軌道降下兵   作:顔面要塞

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ホントに遅れて申し訳ございません!!

イイわけは・・・ないですぅ!!!

天皇が交代しても、休みなんて無いんだぁ!!!くそっ!!俺も皇族をいっちょハめ・・・・・・

止めましょう・・・マジでコロコロされかねない・・・あっちの世界にゴーンしたくないですから・・・

これから本格的に蔵人さんの奴隷ライフを書き込んでいきたいものですねぇ?はいぃぃ・・

嗚呼・・鬼が語り掛けてくる 異世界ゲッチュウ!!

では、また。


港町

天高く輝く陽に照らされた紺碧の海に点在する数百もの群島と、大陸から突き出したような形状を持つ半島によって構成されるアンクワール諸島。

 

 北国では考えられないような豊富な海の恵みと、一年を通じてあまり変動の無い安定した気候が生み出す雰囲気が、この地方一体の時間をゆっくりとしたものへと変えていた。

 海に点在する様々な形態の島々は、美しいサンゴ礁に囲まれて外海から打ち寄せる大きな波を打ち消し。穏やかな漣を美しい白い砂浜に届けていた。

 

 しかし、その自然の美しさは人の手が入っていない証左であり。美しく穏やかな雰囲気も上辺だけの事であり、海中・海上・島内と熾烈な生存競争が行われているのであった。

 

 今日もまた生存競争に敗れた者達がギラツク陽の光の下、敗北の象徴である屍を晒していたのであった。

 

 

 「しかし・・・漂流して流れ着いてみれば、カモノハシ狼もどきの襲撃を受けるとは・・。この世界に転移してからコッチ・・一人きりだと良い目に遭ったためしがないな?さてさて・・・食料に困っちゃいないが、仕留めた魔獣共をどうするか・・?取りあえず氷精で凍らせて保存して、食料バックに放り込んでおくか・・」

 

 奇妙な光沢を持つ、両生類の皮膚を思わせる黒い衣服で身を包んだ人種が。これまた見た事も無い兜の中から、ため息交じりの独り言を漏らしていた。

 

 不思議な事に、砂浜で打ち倒された海狼達の遺骸は、男が近づいてリュックの様なモノの口を開けると一瞬で消え去っていた。

 

 「秀人の『ポケット』程ではないけど、俺の『食料リュック』もまんざらでもないな・・。おっと・・そう言えば、なんぞ河童と半魚人みたいなのが居たな?ヒト種なのだろうが、生きているかな?」

 

 仕留めた魔獣達を凍らせ、せっせと食料リュックに放り込みながら。成体魔獣が咥えていた海棲ヒト種の事を思い出し、二体の人種が放り出されている地点へと向かう。

 

「その前に…周辺警戒が重要だったな。コイツを展開してっと…」

 

バックパックから取り出した球形のドローンを起動。林檎大サイズのドローンが、低音の羽音を響かせながら空に昇って行く。蔵人の上空50m程度で滞空して、索敵センサーを稼働する。センサーの稼働により様々な小動物が捕捉されるが、数が多い為に自分に向かって来る動体に対してのみヘルメットディスプレイに警告を表示させるように設定する。

 

「そう言えばヘルメットを展開しておけば100m程度は内臓センサーで索敵が出来たんだっけ…秀人にどやされるなぁ…大型動物も居なそうだ。二人の状況を確認するか。敵味方が判別できないから慎重にやらないとな…」

 

先程の魔獣の襲撃に対して、後手にまわってしまった自分の対応の拙さを誤魔化すように独り言ち。レイジングブルを構えながら歩き出す蔵人だった。

 

 

 

ボンヤリとした意識に、海鳴りの様な声が響いてきていた。優しさに満ち溢れた声だったが、少し急かす様な調べも加わっていたから。なんとか意識を保とうと肉体に覚醒を促すが、返ってくるのは強烈な痛みと鈍い反応だけだった。それでも外界の状態を見なければならない意識が働いて、目を開けて周囲の状況と自身の肉体に起きている事を確認しようとする。

 

「良かった…意識が戻ったのね!ウジナ!」

最初に目に飛び込んできたのは、幼馴染の心配する顔だった。

 

「ジュマ…?アレ…私達…海狼に襲われて…痛っつ!?」

慣れ親しんだ海亀系人種のジュマが、安心した表情を浮かべる。身体を起こそうとするが、強烈な痛みに叫びが出てしまっていた。

 

