断罪するのは良いんだけど・・・その後の展開まで考えないと・・・。
私の構想力不足なんですけどね?
ちょっと気に入らない展開かもしれませんが、自分で原作を咀嚼した結果です。ごめんなさいね。
でも、話長いよね?早くアンクワールに行きたいなぁ~。
でもアルバウム王国のアホ共にも説教が必要だし・・・脚本力が上がる装備。誰か持ってませんか?
初夏の匂いを感じられる程に、肌に触る風が暖かさを帯びてくるアレルドォリア山脈。その麓に広がる森林樹林帯は、食物連鎖の頂点に立つ魔獣が存在しない為。繁殖の夏に向けて、活発に生き物たちが生を謳歌していた。
その樹林帯に似つかわしくない二足の直立歩行体が、倒木によって出来た樹林帯の空き地に六体・・相互いに向かい合っていた。
「退いて……」
向かい合っている者たちの中の、帯電しているように見えるブーツを履いたハイティーンの女性が。もう一方の甲冑を装備した戦士に、投げつけるように注文を言っていた。
「おいおい…男同士の因縁にケリをつける話し合いに、余分な雑音は要らんだろ?お前らの王子様も、控えているように仰せになっていただろ?それともナニか?王子様を信じてあげないのか。待つのも伴侶の嗜みだぜ?」
重甲冑の戦士が、兜の中から壮年の男性の声で応じる。
「………っ!?」
「エリカ…秀人さんの言う事が理にかなっている。ここは待とう。二人とも話し合いの為に奥に行ったのだ、戦う為では無い。」
「流石古風サムライ女子。わかっているじゃないか。エリカさんも、カエデさんを見習って大人しく待っていた方がいい。二人ともいい大人だ、何がしかの決着をつけてくるよ?」
「それでも、何かあったらタダじゃ済まさない…!!」
「イヤイヤ…最初に人のモノを盗んだのはそっちだろ?言うなれば君達は犯罪者に手を貸す共犯者。こちらは被害者と関係者だぞ?何か会話と立場に齟齬が生じている気がするんだが…?交渉に入る前に脅しとは…この世界にきて、随分荒んだ心になったんだねぇ。おっとぉ、そんなに迅るなよ?待てないなら関係者同士、白黒つけるかい?オラァどっちでも構わんぞ?」
勇者の『加護』を持つ二人に加えて白虎系獣人種のフォン、暗殺者の様なクー、召喚した張本人のアリス。五人が緊張した構えを取るのを見ても、自然体で振る舞う秀人。
勇者達に会うにあたって。ドローンを用いたダミーによる接触を考えていたのだが。アカリが直接会って話をする事を強く主張したために、秀人の付き添いで会う事にしたのだ。勿論、証拠を残す為にドローンをステルス撮影モードで周囲に滞空させてはいたが。
やれやれ・・・・どうもハヤトのパーティの女性達は、恒星が輝き過ぎるお蔭で他が目に入らないらしい。ここまで病状が悪化していると、普通の対応で終わりそうにないな・・。
こいつらに崇められているハヤトも同種の病気を発症しているだろう。自分達が正義!私達が正しい!だから邪魔する者達は排除しても構わない!どっかの一神教原理主義かよ・・。あの手の狂信者には逆洗脳しか効果が無いのが、今までの経験で分かっていた。
それでもダメな場合は・・・異世界まで来て女子供を蹂躙するってのは、あんまり気分のいいもんではないわな・・。
この分だと蔵人の方も、チートを手に入れたガキの相手で大変そうだ。其処まで考えて、どんなことにでも対応出来る様に
アレルドォリア山脈・高山地帯。危険な魔獣が蔓延り始める高山地帯に、黒鎧の男と魔獣を従えた迷彩柄のレザーアーマーを装備した男が対峙していた。
「なんだ・・・何も言い返さないのか・・。沈黙は自分の罪状を認めた事と一緒だぞハヤト?」
森林帯の構造と似た、迷彩模様のレザーアーマーを装備した年かさの男が。黒い鎧を装備し、二本の長剣を背中に廻した精悍な顔つきの年少者に抑揚の無い言葉を掛けていた。
「・・・・すまない用務員さん・・。それしか、言えない・・。」
掛けられた言葉を飲み下す様に、上げていた顔を落とし。年長者に謝罪の言葉を述べていた。
「ほう・・・?神らしき存在から貰った『加護』を奪った時に比べて成長した様だな?まぁ、だからと言って罪は罪だが・・・。それと、もう用務員でも何でもない。蔵人だ。」
先程の抑揚の無い調子では無く。若干嫌味を含ませた内容をぶつける蔵人。
