軌道降下兵   作:顔面要塞

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本当に、申し訳ございません。

もう、忘れている方も多いかもしれないですが。細々と生きております。

コロナ・・・・イロイロ騒がれていますが。経済の方が大事な気がします。

去年の自殺者が11月時点で約19000・・・・コロナで亡くなった方。約4000

どちらを重視すればいいんですかね?

もう、老人に配慮した国から脱却しないと。未来なんて無いですよ?俺達の稼ぎは食い潰され、穴だらけの三等国の日本の誕生ですよ?

スイマセン・・・・現状が余りにも酷すぎて、希望すら持てないんです・・・直ぐ近くに月三十万円の高級老人ホームが出来ました。入所金一千万らしいです・・・連日、ベンツやbmw、アウディ、ジャガーレクサスが来てますw

もう、嗤うしかないですw

不謹慎な書きなぐりで、御免なさい・・・モチベーションの維持が難しくなってきました・・・

でも、皆を裏切らないように。楽しんで生きてゆきます!!

宜しくお願い致します!!


混乱

先程まで屋根を小気味良く叩いていた雨は止んで、木精魔法と木工職人が創り上げた高床式の協会の建物に、南国の熱気を冷ます涼やかな風が入り込んで来ていた。

 

其のハンター協会の一区画を占めるカフェで。仕事を終えたハンター達や、これから狩猟に向うパーティなどがひと時の安らぎを求めて寛いでいた。時間帯も夕刻に迫っていたから、早めの夕食や酒宴を求める者たちも多く。カフェで働く者達は対応に追われて、忙しく働いており。差し込んだ冷涼な風が無ければ、其れなりの熱気を篭らせていたかもしれなかった。

 

そんな、せわしなく動き続けるカフェで、見目麗しい蝙蝠系獣人種の女奴隷と話し込んでいた東方系の人間種の男が。孔雀系鳥人種の男達に絡まれていた。

 

まぁ、仕事の取り分や報酬の分配。狩猟に於ける役割や働きについて揉めるのは良くあることで。ハンター協会に併設されたカフェともなれば、そんなに珍しい光景では無い。酒精が入った勢いで喧嘩沙汰になる事もしばしばで、周りの反応も『大変だな、アイツ………』などの意見が大半だった。其れにラッタナ王国では鳥人種の上位に位置すると思われる孔雀系や、鷹や鷲などの猛禽類系は気ぐらいが高くて。面倒ごとの大半は、その気性による相互の行き違いが原因だったから、気の毒に思われていた。

 

雰囲気が変わったのは、喧しい鳥人種のツレが武器に手を掛けた時だった。

 

それまで、何と無く気にかけていたハンター達の気配が変わり。剣呑な空気が漂い始める。ハンター協会での御法度。いや、街中での抜剣は、身体生命を守るとき以外は認められるモノではなかったし。其の相手が同じハンター仲間であれば、加勢するのが筋であった。どこの街に居るゴロツキ供でも、協会内部での暴力沙汰などは行わなかったし。そんな事をすれば法的にも世間的にも無事で済む事は無い。其の事を知っていたからこそ放っておいたのだが、この鳥人種供はその事が分かっていない様だった。

 

カフェに響いていた明るく猥雑な会話は終わり。いつのまにか、騒動の中心地であるテーブルを囲う様に、ハンター達の輪が広がっていた。その圧力は鳥人種達にも伝わり、一触即発の雰囲気へと変貌するのだった。

 

 

そんな中、協会の入り口から低く大きな声で騒動の中心地に呼びかける者がいた。

 

巨体を誇る熊系獣人種のハンターでも、易々と潜れる様に4m程度の大きさを誇る協会の入り口で比較しても。3m程には見える筋肉で引き締まった巨体を、奇妙な深い蒼色のピッタリとして革鎧に見える装備で身を包んだ巨人種だった。

 

「………なんだ?取込み中か?いや、すまない。久しぶりに出逢った友人でな?仕事の話なら、其方を優先してくれ。ただ、剣呑な雰囲気に見えたのでな…もし…何某かの問題なら話に乗るぞ?」

 

蔵人と鳥人種が一触即発の重大事に陥っている場面を、全く気にする事なく堂々と近寄り、双方に声を掛ける巨人種。

 

「マクシーム………?どうして此処に…?」

「いやはや…久方ぶりだな!此方の鳥人種の方々は…仕事仲間には見えないが?」

その巨体で鳥人種達の頭越しに、大音量の声掛けの重砲弾雨を降らせるマクシーム。先程までの雰囲気は吹き飛び、鳥人種の男供はすっかり威圧されてしまっていた。

 