「大丈夫。安心して。もう魔獣達はいないわ!私達、助かったのよ!」

「うん…意識が戻ったのか?待ってろ、命精で治療するから。まだ魔力は回復しきっていないだろうから、ゆっくりとだがな。それと痛み止めも使うから肉体の反応が少し鈍くなるが、後遺症は出ないから安心してくれ」

 

アンクワール諸島では珍しい白い肌を持った人種が、ぶっきらぼうだが優しさを含んだ声で安心させる様に話しかけてくる。自分の腕の部分に微かな圧力を感じて、その部分を見ようとするが。痛みによって顔を動かすことが難しかった。

 

「誰なの…ジュマ?」

警戒していない幼馴染に声をかける。心なしか痛みが和らいできていたが、体の反応も鈍くなってきていた。

 

「三日前にあった精霊の悪戯で、船が難破して漂着した北方のハンターで、八つ星のクランドさん。そこで私達を襲った海狼を倒して、救出してくれたの。貴女が意識を取り戻す少し前に目覚めて、お互いの素性を話したの。もう少し休んで?私よりも多くの精霊魔法を使ったんだから、消耗も激しいわ?体調を整えたら村に帰りましょう。チャイとパンとクムも探してくれてるでしょうから、すぐにでも帰れるわ」

慈愛を含んだ声で諭すように語りかけるジュマ。自分の不甲斐なさを痛感しながら、今はジュマの言葉に従う事にする。

 

「お話中に悪いが、御仲間が来たようだ。コイツを見て御仲間の三人か確認してくれ?」

 

二人の話を終えるまで待っていた蔵人が、ドローンが探知した船と人種三人の映像をヘルメットの外部出力機能を使って二人の前に投影する。

 

「チャイの船だわ!それにパンとクムも居る!?無事だったのね!」

摩訶不思議な装置から投影される映像を見たジュマが喜びの声をあげる。

 

「ウジナ!私達、帰れるわ!!ありがとう!クランド!私、迎えに行くわ!どっちの方角?…わかった!すぐに連れてくるわ!御礼もしたいから、村によって行って!お客さんも久しぶりだから!チョット待っていてね!それじゃ!」

映像を確認した途端、何処から元気が溢れてくるのか、凄まじい勢いで喋りきり。クランドの返答を待たずに海に入って泳ぎだすジュマ。

 

「やれやれ…魔獣に襲われていたのに、異様な元気さだな。ウジナさんだったか?いつもあんな感じなのかい?」

凄まじい勢いで船に向かって行くジュマを見ながら、呆れたようにウジナに聞く蔵人。

 

「ええ、いつも元気にあふれていて。皆が彼女を好きなんです。クランドさん…で宜しかったですか?私達の方言にもお詳しいのですか?」

蔵人に尋ねられて答える海棲人種のウジナ。さらに、アンクワールでもキツイ方言が入っている自分達の言葉を理解して流暢に話す蔵人に、不思議そうに尋ねる。

 

「まぁ、チョイと訳ありでね?そこら辺は詮索しないでくれると助かる」

「すいません…気になったもので…私達海棲人種は基本的にゆったりとした性格ですから、詮索する様な人はほぼ居ません。私は生来から好奇心が強いもので…海狼に襲われたのも、それが原因だと思います…」

「好奇心は猫をも殺す。と、言うからなぁ?助かったんだ、次に活かせばいい話だ。好奇心が無ければ成長も無いしな。あれだけの怪我をしていたのに回復が早いな?」

気遣いなのか、好奇心なのか。ウジナの回復の早さに着目して、話題を変える蔵人。

 

「ええ、基本的な人種よりも回復は早いですね。その代わり、陸に上がると動きが少し鈍ります。だからテリトリーはもっぱら海の近くです」

「難破した船にも何人か船員で乗っていたな…溺れることはなさそうだが…」

「私達、海棲人種でも『精霊の悪戯』に遭遇すると祈るしか無いですからね。クランドさんは運が強いのですね?」

「今までも人生を振り返って見ても、運が強い場面はあまり無いが…確かに荒れ狂った海から助かったのだから、あながち捨てたもんじゃ無いな?さぁ話はこれぐらいにしよう。御仲間がやってきた様だ?起きれるか?慣習で雄が触って不味いのなら手を貸せないが?」

「大丈夫です。ありがとうございます。ジュマではありませんが、御礼はさせて頂かないと!是非、村で歓待させて下さい」

「気持ちだけで十分だ。この辺りの地理と、ハンター協会に案内してくれれば有り難い。ツレも流れ着いているかもしれないから、協会に一報を入れたい」

「それなら、協会に行った後。私達も捜索に加わります!」

「貴女達にも生活があるだろう?だが、負担にならない程度だったらお願いしたい。宜しく頼む」

 