「反省出来る様になったのには訳でもあるのだな?ハンター協会月報のバックナンバーを見たよ。凄まじい活躍ぶりだな?『加護』を・・しかもこの世界ではとても大きい力を秘めた二つの『加護』持ちなんだ、当たり前か?」
ハヤトからの返答がこないのをいぶかしく思いつつ、今のハヤトの仕草や表情、雰囲気などから。以前のハヤトとは違う事は分かっていた。
しかし、成長して人の為に動き結果を出していたとしても。奪われた事に対する怒りが収まることは無かった。
「おいおい・・・さっきも言ったが、謝罪しかないのか?やっぱりタダの犯罪者だな?」
もはや会う事も無いだろうと思っていた顔見知りの窃盗犯が目の前に居るのに、復讐心や増悪の心が芽生えてこない事に戸惑いを覚える蔵人。
蔵人の心の内を感じたのか、躰を寄せる雪白。その温もりを感じながら、目の前の『勇者』にどう接していいか分からなくなる蔵人だった。
「まぁいい・・。それよりも『加護』は返してもらえるのか?それと、元の世界には還れるのか。他にもお前が持つ『加護』の能力を聞いておきたい・・。対抗しようってんじゃない、興味本位だ。自分のモノだった『加護』だ?興味を持つのは当然だろう?」
「そんな事が知りたいのか・・・?」
話の内容が切り替わり、気分が替わったのか。蔵人が聞いた事に対して誠実に答えるハヤト。
先ずは『加護』の能力について。
そこまで説明して、『加護』を返却する方法が分からない事を伝える。さらに、元の世界に還る方法が見つからない事。ランダムに他の世界に干渉し、召喚する事は偶然が重なった事。今は、召喚された国で召喚者達で共同体の様なモノを造り上げた事を伝えていた。
「なるほど・・。召喚者の中に元の世界に帰りたい人間は多いのか?」
ハヤトの説明を聞きながら疑問点を口する。
「初期のころはほぼ全員だったが。状況が分かるにつれて、皆で協力して生きていく考え方が主流になっていった。勿論、その考えに与しないでアルバウムを出てゆくやつもいたが・・。」
「お前はどうなんだ?」
「俺は・・!!?この世界で生きてゆく・・。最初の頃の俺は腐った人間だった・・だが、ヒトを助け感謝され必要とされるに至って。生きてゆく考え方が変わった・・。今でも、俺を必要としてくれる人達が待っている。」
ハヤトの強固な意志のこもった瞳を見ながら、少し昏い感情が芽生える蔵人。ああ・・コイツは正真正銘の『勇者』になっていったんだなと思う。
周りから、そうなる様に状況が整っていき。それに応える事で『勇者』としての鋳型に嵌って行き、製品として完成したのだ。
だが、蔵人の目には完成しずぎた美しい美術品・・程度の認識しか呼び起こされなかった。あまりにも完璧すぎて、押しつけがましい『美』になって踏み込んで来るモノ・・・。其の事にハヤト自身は未だ気づいていない様だった。
俺も大して変わらんか・・・。この世界に跳ばされ、奪われ、一人を願い意固地になっていた自分。
雪白に出会い。共に生きるモノを得てきた。独りでいたならばここまで生き抜くことは難しかっただろう。
それに、おせっかいな薄毛のオッサンが仲間に加わることによって。ヒトの有難味と必要性を心に刻んでいた。
チョット・・・オッサンだけの『異世界』ってのも味気ないから、今度は妖艶な魔族の美女ナンカが欲しいけど・・・いやはや・・随分と余裕のある生活になったもんだ。
ハヤトに会ったならば、敵わないまでも一矢報いてやろうか?などと考えていた事もあったが。チート持ちの『勇者』に必死に挑んだところで勝てる見込みが無い。
であるならば、自分が『この世界』で生き残る事で『勇者』達に対するプレッシャーになる事を思いついていた。自分一人では、何処かの勢力に取り込まれてしまい。最悪、殺害されるかもしれなかったが。秀人と出会う事で、そんな事を心配する必要が無くなっていた。
「お前は本当の『勇者』を目指しているのだな…。だが、それとこれとは別問題だ。償いをすると言ったな?『加護』を返すのも無理なら賠償にしよう?在り来たりの話だが…そうだな…一ヶ月ごとに10万ロド。ハンター協会の俺の口座に振り込むんだ。大した金額じゃ無いだろう?一つ星の『勇者』様なんだから。」
