軌道降下兵   作:顔面要塞

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どうも~やっと書けました~

マジで、忙しかったぁ~

あれ?コレ、用務員さんですよねぇ・・・・

出てこない・・・・

ま・・・まぁ・・・いいよね?こんな回があっても・・・

今度は、ちゃんと蔵人でマス・・・・多分・・・

では、塹壕。お届けいたします!!

夏休みに、また会いましょう!!


塹壕

自然とゆう偉大な存在が、幾重にも巡る年数によって創り出した美しい山脈の景観。直線と曲線が見事に絡まり合い、言い知れぬ美しさを醸し出している。

 

今日もまた。一日の勤めを果たした太陽が、鮮やかな光を山並みに残して、地平線に没しようとしていた。どの様な種族であれ、自然とゆう人の営みから隔絶したモノに対して、畏敬と感謝の念を抱く光景ではあった。

 

もっとも。美しい景観をノンビリと眺めて、自分の人生に多少の満足を覚えるには。この地にいる者達には贅沢なことであったし、そんな余裕ある生き方が出来るほど、甘いものではなかったのだが…。

 

 一週間前まで、この丘には美しい樹木と、見事な景観が調和した巨大な構造物が整然と立ち並んでいて。自然と文明が融和した偉大な証明になっていた。

 しかしながら、自然とは異なる者達が決断した衛星軌道上から行われた大質量弾の砲撃を受けて廃墟と成り果てていた。

 

 

 

 異星人が創り出した微妙な建造物の残骸を利用した塹壕の中で、迫りくる敵軍を監視していた男は、ぼんやりと次の休暇は何時になるのだろうと考えていた。

 砲撃によって吹き飛ばされた樹木の残骸に縫い付けられた敵の軽装甲歩兵の残骸を見ながら、自分の運は後どの程度残っているのか。休暇に入ったならば、何をして過ごそうかなどと物思いにふけっていた。

 

 勿論。それら全てが容赦なく叩きつけられる現実からの逃避である事を頭脳は理解していたが。理解する事と、納得する事には100光年程の差がある事だとも思ってもいた。

 

 要するに、主計士官として補給品の数を数えながら、定年まで過ごそうと画策していた楽な人生設計は破綻したとゆう事だったし。だったら、ありもしない未来の事を考えながら過ごすのも悪くないなと。まぁ優秀な小隊下士官のお蔭で、他の事は考えなくてもいいのは有り難い話だが。

 

 しかし、天界に存在する偉大な者達の考えは違っていたようだった。

 

敵弾襲来(イン・カミング)!』

 

 今日、四回目の陣地攻撃を決断した異星人の砲撃によってもたらされた破片が、頑丈な掩体壕に篭っていた男の装甲ヘルメットを直撃。気楽な存在でありえた男の運命を翻弄するのであった。

 

 

『少尉殿!衛生兵!!第四小隊指揮所で負傷者!少尉殿!え…?大丈夫です。兵どもは至って士気軒高です!休んどって下さい!』

陣地攻撃に際しての重砲の砲撃を受けた掩体壕の中で、敵情を把握しようとしていた第四小隊長が炸裂した大口径砲弾の破片を受けて負傷する。

 どこかで光の速さを越えたのか。後方で待機していた衛生班が、迅速な動作で負傷者を運び出してゆく。気楽な人生を楽しもうと考えていた男は、ただでさえ少ない人員の中の負傷者としてカウントされる存在へとなっていた。

 

『敵軍!第二波襲来!各隊、迎撃準備を成せ!』

異星人の大盤振る舞いの陣地破砕射撃が終了。監視哨からの報告が飛び。それを受けて中隊長が各小隊に対して命令を送る。

 

『重迫小隊。射撃準備完了』

迫り来る敵軍に対して、最も効果を発揮する重迫撃砲が射撃準備を完了。勇壮な敵の進軍先を冥府へと変えるべく、装填手は落ち着いて命令を待つ。

 

『クソっ!!アイツらまだ来やがる!どんだけ給料貰ってるんだよ?』

装甲服の頭部から展開した望遠カメラが捉えた映像を見て、呆れたように呟く兵士。

 

