適当に書いていきますので。宜しく御ねがい致します。
イオージマ艦内 軌道降下兵用装備室
「よう!やっときなすったな『伍長』さん?今回は新兵達の御守かい?」
降下兵用機動強化装甲外骨格装備室。
「今回もよろしくお願い致します、整備長。」
「お前さんとも長い付き合いだ!しっかり働けるように、バッチリ整備しといたぜ!」
俺と同い年の屈託のない笑顔を浮かべるイガル整備長。
「お前さんの
整備・装着ポッド内に収められている、整備・待機態勢の紫電改Ⅱ型を見ながらため息交じりの声を挙げるイガル。
「整備長もご存知でしょ?我が師団は装備の改変が全部隊にわたって済んでいませんから。それに、コイツとは相性がいいんですよ。」
「まぁ・・整備点数も少なく、頑丈で。数々の戦訓を取り入れられて改良されてきただけあって、結果も出している。お前さんと同じように、古参兵には受けがいい。俺達も整備しやすいしな。」
「今度配属されてくる連中は、新型を受領しているみたいですね?」
隣の整備ポッドで整備・待機態勢のグライトハゥエンコーポレーション社製パンテルを見ながらイガルに尋ねる。
「ああ・・。受領してから2週間。整備部隊用の生体転写講義を受けたが、良い機体だ。出力の大きいパワーポッドで機動力もある。パワーがあるから装甲も厚く、フォースフィールドの展開時間・出力共に従来品の五割増しだ。冗長性も高いから、将来にわたって活躍してくれるだろう。だが・・」
「戦場での
整備長の言葉を遮る様に、言葉をかぶせる。
「まあなぁ・・メーカーでは実戦に類する試験を大々的に行っているから、問題は洗い出してあると思うんだが。何分、何が起こるか分からないのが戦場だからなぁ・・?」
機動強化装甲外骨格・・スーツ・・人類が長年の研究により完成させた『ヒト』を超えるモノ。などと、重工業メーカー連合体がアナウンスしているが、要はパワードスーツの一種に過ぎない。
しかし、その性能は初稼働に成功した人力強化壱号から研鑽と発展、そして数多の失敗と人々の情熱によって熟成されていき。
地球連邦を支える重要な要素として、確固たる地位を築き上げていた。確かに、重工業メーカー各社が謳う様に。多数の技術が結晶した存在であり、人類が脚を踏み入れる事が叶わなかった極低温・極高音・高圧・有毒ガス帯などおおよその場所での精密な作業を安全に行う事が出来た。
また、
外惑星や真空の宇宙、腐食性ガスが立ち込める荒野、危険な病害虫やウィルス・細菌が潜む密林、恐るべき勢いで熱砂が吹き付ける灼熱の砂漠などの極環境でも、様々な支援機器の援助をもらって活動することが出来た。それらの
活動の対価として、人類は幾多の環境から様々な恩寵を受け取ることができ、繁栄の階段を着実に上ってきていた。
勿論。探索や開発、幾多の施設を作り上げる作業の過程に於いて様々な困難や犠牲が伴ったが。それらさえも人々の探求心や情熱で埋めてゆき、
『ヒト』としての限界を超えることが出来る存在・・確かに、そう呼ばれるにふさわしい存在だった。土木・建築・消防・惑星探索・宇宙開発など、多岐にわたる。
そして、人類が『超空間航法』を手に入れ生存圏が飛躍的に増大した現在では。異星人間による、慣習の違いに起因する摩擦を解消するための尖兵として、さらに大きな力を与えられていた。
何のことは無い、何時の時代でも同じ。替えが効き安価で、効率よく
人間の能力や経験が重要視され、熟練者から技術の移譲が出来ない過去に於いては、育て上げるには幾ばくかの予算が必要だったが。
『生体転写技術』(過去の経験や体験を脳内に刷り込む技術)の完成で、誰でも熟練者になることが出来る現代では。一週間の訓練と『生体転写』の活用により、予算面を大幅に圧縮することが出来た。
まぁ、いくら低予算と言っても人的資源を浪費しすぎるのも問題がある。なんせ、戦っている『兵隊』は漏れなく地球連邦市民だったし、誰かの『大切なヒト』だからだ。
地球連邦は市民の投票によって代表者を決め、市民の労働から得られる税金によって運営されている。そのような組織が
けれども、何事にも『例外』が存在しているのが世の常だ。俺の様な身寄りのない『孤児』ならば、誰からも大切には思われない。地球連邦は
しかも、成人するまでの養育期間は、連邦管理下の施設で育てられる。その養育施設では連邦に対する忠誠心を養う
整備ポッドの中で待機状態の紫電改Ⅱ型を見ながら考え込む。そうさ、コイツと俺は似た者同士。戦うために育て上げられた存在。死と破壊を作り出し、連邦の繁栄を邪魔する存在を一緒くたに吹き飛ばす。
だが、それも少し疲れた・・・。少しだけでいい、休息が欲しい。いやいや・・だからと言って今までの人生を否定していないし。今の『俺』があるのは、此処までの『俺』が歩いてきたからであって・・誰か他人の人生を生きてきたわけじゃない・・
「どうした?ボケっとして?お前らしくも無い・・?」
「いや・・・すこし疲れたかな・・」
同い年もあって、他に人がいない場合は気さくな会話になる。
「お互い年かもな・・・?だが・・俺はまだ『フサフサ』・・・」
