軌道降下兵   作:顔面要塞

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遅くなりました!!

年内の更新は無理そうです。今のうちに謝っておきます!!

いやぁ・・用務員さんを読んだころからは信じられない程の文章書いてます。

読者の皆さんの感想と意見が無いと、書き物はダメですねぇ。

年明けも仕事の都合で休みが無い・・・外人呼んで奴隷にしても、日本人みたいに真面目に働く奴いるのかなぁ?

 文句言わないで奴隷になっている自分が言うのもなんですが・・・せめて・・正月料金アップアップしてくれないかなぁ・・・資本主義なんだから、正当な報酬位はらってくれぃ・・・

 労働環境に精神やられて、犯罪に走る奴の方が多くなりそうだけど?巻き込まれるのは嫌だなぁ?

 スイマセン。愚痴になりました。

 年内、何事も無く過ごせるようにお祈りいたします!!

 愚痴言ったら軽くなったので、アンクワールに向かって構想をしっかり練ります!

 では、来年もよろしくお願い致します!!


魔薬

アレルドォリア山脈から吹き降ろす風が心地よい具合になる初夏。麓にあるサレハド村に驚きの報告が入って来ていた。

 

 「本当なのか?確認したのだろうな?」

 サレハド村ハンター協会支部長ラーヘンは、地方本部に送る先月の収支報告書に確認のサインをしていたのだが。サレハド村を揺るがす報告と聞いて即座に仕事を放りだし、アレルドォリア山脈に狩猟に出かけていたハンターグループの報告を確認しようとしていた。

 

 「ええ、間違いありません。ウチのグループはハンターがメインですが、探索者もやっていまして。試しに表層部でも潜ってみようと考え、一階層の入り口付近を探索しましたので間違いありません。これが、『遺跡』で採集した戦利品になります」

 

先月に起きた怪物の襲撃(エクスプロード)に参加した、五つ星の弓使いを中心としたハンターパーティ『明星の矢』のリーダーが戦利品をラーヘンの机の前に並べる。

 

 うろ覚えの知識を動員して戦利品である魔獣素材を確認するラーヘン。何個か記憶にある素材は、どれも南の遺跡に出現する暖かい地方の魔獣のモノだった。

 

 「これは・・・・?」

 驚きを隠せずに呟くラーヘン。

 

 「ええ・・・支部長が考えている事で間違いないでしょう。異例ではありますが、今回の遺跡は南の地方のモノのようです・・アレルドォリア山脈に出現した遺跡としては大変珍しい事例です」

 ラーヘンの驚きに同意するリーダー。

 

 「場所は『勇者』殿達が拠点にしていた場所から少し奥に入った所で、以前報告にあった氷の軍勢が壊滅した場所です」

 

 「了解した。素材については三割増しで査定しよう。詳しい事は書記官に伝えて報告書を作成してくれ。勿論、報酬もだす。よろしく頼むよ」

 

 意外な儲け話に喜色を隠さずに部屋から退出するリーダー。その後ろ姿を見ながらこれからの事を考えるラーヘン。

 

 『遺跡』の出現・・・・。

 

 怪物の襲撃(エクスプロード)の村への侵入を防ぎ災害になることを抑えたとはいえ。怪物によってサレハドの貴重な収入源である魔獣や貴重な植物が損害を受け、一時的に収入の見込みの立たない村にとっては救いの知らせであった。

 遺跡に出現する魔獣や、遺跡が生み出す貴重な素材や宝物の存在は、様々な人々を呼び寄せて村に新たな収入をもたらす。ほぼ開店休業状態のサレハド支部は更に発展する事になるだろう。何せ遺跡に最も近い整備された拠点(蔵人が使用権を預けた洞窟)を独占使用できるのは我々だけ。

 いずれ、探索者協会の支部が開設されるまではサレハド支部が中心になるのは間違いが無い・・・・。しかも遺跡に出現するのは北部地域では存在しない南の魔獣ばかり。交易の移動手段が限られた世界(エリプス)においては凄まじい利益を生み出すだろう。

 

 貧乏くじと思っていた勇者達の出来事・・・どうやら幸運の神様だったようだ・・これで、まだまだ楽しい人生が送れそうだ・・・

 