『仕事熱心さでは群を抜いてるよな?お前も見習えば?』

頑丈に作られた掩体壕の中。隣で毒づく同僚に、掛け合い漫才の様に声を掛けて自らの恐怖を紛らわせようとする上等兵。

 

4回目の攻撃を決断した異星人達は。決められた規則に従って律儀に進軍を始めていた。前回までの攻撃で二個大隊程度の損害を被っているにもかかわらず。何としてでもこの丘と施設を占領するつもりだったし。その為には手抜かりなく準備を進めてはいた。もっとも、用意周到なのは地球人達も同じで。殺戮のためだけに作り込まれた道具を振るおうと、虎視眈々と時を待っていたのだった。

 

『まだだ…もう少し引き付けろ!』

監視哨からの有線ケーブルから送られてくる映像を見ながら、中隊に対して指示を出す指揮官。一週間も続く激戦によって目の周りにはクマが浮かび、日に日に疲労の色が濃くなっていた。衛生兵が許可を出した覚醒薬は投薬の限界に達しており、自分自身が持つ根気強さに期待するより無くなっていた。

 

『敵、第一梯団…陣前400m!』

廃墟となりつつある異星人の構造物。何かの意味合いがあるのか、奇妙で複雑な形の尖塔の中、迫り来る敵情を把握し続ける監視員。度重なる砲撃でも、此処だけは意図的に外されている様だった。そのおかげで、敵の状況がしっかりと確認できた。お互いが支援出来るように、適度な間隔を空けて整然と進軍してくる姿は見事ですらあった。

 

 

『用意………!撃ち方始め!!』

軌道上で遊撃戦を展開する駆逐艦群から放たれた反応弾が、大気圏上層部で炸裂。コンプトン効果による電磁的制圧と、敵味方双方がバラ撒いた電磁干渉物質のおかげで。近距離探知のセンサーや、短距離通信すら使用出来ない状況。まるで第二次世界大戦の頃の陣地戦のようだった。お互いに有視界の中での殴り合い。味方との交信は装甲服の腰部に装備された、外部接続ユニットに繋がれたナノケーブルでやり取りする。監視哨から伝達されたライブ映像を確認して射撃命令を発する。

 

瞬間、廃墟全体が爆発したかの様に展開される様々な火砲。

 

整然と進軍していた異星人達は、地球人達が作り上げた効率的で濃密な火線の前に、次々と打ち倒されてゆく。運良く生き残った士官や下士官達が兵達を纏めようと叱咤するが。その行為すら許さずに吹き飛ばされていた。その様子を見て、支援射撃を命ずる異星人の指揮官だったが。戦場にばら撒かれた様々な妨害物質によって、満足な照準も出来ずに放たれた砲弾は精度が甘く。地球人の陣地だけではなく、味方の隊列すら吹き飛ばしてしまっていた。

 

味方の砲撃を非難する通信や罵り声。負傷した戦友を引きずりながら、少しでも惨劇から逃れようと砲撃が創り出したクレーターに逃れようとする兵士。

爆発によって吹き飛ばされた腕を抱え込みながら立ち止まるが、重機関銃の射撃によって打ち倒される者。全てを呪いながら味方の死体を盾にして生き残ろうとする者。陣地攻撃に有効な火炎放射機の圧縮燃料に引火して火達磨になり、周囲を盛大に巻き込みながら焼け爛れてゆく者。

この出来事さえなければ、未来ある人生があった筈の者達。それら全てが肉塊や大地に刻むシミに成り果てていた。今日一日としては、充分過ぎるほどの死と破壊を味わっていたが。そう感じていたのは異星人達だけであり。自らが生き残る為には、手抜きをする気は毛頭無い地球人達はそう考えてはおらず。さらに容赦のない事務的とさえ言える射撃を継続するのであった。

 

