軌道降下兵   作:顔面要塞

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 異世界に跳んできてしまったヒデトサン・・・。スーツの力を使い生き残ることが出来るか?
 それは、読者の皆様の御言葉次第・・・。お気に入り登録三件!!!ありがとうございます!!
 でも、適当に書いていきます。『用務員さん』の設定が詳しく乗ってるサイトなんてないですよね?
 え?自分で探せって!?スイマセンでした。

 異世界。宜しくお願い致します。


異世界

  第八艦隊 旗艦『陸奥』司令指揮所

 

 薄暗い艦内に、緑を基調としたささやかな明かりが燈っている。その明かりの下では、指揮所各部署に配置された指揮要員が操作パネルに向かって何事かの手順を行っていた。

 

 「第八艦隊各艦。惑星占領態勢に移行完了。」

 「第一、第二水雷戦隊を艦隊より分派。所定軌道にて、警戒態勢に入ります。予定時間26分後。」

 「強襲揚陸艦『イオージマ』、『タワラ』、『サレルノ』及び『ノルマンディー』各艦所定位置。軌道降下戦に入りました。」

 「大巡『剣』『アラスカ』強襲揚陸戦護衛配置に展開完了。」

 

 指揮所内で繰り広げられる、経験豊富なオーケストラ演奏に似た節度を保った報告。その報告を指揮所司令官座席で聞きながらこの後の展開を考えるアレクセイ・本庄中将。

 

 まずは、成功だ。この後は先発した第五師団を援護しながら、占領地確保の為の第七師団を送り込み補給廠を設置した後に機動展開兵力を上陸させる為、『サレルノ』と『ノルマンディー』を惑星に降下させれば、占領作戦は

大方終了だ。

 さて、作戦時間開始から4時間か・・順調だ。月の地球連邦航宙艦隊フンボルト根拠地のバー『海兵達の心』を予約しなければな。ファルハイトに奢る余市のシングルモルトを取り寄せておかなければならない。

 あいつ、酒にだけは煩いからな・・だから結婚できんのだ・・。この前紹介した女性(ヒト)だって悪くないと思うんだが・・・?

 

 「惑星オメガ03大気圏上層部で急激な重力場異常を感知!!各セクションに警報発令!!」

 「重力異変宙域を重点探査!一番近い艦艇から偵察ドローンを出させろ!」

 「あ・・・?重力異常、急速に消失・・?!現在、観測数値に異常ありません・・。」

 

 「どうしたのだ・・?」

 朋友との語り合いと、豊かな味わいを約束してくれる余市の事を考えていた思考を切り替え。作戦指揮司令官として、指揮所内で行われているやり取りに意識を傾ける。

 

 「はっ・・。重力異常を感知したのですが・・すぐに収まりまして・・。」

 観測オペレーターとやり取りしていた艦隊情報参謀が、とまどった顔つきで答えていた。

 「作戦への影響は?」

 「今のところ影響は無いようです・・お待ちください・・・解析結果が出ました、作戦への影響は無いようです。何・・?」

 「何があった・・?」

 返答中に急な情報が眼鏡型情報端末グラスパッドに表示されたらしい。

 「いえ・・軽微な、とゆうより。一名だけです。軌道降下兵タカハシ・ヒデト伍長だけが観測できません。」

 「よろしい。作戦行動を継続せよ。重力異常に関してはデーターを洗い出して、連邦本部に送っておくんだ。」

 「了解いたしました。」

 

 参謀に対して大仰に頷いて返事をする。しかし、こんな場所で重力異常だなんて聞いた事も無い。そんな状況に巻き込まれるとは・・運が無いな・・。

 そこまで考え、しばし瞑目する。天界への旅路に、幸多からん事を・・。

 

 この日、第八艦隊が行った占領作戦に於いて一名も損害を出すことは無かったが。作戦軌道降下中に一人だけ行方不明になる事案が発生した。

 作戦が完了し、対象宙域を捜索したが。行方不明者を発見することは出来なかった。

 

 二日後、対象の人物。タカハシ・ヒデト伍長の作戦中行方不明MIAが確定した。

 

 

 「何だってんだ!?くそったれぇ!!」

 思わず、悪態が口から出てしまう。いかんいかん・・『悪口は、不幸を呼び寄せますよ・・』と、孤児院の先生が言ってたなぁ・・。

 でもね、先生。軌道降下戦の音速を超える速度で大気圏に突入している時に、予想もしない出来事が起きたら誰でも文句の一つでも言いたくなると思いませんか?