 「なんだ?気色の悪い笑顔晒して・・・?俺の人生バラ色って感じだぞ?」

 連絡を受けたグアディが開けられた支部長室のドアの所で、壁に肩を預けて言い放つ。

 

 「グアディさん・・・いらしていたんですか?」

 

 「ああ、ドルガンにとっても重大事だ。サレハド派遣軍司令としては大いに関心をも足らざる得ないね?奴等との因果関係は不明だが、きっかけになっている気がしないでもない。いい土産を置いて行ってくれたよ?『遺跡』であるならば対応の為に国軍も駐屯することになるから・・サレハドも村では無く、街に発展してゆくだろう」

 

 「そうですか・・今頃何をしているのでしょうね。あの三人は・・・」

 

 「さあなぁ・・・ヒデトはアルバウムをシバキに行くって言ってたし。蔵人は砂漠を見たいって言っていたなぁ?ま・・・奴等が帰って来たら驚かせるぐらいには発展させておきたいよな?」

 

 「全くです・・使用料金もたっぷり用意しておかなければいけませんね?」

 

 お互いに視線を交わせた後に、それぞれの気分のままひどく男臭い渇いた笑みを浮かべる二人であった・・・・・。

 

 

 

 

小さな部族が、より大きな富を求めて他の領域に侵攻し従属化に置く。或いは反撃を受け敗退し、逆に吸収される。そのような事を繰り返し、戦いで切り開く事に疲れ始めた人々が欲望と妥協の産物として作り出した『国』エルロドリア連合王国。

 

『国』として王を掲げる事によって何とか纏まっていたが、ある『事件』によって構成している領域の一つが突出して『力』を持ち。三領域の均衡が崩れ始めていた。しかし『国』に居住し生活する者にとっては雲の上の出来事であり、いかに日々の生活を向上させつつ生きることの方が重要であった。

 

 

タンスクからエルロドリア連合王国の首都、王都ロンデルクに向かうロンスク街道。三国の主要都市を結ぶ街道なだけあって土精魔法によって綺麗に舗装されていて、かなりの重量物を運ぶ魔獣車や荷馬車が造る轍も定期的に補修されていた。

 

 しかし、あまり富める国では無いエルロドリア連合王国はそこまでが限界だった。北部の強国であるアルバウムを縦横無尽に走る街道は、ミド大陸の中心地であるプロブン西方市国と首都スリバーニヤを繋ぐ『勇者の街道』を筆頭に巡察隊が巡り、盗賊や山賊、魔獣の跳梁を赦していなかった。

だが、ロンスク街道では定期的な補修・整備だけで予算が底をつき、街や村を結ぶ街道に巡察隊を派遣することが出来なかった。逆に言えば、治安の悪さは国による盗賊や山賊の討伐依頼が常時傭兵協会に張り出される事に繋がり。街道上に出没する棲息域からはぐれた魔獣の討伐依頼が、ハンターに提示される事でもあったから、其れ等の生業に就いている者達にとっては悪い事ではなかった。

 

それでも、ロンスク街道における治安の問題はイタチごっこであり。根本的な解決には国による大規模な介入を待たなければならなかった。要するに、ロンスク街道における安全性は日が昇っている間だけの事であり。何かしらの事情により夜間の移動を選択する者達にとっては、危険の増大を意味していた。

 

富めるものと、それ以外の人々では街道においても『安全性』には大きな違いが存在していて。『商売』を行うにしても、『危険』に遭遇する頻度が目に見えて大きなものだった。勿論、他者を出し抜いて儲けを出すには少々の危険には目を瞑り、リスクの中に存在する利益を追い求めるのが常であったから、危険度が増す夜の街道での移動を選択する者達も少なからずいたのである。

 

ひどく厚く黒い雨雲が覆いかぶさっているロンスク街道。夕方から降り始めた雨は、瞬く間に強い雨音に変わり、舗装された街道上に小さな幾筋もの流れを生み出していた。日は完全に沈み、暗闇が支配する世界に変わっていて。闇を好む者達が蠢き出す時間になっていた。

 

雨が作り出した流れを邪魔するように、街道上を必死に馬を駆る者が居た。

 

強い雨によって髪は顔に張り付き。雨具を付けていない衣服は、重くじっとりと濡れて動きを鈍くさせていた。よく見れば、貼りついた髪は長い金髪で肩まであり。首筋から胸にかけて見える肌は白く、胸はそれなりの隆起があり。曲線で構成された肉体は、其の物が女性である事を示していた。

