季節に当てられたのか、中腹にある洞窟からも陽気な声が響いていた。
「蔵人?お前さぁ・・いい加減、雪白先生のお土産忘れるのヤメナイ?」
夕食の中華料理の前菜であるバンバンジーを取り皿に移しながら、話しかける秀人。
「そうですよぉ?雪白さんは蔵人さんが居ないと、途端に機嫌が悪くな・・あっ!痛ぁ?!」
春巻きを大皿から取り寄せようとして。余計な事を喋って長い尻尾の一撃を貰うアカリ。
「だってなぁ・・イロイロと忙しかったんだよ。うっかりしていただけなんだけどなぁ・・海老チリ残しといてね?」
雪白に丸かじりされた部分を命精魔法で治療しつつ、ファーストエイドキットの細胞活性スプレーを吹きかける蔵人。
三人の遣り取りには興味が無い・・と、ばかりに。秀人がお土産で持ってきた、森林大鶏の砂肝を塩で炒めた物を食べていた。
鶏といっても、体長が3mもあるれっきとした魔獣で。その大きさに比較して砂肝も大きく、食べごたえがあった。
「はぁ・・・なんか夢の世界にでもきているのかねぇアタシは・・・。」
蔵人の土精魔法で造られた、大きく頑丈そうな丸いテーブルに車座になった蔵人達を見てため息をつくイライダ。それでも、酒飲みらしく大きなビールジョッキを持って星間絞りビールを飲んでいた。
「あながち間違った認識じゃない。どうだい?星間絞りビールは。極冷えで美味いだろ?代価を払って商品を購入できる能力。これがオレの『加護』って訳。便利だろ?」
『ポケット』の『商店』ウィンドウを呼び出し、画像付きの品々を見せる秀人。
「空中に描いた絵が出てくるなんて…しかし、わかりやすいねぇ。これはアタシも買えるのかい?」
星間絞りの大ジョッキを飲み干して、画像に注目するイライダ。
「ああ、大丈夫だ。チョット待ってくれ…この前大金をつぎ込んでアップデートしたから言語変換機能がついたはず…お?これで良しっと。どうだい?説明文は読めるようになった筈だが…?」
「凄いね…!読めるようになったよ。イロイロありすぎて、見てるだけでも楽しいよ!なんだい?動画で見る…?絵が動き出したよ!?どうなってるんだい!?…成る程…こんなことされたら欲しくなっちまうねぇ。」
「さらに便利な機能で…チョット其処に立ってみてくれ。サイズを測るから…何⁈アカリちゃん…エ?服は脱がなくて大丈夫だから!?なんでそんなに信用ないの?ああ…わるいイライダ、今測る。」
秀人の周りに、大人の巨人種の拳程度の大きさの球体が3っつ現れる。球体はイライダの周りにそれぞれ浮かび、翠の光を浴びせていた。
「これを転送してっと…ユーザーネームはイライダで…完了っと!これでイライダの体格に合わせた装備や衣装が手に入るよ。項目は…そう、それで…分かってきたね。まぁユックリ見ていってよ?買った金額の1パーセントがオレの手数料になるから、気にしないでな?そんじゃ、ごゆっくりぃ〜」
項目や商品説明をアチコチ見て回るイライダ。秀人の言葉に曖昧に反応しながら、目を輝かせて商品を見ていた。
「アレ?イライダさんはどうしたんですか?」
カシスオレンジを呑みながら、焼き餃子に手を伸ばすアカリ。
「ああ、『商店』で品物を見てる。アップデートで試着も出来るようになったから、奥の部屋に行ってもらっている。そうだ、二人もスキャンしとくか?個人データを入力しとけば、サイズ選ばなくても大丈夫だぞ?」
海老シュウマイを摘みながら答える秀人。
「後で頼む。俺も秀人の戦闘服が欲しいからな。…アカリちゃんのカシス…アルコールは…?」
秀人に応じながら、小声で伝える蔵人。その奥では雪白が砂肝を持って、そそくさと距離を取っていた。
「…大丈夫だ…アルコールと違って高揚成分は入っているが、酩酊にはならない…あと二杯も飲んだら、グッスリデスヨ…」
「ナニ、男二人で喋っているんですかぁ!美少女ほっといてぇ!」
「……酩酊成分入ってない筈なんだけど」と…秀人…。「…話しが違うって…なんとかしろよ?…」焦る蔵人…雪白は被害範囲から離脱。
「まぁ…なんだ…ちょっと重要な話しが在ります!蔵人も。アカリちゃんを嵌めた奴等の事だ。二人とも心して聴いてくれ。」
場の雰囲気を変えるように、真剣な表情で話し始める秀人。その雰囲気にあてられたのか、顔つきが変わる二人。
「ドルガン議会と落とし所について話をつけてきた。アカリちゃんを嵌めた奴等は、ドルガンにとって有害と判断され処分対象になった。ぶっちゃけ、どんな事が起きてもドルガン議会は一切関知しない・・って事だね。」
ウーロン茶で舌を湿らせながら、ブラゴイ家に対するドルガンの対応を伝える秀人。
「それは・・・つまり、俺達で対処しても問題が発生しない事でいいのか?」
秀人の発言にビールジョッキを置いて、自分の考えを述べる蔵人。