「………ふん!今後、その蝙蝠系獣人種(タンマイ)を手離さなければ、あまり良い事態にはならんぞ!行くぞ!」

見事なまでの小物らしい捨て台詞を残して、慌ただしく去って行く鳥人種。普段から鬱陶しい態度に気を悪くしていたモノ達もいたから、揶揄されたハンター達の口笛や歓声に送られて出て行くハメになっていた。

 

 

「何だアレは…?俺が云うのも何だが………凄まじい程の小物っぷりだな?絵草子モノでも見た事がない典型だ」

肩を竦めながら、鳥人種の出て行った方を見つめて、感想を述べるマクシーム。

 

「どうしてラッタナに?」

今、目の前で起きたことなど無かったかのように、マクシームに尋ねる蔵人。

 

「まぁ…何だ………北方も飽きて来てな。筋肉の躍動のままに動いたら、ここに着いたわけよ」

 

嘘である。俺が居ることを忘れているかの様に、蔵人に航海中の武勇伝を語り出すマクシーム。確かに『俺に見合った女性に逢いにきた』では、締まらない。一応、ハンター稼業では一つ星で南国でも噂が流れる程度には有名なのだから。

 

「そうゆう事にしておいてやってくれ。久しぶりだなぁ蔵人?元気な様で何より。返事がなかったのは無事な知らせだと思っているから、その事はいい………で、だな………誰?其の女性(ひと)

 

騒ぎがひと段落した蔵人のテーブルに、協会の階段から声が掛かる。

 

「何だ?秀人も居たのか?」

何時もながらの捉え所の無い、茫洋とした態度でヒデトを見遣る蔵人。

 

「何だじゃない…お前、一応心配して駆け付けた仲間に対する挨拶か?まぁいい…チョイと御主人を借りるよ?」

遭難何ぞを経験したから、少しは殊勝な感じになっていると思っていたが………普段通り過ぎて、気が抜ける秀人。

 

テーブルを囲む連中から蔵人を誘って、人気の無い協会のテラスに連れ出す秀人。其の際に、蔵人の連れの女性の相手をする様にマクシームに申し付ける。

 

「………まったく…雪白先生が居ないと節操が無くなるな…で?何で奴隷なんぞ?」

十分に離れた事を確認して、個人間通信で尋ねる秀人。

 

「半分は成り行きだ。一応、星も上げなければと思ってね?七つ星の昇格条件になっているだろう?」

テラスに吹き込む風にあたり、茫洋とした表情で応える蔵人。

 

なるほど。確かに昇格の条件にそんなのがあったことを思い出す。ランクに無頓着だったからスッカリ失念していた。それに蔵人の事だから、『誘い道』にでも行って自分好みの女性に声を掛けられたのだろう。面倒な人間関係を構築するよりは、金銭で解決出来る奴隷は都合が良い。自分にしても、ラッタナに奴隷制度が存在する事に注目して、昇格条件をクリアする事を考えたから、蔵人を非難する事はできない。

 

「だが、昇格の条件を満たした後はどうするんだ?そのまま放っておく訳にもいくまい?かといって、サレハドに連れて行くにしても奴隷制度がないから、逃げられるかもしれん」

テラスに出たところで、周りの状況を確認。コチラを見やる者がいない事で個人間通信を止めて、蔵人にラッタナを出国した後の事を尋ねる秀人。

 

「そこまでは考えて無い。条件さえクリアできれば、その時点で解放するから。サレハドまで連れて行く事は、正直考えて無かったな…」

 

こちらの疑問に素直に答える蔵人。

 

予想していた答えだったが、奴隷である蝙蝠系獣人種の女性のこの国での立場を考えると。解放、じゃあサヨナラ!って訳にもいかないだろう。蔵人にしても、この国の階級制度を調べているだろうから、一人で食っていける程度迄は面倒をみそうだが。

 

「この国の蝙蝠系獣人種に対する扱いは…」

「ああ、調べたし。修行の最中に嫌ってほど味わったよ…ヨビ次第だが、サレハドに連れて行く事もありかな?解放してから相談してみよう。秀人が危惧する事は、一応考えている。雪白は基本、俺に害を加える人間で無ければ干渉はしてこないから」

基本。他人に対しては感情が薄い蔵人なのだが。色々な付き合いで、少しはマトモな『人』に成長してきているようだった。奴隷と言うより、契約社員的な考えのようだった。

 

まぁ………雪白先生は対人関係については干渉はしないかもしれないが、日々のスキンシップ(マルカジリ)は増えそうな気がするが………

 