 

夜間、ロンスク街道を女性が一人で移動出来るようなものではない。じっとりと濡れた衣服は高級な生地で丁寧に縫製されたもので、この女性が裕福な事を示していたが。白い肌が見える肩口は破れ、腰回りを覆うスカートも所々切られていた。

 

『迂闊だった…タンスクで取引のある商人から紹介された『品』に、これ程の危険が伴うなんて…いえ、後悔しても始まらない…何とかして逃げきらなければ!』

普段は自分の魅力を引き上げてくれる美しいスカートを、騎乗し易いように小剣で斬り落とし。雨で濡れた髪をスカートの繊維で縛り上げ、振り続ける雨に負けずに馬を駆る速度を上げる。

 

 一番近い村落に、救援を求めに走らせた召使は無事に辿り着けたであろうか?田舎に住む年老いた両親の為に立派な商人になると言って、元気に挨拶していたのが思い出される。

 何も感傷に浸っている訳では無い。彼が無事に村に着き急を報せれば、村落に駐屯している治安機関の人間か、旧冒険者三種が救援に駆けつけてくれるはずだから、この襲撃から生き残れる公算が高い。

 可能な限り希望的観測であれば、あと20ミニト程度逃げ切れば救援が間に合うだろう。現場に残り、自らの務めを果たし続けている護衛隊や使用人達の努力に報いるためには、当主である自分が生き残らなければならない。

 

 しかし、窮地に拠っても冴える彼女の頭脳は、先程聞こえた剣戟の音が途絶えた事から導き出される未来図を正確に把握し。襲撃者が用いている軍馬の追撃から逃れられないであろう事を予測していたのである。

 

 

 

 「まずいな・・・・」

 野盗に見せかけるために、普段は用いない軍馬と呼ぶには厳しい少し衰えた馬の鞍上で、深いフードに隠された中から呟きを漏らす男。

 

 隊商を襲い殲滅するだけの簡単な仕事だった筈が、護衛する傭兵の連中が予想外にしぶとく最重要目標が逃げ出してしまっていた。

 夜間・降雨・明確な経路・・と襲撃するには最適な状況であったにも関わらず、仕事の内容は褒められた成果を出せずにいた。依頼主からの『野盗に見せかけて対象を抹殺してくれ』とゆう命令により『雑』な殺害方法しか出来ない事が足枷になっていた。さらに、傭兵や使用人達は重要な物資である荷馬車を円形に倒して防御円陣を築き、なるだけ時間を稼ぐような戦い方であったから、貴重な時間を無為に消費させられていた。

 

 しかし、逃げ出した隊商の当主を追わせている部下が、直ぐに結果を出して帰って来るであろうことは分かっていたから。救援隊が駆け付けるまでにソコソコの物資を略奪して、野盗の仕業に見せるには十分な時間が残っている事が安心材料であった。

 

 声を聞かれない様に手の動きだけで指示を出す。夜間視力が高い獣人種だけを隊から選別した隊員達には、それだけで十分命令が伝わり、哀れな隊商達を追い込んでゆくのだった。

 

 

 

 「けっこう手負いなのに早いな・・・だが、もう終わりだ・・」

 襲撃する前に確認した目標の特徴である美しい金髪を夜目で確認しながら、先行する目標を屠ろうと腰に廻した剣に手を掛ける。

 使い慣れた愛用の獲物では無いが、何かに偽装して対象を抹殺するのが仕事であるから、切れ味の鈍い剣でも我慢するしかなかった。一撃で殺すのは野盗を偽装している自分には許されていないから、対象が絶命するまで何度か切りつけなければならない。

 過度に剣を振う事は苦痛を長引かせるだけでしかなかったから、感情では一撃で終わらせたかった。目の前の対象が振り返り見事な金髪で隠された顔が見えた。

 

 美しい北方種の女性であった。覚悟を固めたような表情であったが、高度に訓練された自分の手が止まることは無く、対象に切りかかろうと剣を振り上げる。

 何度も目にした光景。そして数瞬後には鈍い感触と共に血に塗れる対象を思い描く。

 