「そうだ。要するにどの様な結末を迎えても問題は発生しないって事だ。この世界のルールでは、攻撃してきた勢力を返り討ちにしても良い事になっている。今回は奴等が期待している国の援助は一切ない。好きなように料理できる。だからこそ、因縁がある二人に決意の程を確認しようと思ってな?」
話し終えた後に、二人の目を見つめる秀人。戸惑いの感情で隠された本心を見抜く様な目線を送っていた。
「・・・・私は、自分が護られるだけの存在になりたくなくて・・いえ、違いますね。自らこの世界に向き合って存在を示したいと思っていました。だからこそ、マクシームさん達と行動を共にしていたんです。でも、助けられてばかりでしたけどね。」
アカリは自分の飲み物に写っている自分の顔をまっすぐに見つめながら、確認するように今までの出来事を思い返していた。
「今回も皆さんに助けられてばかりでした・・。それでも!向かってくる事柄からは逃げたくないです!それがどの様な結果をもたらすとしても!!私!!戦います!!」
グラスに写った自分から視線を外し。蔵人と秀人を、虚飾を削ぎ落した意思のこもった目で見つめるアカリ。
「・・・・わかった。どの様な事になろうとも、最後まで見届ける。蔵人・・?」
「俺も同じだ。アイツら俺達の事も狙っていたしな?」
「ぐるぅ」
アカリの決意を賞賛するまでも無く。それぞれに、その決意を確認し。歓迎していた。
「なんか?取り込み中の様だねぇ。チョット分からない『商品』があったんだけど・・聞いちゃまずいかい?」
奥の部屋からウィンドウを開きながら、様子を伺う様にイライダがやって来る。
「イライダさん!!そんな『商品』出しながら来ちゃダメですよ!!蔵人さんも秀人さんも目尻を下げないでください!!なんで男の人って・・皆、そうなんですか!!?イライダさん!奥に行きましょう!説明します!!」
イライダが閲覧している『商品』を確認したアカリが、叱る様に声を上げ。自分より遥かに大きなイライダを押しながら、奥の部屋に連れていく。
「まぁ・・・否定はしない。兵隊も軍務を離れれば男ですからねぇ?蔵人さん。」
「その通りです秀人さん。特にイライダがあんな魅力的なランジェリーを選ぶなんて・・イテェ!!?風精魔法撃つの反則?!」
無言のままに、風精魔法の空気弾をブツケルアカリ。何がいけないのか分からないイライダを押し込みながら、奥の部屋に去っていった。
「なんか・・・大人になったなぁ・・。」
奥の部屋に向かうアカリを見ながら、感慨深げにつぶやく秀人。
「この世界に跳ばされてから何があったのか聞いてみた時に比べれば、大きな成長かもな。しかし、自発的に決意するのには驚いたが・・。で?どうなるんだ。」
エビチリを詰まんで頷く蔵人。
「月の何チャラが、マクシームと一緒にやって来る。まあ、まだ日数的には掛かるが・・。それに合わせてアカリちゃんが下山する予定の期日を情報で流した。勿論、期日は違う。」
「ブラゴイ家を誘い出すのか?」
秀人の顔色を窺う様に見つめる蔵人。
「もう、当主は此処とは違う場所に旅立った。今回は残りの連中だ。ドルガン議会に名を連ねた一族が勇者を嵌めたなんて他国に知れ渡ったら、ドルガンの名は地に落ちる。で・・ドルガンと取引した。我々の安全と正当な評価。それに、賠償金だな?後で話すが、ブラゴイ家は薬物を使用した人身売買に手を染めていた。その薬物、コッチノ世界では製法が知られていないモノだ。」
たいして表情も変えずに話を続ける秀人。
「まさか・・?勇者達を疑っているのか?」
グラスに入ったビールで咽喉を潤し、緊張を解こうとする。
「まぁ、有体に言えばそうなる。跳んできた人間の中に『加護』を使って欲望を叶えようとする奴が居ても不思議じゃない。おいおい・・まだ元の世界の良識を信じているのか?人間的には賞賛ものだが、同じ日本人だからって信用するのはお勧めできんぞ?話は変わるが。ブラゴイの悪事に加担していた商人連中や議会、はては他国の要人までもが名簿に載っていてな。当分ドルガンは有利な立場に立てるらしい。」
「・・・・?」
「なんだ?呆けてる場合じゃないぞ。今回の事を始末すれば俺達の立場が公式に認められるのさ。ドルガンの後押しでな?流民では無くなるって事だ。いらん気苦労が減る、昇進する、大金が手に入り。アカリちゃんの問題も解決する。いいことづくめだろ?」
小籠包に手を出しながら話す秀人。
「アカリちゃんに戦わせるのか?」
思いつめた表情で核心を聞く蔵人。
「アカリちゃんが望んだことだ。絶対に勝つように装備テンコ盛りにする!ザウルのアホには遅れはとらん。だが、本人が殺害しなければならない。これは絶対に譲れない。ずっと寄り添っていける訳でもないしな?素直にアカリちゃんの成長を喜ぶとしよう。」
グラスに残ったウーロン茶を飲み干し。ビールを注ぐ秀人。
「ああ・・。それじゃ、アカリちゃんの異世界に対する決意に!」
お互いにグラスを掲げ。二人にとって喜ばしい事を祝う男達であった。