『弾はばらまきゃ良いってもんじゃない…俺の場合は効率が違うんだよ!ホレ?…見ろ、草生す屍になったぞ?』

『こんな不真面目な奴に打ち倒されるなんて…敵ながら同情するよっとッ…確認戦果が一つ増えたぞ』

『このクソ忙しい時に、カズ数えてんのかよ?恐れ入るわ!?』

『第114揚陸部隊…補給品を投下する…繰り返す…第114』

『バジット中尉殿…軌道上の艦隊から補給品が…』

『…そうだ!ヒデトの小隊に弾薬を送れ!!あそこが突破されたら酷い事になるぞ!…なに!?よく聞こえんぞ!補給品?位置情報を送って…そうだ…本部小隊に確保させろ!!』

 

 

本来なら、山脈に没する美しい夕焼けを見る事が可能な小高い丘の上。炸裂する砲弾と、錯綜する火線によって構成された死を織り成す交響曲が鳴り響く場所へと変化していた。敵味方、様々な立場の人間達が吹き飛ばされ、或いは打ち倒されて物言わぬ肉塊へと成り果て、自然の一部へと融けこんでゆく。大小さまざまな砲弾によって爆焔と土煙をあげる其処は、不規則で唐突な死を量産する天界への門として機能し始めていた。

 

『ミン。左300m…其処だ。アンテナを伸ばしているヤツだ…上手いぞ!』

『軍曹…いつ風呂へ入れますかね?』

『さあなぁ?あそこにいるヤツらに聞けば?第二小隊!奇数番号交代!交代後、弾薬の補給急げよ。…なに…わかった!中隊長殿に…そうだ…頼んだぞ!だいたい、お前綺麗好きだったか?髭も剃らんくせに?』

『其れはオシャレの為ですよ。…はい、サヨナラ…腹減りました…』

『オシャレって状態かよ…飯食ってる暇なんて無いぞ!大入り満員だぜ?嬉しくも無いが…各分隊。派手に行け!補給の目処が立ったんだ。豪勢に歓迎してやれ!』

『軌道上にウチの艦隊が来援してるなら、増援がなんで降りてこないんですかね?補給はともかく、人員の損耗度合いが酷くなってきてるから、正直言って疲れました』

『あん?命令系統の遥か彼方の連中が、他所(ヨソ)で良からぬ事を企んでいて、こっち以上に重要だと判断したんだろう?クソッ集弾が甘くなってきた…銃身も交換しないと…誰だって疲れてるよ!死んだら休めるぞ?』

『そいつはゴメンです〜。囮ですか?』

『大方そんなところだろ?異星人達にとって、この場所が奪回しなければならない重要拠点だって事だ。ウチの偉いさん達はココ以上に重要な場所があって、敵兵力の誘引を期待して補給を回してくれてんのかもな?人員は…他の攻略に必要なんだろ…2日前には飯も弾薬もヤバかったんだから贅沢言うな!』

 

 

事実だった。秀人達が惑星に残されてしまった原因。連盟の構成国の一国、コリャ連邦が急遽連盟からの離脱を表明。『ヨームIII』軌道上に展開していた艦隊を撤収させてしまい、数の均衡を保っていた連盟艦隊は軌道上防衛戦で敗退。惑星上陸戦も中止され各国から派兵された上陸部隊も、中途半端に惑星上に残置されていた。(もちろん。コリャ連邦は上陸部隊を派兵していない)

 

コリャ連邦の手酷い裏切り行為によって、『ヨームIII』に兵力を残置しなければならなかった連盟各国は救出を急いだが。連盟各国の利害調整に手間取り、全体としての決断に至っていなかった。(これこれの損害の支払いは何処が受け持つのか?いやいや、コッチは兵隊を出してるんで、コレぐらいは出してくれないと…などなど)

 

この会議の長引きに不満を募らせていた連盟派遣軍合同司令部は、救出の為に待機している艦隊にある指示を出す。『連盟艦隊はヨームIIIへの偵察を行う事。各艦隊から必要と思われる艦を派遣し、敵勢力の規模を把握せよ。追伸。偵察艦が攻撃を受けた場合、適宜反撃を許可する』

 