「それで赦してくれるのか?」
もっとドロドロとした遣り取りの末に。実現不可能な事柄を持ち出されるものとして考えていたハヤトにとって、余りにも意外な示談提示だった。
「甘く考えているな?毎月、終身払い。お前が俺の口座に大金を振り込む事を訝しんで噂が流れるようになる。『勇者ハヤトの関係者?しかも大金を注ぎ込まなければならない程の関係なのか?』自然、そんな流れになる。そして、俺は聞かれたとしても『奴には借りを返してもらっているだけだ』としか答えない。」
「………?」
蔵人の話の先が見えず。沈黙によって話を促すハヤト。
「鈍いな?お前が守りたい人達に、お前はウソをついている。『加護』を盗んだ卑劣漢とゆう事実。噂を聞いた人間はこう思う『何の貸しだ?接点が何処にもないのに?』。お前は真実が曝け出されてもいいかもしれない。しかし、周囲の親しい仲間達は?お前を中心に纏まっているんだろう?お前が約束を破った場合、俺は『勇者』の裏の顔を知っていると皆に公言する。するとどうなる?お前が築き上げてきたものが崩壊してしまうんだ。『勇者』が盗っ人でいる事がバレたら…まぁ、お前が望むような事にはならないだろう。」
ハヤトの顔を見ながら、諭すように語る蔵人。
「………っ!!?」
蔵人の言わんとしている事を悟り。影響の大きさに愕然とする。
「なんだ?やはり殺す気か?分かりやすくていいな。」
絶句し、返答もままならないハヤトが。反射的に背の長剣に手を伸ばそうとする。その姿を見て魔術を書き込んだ雑記帳を持つ手に嫌な汗が流れる。しかし、秀人から買い上げた強化戦闘服の防御能力とガードドローンの防御フィールドの事を思い出し、冷静さを取り戻す。
『いいか?この強化戦闘服は今までの戦訓を取り入れて発達してきたもので、信頼性は抜群だ。この世界の鈍ら武器じゃ傷をつける事など出来はしない・・・と思う・・。まぁ、衝撃も吸収してくれるが万能では無い。お前が持っている怪しげな素材の防具よりは遥かにマシだよ。チート臭い『勇者』が出てきたら難しいかもしれんが。そこまで行くと
うん?買うか
コイツだったら価格も安いし、使い勝手も良い。お前が得意な毒などを使っても、専用のヘルメットを装備すれば無害で済ませられる。よっぽど酷く扱わなければ3年は持つ。
え?それでも不安だって?しょうがないな・・それじゃガードドローンなんてどうだ?内臓エネルギー使い切りで耐熱・耐爆・耐衝撃の防御フィールドを5回まで展開できる。サイズも小さくて、専用のケースを腰に着けておけばいつでも展開できる。
え・・?購入する?分かった、後でサイズをスキャナーで取り込んでおいてくれ。しかし、他に買ったのが投擲用のガス弾セット、スタングレ、手首に装着するガス噴霧器とか・・なんか暗殺者じみた装備が多いね・・・。』
洞窟での秀人との『商店』をつかったやり取りが思い出される。本当なら試しておきたかったのだが、雪白と秀人のお蔭で機会に恵まれなかった。(常に先手を取れるため、近接でのダメージ覚悟の殴り合いが発生しなかった)
秀人とのやり取りを思い出し、自然と笑みが浮かぶ。あのお節介なオッサンの顔が浮かぶだけで、何とかしてくれそうな雰囲気になるから不思議だった。今回は一人で決着をつけなければならないが……。
蔵人の不埒な考えを読んだのか。抗議活動を活発化させた雪白が、尻に鞭のような尻尾を叩きつけていた。
「……?」
尻を抑えて痛がる素振りを見せる蔵人を見て、訝しく思うハヤト。まさか猟獣に尻を叩かれているとは思ってもいなかった。
「……何でもない……。で…返答は?」
「……そんな事は……しない……。俺は償いをしなければならない……。」
「見上げた心意気だ。だが、お前のパーティの連中を抑えきれるのか?かなり不安定なヤツがいたが。」
「俺がさせない!!」
「そうか。一言約束して貰おう。」
「……なんだ?」
「お前の関係者が。お前の与り知らぬところで仕掛けてきた場合…全霊を持って反撃する。結果、其奴が死んでも構わんと?」
「………っ!?…。其れを逆手にとって攻撃してこない保証は?」
「勇者稼業が長すぎて過去の自分を忘れたのか?保証なんかあるかよ。だいたいお前がしっかりと手綱を握っていれば問題が無いだろう?」
