軌道降下兵   作:顔面要塞

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勢い付いたー・・・でも、疲れたぁ・・・

そんでフザケスギタァ・・・でも、後悔はしていない!!!

まぁ・・因縁、遂に顕われりって回です・・・。修羅場はちょっと先になるかもしれません・・・悪しからず。

原作を読んでいらっしゃる方はやきもきすることの多かった話に突入してきました・・・ここから先はオッサンのさじ加減で、御気に登録が減るかもw

それではまた次回お会いしましょう。

追記・・・鉄拳は諦めました・・フレームって何・・・(ノД`)・゜・。


再会

アレルドォリア山脈森林地帯。ハンターでもなければ、一生縁のない場所だろう。初級から中級に至る様々な魔獣が生存競争を繰り広げ、日々様々な生と死の遣り取りが行われる場所。

 

鬱蒼と茂る巨樹の影を縫うように、一筋の黒い影が迷いなどみせずに凄まじい速度で駆け抜けてゆく。いや、跳びぬけてゆくと表現する方が似つかわしいかもしれない。よく観察してみれば、魔獣の類では無い。驚いた事に人の姿を持っている。

 

 滑らかな光沢を持った黒い皮鎧を装備して、牙となるべき二振りの長剣を背中に廻す。腰に廻した独特のベルトに構造が分からない鉄製の棒状のものを二つ吊るしていた。

 

 さっぱりと切られた黒髪は風に流れ、それによって顕わになった顔には精悍な光を宿した黒い瞳が輝き。頬には一本の太い爪痕が付いていて、野性味を表情に付け加えていた。

 

 『ハヤト!!早すぎるよ?!命精強化を使っても、私達には追いつけない!』

 

 黒い鎧の男・・ハヤトと呼ばれた男の耳元から、何らかの作用を受けた言葉が流れていた。

 

 「後から追いつけばいい!!今は集団の力より個の速さだ!!」

 

 風精魔法で送られてきた仲間の言葉に、強烈な意志のこもった返答をするハヤト。より早く目的地に到達するために、動きを更に加速させてゆく。精霊との親和性が高く、命精すらも最大での行使が可能でも人間として持つ肉体の限界は越えられない。

 サレハドを出てから最大強化を受け入れて来た肉体の弱い部分が、悲鳴をあげ始めていた。

 

 「現場まで持ってくれよ・・。到達さえすれば、如何とにでもなる!!」

 

 コチラの世界に跳ばされて来て以来、様々な修羅場を潜り抜けて来た経験から。自分の速度と剣技に抗しえる存在は数えるほどしかいないのが分かっていた為。自信に満ちた言葉が出て来ていた。

 

 「待っていてくれ・・・もう、失うのは沢山だ・・・!!」

 

 本人の感情と、ハンターとしての経験に裏打ちされた考えを持ってしても。ハヤトの考えの大部分を占めるアカリの窮地が、自分達と同じ『異世界』の存在に助けられているなどとは思いもしなかったであろう。

 

 そして、『異世界』の存在が。自分を含めた暁の翼(ペナントオブドーン)に対して好意的な感情を持っていない事など、万分の一も浮かば無かった。

 

 

 

 「あぁ・・・あの『勇者』さんかぁ・・。ハンター協会月報・・『勇者ハヤト!!衝撃のデビュー!!徹底解剖!!女性の好みも取材!!』に載ってたなぁ。いやいや、真剣な表情をするとマスマスイケメンですなぁ・・。」

 

 険悪な雰囲気を漂わせる蔵人を無視し。まるで漫画の様に手を打ち思い出す秀人。

 

 「あのなぁ・・?一応、俺の所有物を奪った犯罪者なんだけど?そんな思い出し方で良いワケ?」

 秀人の屈託のない対応に毒気を抜かれたのか、険悪な雰囲気を霧散させ疲れた感じに言葉をかける蔵人。

 

 「そりゃ・・気の毒だとは思うけどさ?盗られたモノはしょうがねぇじゃん。盗んだ本人がわざわざ来てくれてんだ。何かしら交渉をして、返して貰うしかないでしょ。だいたい、所有を立証するのも難しい代物なんだろ『加護』って奴は?この世界に飛ばされる前に『神』…?に貰ったんだっけ?」

フザケタ態度で話していたのだが、自分自身も『加護』を貰っていることを思い出し。複雑な表情を浮かべて苦笑するしかなかった。

 