忸怩たる思いで待機していた連盟艦隊は、地球連邦・ゲルン共和国・メリア合衆国から優秀な高速艦を中心とした偵察『艦隊』を編成。ヨームIII軌道上に展開する同盟艦隊への『偵察』を行うのだった。あくまでも『偵察』であるから、連盟議会で通達の出ていない『攻撃』ではないし。もし、攻撃を受けたならば艦隊保護の為に止む無く迎撃しなければならない。それが、建前である事は派兵艦隊全てが理解していて。迎撃に出てきたところで、待機させていた主力戦艦群で殲滅。そのまま軌道上を確保、上陸戦を再開してヨームIIIを確保する事まで作戦計画は練られていた。

 

地球連邦・ゲルン共和国・メリア合衆国の三ヶ国は、度々戦火を交える競合国であったが。それ故にお互いの練度を知っていた為、他の連盟国家艦隊よりも共同作戦には問題がなかった(モチロン。各艦隊にはそれぞれの連絡将校と部隊が乗り組んでいた)

 

対して、帝国同盟側も問題を抱えていた。

 

様々な交渉と恫喝を織り交ぜることによって、コリャ連邦を取り込むことに成功したが。未だに帝国同盟の足並みは揃っておらず。その混沌ぶりは連盟側の予想を上回っていた。実際のところ。争乱の重要局面であるヨームIIIでの戦闘でも、関係各国の連絡不備によるチグハグな艦隊運用が目立っていたし。惑星上の防衛兵力展開においても、国家単位での支援がうまくいっていなっかった。(まぁ、そのせいもあって秀人達の部隊も壊滅しないですんでいたのだが)

 

結果として連盟側の目論見は成功する。ちょっとした威力偵察の艦隊に対する認識が、同盟艦隊内で違っていて。強硬に迎撃を主張する者や、様子見を意見として出すものもいて纏まりに欠いており。総数としては連盟側を上回っているにもかかわらず、その利点を活かしきれていなかった。内輪で揉めている内に血気に逸った艦隊の一部が迎撃に出撃し、偵察艦隊と交戦。練度と装備で上回る連盟艦隊によって打ち崩されてしまうのであった。

 

先走った弱小国家による戦闘に頭を悩ませる同盟艦隊首脳部。かといって、救援要請を無視するわけにもいかず。軌道上の防衛に当たっていた艦隊の三分の二を振り向けるのであった。総数で有利でありながら、中途半端な考えで送り出した纏まりに欠ける兵力がどうなるか。この後に思い知る事になるのであった。

 

軌道上からの兵力誘引に成功した偵察艦隊。派遣されてきた艦隊の手応えのなさに困惑しながらも、当初の計画どうりに罠に嵌めようと後退しようとしたのだが。前述のとうりに戦闘とは呼べない数度の交戦で同盟艦隊の半数が壊滅。傍受した通信内容は救援を要請する悲鳴じみた内容ばかりで、具体的なものは無い。余りに呆気のない戦闘で誘引する兵力が壊滅してしまったのである。

 

困惑した偵察艦隊は初期の目的を達成するべく、同盟艦隊の殲滅に目的を変更。更に大規模な兵力の誘引を企図し、その旨を連盟艦隊首脳部に伝達。全作戦の見直しを提案したのであった。

 

連盟首脳部の決断に迷いはなかった。自分達の所属する国家が違えども、惑星上で奮戦し救援を待つ者達が居るとゆう事が艦隊将兵全ての脳裏に刻まれているのだ。背を押すことになっても、躊躇する理由など存在しなかったのである。

 

偵察艦隊から先行して強行偵察を行った駆逐艦からもたらされた、帝国同盟艦隊の行動内容も決断を助ける材料になっていた。軌道上で整然と遊弋していた艦隊の陣形が変更されて、全艦隊の三分の二が救援に出撃してきたのである。

 

 連盟側の行動を妨げていた同盟艦隊の数の有利さ。先の戦闘で、装備・錬度・運用・共同行動。全てで劣る帝国同盟側の唯一の利点を、自らの判断で失ってしまったのである。

 