「・・・・・。」
「雄弁は銀、沈黙は金と言うが・・。承認したと思って構わんな?安心しろ俺じゃどう頑張っても、あのメンツには勝てん。雪白とオッサンが居れば・・そうだな・・攻撃の素振りを見せた段階で、肉片になってるが。」
「・・・あの男はなんなんだ?俺達の世界の人間では無い。装備している鎧にしても・・なんとゆうか・・」
「ああ。この世界でもアッチの世界でもないソチラノ世界から跳んできたってさ。お前んところのお嬢ちゃんのお蔭だな?お仲間を喪いたくないなら、しっかりと調教しとけ?」
「・・・・!!?仲間への侮辱は許さない!!」
「熱くなんなよ?いいんだぜ?今までの会話をアルバウムの関係者に見せても・・。うん?」
「・・・・・!!そんな事・・・出来る訳ない・・!!」
「あのなぁ?なんの準備もなしに、のこのこ出てくるかよ。ほれ?コイツが見えるか?小型精密ドローンってやつさ。今までの会話は、バッチリ記憶されてる。」
「・・・・!??」
「絶句ばかりだな?作者は楽でいいな・・・。なんでもない。まぁ、俺が譲歩できるのはこれぐらいだ。後は自分達で努力しろ。関わりになるなと言っているだけで難しい事では無いだろう?おっと・・ハンターでの活動は別だ。俺だってこの世界で生きていくつもりだ。人が死ぬのはあまり見たくないしな?」
蔵人の提案に、頷くハヤト。
緊張感に満ち溢れた因縁の男達の会話は終わった・・・・・。
しかし、二人の予想しない出来事が。森林地帯の中心で、朱き轟雷の炸裂によって引き起こされていた。
ある意味。蔵人の予想は正しかったのだった。
アレルドォリア山脈森林地帯。先程引き起こされた惨劇はそのままに。重甲冑の戦士と、五人の女が対峙していた。
「……誰も…見ていない……」
状況に痺れを切らしたのか、兎系獣人種のクーが他の四人に決断を促す様に呟く。
ハヤトが蔵人との間に因縁めいた物を持っているのは。エリカとカエデの態度を見て、何となく察してはいた。ハヤトにしても、いつに無い緊張した雰囲気を醸し出していたし。召喚したアリスも暗い顔をしていた。
2人が連れ立って高山地帯に向かう時、ハヤトから待つ様に言われ従っていたが。その合間にエリカが思い詰めた顔で、詳しい事情を話してくれていた。風精を使用した限定範囲内の会話だから、蔵人と連れ立って現れた重甲冑の戦士には聞かれなかった筈だ。
エリカが話してくれた内容が真実ならば、ハヤトの立場は非常に難しいモノになる。今後の事を考えると、蔵人と呼ばれた男は殺すべきだった。アルバウムに召喚された『勇者』の勢力は一枚岩ではない。
ハヤトに反発を覚えている人間も少なからず存在するし。王国の貴族や王族の中にも潜在的な敵対勢力は存在した。その様な状況に蔵人というイレギュラーな存在は、ハヤトにとっては邪魔な人間だった。ハヤトの立場では彼を殺すなどあってはならない事だろう。でも、ワタシだったら問題は無い。
ワタシが蔵人を殺害すれば、一刻はハヤトはワタシを非難し、思い悩む事があるだろうが。ある程度の時間をかければ、こちらの想いをわかってくれる筈。自分の命と人生を取り戻してくれたハヤトに、恩を返す事しか考えられなかった。しょうがない…で、済まして仕舞えばいい…
ハヤトが自分にとっての全存在以上に感じているクーにとっては、それ以外の選択肢はなかった。もっとも、『しょうがない』で殺される羽目になる蔵人にとっては。到底、受け入れることは出来ない事だった。
「 そこの黒兎…。物騒な事考えてんなぁ?アレだぞ?御主人の命に逆らう事だぞ。五人の中でも葛藤があるようだけど、それで良いのか?万が一、俺や蔵人が生き残った場合。取り返しのつかない負債をハヤトが抱え込む事になるぞ?そっちのサムライ姉ちゃんと白虎姉ちゃん、それとトンガリ帽子嬢ちゃんは事の重大性を認識している様だけどね。」
クーの言葉を聞き。あまりにも短絡的発言だった為に、肩を竦めて呆れる秀人。
「止めなさい、クー…。彼の実力が分からない以上、短絡的に行動しては駄目よ。それに、勇者アカリを救出に私達が出発した事は、ハンター協会を通じて他の勢力にも情報が流れています。ここで彼等を仕留めたとしても、アカリを通じて疑惑が流れ出てしまいます。それはハヤトの望むことではないでしょう。」