「そう言われちゃうと返す言葉も無い…でもさぁ、危ない世界に行くからくれた物を盗むとは思わないでしょ?」

こちらの世界でソコソコ生き抜いてこれた経験が、蔵人の重い気持ちを軽くしてくれていたが。やはり、当時の事を思い返すと怒りが込み上がるのは当然だった。

 

「聞いた感じと見た感じが、かなり乖離しているように見えるんだけどなぁ…蔵人もコッチでイロイロあった様に。向こうも何かしらの変化があったのかもな?それでも盗っ人には違いないけども。取り敢えずコンタクト取ってみるか?距離は離れているから如何とでも出来るぞ。何なら最大火力を叩き込んで原子のチリにでもしちまうか?」

何気無い雰囲気で、滅茶苦茶物騒なセリフを近所に出かける様な口調でのたまう秀人。

 

そのセリフを聞いて。蔵人は肩をすくめ、アカリは驚愕の表情を浮かべ、イライダは呆れた目線を送り、雪白は欠伸をかみ殺す。それぞれの立場を明確に物語る動作をし、返答としていた。

 

「ハヤトさんは精霊の最愛(ボニー)を持っています!この世界での魔法での攻撃は直ぐに察知されてしまいますよ?」

蔵人の返答次第では直ぐ様実行する事に疑いを持たないアカリが、慌てた様にハヤトの加護を持ち出して思い留まらせようと牽制する。

 

「アカリちゃん…オッサンが使っているのは科学で、魔法じゃない。今までの経験から、魔力を使用した精霊力の行使については察知される危険があるけれども。純粋な物理力の影響に対しては、反応がとても鈍いんだ。彼の持つ加護が強力でも、反応の難しい事に対して何処までヤレるか見ものだよね。」

 

「……ぐっ!!?」

氷のモンスターを屠った時の圧倒的な力を思い起こし。少し震える身体を抱きしめながら、言葉にする事が出来ないアカリ。

 

 「そんなにアカリちゃんを虐めるもんじゃない。いきなり殺害しちゃ、気分が悪い。会ってみてから答えを探すよ。この世界で雪白だけだったら、考え方も違っていたかもしれないけど。妙なオッサンに出会っちまったからなぁ・・。」

 言いよどんだアカリに目配せして、何かに疲れたサラリーマンの様にため息を吐きながら秀人に声を掛ける蔵人。

 

 「あんた達の複雑な関係は知っていたつもりだったけど。『勇者』をイキナリ殺す選択肢が飛び出してくるなんて・・・存外、物騒な世界から跳んできたんだねぇ?」

 三人の遣り取りを見聞きして、呆れたように声を紡ぎ出すイライダ。

 

 「まぁ・・ドライな人間関係になってしまうのはしょうがない。所詮、勇者の皮を被った盗人だしね。召喚された子供達を守護していたのが事実だとしても、犯した罪は拭えない。どんなに善行を積んだところで、罪を消す事は不可能なんだ。勿論、蔵人が納得するように示談となれば別だがね?」

 先ほどまでのフザケタ態度は鳴りを潜め。砂に水を浸み込ませるように、ゆっくりとアカリに語る秀人。

 

 「それじゃ、先ほどと同じ手を使ってもらえますかね?秀人さん。ドローンを使った立体映像(ホロ・ヴィジョン)での接触で、相手の行動を伺おう。俺がのこのこ行って逆に消される可能性もあるからね。」

 

 「まぁ、そんなところが妥当でしょう蔵人さん。今回の事案でドルガン議会からタンマリ報酬を頂いておりますれば、どの様な事にも対応できる自信があります。当社が誇る充実の打線(ラインナップ)をご覧いただけるかもしれません!なんてな?ほんっと・・お金って大事。」

 守銭奴を通り越したクソ忌々しい『黒の神』を思い出し。心底お金の有難味を感じる秀人。神の風貌を思い出しながら、物欲全開の月の女神が居た事も頭の片隅から湧き上がって来る。

 

 どうして『神』なのに『欲』から解放されていないのか・・。納得できない秀人だった。

 

 

 

 「なんだ・・・?これは・・。いったい何があったんだ・・?」

 

 ハンター協会を通じて得た情報を頼りに。アカリが襲撃されるであろう森林地帯を跳ぶように移動してきたハヤトが見たものは、無残な肉塊と金属の集合体になり果てた襲撃者達だった。

 