 連盟艦隊首脳部は、同盟艦隊の動きに罠の可能性も考慮したが。配力数がほぼ同等になった事による優位と。先行する偵察艦隊を編成した三カ国が、艦隊全体での決戦を強硬に主張。上陸兵力を惑星に残してきた各国艦隊も同調し、ヨームⅢ衛星軌道外縁での艦隊決戦が決定されたのであった。

 

 作戦計画的には当初の計画の通りに進められていたが、誘引する敵勢力の増大に伴って、偵察艦隊を主力戦艦群で増強し有力な艦隊規模にし、同盟側の注目を集める存在にする。(この時点では弱小国家の艦隊は殲滅されておらず、派手に悲鳴をあげていた)

 

 迎撃に出て来た同盟艦隊と適宜交戦。連盟艦隊が潜む宙域まで誘引する。怪しまれないように、主力艦は被弾し損害を被って撤退している様に見せる為、艦齢の古い順に自沈する。(自沈する艦を預かる将兵は嘆いていたが)

 

 同盟艦隊の索敵範囲外に潜んでいた各国艦隊が順次包囲戦に参加。敵艦隊を殲滅するものに変更されていた。

 

 連盟艦隊の士気は上昇し、参加各国の連絡は密に取れ。運以外の準備は整った。敵艦隊を殲滅し、友軍を救出するために各宙域に向けて出撃するのであった。

 

 

 

 恒星からの光を受けて美しく輝く地球環境型惑星『ヨームⅢ』。

 

 その美しい惑星を背景にしながら、恒星の反射光とは違う緑色と赤色の光線が交錯する。一瞬の光の瞬きの後、盛大な光を放つ球体が発生。何がしかの存在が宇宙の藻屑となる瞬間であった。

 

 

 「見ろよ?ゴッツイ光景じゃないか」

 

 連盟艦隊。臨時編成偵察艦隊。第三戦隊巡洋戦艦『剣』艦長オラーフ・フォン・島崎大佐が、戦闘艦橋で推移する戦闘を眺めながら。連絡将校として乗り込んでいるクルト・ベルンリッヒ共和国少佐に話しかけていた。

 

 「確かに・・・ここ数年ほど見る事は無かったですね。先頭を務めるのは『大和』と『武蔵』の二隻ですか?相変わらず重装甲に高火力ですね。ペライト宙域攻防戦では痛い目をみました・・・」

 

 「ほう・・?君はあの宙域に派遣されていたのか?激戦だったな」

 

 「ええ・・参謀教育の一環としての最前線勤務が義務化されていましたからね?『一般兵卒の苦労を知ってこそ、参謀たる知見は磨かれる!』との言葉が軍に影響を与えていましたから。三度目の交戦で大破した『ジークフリート』に主計士官として乗り組んでいました」

 

 「・・・『ジークフリート』か・・良い戦艦(フネ)だな。私は『扶桑』副長の時に痛い目に遭った・・艦橋スクリーンでみた巨艦を不死身の龍として見ていたな・・名前からすれば邪竜を屠る英雄なのにな・・」

 

 「『扶桑』・・?キャルソン暗礁宙域遭遇戦でしたか?旧式戦艦ですが、砲撃力は侮れない戦艦(フネ)でしたね。そう言えば、今回の被害担任艦では?」

 

 「ああ・・・なんとゆうか・・『扶桑』で軍歴を歩んできた身からすれば、やるせない気持ちだよ?慣れ親しんだ女房と別れるみたいだ・・艦齢二十年。よく働いてくれた・・」

 

 

 『『扶桑』および『山城』突出します!・・・・僚艦ともに被弾!損害各所で発生!自動砲撃装置作動良好!『ヘイデ』級重巡轟沈!ついで自沈タイマー作動!』

 二人の会話に飛び込んで来る、艦橋オペレーターの戦況報告。

 

 『『扶桑』自沈まで4・・3・・2・・1・・点火!爆発成功!電波干渉物質散布良好!続いて『山城』!自沈!こちらも成功!『大和』『武蔵』第一戦隊。後退に入ります!』

 

 「よし!第二戦隊と協調。第一戦隊の後退を援護!目標、帝国同盟先遣艦『ヤルフ』級戦艦!打ち方始め!」

 