 「こんな時に昔の言いつけを思い出すなんてな・・余裕がある方じゃないかヒデト・・?」

 自分自身に語り掛けてみる。まぁ・・異常はないか。『イオージマ』に緊急通信を行うか?駄目だろ・・敵性惑星に降下中に自分から発信するなど、撃破してくださいと表明している様なもんだ。

 

 「さて・・。いったい何が起きたのか・・・。」

 軽い衝撃を感じた瞬間に周りを見渡してみたら、艦隊は消えていたし。降下するべき惑星表面の地形もまったく変わっていた。ポッド内には異常を知らせる警報が鳴り響くし(五月蠅いから、警報は切ったが)

 自分自身の肉体、機動強化装甲外骨格(スーツ)等には異常は検知されていない・・精神の方が異常をきたしたのだろうか?

 しかし、降下ポッドが仕入れてくる受動情報は明らかな異常を検知していた。

 『降下軌道・・減速開始まで、あと一分。』

 

 いろいろ考えてみても始まらない、どうせ5分後には地表に着く。何事も現地に就いてからにしよう。対空砲火も上がってこない所を見ると、死ぬ心配はしなくてもいいらしい。

 諦めの気分で外部映像を確認する。どう見てもオメガ03の景色では無かった。

 やれやれ・・・戦場ではなさそうだが、ヒトの気配も無さそうだ。それに、降下地点は平原だった筈が。雪が吹雪く山脈とは・・・運があるのか無いのか・・。

 

 考える事を放棄して、着陸の衝撃に備えるヒデトだった。

 

 

 「おいおい・・・ほんとに何にもないな・・・。」

 見渡す限り、雪・雪・雪・・・こんな豪雪地帯は地球を離れてから見た事が無い。降下ポッドから出て、地表に脚をつけ全周を全センサー機器で探査してみたが、明確な反応の様なモノは無かった。

 軌道降下戦だと思って降下してみたら、目標の惑星が代わっていました・・・アホか、自分自身の考えにしても脱力感が襲ってくる。

 戦場での対処法などは腐るほど脳内に叩き込まれていたが、こんなファンタジー小説みたいな展開には常識が抵抗していた。

 それでも、何とかして原隊と連絡をとり復帰しなければならない。

 

 

 「おいおい・・?!こんな状態でも戦場の事が気になるのか?呆れたもんだ。そんな風に創造したっけかな?」

 戦場から思考の方向が変わらないヒデトに対して、まったく検知され無かった存在が語り掛けていた。

 

 「誰だ?」

 センサー類が何も反応を示さない存在に対して、瞬時に向き直りスメラギ社製12式強化ライフルを照準する。

 こんな異常地帯で、異常な事態に対しても素直に躰が反応して臨戦態勢を取ることに満足を覚えていたが。こんな距離まで接近を赦したことに舌うちしかけていた。

 

 「物騒なモノを人に向けるなと教わらんかったのか?人類ってのは随分野蛮に進化したもんだな?ええ?」

 ヒデトに手を向け。銃口を外す事を要求するような仕草をする。

 

 身長198cm。浅黒い肌。全宇宙プロレスのレスラーの様な肉体。この極寒の中、何処かの坊主の様に作務衣を着ていて。履物は、なんと下駄!雪原に埋没しているであろう脚は、雪原の『上』に載っていた・・・少なくとも自重があるモノならば雪の中に脚が埋まる筈・・。センサー類をフル稼働してみても、存在が感知できるのはカメラアイからの画像情報のみ。

 短く刈られた金髪の頭髪に、うねるトライヴァル模様が刻み込まれていて。精悍さを感じさせる顔にはラウンド・ミラー・サングラスが輝き。口元にはニヒルな笑みが浮かんでいた。

 

 「そう言われてもな・・・?真面目に人生に取り組んだ結果としか言いようがない・・。まずは、こちらから名乗ろう・・。」

 上から目線の物言いに笑いが吹き出しそうになっていた。おいおい?!人生ってのは随分劇的だな?