「そうか…其処まで考えているのならお前の好きにするが良いさ。で?雪白先生とイライダとは連絡を取ったのか?」

テラスにあるテーブルに着きながら、前の椅子を蔵人に目で促し、質問をする秀人。

 

「隣の国に流されていたが無事だ。ちょうど、二日前に雪白だけ先行してこちらに向かうとの便りが協会経由であった。イライダについては…」

連絡があった事を告げる蔵人。

 

「妙チクリンナ女センセイに捕まっているらしいな?コッチにも連絡があった。二週間程、合流するのに掛かるそうだ」

テラス席に着いた事を確認した獣人種のウェイトレスが、注文を取りにやって来る。

 

「女性の立場を延々と語るセンセイだろ?用務員の時も噂は聞いていたよ。それに、その頃にはヨビの昇格は終わって、もう一つ程度は上がっているだろう。飛べるとゆうのは、それだけで一つ星分の差がつくな」

ラッタナでの流行りのお茶を二人分頼み。個人端末に記録された今まであった事柄の映像や、端末のCPUの解析記録をナノファイバー経由で秀人に電送する蔵人。

 

「種族特性だからなぁ。逆に翼が邪魔になる場面もあるから、一概に言えんが。便利ではありそうだ。空を自由に利用できる事の優位さは、語るまでも無いだろう?実地で目にしてる御前さんが一番わかっているだろうが」

一瞬で電送を終了したデータを、項目ごとに整頓して。自分自身の経験と照らし合わせながら、様々な事を分析してゆく秀人。

 

「あれだけ鳥人種が居るのならば、蟹どもの駆除など容易いモノだと思うのだが。さっきの鳥どもといい………何を考えているのやら…」

コチラもまた。秀人から電送されてくる勇者関連の記録や、それに伴うさまざまな出来事が。蔵人の脳波を受け取ったCPUが処理してゆく。項目ごとに重要な関わりを記憶に残しながら、興味のある案件や戦闘記録を更新してゆく。

 

「まぁ、奴等の気位の高さは面倒だよなぁ?そいつのお陰で食い詰め始めてるのに気付いていない………それよりも、昇格したなら直ぐにでもサレハドに向かうのか?勇者関連の面倒事は、一応片付けて来たからチョッカイ掛けてくる阿呆どもは一気に減った筈だぞ?」

 

今までの事柄を話し込みながら、此れからの予定について話し込む蔵人と秀人。思い掛けずに手に入れたヨビの事についても話し合い、サレハドに行くかどうかも相談する事になった。

 

「マクシームの奴はどうするんだ?」

ヨビに自分の冒険譚を語り、カフェで注文した酒精の入った飲料を呑みながら、楽しそうな雰囲気のマクシームを見遣る蔵人。

「ああ?偉そうに語っちゃいるが、ホントのところは………」

そう言って、右手の小指を立てて蔵人に見せる。

「………女か?」

マクシームの態度に怪しさを感じていた蔵人が。合点がいったように視線をあげる。

 

「………ヤツのサイズがサイズだろ?で、お相手が出来る強者がココに居るんだとよ?巨人種の女か、デカい獣人種じゃ無ければ無理だろ?相当勢い込んでる。実は今晩一緒に行く事になってるんだが…お前は………そうか相方が居たな?」

テーブルで談笑する、儚さを含んだ美しい姿を視線に捉える秀人。まさに、美女と野獣だ。

「ヨビとはそうゆう関係じゃ無い。俺も行くかな?コッチの世界に跳んできてからご無沙汰だし」

バイトの女性に手を出す何ぞ冗談じゃ無い!と、言わんばかりの態度の蔵人。

「………まぁ、そうゆう事にしておこう………そんじゃ!繰り出さなければなるまい!世俗の垢を落とさなければな?」

どうにも、蔵人の鈍感さは生来のモノと。今までの地球での生活から構築されたモノで形作られている様だ。秀人から見ても、ヨビと名付けられた女性の雰囲気は。奴隷として主人を見る()にしては潤み過ぎるきらいがあった。

 

 

「……で、こんな処が目的の場所なんだが………?」

そう言って、ヨビ達から見えない様に。コッソリと上質の紙でできたチラシを見せる秀人。様々な種族の美女達が、半裸の蠱惑的な姿が写るチラシの上部に店名が記入してあった。

 

『南国夫人』と………

 

 

 

 

水平線に隠れつつある太陽から美しい紅い光が、南国の海と島々を照らす。

 

波が寄せる静かな音が響き、夕暮れに染まる島に帰還する海鳥の鳴き声がこだまする平穏な一時。情景だけを眺めれば、美しい南国の1日の終わりを捉えたものだが。そこかしこで巨大な岩蟹と、それらに相対して闘う人々の姿があった。