 冷静に支持を出すオラーフ大佐を見ながら、連絡将校の務めを果たすクルト。激変する艦隊戦の指揮を執りながら、沈みゆく二艦を映すホロディスプレイに敬礼を送る地球連邦将官に倣って、生涯でもっとも成功したと思われる敬礼を送るのだった。

 

 

 

 ヨームⅢ軌道上外縁における戦闘は、概ね連盟がわの思惑どうりに展開。包囲網に入り込んでゆく帝国同盟艦隊。我先に武勲に輝く二隻の巨艦を仕留めようと、陣形も維持せずに突入して行く。

 

 誘引が上手く行きすぎたのか。はたまた、帝国同盟側のミスの積み重ねか。食虫植物に掴まる様に包囲されてゆく同盟艦隊。

 

 そして、罠は閉じられ。地獄の窯の蓋が開く。恐るべき技量と、信じられない程の戦意を持った戦闘国家群の咢が開いてゆき。その凶暴さに見合った破壊を宙域に振りまくのであった。

 

 

 

 

 「全滅・・・だと・・・?」

 

 ヨームⅢ衛星軌道上に展開する帝国同盟艦隊。その中の有力な国家の一つであるシュラス帝国艦隊。旗艦『デッシリア』艦橋で、同盟と連盟の戦闘結果に血の気を喪うゲレハウ上級大将。

 

 「はっ!艦隊後方で戦況を監視していた、我が艦隊の駆逐艦からの連絡です。詳細は提督の個人端末に表示できます」

 

 「・・・わかった。十分後に旗艦に各艦長集合。本国にも連絡を入れるんだ・・題名は、戦闘所報だけでいい。それと、一時間後に同盟艦隊旗艦に向かう。この後の展開について意見交換をしなければならん。準備を頼む」

 

 「はっ!」

 

 退出する連絡士官を見送った後に、個人端末をホロディスプレイ表示にして提督室に大規模表示させる。

 

 「・・・・これは・・」

 

 整然と救出に向かった同盟艦隊に、二隻の巨艦による砲撃が降り注ぐ。初期に会敵した小規模の艦隊が増強され、二隻の巨艦を含む有力な艦隊へと変化していた。時刻を勧めるにつれて損害が多発。同盟側も反撃、数の優位もあって連盟側の戦艦を撃沈することが出来ていた。

 

 それによって連盟側の隊列が乱れ、散々に打ち崩していた二隻の戦艦も後退を開始。反撃に出る為に突撃を敢行する同盟艦隊。しかし、それによって纏まっていた艦隊陣形が乱れ。加盟各国による独自の艦隊運用になってしまっていた。隊列は伸びきり、各艦隊の連系は不可能になっていた。

 

 それを見たゲレハウは、自身の長年の戦歴と、それによって鍛えられた頭脳が警告を発していた。

 

 「・・・・脆過ぎます・・・罠ですね・・」

 

 提督私室のドアが開き、衣擦れの音と共に均整の取れた肢体を持つ人物が、美しい声音で語り掛けて来ていた。

 

 「ミエラ宗教参事官・・」

 シーツに包まれた見事な肢体に目を向けると、先ほどまでの秘め事が蘇り、下半身に血が廻って行くゲレハウ。

 

 「まったく・・・神にささげる秘事が台無しですわ?ここまで同盟が弱いのは困りものですね。・・・でも、神聖皇帝陛下と我が全能神様にとっては吉兆でもあります・・」

 躰を覆うシーツを肩口で止めながら、ゲレハウにすり寄るミエラ宗教参事官。見事な女性らしい(地球人感覚で言えば完璧な肢体であった。シュラス人と地球人類は肌の色以外に差異は無かった。ついでに言えば美的感覚も)

 

 「確かに・・・我が艦隊は被害を被っておりませんが・・」

 

 「なに・・・今回の派兵もケレンダム皇国の要請で始まったモノ・・コリャ連邦を取り込むことは出来ましたから、投資に見合ったモノは回収できました・・・ヨームⅢの連盟に占領された施設は、ケレンダム皇国の始祖の墳墓・・私達にとってはどうでもよいモノですから・・・」