 惨状がおきた現場を丁寧に観察し、生存者が居ない事と惨状を引き起こしたモノの気配が無い事を確認する。勿論、アカリを一番最初の捜索対象にしたのだが。まだ、この場所には着いていない様だった。

 アカリが入団したマクシームをリーダーとする『白槍』のメンバーが装備する、凝った意匠を施された鎧が無かったのを確認していた。それだけで本人の生存の確証にするには弱い物証だったが、今までの戦場を渡り歩いてきた経験から女性らしき死体は見当たらなかったのも、判断の補強材料になっていた。

 

 現場に到着してから10分程度、生々しい惨状を呈している分散した六か所の検分を終えた所で。何が起きたのか考えてみる。その間も、精霊の最愛(ボニー)を使用して風精による自動索敵は行っていた。

 

 この世界に跳ばされてきた後に経験した様々な戦闘とはあまりにも違い過ぎていた。確かに、魔法を使用した恐るべき惨状を何度も見たし。自分の加護でその様な現場を創り出した事もあった。

 しかし・・・根本的に『何か』が違っていた・・。

 

 戦士同士の爆発的な意志と技巧の遣り取り。あるいは術者の知識と経験のぶつかり合い。集団対集団の壮絶な命の遣り取り・・・それら全てで感じ取れる命の残滓・・・そのようなモノが全く感じられなかった。

 

 どちらかと言えば、土木工事の様に決まりきった手順で行われる計画的な破壊・・・。この世界では無く、『自分達』が居た世界での戦争に近い感じが受け取れた。その感覚を信じていいように精霊の最愛(ボニー)によって精霊とやり取りをした事で。この現場での精霊の活動が、破壊規模に似つかわしくない程感じられなかった。

 

 「魔法では無い破壊・・・しかし、この規模での魔法を使用しないモノなど聞いた事も無い。自立魔法か?だが・・・アリスとの研究の中でも、此処までのモノを現出させる事は無かったが・・。」

 

 さらに思考する事数分。考えを纏めようとしたところで聖剣(ソード)によって能力が上昇した暁の翼(ペナントオブドーン)のメンバーが追い付いてきていた。

 

 「もうっ!!気持ちは分かるけど、私達はパーティなんだから集団行動が基本でしょ!!?」

 ふんわりした黒髪の巻き毛を持った気の強そうな女性が、朱い雷をブーツに纏わせてハヤトに迫る。

 

 「そうですわ!エリカの言うとうりです!ハヤトがリーダーなんですからね!!もう少し自覚を持っていただきたいものです!」

 トンガリ帽子をかぶった女の子が、口を尖らせて同じように詰め寄る。

 

 「すまない・・・・。迷惑をかけた・・エリカ・・アリス・・。」

 詰め寄られて、少し動揺した態度で年相応の表情で素直に謝るハヤト

 

 「二人とも・・・ハヤトもこう言っているんだし、そこまでにしたらどうだ?」

 アカリと同じくらいの年齢であろうが、背はアカリよりも高い。長い黒髪を一つにしばり、スラリとした身体に無駄も隙もない刀を携えた女性が口をはさむ。

 

 「そうだな・・カエデの言葉に従った方が良い。それに、今は『勇者』アカリを探す方が先だろう?」

 白虎系獣人であるフォンが今回の目的を思い出させる。自らの短く切られた髪は白く、そこからのぞく耳と臀部から生えた尻尾は白毛に黒の縞模様で。手持無沙汰に自毛を梳いていた。

 

 「・・・・べ・・別に怒ってなんかないから?!」

 エリカがブーツの雷を収めながら、慌てた様に取り繕う。

 

 「私も、他意が在る訳では無く・・パーティの重要性をですねぇ・・」

 アリスもばつが悪そうに言い訳をする。

 

 「有難う二人とも・・・。それじゃ手分けしてアカリの捜索に移ろう?精霊の最愛(ボニー)に反応が無いんだ・・。無事だと思うが・・。」

 そんなやり取りをした後で、現場での支持を出すハヤト。

 

 その指示を受けて、改めて現場を見やる女達。様々な場数を踏んだハンターだったが、あまりにも想像とかい離した惨状に。皆、一応に眉を顰め顔をしかめる。二名ほど倒木に向かって走り出しキラキラを零していた。

 

 「・・・・結構・・酷い・・。」

 ハヤトにすぐに追いついた黒づくめの忍者のような衣装を着こんだ、黒い兎耳少女がポツリと漏らす。

 