 しかし、胸に強烈な衝撃を受け騎馬と共に打ち倒される・・・一瞬で刈り取られそうになる意識が最後に捉えたのは、驚愕に見開かれる対象の美しい碧い瞳だけだった。

 

 

 

 「少し、ずれたな・・・腕が鈍ったか?」

 

 ロンスク街道を見下ろす小高い丘の上に、何かの衝撃で倒された草が一方向に伸びていた。何かの強烈な衝撃が発生したであろうことは分かるのだが、そこには何者かの姿は無く、声だけが雨音に紛れて流れていた。

 

 「まぁいい・・次の標的だ。隊商の方もほっとけないからなぁ・・二十二人か・・相手がバカじゃなければ、二、三人の損害で引き上げる筈だが…襲撃自体の目的が『例の薬』の証拠隠滅だからなぁ…しかし、自分の国の商人を騙して囮にするなんて…グアディの奥さんも良い具合に悪党だな。けれども、アルバウムをシバクのに協力してくれるんだから、自分の仕事をすっかねぇ」

 

ポンチョ形式のステルス迷彩装備で隠された秀人が、狙撃モードのスメラギに次弾が入ったことを確認して、商隊を襲っている獣人種に照準を合わせる。彼我の距離は2845m。防護魔法を展開している事を考慮にいれて、対軽装甲目標レベルに威力を調節する。

事前に展開させておいた地上型小型ドローンから送られて来るデータを元に、照準機に修正が入り目標の頭部の右上5cmを狙い、即座にトリガーに力を加え発砲。

電磁エネルギーの流れにより加速を受けた高テルファイト合金製の弾丸が、秒速2400mで目標に突入。展開されていた防護壁を簡単に突破して、運動エネルギーをほぼ失う事なく頭部に命中。哀れな犠牲者を創り出すのだった。

 

 

 

「しかし…どんな威力の魔法だよ?綺麗に頭が吹っ飛ばされてるぞ?」

 

朝まで降り注いだ雨は止み。夏を感じされる陽の光が、ジワジワと気温を上昇させている。ドルガン軍地域巡察隊を率いている壮年の隊長が、額に浮かぶ汗を拭いながら、殺害された獣人種を検分していた。

 

「隊長!負傷者の応急処置は終了しました!搬送準備も整いましたので、バヤルナ村にいつでも出発出来ます…が…」

巡察隊の副長が報告してくるが、最後の言葉が疑問符になっている。

 

「アイツらは見なかった。であるから、貴様の質問も俺は知らない…多分、諜報機関の特隊だ…関わるな。自分の人生が大事ならな?」

「了解です…部下にも厳命しておきます」

「宜しい。さて、この任務が終われば特別褒賞と休暇が貰える…そうゆう事だ…」

「良いですな!妻と二人でユックリするとします。隊長の奥方様は…」

「実家に帰っている…何も言うな!迎えに行くさ…出発だ!」

 

負傷者の収容が完了した巡察隊が、現場を後にする。それは、護衛ではなく。囚人を輸送するかの様な物々しさを纏っていた。

 

 

「巡察隊が帰途に着きます。襲撃者達のアジトも特定出来ました、街道を外れた古代の砦跡です。増援を待って急襲します」

青白い仮面を着けた男が、同じものを着けた女性に報告を行なっている。

 

「了解した。しかし凄いものね…『勇者』の力とは…」

「我々の概念が吹き飛ばされます…たった2ミニトで16人を始末してしまうなんて…」

 

巡察隊が見た死体とは違う遺骸を見ながら小声で会話して、揃って原因となった男を見やる。羨望と畏怖を含んだ視線を周りから浴びているのだが、見たことも無い兜の奥の表情は読み取ることが出来なかった。

 

「それが事実なのは見ていたでしょう?正直、私も任務じゃなかったら放り出して寝床に潜り込みたい気分だったわ」

「同感です。彼の力を持ってすれば増援など待たなくても宜しいのでは?」

「私達が助力しなくても結果を出してしまいそうだけど、万が一とゆうのは考慮しないとね?」

「おっしゃる通りです。しかし、イリア議長からの紹介じゃなければ、一緒に働くのは遠慮したいですな?」

「余計な考えは禁物よ?今回はあくまでも『薬』の流れを掴むのが先。それ以上の事は『上』の判断次第。貴方の同僚が何人か行方不明になっている案件だもの…慎重に動かないと…私も部下を喪う無能な上司になりたくはないし」