「殴るぞ・・・?俺だって、まだあるわい!!」
「はは!!その状態でか?まぁ・・なんだ。休暇申請してみちゃどうだ?この作戦が終わったら一緒に地球に還るか?」
フサフサの髪を後ろに撫でつけながら、妙に神妙な顔つきだ。
「なんだ・・?金なら無いぞ。てっゆうか?この前の10万円返せ!」
「ま・・その・・今度結婚しようと思ってな・・?孤児院同期だろ?紹介したい
「マジかよ・・!!?相手は誰だ?!あ!!まさか・・。この前個人通話にチラッと映った・・」
思い当たる節があった。三日前、金の催促の連絡があった時
「中央情報省から派遣されて来ている、連絡官・・・?!お前・・?!」
『軌道降下兵装備シークエンス完了・・各降下兵、及び整備班は軌道降下シークエンスに移行せよ。繰り返す・・』
無情にも流れる、降下シークエンスに移行する電子音声。
「ま・・そうゆうこった!生きて還って来いよ!?友人代表のスピーチが居なくなっちゃ締まらないからな?」
整備ポッド内で
新型のパンテルが西洋の騎士の様な外観であるのに比べ、旧型の紫電改は古のサムライが用いた甲冑を模しており。見事な対比を見せていた。
ヘルメット部分も、パンテルがデュアルアイセンサーで、戦闘時にはバイザーが降りる仕組みなのに対して。紫電改は兜の
『結婚とかさ?生きて還って来いとか。変なフラグ立てないでくれるかな?!』
ディスプレイに映った外部映像を見ながら、個人通信に切り替える。
『お前さん、そんな事気にする程繊細じゃないだろう?それじゃ、約束は守ってくれよ?』
既に、降下ポッド格納シークエンスに入っている為。イガルの姿は見えない。
『わかった・・、なるべくお願いに添える様にするよ。借金もあるからなぁ?』
『忘れてくれ・・・新婚が借金持ちなんてみっともないからなぁ?』
『それじゃ・・』
『ああ・・またな?』
戦場に旅立とうとしている者と、それを見送る者。長年の親友でも、呆気ない挨拶の遣り取りだった。
軌道降下兵が惑星上に展開する方法は様々だ。軌道降下艇に集団で乗り込み、確実に占領地を確保したり。今回の様に軌道降下ポッドを使用して、隕石の様に落下し目標に奇襲や強襲を開ける場合など。多岐にわたる。
『第一分隊・・これよりオメガスクワッドとする。各員・点呼はじめ。』
『オメガ2・・異常なし。』
『オメガ・・・3・・異常なしです・・?』
『オメガ4!い・・異常なしです!!』
『オメガ1・・了解・・。3、4、慌てるな、今回は先発した第五師団が制圧した占領地の確保だ。目を瞑ったてできる簡単な任務だ。気楽に行け。』
ため息を吐きたい気分だが、自分も最初はそうだった。コイツラに育ってもらわなければ、退役も出来ん。
『3・・!了解です!!』
『4!了解であります!』
新人の二人揃って、緊張を隠し切れない返答が帰って来る。
『オメガ2・・。宜しく頼む。俺は今回で退役を申請する。』
個人通話に切り替えて、3年の付き合いがあるジョセフ・アイスナーに連絡を取る。
『ヒデトさん・・・?今回で何回目の申請になるんです?耳タコなんすけど?』
『うるせー!お前だって「おれ、この作戦が終わったら結婚するんです!」っていつも言ってるじゃないか?』
『ルーチンってやつですよ?だから、今まで何にもなかったでしょ?少しは感謝してくださいよ?』
『だったら、もっと昇進して。俺を美味しい配置に就けてくれよ?地球本部の警備配置とか最高なんだけど?』
『それは、お互いさまでしょ?先任軍曹と中隊長が、憲兵隊に身柄引き取りに行くのはウンザリらしいですよ?』
『カーセルとジャオウンの野郎・・・。あれだけ面倒見たのに・・それよりも・・』
こちらの考えを先読みしたのか、話の途中でジョセフが割り込んでくる。
『小隊長の甥っ子・・オメガ4の事でしょ?分かってます。3と一緒に面倒見ますよ。』
『今回は、派手な演習みたいなもんだから、心配はしてないが・・・よろしく頼む。』
『了解です・・。』
『オメガスクワッド射出位置へ移動・・・』
降下管制官の声が通信に流れる。
『3、4、射出された後の手順は訓練どうりだ。降下中は規定どうりに自己発信は禁止になる。いいな!地上で会おう!』
『3!了解!!』
『4!了解!!』
先ほどよりも明瞭な音声で、返事が返って来る。いけそうだな。
『オメガスクワッド。降下軌道に異常なし。降下地点は第五師団が掃除を済ませてある。ヒデト?麻雀のメンツが足りなくなるから、しっかり還って来いよ』
『はい、かしこまりました!!取り立てるまで死なねぇから!』
まったく・・いつもこれだ?これもルーチンってやつなのか?
『よーし!!オメガスクワッド同時射出!カウント5・4・3・2・射出!!』
t1202星系第3惑星オメガ03に向けて、イオージマから軌道降下に入る。先発した部隊の連中が流星の様に輝くさまを見ながら、眼下に広がるオメガ03の蒼い海を見る。
「ふん・・・海か・・。良いところだ?戦場じゃなければな」
そう、一人呟き。降下完了まで、自分の装備を確認するヒデトだった。