蔵人の願いに、真摯な態度で頷くウジナ。そのウジナの耳に聞き親しんだ村の仲間の声が聞こえてきていた。

 

「さぁ行きましょう!クランドさんのお仲間を探しに!」

 

蔵人の返事も待たずに駆け出すウジナ。そんな様子を見て、亜人種と言われる人種の回復速度に呆れながらついて行く蔵人。死んでいるイメージがわかない二人のツレの事を考えるが、気にする様なタマじゃないと思い直して合流して無事を確かめ合っている集団に向かうのだった。

 

 

 

「チャイ・カオサイ。七つ星だ。村の仲間を助けてくれて感謝の言葉しかない。」

「クランド。八つ星。何、相身互いさ?ハンターなら当然だろ。逆に漂着した身としては、ヒトに会えるだけでも有り難い。すまんが、この辺りの地理を教えてくれると助かる。ついでに協会支部に連れて行ってもらえれば、なお助かる」

岸辺につけた船の周りで、再会に喜びを爆発させている男女四人の姿を見ながらハンタータグを見せ合う二人。軽く雑談に講じながら、今までの事を話し協会支部で連絡を入れなければならない連れの事も伝える。

 

「勿論だよ!しかし、漂着した様には見えないが?」

「そんなに変かな?」

「いや、すまない。この辺り一帯を狩場にしているから、何人もの漂着者を見てきたけど、ここまで元気な人間は初めてでね。他意は無いんだ」

「北方の秘薬のおかげかな?運んでもらえる御礼に御一つどうだい?」

ひと通りの挨拶を済ませて、雑談に講じる。いつのまにかチャイの周りには四人の男女も集まっていたから、バックパックから人数分の固形栄養剤を取り出して渡すクランド。

 

摩訶不思議な、見慣れない包装紙に包まれた棒状の栄養剤に怪訝な表情を浮かべるが。クランドの説明を聞いて食べ始めれば、少し甘さを含んだ絶妙な味付けに食が進み。あっと言う間に食べきってしまっていた。

 

「不思議な食べ物だけど…量の割には満腹感があるね。いや、すまない。朝から今まで必死に二人を探していたものでね。正直、二人は無理かと思い始めていたから…無事なのが分かると、空腹なのを思い出して。有り難う」

「そんなに感謝されるほどでも無い。此方こそ恐縮してしまうよ、北方は世知辛くてね。それより早く此処を離れた方が良い。二人を襲っていた狼もどきが現れるかもしれない?」

「そうだな、村に帰ろう。二人が無事な事を伝えなければ。協会支部もあるから連絡が入っているかもしれない。今朝方、慌ただしく人の出入りがあったから、今回の事であればいいんだが。さぁ、船に乗ってくれ!」

 

手作り感溢れる木製の船は両側にフロートが付いていて安定感はあったが、船を見た瞬間に船酔いを思い出して気分が悪くなる蔵人だった…

 

 

 

 

 

 「さてさて・・・薬の痕跡を辿って来てみれば、北方の雄であるアルバウム王国にたどりつくたぁなぁ?正義や秩序を謳っている割には、何処の国にも暗部が見え隠れしているもんだ」

 

 穏やかな波音が聞こえる岬に建つ煉瓦でつくられた灯台の下で、不思議な装備を纏ったハンターらしき男が独り言を呟きながら、海を行き交う帆船や漁師の操る小舟を見ていた。

 

ミド大陸。アルバウム王国にある港湾商業都市ミゼラ。伝説の勇者ミドの魔王討伐に付き従った大海賊ミゼラの名を冠した大陸随一の貿易都市である。

 様々な国家の大小様々な船が行き交い、北方では珍しい南の一品やサウラン大陸の摩訶不思議な物品。東南大陸の龍華国(ロンファ)産の美しい絹や工芸品が溢れかえり、昼夜を問わず活気に満ち溢れていた。

 

 「貿易で栄える港湾都市が流通の拠点になるのは、どの世界でも一緒だな。連邦捜査局と一緒になって摘発した犯罪グループの事を思い出すなぁ・・・」

 