秀人の言葉を受けて、トンガリ帽子のアリスが冷静に状況を分析する。
「分かっているじゃないか?追っ付け、マクシームが月の女達を連れてくる。そんな時にハンター同士で争っていたら、お互いにいい事はない。待てば良いのさ?信じてやれよ。自分達の『御主人様』をさ?」
アリスの言い分に同意し、周りを見渡す様に兜の奥の単眼を光らせる秀人。その動きは緩慢で、全く警戒していなかった。
「……やぁっ!!!」
紅い
「…エリカ……?」
「これって……」
「…………!?」
「…生きてはいない…ハズ……」
「……はは…っはははは!!?これで…ハヤトを邪魔するのは一人だけっ!!?皆んなも分かってくれるよね?これが正しい事に!?ハヤトは…私を救ってくれた…そんな彼を犯罪者になんてさせない!!そんな…そんな罪なら!!私が被る!!」
感情の高ぶりのまま紅雷を全身に纏わせ、化鳥の様な笑い声に混じって嗚咽を漏らす。既に正気などを保持していないのは明らかなエリカ。自分が行った雷撃が、どの様な結果をもたらすかすら理解出来ない状態だった。
「エリカ…お前…何をしたか分かっているのか?同じハンター…いや…同じ召喚者を………」
同じ召喚者同士なら『加護』の影響を受けない事を分かっているカエデが、雷を怖れずにエリカの肩を掴み揺さぶって正気に戻る様に促しているが。戻ってくるのは嗤いと嗚咽だけだった…
「………まだ…終わってない……トドメ刺すべき……」
エリカとカエデのやり取りに目もむけず。装備した短刀を引き抜き、強烈な雷撃で地面に穿たれた穴に向かうクー。
「クー…お前まで…?冷静に判断出来るのは私とカエデ、アリスだけか?」
白虎系獣人種らしく、事態を冷静に判断するフォン。狩りの時と同じように、昂ぶっていても冷静な判断が出来た。それでも、仲間の行動に気が動いていた。
「クー?トドメを刺すなら慎重に。事態はあなた達が行動を起こした事で、引き返せないモノになったわ。」
トンガリ帽子を目深く被っているために、表情が見えないが。声の調子から判断するに、精神が昂ぶっているのが分かった。
「アリス…っ!?お前まで?!何を言っているのか分かっているのか?フォン!お前からも言ってくれ!」
混乱した状況から抜け出せずに、普段からは想像出来ない取り乱しかたをするカエデ。カエデに促されても動揺するばかりで、動きの取れないフォン。
「……運が無かった……」
豪雷で出来た穴の中で黒く焼け焦げた重甲冑の首筋に、短刀を当てて差し込む。
「…………?」
ハヤトから貰った二本の魔法の短刀。普段ならこの程度の甲冑など、簡単に切り裂く事ができるのだが。手応えが全く無い。もう一度深く斬りこもうと、構え直し命精で強化をかける。腕を構えたところで、ありえない事が起きた。
「そんな鈍じゃ、科学進歩の差を埋められないぜ?」
絶命したかに見えた重甲冑が動き出し。反射的に離れようとしたクーの右手首を掴み上げる。重甲冑の戦士が右の片手一本で、クーを掴み上げて立ち上がる。
焼け焦げたように見えた重甲冑は、形容し難い灰色に一瞬で染まり。その美しい光沢には、豪雷の痕跡など微塵も残っていなかった。
「…グウぅぅ!!?」
右手首を掴み上げられ、咄嗟に左でもう一本の短剣を突き込むが。灰色の鎧には傷を付けることさえかなわない。さらに掴み上げられた最大命精で強化された右手首が、飴細工の様に簡単に握りつぶされてゆく。
「オイタをした子にわぁ、お仕置きが必要ですねぇ・・はい。」
雷撃のダメージなど全く残っていないとでも言う様に。クーの右手首を握りつぶし。さらにもう一方の左手首を掴み上げ、同じように握りつぶす。
「ぐがぁぁあぁああぁあーーーー!!!」
肉が潰れ、骨がひしゃげる無慈悲な音が。森林地帯に少女の絶叫と共に響き渡る。ヒトが発したであろう悲鳴とは思えない絶望の声が流れる。
あまりの激痛に口から涎を流し、目は大きく見開かれ、躰は痙攣を起こし、ヒト種の生理現象として下半身の装備は濡れ、鎧の継ぎ目からは蒸れた黄色い液体が零れ落ちていた。
「返事は受け取った・・・覚悟はいいな?」
両手で生贄を抱え上げた灰色の悪魔が。兜の奥で翠の