「まったく…生きてこそ…ですか?」

「そうよ?冥府に旅立つには、もう少し人生を楽しまなければね?」

 

上司の意味深い言葉を飲み込みながら、『勇者』を見やる。さぞかし『勇者』らしいポーズを決めているかと思っていたが、ウチの者が渡した伝令符を見た途端、先程の勇壮な姿勢ではなく。何かを覗き込みながら頭を抱えしゃがみ込んでいて、途方にくれている様に見えた。

 

どんな状態なのか判断に迷う姿だが。上司の言葉と美人ではないが可愛らしい横顔を思い出し、肩をすくめて自分の任務に戻るのだった。

 

 

久し振りの狙撃で軽く緊張した身体をほぐしながら、襲撃現場でドルガン特別諜報隊の検分に付き合う秀人。イリア議長(グアディの奥さん)から頼まれた案件が、『薬』の出所に繋がる者達の炙り出しに協力する事だった。

 

自分としても『勇者』が関わっていそうな事柄だったから、背景を知りたかったし。アルバウムに対した時にドルガンの助力も欲しかったから、議長からの提案を引き受けていた。

この世界には存在しなかった『麻薬』…いや…『魔薬』と言っていたが。一度、製法が確立して伝播してしまえば、拡散を止める事はかなりの努力を傾けても難しい。危険な物と分かっていても、其れを求めてしまう人間の業は深い。元いた世界でも、しょっちゅうニュースになっていた(もっとも、『魔薬』とは違い。より『安全性』の高い物だったが。それで満足出来ないものは多かった)

 

ブラゴイ家が流通を担っていた様だが、製法を授けて『魔薬』を伝播させた人物の特定には至ってはいない。関係者に対する尋問でもハッキリせず、資金の流れでも掴めなかった。

その為に回りくどい方法を用いて、細い糸を掴もうと今回の事態に至ったのだったが、今回の餌に食いついてきた憐れな犠牲者達の素性もハッキリとはしていない。

しかし、初弾を食らってからの迅速な対応は見事だったから、野盗の類ではないのは確実で、戦闘の状況を見守っていた特隊の連中も同意してくれていた。だが精鋭とまでは行かないレベルに見えたから、『薬』の出荷先の人間が派遣した金で雇われた『裏世界』の連中…と考えられる。

白黒つけるには生きた情報源が必要だから、特隊の連中に付き合って何人か尋問しなければならない。『勇者』まで辿り着くことは無いだろうが、他国の実力者の情報を握るのは悪い事では無かった。

 

本隊から先行して攻撃を仕掛けて、目標を確保するか…

 

そこまで考えたところで、特隊の人間が伝令符を持ってきていた。伝達事項が記入されたものだが、符丁となる文字を書き込まないと、内容が表示されない古代の魔法がかかっている。普段の遣り取りでは使用されず。もっぱら、国家の重要事項や豪商の商談にしか使用されなかった。ぶっちゃけ、使用するにはそれなりの金銭が必要で、金額の桁が一つばかり違っていたのだった。

 

『雪姫、雌獅子、案山子の乗った船、消息を断つ。精霊の悪戯らしい。連絡を請う。森の老女』

 

「あのバカ…いったいぜんたいどうなってやがんだ?この世界の気象はどうなってやがる?クソっ!!」

この世界にはいい加減慣れたつもりだったが…魔法とか精霊とかが大手を振って走り回っているのをつい忘れていた…イキナリ死ぬ様な事は無いだろう。蔵人が買っていった装備は地球連邦のお墨付き、チャチな品物じゃない。ユキシロ先生も居るし、イライダも行方が知れないだけでくたばるタマじゃないしな。

 

瞬間的に屈みこんでしまったが。気をとりなおして、目の前の事柄を片付けるのが最優先だった。奴もいっぱしの冒険者なんだから、生きてりゃ連絡もあるだろう。オーフィアのバアさんには連絡だけ入れておいて、この件をやっつけちまおう。

 

「さて…時間もない事だし…手早く片付けるか?」

 

何気なく呟いた秀人の独り言は、緊張した状況で見守っていた特隊の連中全てに聞こえていて、感情の抑揚が抑えられた言葉は、夏の暑さを感じさせない程度には冷たく響いていた。

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