 麻薬や興奮成分をもった常用薬が出回るのは、古今東西を問わず・・・いや、異世界を問わず変わらない。各星系に広く分布した禁断症状が軽いリド麻薬。その収入によって恒星間でひろまった新手の宗教組織が、終末思想に染められて大規模なテロを敢行しようとした事を突き止めた連邦捜査部が摘発に乗り出したのだが。麻薬による豊富な資金で武装し、教義と麻薬による洗脳でブッとんだ教団構成員が問題視され。豊富な実戦経験と重武装の軍に突入の依頼が舞い降りて派遣された事を思い出していた。

 

 人を煽ることが上手いだけの男が始めた末世思想の教義。『繁栄を享受する者達よ!いずれは全能の神が・・』で始まるお決まりの文句で信者を増やしていき、そこそこの信者を獲得したが、そこから先は伸び悩んでいた。

 組織を拡大しようとカンフル剤の様に、更に過激な思想に取り込まれていき。そこまで組織を拡大しようと考えていなかった教祖を殺害(勿論、悪辣な連邦政府の捜査機関に殺害された事になり。殉教の贄になっていたが)

 教祖ですら、人集めの為だけの末法思想だと考えていた浄化の教義を実行に移そうと、なりふり構わず動き始めたのである。

 

 何事も始めるにはお金が要る。それは物品を売買して成り立つ資本主義の教義では当たり前の事。それは信者を多数抱える教団にしても変わらない。手っ取り早く資金を稼ぐには非合法の方が良く、かつ大量に手に入れることが出来た。

 教団が麻薬に辿り着くのに数瞬のためらいも無かった。全ては『浄化された世界の為・・』狂人に説法は無駄であった。

 

 勢力の拡大は誰かの目に留まる。それが非合法なモノであればなおさらであった。

 

 内偵を進めていた連邦厚生省麻薬取締局が摘発の為に乗り出し、各星系に散らばった教団の支部は捜査を受けて潰されていった。

 しかし、教団が聖地として購入した資源を取りつくした空っぽの小惑星(廃棄を決めかねていた星間企業により、月軌道に置かれていた)に立てこもり、最後の抵抗を試みたのである。

 

 末法思想に染められた狂人たちを説得するのは無駄である。有史以来、数限りない似たような教義に対応してきた連邦の決断は早かった。結論は以下のとうり。

 

 『末法の思想を取り除くのは不可能。対処法は逆洗脳の別人格にしてしまうか、彼等の信ずる場所に送る事だけである』

 

 連邦に『保護』された後に、逆洗脳が不可能なほど『信者』になっていたものは意図的に『解放』され聖地に合流する。なんの事もない、『散らばると面倒だから一緒くたにして吹き飛ばしちまおう』とゆう事であった。

 

 問題になったのはその方法で。小惑星ごと艦砲射撃で吹き飛ばすのは周辺にデブリが広がって問題。それじゃ陸戦隊に毒ガスを持って行かせて『消毒』しちまえ。生き残りが出たら面倒だから、全滅で。

 

 で、呼び寄せられたのが宗教に毛ほどの有難味を感じていない日系人種で構成されていた俺達の部隊。かなりの実戦を積み重ねていた事もあって、取り乱す様な事も無く淡々と『消毒』をこなしてゆく。

 女子供も大勢いたが、任務を阻む要素にはならなかった。(内面では思う所はあったが、訓練と実戦によって妙な意味でタフになった部隊員に情けを訴えても無駄であった)

 

 かくして『空っぽ』になった小惑星は反応推進を取り付けられ『大いなる旅』に旅立っていったのである。後日『消毒』の模様がネットに流れ、自分の部隊が抹消されたのは、また別の話だが。

 

 思い出すのも忌々しい話だったから、薬の用語に反応してしまう自分が居た事が驚きだった。少なくとも『消毒』の最中に見かけた『薬』でボロボロになった女子供を記憶した事が残っていたのかもしれない。

 

 なにはともあれ『薬』にはいい思い出が無い。それもあってドルガン内務省特隊に協力しているのだが、勇者が絡んでいるかもしれない事柄が濃厚になってきていた。

 同じ『異世界』出身。蔵人の事もあって、ほっとくわけにはいかないし。勇者がらみで言えばハヤトの仲間のエリカとクーの名前が思いがけずに出て来ていた。

 

 ここまで捜査をしてきて、辿り着いた商人を尋問した所。出て来たのがアルバウム王国のある有力貴族の名前と所業。

 勇者達を国益の為だけに使い潰そうとした者達の首脳。力の無い勇者は保護の名目の元、自分の息子に与え玩具にしてしまった奴等。あわよくば勇者が孕み、幾ばくかの能力を持った子が生まれてくれば儲けもの。そうでなくても飼い殺しにして、政局の駒として使えば何がしかの役には立つ。