 「クー・・君の索敵能力が生かせると思う。頼む。」

 

 「・・・・わかった・・・。」

 ハヤトが言い終わるやいなや、周辺の索敵に向かおうと態勢を屈めるクーと呼ばれた少女。

 

 

 『いんやぁ・・・それには及ばないぜぇ・・・暁の翼(ペナントオブドーン)の皆さん?』

 

 何処からともなく響いて来る、嫌に勘にさわる喋り方。森林地帯で反響し方位と距離を特定することが出来ない暁の翼(ペナントオブドーン)の面々。

 

 「何者だ!!?姿を見せろ!!」

 その声を合図にそれぞれがカバー出来る様に、戦士系が四角形の頂点にそれぞれ位置し。魔法職であるアリスを中心に置いて展開する。

 さらに、聖剣(ソード)を展開し各人の能力を高める。

 

 『くっくっくっ・・・・。そんなに力んじゃぁ大変でございますよ?こんな状況は初めてですかぁ?美しい女性を侍らせて・・・大した『勇者様』でございますねぇ・・?この喜作めには、想像もできない事をおやりなんでしょうなぁ?羨ましい限りでございますねぇ・・?』

 

 そんな状況を嘲笑う様に、女性にとってとても不快な声が、気色の悪い下種な想像を含んで響き渡る。

 

 「喜作・・?この世界の人間では無いな!?まさか・・召喚された人間がまだいたのか!?アリス?」

 どう聞いてみても漢字圏の人間しか理解できない単語がトンでくる。確認の為に召喚者であるアリスに声をかけるハヤト。

 

 しかし、アリスの表情は戸惑いと不安に彩られていて。明確な返答は無かった。

 

 『おやおやぁ・・?そちらの小さなお嬢様が召喚者でいらっしゃれるのですねぇ?これはこれは・・・。少しお話を聞いてみたいですなぁ・・ゆっくりとねぇ・・?』

 

 「・・・っつ?!!」

 気色の悪い声の場所を特定したのか。クーが黒い短刀を木々の合間に向かって投擲する。しかし、手ごたえは無く状況は変わらない。

 

 『おっとぉ・・・気の早い女性もいらっしゃるようですねぇ・・くっくっく・・残念ながらぁ外れでございます・・。喜作めの声が勘にさわったのなら許していただきたいものですなぁ・・。この声のお蔭で、親にも殺されかけられてございますからねぇ・・。』

 

 「喜作・・と云ったか。我々は敵対するつもりはない。『勇者』アカリの保護に来ただけだ。アルバウム王国のハンターパーティ暁の翼(ペナントオブドーン)だ!」

 パーティのリーダーらしく、名乗りを上げ目的を述べ。敵対する意思が無い事を告げるハヤト。

 

 『ちょっとお笑い種ですねぇ・・?敵意が無いのに短刀をイキナリ投げつけるのですかぁ?喜作めでなければ、大怪我をしている所ですよぉ・・。やはりアカリさんと蔵人さんがおっしゃられたとうりでございますねぇ・・?』

 

 「・・・・!!?」

 アカリと、その後に続く名前を聞いて一気に表情が昏くなるハヤト。そのハヤトを慮る様にカエデとエリカ。事情がわからない残りの女達は警戒しつつ、ハヤトを気遣っていた。

 

 『ははぁ・・?やはり、この名前に心当たりがあるようでございますねぇ?特に・・・蔵人さんの名前には大きな感情の揺らぎが見えましたねぇ・・。やましい事でもあったのでしょうか?』

 

 「いい加減姿を顕わしたらどうなの?!男らしく正々堂々と名乗りを挙げなさいよ?!!」

 沈滞した嫌な雰囲気を嫌ったエリカが、ブーツに朱い雷を纏い苛立ったように声をあげる。

 

 『おお・・そちらはエリカさん・・でしたか?元気で健気なお嬢さんですねぇ・・喜作めは元気なお嬢さんが弱ってゆく姿が・・・おっとぉ・・いけない妄想をしてしまいました・・。でもですねぇ、姿を見せた途端にブスリ・・とぉ逝かれたら怖いですからぁ・・。それに、そちらのリーダー様は蔵人様の『加護』を奪われたとか・・