 

 「・・・しかし・・同盟に対しての協力はしなければ・・?」

 

 「・・流石、武人としての矜持をお持ちですね・・であるからこそ、神に捧げる秘め事の相手に相応しい・・良いのですよ。コリャ連邦を私達だけで取り込んだことが面目を立てる事になりましょう・・・?それよりも先程の続きは如何ですか・・?最後まで逝かなければ、お互いに火照った身体を持て余してしまいます?それこそ、神の恩寵に背く事です・・・」

 

 「しかし・・」

 

 「三分もあれば・・・艦長集合には間に合いましてよ・・?」

 そういって、肩で止めていたシーツを外し。見事な灰色の肢体を絡ませてゆくミエラ宗教参事官・・いや、一匹の雌の匂いを漂わせたミエラであった。

 

 

 

 

 記

 

 シュラス帝国 ヨームⅢ派遣艦隊艦隊誌

 

 帝国歴 紅457年 12月4日。

 

 本日。派遣艦隊旗艦で行われた各艦艦長会合は、提督の遅刻により三十分定刻より遅れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 帝国歴 紅457年 12月7日  地球連邦歴137年12月6日

 

 

 『敵弾襲来』(イン・カミング)

 

 地虫の様に潜り込んでいた陣地の地下で、浅い眠りに就いていた連邦将兵を叩き起こす事務的な口調の通信が流れる。叫ばなければ理解できないモノは最早いない。

 

 『くそっ!?良い夢見れていたんだがなぁ・・・』

 通信を受けて、持ち場に向かう秀人の口から罵り交じりの文句が出てしまう。

 

 『どんな夢みたんですか?口調から察するに、美女と戯れる夢でしょう?』

 秀人の個人回線が繋がっている小隊員達を代表して、ミンが秀人に尋ねていた。

 

 『しまった・・繋がったまんまだったか・・同じ繋がるんでも辛気臭い連中が現実だよなぁ?いやさ、灰色の肌の、こう・・なんつうの?吸い付くようなキメの細かさでさぁ?この前見た敵の連中から分捕った映像の中に出てくるシュラス人の美女?』

 93式重機関銃を点検しながら、顔をだらしなくニヤケさせて語る秀人。

 

 『ああ・・あれですか?でも、あの人種両性具有じゃなかったですか?』

 102式狙撃銃に装填しながら、過去の映像を思い出すミン。

 

 『これだよ、恋人持ちは・・・他の女に興味が無いと来た・・嘆かわしい・・異人種交流で親交を温めるんだよ?それが、平和になる秘訣だぞ?』

 

 『いいんですけども・・・こっちも異人種との交流を深めてますよ?侵攻違いですけども?』

 

 『くそっ!!この上に居座っている連中。(フネ)の中で宜しくヤっているんだろうなぁ・・絶対に生き残って、艦隊強襲部隊に配置換えを申請してやる!!』

 

 『秀人さんといると、戦争が馬鹿らしく感じられますね』

 

 『うるせー!!仕事は真面目にやってるよ?あ~あ・・ラノベの様に異世界転移とかないかなぁ・・?』

 

 『俺、いま決心できました!絶対に還って結婚します!!』

 

 『なんだぁ?あんだけ渋っていたくせに?さては俺の人徳に感化されたか?』

 

 『いろんな意味で感化されましたよ?なぁ?みんな?』

 

 ミン伍長の同意を促す言葉に、小隊員からそれぞれに返事が返って来る。

 

 『なんだよ?そんなこと言っちゃってぇ?俺が居なくなってから悔やんでも知らないぞ!くそっ!!こんなクダラン戦争、さっさと終わらせてやる!!全員、冥府の門を潜らせてやる!!かかって来い!!』

 

 後半を周辺拡声機モードにした秀人の愚痴が周辺に響き渡る。

 

 それを合図にしたかのように敵弾が降り始める。いまだ、この地獄の底から這い出る事は許されない秀人であった。

 

 

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