自分の陣営内でおおっぴらにこなすには、噂が立ち非常によろしく無いので非合法組織を使う。権力や商業界では当たり前のように行われていることに巻き込まれた勇者達。

召喚されて右も左も分からない状態で権力闘争に巻き込まれたのだから、高校生が中心の召喚者達にはどうすることもできなかったのである。いくら『勇者』の能力が存在していても、其れ等を『活かす』のはまた別の事であり。社会人である三人の先生達にしてから、思想や考え方に差異があるのだから纏まるには時間がかかった。

 

そして、権力の魔力に取り憑かれたもの達にとっては非常に都合の良い状況だったのである。あながち、ハヤト君の言葉にも間違いはなかった。で、エリカちゃんとウサミミ無表情お嬢ちゃんが犠牲になっていた訳だが…コイツがまた筋金入りの変態で。金と権力を使って、今までに何人もの人間を遊び壊していて。際限のない獣欲の犠牲になったのが、あのお二人さんだったのである。

 

 結局、ハヤト君が救い出すのだが・・薬を使って奴隷の様に『使っていた』のが判明した。自分の所業がバレない様に薬を使用し、本人達に記憶を曖昧にして証言ができない様にする悪辣っぷり。捜査の最中に捕えたボンボンの『プレイ』を手伝っていた拷問者が吐き出した内容が…やめておこう…いつぞやの対戦の時にナノマシンで『診た』エリカちゃんの肉体の損傷が酷さを物語っていた。

 

モチロン、ハヤト君達は知らない…薬と命精魔法、『プレイ』を交互に行い。外見的『キズ』は無かったからである。ボンボンにしてみても、『オモチャ』は『新品』の見た目を持っていた方が良いし。万が一エリカとクーが救出されても、『所業』の痕が残っていなければ、後はどうにでも言い訳はたった。

 

救い出した場所も『冷たい砂漠』にある古代の砦跡。ハヤト君達の動きを知ったボンボンは自分の所業を隠す為、非合法な組織にエリカちゃんとクーその他の奴隷達の身柄を売り渡し、言い逃れの口実としていた。ハヤト君が踏み込んだのは、まさに貞操の危機一発の状況に『見えた』状態だったから。自分が救い出した事に微塵の疑いも抱いてはいない様だった。

 

勇者側に立つ権力者達が派遣した捜査班は内偵を進め、ある程度までの証拠を掴んだのだが。これまた、勇者達を美味しく使いたい権力者によって、反勇者側との取引材料に使われて公にはならず、実行犯の立場もあって甘い処分で済んでいた。捜査の過程で手に入れた薬が思いの外有用で、取り締まる捜査局の方も薬を使って尋問なども行っていたから、追及が緩やかになってしまった・・なんて事も分かっていた。

 

 更に救いが無いのが、その薬の作成に関わっていたのが『錬金術師の弟子』の能力を持つ、同じ境遇の勇者だってのがどうにもならない話だった。作成に強制的に関わらされたのは『尋問』によって分かっていた。

取り調べには非公式に連絡を取った勇者のオッサンセンセイも同席してもらった。勇者達の中でもいち早く現地人と融和し、生徒を守る信念で生き抜く決意をしたのは、一度目の接触と各種偵察機材を使った内偵でわかっていたから話の進みは早かった。で、この先生。取り調べが進むにつれて温厚そうな教師の顔が阿修羅の如く変貌したのは恐れ入った。

 

 協議の末、『錬金術師の弟子』の勇者は不問。有力貴族に関しては勇者支持の立場を保つことで取引。で、アホのボンボンに関しては・・・・

 

 「目に見える形での報復。そんで・・目の前を行き交う船に乗っているアホの始末は、俺に託された訳だ・・・なんか、都合よく使われている気がしないでもないが・・報酬も出るしなぁ・・勇者やアルバウム王国の協力も取り付けられたし。蔵人が、余程アホな事をしでかさない限りは・・・?まぁいい・・仕事にかかるか・・」

 

今までの事を思い出しながら証拠となる映像を残すために、隠蔽状態で目標の大型帆船の周りに浮遊させているドローン達に撮影を指示する。各ドローン毎に角度、距離、俯瞰、遠景、近接など様々な映像が撮影されてヘルメット内にホロ表示される。

 

今日はボンボンの誕生日で、海上クルーズで盛大に祝賀会を行うらしい。ボンの演説と乾杯の合図で『魔薬』の少量入った酒を酌み交わし、真昼間から用意された『相手』に欲望の限りを尽くす…はたから見るもんじゃ無いな…