 

 「知ってるよ。タカハシ・ヒデト。一応、『神様』やってるんでな?おっと・・変換を間違わないでくれよ『髪』じゃないぞ?『神』だ。」

 作務衣の懐から葉巻を取り出し、指先から出した炎で火をつける。

 

 「別に誤変換なんてしねぇよ・・。髪が薄いのは今に始まった事じゃないしな・・。で、『神様』が何の用事ですかね?」

 旨そうに葉巻を吹かしている妖しい黒人を見ながら、構えていた銃を下ろし。質問を飛ばす。滅茶苦茶な状況と物理法則を何処かに置き忘れてきた場面を見た事により、脱力感まで増してきていた。

 

 「なに・・・大した事じゃない?長い間『神』の仕事を自分の領域でしていたんだが、そろそろお役御免ってところで、コッチノ世界の御同業に呼ばれてね・・。まったく、これからニューヨークで入浴を楽しむところだったんだがな・・?」

 

 「何があった・・?」

 

 「おや・・流石に兵隊は違うね。気に入ったよ!流石、俺の創造物!アーメン!ハレルヤ!インシャーアッラー!ナンマンダブ!でも、最初は失敗作だったな・・。話が逸れた。コッチノ世界と俺の世界が繋がっちまったんだよ?まったく『魔法』なんてアヤフヤなモノを取り入れるから、くだらない事がおきるんだよなぁ?」

 

 「魔法って言ったか?其れにコッチノ世界って?」

 自称『神』の戯言に、聞き捨てならない部分があったので話を遮ってしまう。

 

 「全部聞いてから質問は受け付けるよ?最初に言ってなかったな・・・。要するに、コッチノ世界の魔法使いさんが時空を歪ませる『まほー』を使ってアッチの世界から『ゆうしゃ』を召喚したんだな。俺も『神』をやっていて長いが、出鱈目だよなぁ?笑っちまうぜ?!」

 空中に雪玉を二個浮かべ、それぞれにユビを指しながら状況を説明している。

 

 「それでだ、二つの世界だけだったら問題は起こらなかった。お隣同士『神』だから、『手違いが起こりました。召喚された者達はコチラの管理下に無いので、何とかしてください。』とかな?で、済むはずだったんだが。その『まほー』の影響がオレの世界にもあった訳だ?」

 肩を竦めて、呆れた仕草を行っている。

 

 「ほんでもって、その影響がピンポイントでお前さんに降りかかってきたわけだ?ユー・あんだぁすたん?」

 ヒデトに対してビシィイっと、音が鳴る様な勢いで人差し指を向ける。

 

 「『神』様さぁ?俺は、元の世界に還れるのか?」

 

 「悪いな。コッチノ世界で力を行使するのは神法違反でな・・。免許停止になっちまう。だからぁ、その答えはノー!自分で探してくれ?でも、還れない訳じゃない・・・はず・・。」

 自信が無いのか、ヒデトから視線を外し後ろを向いて山脈の頂きに顔を向ける。

 

 「『神』のくせに頼りないなぁ?じゃ、他に何か手伝ってくれることは無いのか?」

 

 「無い事も無い。『加護』ってやつを授けても良いって事になった。コッチノ世界の『神』も免停が怖いらしい。あ、三回目だから累積で免許取り消しか?『まほー』が良くなかったかもしれないな。でだ、『加護』は付けるが『有料』だ!『ポケット』って加護だ!」

 

 「金とんのかよ!てかっ、手持ちないぞ?」

 

 「いや、金はコッチノ世界のものでいい。『ポケット』って念じればウィンドウが開いて、お前が持っている装備や服装等を自由に出し入れできるし、装備や武器・防具は瞬時に身に着けた状態になれる。便利だろ?肝心なのはここからで、お前さんが着けてる機動強化装甲外骨格(スーツ)や武装なんかの補給・整備品には金が掛かる。試しにウィンドウを開いてみな?」