『加護』が無ければ生きてゆくのも難しい世界で、無慈悲な話もあったものですなぁ・・。カエデお嬢様も現場に居合わせたのですよねぇ・・・同じ世界の人間なのに・・薄情で情けの無い話でございます・・?喜作めには到底考えが及ばない事でございます・・はい・・・。』

 

 「・・・・すまない・・・。」

 皆の心配を押しのけ、一人進み出ながら謝罪の言葉を口にするハヤト。二本差した長剣をその場に置き、腰に廻した『銃』も剣の上に載せる。さらに、聖剣(ソード)の加護を停止し精霊の最愛(ボニー)をも止めていた。

 

 「ハヤト・・?!!」「危険だ!!」「・・守る・・」「自立魔法を展開させます!」「盾になる!」

 それぞれの立場と能力で、ハヤトを護るために動こうとする女達。その目にはある種の覚悟が垣間見えた。

 

 『ははぁ・・・・よくよく調教されておりますなぁ・・・?『勇者』と言うのは昼間だけでは無さそうでございますねぇ・・・?素晴らしいぃ関係でございます・・いってぇーー!!殴ることは無いだろ!!?しかも棍棒で

?!わかった・・わかったから・・アカリちゃん・・悪ふざけが過ぎたよ・・でも、チョットやってみたかったんだよねぇ・・。』

 

 「・・・・???」

 突然の出来事に固まる勇者一行。先程まで響いていた気色の悪い声は止まり。快活な壮年の男の声が替わって響いていた。

 

 『ああ・・。すまない。悪ふざけは御仕舞いだ!今から姿を見せるから攻撃すんなよ?特に黒ウサギに雷ブーツ?』

 

 その声が森の中に響き渡った瞬間。忽然とパーティの視線の背後に、壮年の精悍な表情をもった髪の薄い男が現れていた。

 殺意を持っていたならば、全員が絶命していたであろう距離だった。

 

 「お初にお目にかかる。この世界に『跳ばされた』一人。高橋 秀人。訳あってアカリちゃんと蔵人と行動をともにしている。今のところ敵対する意思は無い。ああ・・自己紹介はいらないよハヤト君?それに、君のパーティの事は知っている。協会月報の特集記事を見たからね?それにしても、そこの二人の君に対する感情は行き過ぎているねぇ?蔵人を会わせなくて正解だったな。」

 

 最初は、至極真面目に芯の入った言葉で自航紹介をする秀人と名乗る男。ハヤトを持ってしても気配が掴めない不思議な姿だった。

 

 「何故?アカリ達と一緒に行動しているんだ?」

 気配の無い男と会話するのは不気味な感じがしたが、アカリの事が気になり質問を発するハヤト。

 

 「君と同じさハヤト君。護るべきものと判断したからさ?聞いていた話とあまりにも雰囲気が違うから、戸惑ってしまったがね。それなりに修羅場を経験して、以前の君とは違うようだが・・。ヒトのモノを奪った事に変わりは無い。それに対する償いはして貰わなければ、分かるね?」

 年長者らしく、言い聞かせる様にハヤトの罪を述べる秀人。

 

 「分かっている・・・本人は居るのか?直接謝罪したい・・・。」

 秀人の言葉を冷静に受け入れ、神妙な顔つきのハヤト。今までの負債を思い出したかの様に、青白い肌の色合いになっていた。

 

 「ハヤトだけが悪いんじゃない!!必要だったの!!それで、私達は救われたわ!!」

 ハヤトの言葉が途切れるのを待って、エリカが意見を挟む。

 

 「見過ごし、糾弾もせず。用務員さんを探さなかった私達全員に罪がある。私も会って謝罪したい。贖えるものがあれば贖いたい。」

 刀から手を放し、真摯な態度で声をあげるカエデ。凛としたたたずまいに嘘は無いようだった。

 

 「それを含めて判断するのはやっこさんだ・・?俺はこの件についちゃ相談役に過ぎない。まぁ害意を向けてくるなら容赦はしないがな。蔵人?こう言っているぞ。話してみちゃどうだ?」

 

 ハヤト達の言葉を受けて。後ろを振り返る秀人。

 

 その視線に促される様に、スッキリとしたレザーアーマーを纏った男が。大きなイルニークを伴って現れ出でて来ていた。

 

 「久しぶりだな『勇者』・・・まぁ、俺からすれば盗人なんだがな・・・?」

 

 収まりかけた場を、臨界点にもってゆくであろう言葉が放たれていた・・・・。

 

 

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