 

 

指示された殺害方法は、今後この様な事を仕出かすバカがでない様に、誰の目にも明らかな形で行う事。

 

 勇者たちに仇名す事がどれだけの事態を引き起こすか教訓として残す為に、出来るだけ派手に残虐に行う事。

 

 この殺害を行ったのが勇者に連なるモノである事をそれとなく教える為に、勇者に関わりのある痕跡をわざと残す事。

 

 更には、周りにいる取り巻きや傭兵・奴隷達に危害を加えずに本人だけを殺害する事。

 

この世界の住人なら、なかなかに厳しい達成条件だが。異世界科学チートを持っているオッサンには問題にすらならない。条件の一つである、派手に残虐ってのが一番難しい。その手の趣味がない為に、殺害方法に思い悩んだが。それとなく、鎮圧した狂信者達の内部リンチを思い出し、其れ等を参考にする事にした。

 

「おんなじ信者同士でも滅茶苦茶な事になってたな…アレじゃ人なんて救えんぜ。おっ始めるかな」

 

隠蔽モードで対象に張り付かせていた浮遊ドローンから、生体腐食剤の入った弾頭が標的に向けて照準される。圧縮されたガス圧で射出される為、貫通力は大して無いから護衛達が展開している障壁や、各種の防護魔法を突破する事はできない。

 

自分が持っている遠距離投射兵器で障壁や護衛達を排除する事も、前提条件に違反するから採用出来ない。では、どうするか?

 

「カンタンなこと。外からダメなら、内側から」

 

ボンボンの殺害が決定した頃には、特隊と偵察機材によって標的の行動が詳細に調べ尽くされ、周囲に影響を及ぼさない時期と場所が判明する。

 

殺害の条件に含まれた方法を検討して、下準備を行う。護衛連中は筋金入りの猛者ばかりで油断や手抜きは無かったが、出入りの商人や従者、縁者にはつけ込む隙が大いにあったので、抱き込む事に成功。大型帆船の倉庫に、卵に擬態させた形で小型ドローンを搬入させたのだった。

 

 ボンの船が誕生パーティーに伴って出港。しかし、本人を含めた護衛や郎党、メイド達は乗船していない。沖合に出たところで、専用のふ頭から自家用の小型帆船で合流し乗り込む念の入れようだった。

 

 俺達だけではなく、他の連中からも相当な恨みや憎しみを受けている様だ。事実、潜り込ませていた特隊の連中も他の組織の諜報員や裏稼業と思われる人物に接触していた事からも推察できる。

 

 「さて・・・上手く動いてくれよドローンちゃん達?」

 

 タマゴに擬態して休眠状態に入っていた小型ドローン達に、浮遊ドローンから経由された始動命令が送られ、活動状態に移行。卵の擬態を解除して多脚を展開。蜘蛛型に変形して、あらかじめセットされた命令に従って目的位置に移動する。

 

 帆船中央の甲板でつつがなく進行している宴会場の中に潜り込む。外部からの襲撃に警戒している護衛連中は気づいていない。

 搬入物も調べていたが、料理で使われる卵の数は膨大だから手が回らない。それに、卵が変異してドローンになるなんてお釈迦様でも気づかない。

 

 ドローン達が所定位置に付き、背中に背負ったスタングレネードの始動て順に入ったことがシグナルによって確認できた。

 

 「・・・・で、やっぱり来たのか・・・ハヤト君・・・?」

 

 背後に二人分の気配が漂い、青白い光が瞬きはじめ、その気配が人の形を取り始める。

 

 召還された『勇者』達の一人が持つ『加護』。『転移門の門番』が発動した証だった。

 

 「・・・・忠告は受けたが・・・決着を見届けるのが必要だと感じてな?」

 

 ハヤトの言葉が終わらない内に『転移門の門番』の『勇者』は、転移した場所に戻っていった。本来なら、アンクワール諸島で兆候を見せ始めている魔獣達の蠢きを調査するために、王都で出発式が執り行われている真っ最中だった。

 

 「・・・・?気のせいかな・・髪も伸ばしているのか?・・・・?それに・・その・・・?」

 

 「女性っぽくなったか?って事かい?」

 

 先程から感じていた得も言われぬ異質感が説明できずに、ハヤト君に尋ねてみようと疑問を口に挙げるが。その後を受ける様に、変な艶を含んだ声音に変わったハヤトが秀人の疑問の先を口にする。

 