 いつの間にか取り出したのか、古式ゆかしい指示棒で。これまた古いホワイトボードに黒インクで書き込まれた文章と説明図を指し示しながら説明する『神』様。

 

 『神』の説明を聞きながら、『ポケット』と念じてみる。スーツのホログラフィックディスプレイ上に古めかしいウィンドウが出ていた。

 

 「そう、それだ。今回は機動強化装甲外骨格(スーツ)を装備しているからディスプレイ上に表示されるが。普段は眼前の空間に投影される仕様だ。装備・アイテム・商店で項目が並んでいるだろう?其処の焦点にポインターを持って来て決定だ。」

 ご丁寧にこっちと同じようにウィンドウを出している。操作はゲーム用のコントローラーだ。

 

 「おい?これの仕様だったら商店って念ずればいいんじゃないのか?初期の頃のRPGかよ?!」

 明らかに、無駄な手順を踏ませる仕様に疑問を感じて、ショートカットを設定するように念じる。

 

 「わかってないな・・?様式美ってやつだ・・お約束だ?その商店をよく見てみろ。各項目ごとに値段が設定してあるのが分かるか?金額が載っているが、この世界の通貨でなくても価値があるモノなら何でもいい。例えば宝石や貴金属、貴重な動物の部位なんかでも構わない。それらを、ポケットで『収納』すると価値が決められ売買できるようになる。いちいち、解体しなきゃいけないがな。それと、初期装備品を除いて500kgまでが制限重量だ。これも表示が出ている。」

 いかつい顔に、笑みを浮かべて答える。

 

 「本当に、RPGになってきたな・・・。で、金額の単位が円になっているんだが?」

 ウィンドウを、あちこちいじりながら尋ねる

 

 「コッチノ世界には統一政府なんて無いらしいんだわ?だから便宜上、円になってるだけだ。『収納』してみれば勝手に変換される。詳しくは『ヘルプ』を参照してくれ?ユーザーフレンドリーになってるはずだ。それに、そろそろ干渉できる時間が少なくなってきた。」

 作務衣の中から懐中時計を取り出して、時間を確認する『神』。

 

 「わかった・・何から何まで、世話になったな・・。なんとか生きて還るよ。」

 ウィンドウを閉じて、『神』様に視線を向ける。

 

 「そうかい・・?物分かりが宜しくて、大変に結構だ!!分かっていると思うが『復活のじゅもん』も無いし、いちいち『死んでしまうとは・・・』とかないからな?」

 

 「兵隊に言うセリフじゃないな・・。」

 中々に義理堅い『神』さまだ。

 

 「それならいい・・それと、お前さんが降下に使ったポッドはこっちで処理しとく。コッチノ世界には在り得ないモノだからな。その代わりに、食料と初期装備一式を『タダで』ポケットに入れといた。兵隊として強化されたお前さんならこれで十分だろう?」

 

 「ああ、構わない。でも、機動強化装甲外骨格(スーツ)が在れば大抵は問題は無いんじゃないか?」

 『神』の気遣いが気持ち悪く感じられ、その真意を探ろうとする。

 

 「おや?さっきも言っただろうコッチノ世界では『金』が掛かるってな?おっと・・時間だ。それじゃな?せいぜい頑張ってくれ。ニューヨークの後は、生物管理委員会に出なきゃならん・・。いそがしいんだ?」

 

 そう言葉を遺すと、霞の様に消え去っていた。

 

 と、同時に猛烈な寒さが襲ってくる。今まで装着していた機動強化装甲外骨格(スーツ)が消え去り、全裸で雪山に取り残されていた。

 

 「なんだぁ?!何にもないぞ!!!??」

 即座にポケットを念じて、装備・機動強化装甲外骨格(スーツ)の項目を呼び出す。

 

 そこには、『機動強化装甲外骨格(スーツ)装備・・稼働10分あたり1万円。買い取り、一千万円。』と表示してあった・・・。

 

 「あの野郎・・・?資本主義の権化!!クソニ☓ロめ!!なにが『神』だ?!ふざけんなぁ・・・・!!!」

 

 雪が降り積もった山脈に、『薄い』髪のオジサンの絶叫が響いていた・・・。

 

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