 「・・・・・ああ。その・・あれか?やっぱり・・・」

 アレルドォリア山脈で起きた『事件』に思いを巡らす・・・ちょっと股間がムズムズしはじめる秀人・・・

 

 「そ!直接の原因はあの事件だと思う。あの後にアカリに渡された貴方の薬で回復はしたのだけれど・・・」

 

 「・・・そ・・それは重畳・・」

 

 「普通に回復はしたのだけど・・・命精と生体回復促進剤が変な作用を及ぼしたのかも・・モノはあるのだけど・・肉体に変化が訪れて・・・一か月寝込んで起きたら・・両性具有者の様になっていて・・」

 

 「・・・・なるほど・・・でも、精神の動揺は見られないみたいだが?」

 

 「流石に二か月もすれば慣れるかな・・。この事実を知っているのはパーティの仲間達とアオイ先輩だけかな?まぁ、動揺している暇なんて無い程『勇者』を必要としている事が多くて、落ち込んでいる暇なんて無かったのもあるしね。それに、慣れてしまえば肉体の変異も受け入れるしかないし。考え方もソフトなものになっていたし・・?」

 

 妙に艶っぽい仕草に動揺を隠せないまま、ハヤトの話に聞き入る秀人。

 

 確かに生体促進剤の副作用で一千万人に一人の割合で女性化が発現する者もいたとゆうが・・・まさか、その存在が目の前に居て。間接的に彼?(彼女?)の人生の軌道を変更したのが自分の『能力』だった事に思考が追い付かないでいた。

 

 「・・・・ああ、それなら何より・・・。で、出発式はいいぃのか・・?」

 

 「ああ、そちらは大丈夫。貴方の『商店』で購入した変装セットで誤魔化しているから・・凄いモノだね科学の力って?見分けがつかないよ?」

 

 アカリちゃんが面白がって購入したモノの中にそんなものが入っていたっけ・・。結構な買い物をしていたけど、プライバシー保護の観点から俺でも購入品の項目は確認できない。

 

 「・・・まっ・・まぁ、いいや・・で、本題なんだが・・これがスイッチになる。で、コイツを押せばプログラムに従ってドローン達が行動し、護衛連中を気絶させ、障壁を取り払う。そんで、浮遊ドローンから標的に衣服腐食剤を吹きかけられ、真っ裸になり。ついで、股間・左腕・右腕・左足・右足と順次に成体腐食剤を打ち込まれ。これまた順番に凄まじい苦痛を伴って、順繰りに腐り落ちてゆく・・最後は殺害するか、生かしておくか・・あんたが決めてくれ?殺害するなら、もう一度押せ」

 

怪しげな色香まで放つようになったハヤトに、ドローンの戦闘用プログラム起動スイッチを渡す。

 

 「わかった・・・・怪訝な表情になっているね?そんなに変な体型になっているかな?」

 

 秀人の何とも言えない表情に気付いたハヤトが、不思議そうな顔つきで首を微妙に傾げながら尋ねる。

 

 前回に見た虎狼のような剽悍さは鳴りを潜め。中性的な何とも言えない艶やかさが秀人の視界に飛び込んで、脳内に焼き付く。

 体型も、身長こそ変わらないが。豊かに膨らんだ腰回りや、見事な曲線を描いて到達するウエスト。更には皮鎧では抑えきれない主張を始めた胸のふくらみが見て取れた。

 

 「・・・・・いや・・見事な・・何でもない・・決断してくれ?過程を見てから判断してくれて構わない」

 

 「私達が関与している様な暗示はないのか?」

 

 「スタングレネードが炸裂し、衣服を溶かした段階で参加者に見える様にホロ投影を行う。姿形はエリカやクーの姿形に似せている。今回の行動に合わせて奴の所業が『噂』になって広まって行く。その過程で、皆は考える。『これは、勇者の怒りを買ったんだ・・』と・・他の下らぬたくらみを持っている奴等も、少しは大人しくなるだろう。君が考えている事に変な横槍も入らなくなるはずだ?」

 

 「・・・・・どこまでも知っているんですね?」

 

 「噂だけだ?邪魔などしない。召喚者にとっては君の考えが救いになるかもしれんし、還れないならば俺達も世話になる事もあるかもしれんしな?」

 

 「・・・用務員さんは無事なんですか?」

 

 「いろいろ修行したし、俺の世界の品も買っていったから酷い事にはなってないだろうよ?」

 

 そこまで言った所でハヤトがスイッチを押し込む。

 

 間髪入れずに帆船の中央部で閃光と爆音が響き渡り、様々な悲鳴が木霊する。ドローンから送られてくるライブ映像をホロ投影し、様々な角度から撮影された映像が飛び込んで来る。

 

 「酷いモノですね・・・・」

 

 護衛連中から障壁を掛けられ、多重回護のアミュレットを身に着けたボンボンはスタン効果を免れてはいたが。続いて投射された衣服腐食剤によりアミュレットごと衣服が解け落ち全裸を衆目に晒す。

 飽食と快楽を追求した肉体は醜く肥え太っていて、恐怖によって逸物はすっかり縮こまっていた。時間を於かずに放たれた生体腐食剤がいつもつに向けて飛び、内包された腐食剤が小さなものを凄まじい苦痛を伴って腐り落としてゆく。

 

 「ああ・・聞くに堪えないな・・」

 

 ライブ映像から流れてくる音声をカット。映像投影のみに設定する。各部位が完全に融け落ちるのを待ってから順繰りに発動。

 後に残ったのは意味も分からない奇声を上げ続ける不快な肉の塊だけが残っていた。そのまま放っておけば苦痛とショックで死んでいたかもしれないが、奇襲から立ち直った護衛達が救護に廻り、命精魔法で回復を行ってしまう。

 自分の職分を護ろうと護衛連中も必死であったから。何はともあれ対象の生命だけでも救おうと試みたのである。

 

 結果。奇声を上げ続ける不気味な肉塊の誕生であった。

 

 「これは・・・返します」

 投影された映像を見ながら、憑き物でも落ちたかのようにスッキリとした表情でスイッチを手渡すハヤト。

 

 「いいのか?」

 

 「あそこまでの事をしていただければ十分です。これからが本当の地獄でしょうから?そろそろ、還ります」

 

 そのタイミングを待っていたかのように微小な空間歪曲が観測される。『転移門の門番』が発動だ。

 

 「・・・ああ、それと用務員さんに会われることがあったら伝えてほしい事が・・・」

 

 「責任を持って伝える」

 

 「賠償の金額を減額して頂けないかと・・・そうですね・・半額程に。立場とゆうか、性別とゆうか・・変わってしまったので、思う様に稼げなくなりまして・・必要なモノも増えてしまって・・・。勿論、お望みなら別の方法での『賠償』も可能だと・・・」

 

 摩訶不思議な中性の色香を放ちながら、若干シナを造りながら秀人に頼み込むハヤト。

 

 「わかった・・・・今までの言動や行動は映像として記録した・・・蔵人に明確な返答をさせる。返事はハンター協会経由で・・しかし・・・そこまで変わるモノなのか?」

 

 「ありがとうございます・・どうでしょうね・・イロイロと変化して気づいた事も多いですし。ウチの仲間達は変化した私を受け入れてくれたのも大きいのかも・・正直、わからないですね?」

 

 二十代のはにかんだ美しくも凛々しい微笑みで、秀人の質問に答えるハヤト。穢れが落ちた清い透き通るような表情に、一瞬、心奪われる秀人。

 

 転移門が開かれると同時にその姿は掻き消えて、微妙な良い香りだけが残っていた。

 

 「・・・やばいよ・・・蔵人・・あれは、かなり危険だ・・・」

 

 ハヤトの残した言葉を振り払う様に頭を振る秀人。

 

 変な考えを振り払ってアンクワールに向けて出発しようと、灯台から港に向けて歩き始めたヒデトはハヤトのいた場所に書置きが在ることに気付く。

 

 「・・・・?ナンじゃこりゃ?なになに・・・?秀人さん。アカリから聞きましたがソッチノ世界の・・衛生用品が購入できるとの事・・伝えにくいのですが、アカリと同じものを購入したいのです。つきましては、協会から一か月分を発送して頂けると有り難いです。代金は、アルバウムを通じてお支払いいたしますぅ・・・?ナンじゃそりゃ?」

 

 あまりにも現実的な書置きに、冷静な思考が追い付かない秀人。中性的になり、女性の現実と理想を切り離す能力まで手に入れたらしい。

 

 「やれやれ・・・女って奴は・・・いや・・?どっちなんだ?・・・?追伸?支払いは・・・蔵人さんに提案した方法でも受け付け・・・・?!俺が受けつけんわっ!!!」

 

 綺麗に書かれた書置きを、瞬時に装備した機動強化装甲外骨格(スーツ)から展開したプラズマソードで塵も残らず消却して、装備を外す。

 

 へんな気分になった自分を叱りつける様に、歩みを速めて港に向かう秀人だった・・・・。

 

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