 

「ヒュドリ!!後ろに回れ!ミナルはヨッチの回復を頼む!」

「クソ!!岩蟹供が!何だって海底遺跡のダンジョンが溢れるんだよ!オラァ!!二匹目!!協会からの情報は無いのかよ、デズ?」

「ああ!コイツでも食らいやがれ!遺跡が溢れたから、岩蟹供の駆除を依頼されただけで。ハッキリした事は協会でも把握していない様だった!普段から遺跡の調査を行なっている、探索者ギルドからの情報も錯綜していて要領を得ないらしい!数が多過ぎる!!一旦後退しよう!!」

巨大な岩蟹供の群れと格闘しているハンター達が、其々に連携しながら岩蟹達を屠ってゆく。普段ならここまで苦戦はしない。皆、五つ星まで辿り着いた歴戦の強者達であり。十つ星でパーティを組んだ時からの仲間だから、連携も申し分ない。

 

しかし、今、相対している岩蟹供は普通では無かった。連携する事などなかったのに、入れ替わりながら攻撃を重ねてきていた。さらには、体表の甲羅の色合いも暗褐色に染まり、甲殻の硬度も増していて打撃が通り辛くなっていたのだ。

 

クソ!岩蟹供め!一体一体の強さは、さほどでは無いが連携して来るとは………ウチのパーティはまだやれるが、他で頑張っている連中はそうでも無いらしい…数が多過ぎるのが原因だが、国の対応もちぐはぐだ。

 

「デズ!!後ろだ!!」

リーダーとしてパーティの状況を見ながら、引き時を考えた一瞬の隙に。普段なら考えられない素早さを発揮した暗褐色の岩蟹が、巨大な爪を振り下ろそうとしていた。

「クソ!!」

討伐戦の最中に、全体を見渡しながら指揮を執り指示を出す。そこに、協会と国の対応を訝しむ余分な思考が刺し挟まり。数瞬の隙を生み出してしまっていた。

『駄目だ………間に合わない…』

岩蟹の爪を防御しようと、左に装備したヒーターシールドを構えようとするが。極限状態に置かれた神経が、スローモーションの様な動きの自分の身体の動きに冷静に判断を下していた。

 

瞬間、凄まじい打撃音が響く。

 

予期していた肉体を砕かれる痛みは無く、その次に襲ってくるだろう意識の喪失も感じられなかった。眼前には巨大な爪を喪った岩蟹が、泡を噴きながら蹲っているだけだった。

 

「デズ!!仕留めろ!」

仲間達の声が遠くから響く。

 

興奮した肉体を抑える様に、スローモーションのままの光景を維持している神経と今までの経験が、鍛えられた戦闘技術に無意識の命令を下していた。

 

先程から何匹もの岩蟹を屠って来たウォーハンマーを岩蟹に叩きつける。

 

重心の載った的確な打撃を受けた岩蟹は、爪を喪ったダメージも合わせて一撃で絶命していた。

 

「大丈夫か?デズ?」

数瞬、動きが鈍ったデズの動きを見抜いた仲間が駆け寄って来る。それぞれに前衛が相対していた三匹の岩蟹は、無残な骸を晒していた。

 

「ああ・・。しかし、先ほどの打撃音はなんだったんだ?危うく命を刈り取られるところだったが?」

駆け寄る仲間に挨拶を返しつつ。動かぬ彫像と化した岩蟹を見つめるデズ。

 

「お前もか?俺とヒュドリも同じだ。一瞬で、岩蟹の爪が吹き飛んでいた・・」

前衛三人で目配せしながら、腑に落ちない点を確認しあう。

 

「何やってんのさ!三人とも?岩蟹達は此処だけじゃないんだから!油売ってる暇ないよ!」

ヨッチの回復を完了させたミナルが、肩を貸しながらデズ達三人に発破をかけて来ていた。

 

「・・・・確かに。此処は凌げたみたいだから、小休息を摂ってから他のハンター達の援護に廻ろう!」

「しかし、さっきより明らかに岩蟹共の圧力が弱まっているな。対策本部からの悲鳴のような連絡もなくなったし」

「仕事・・・ない・・わけ・・じゃない・・まだ、獲物いる」

ミナルの言葉を受けて三者三様の言葉を漏らす。しかし、熟練のハンターらしく。リーダーの言葉に従って後方に向けて動き出していた。

 

・・・しかし・・なんの前触れもなく自然に爪が吹き飛ぶわけはない・・戦闘で高まった自分の反射神経は、何某かの攻撃が岩蟹当たる光景を記憶にとどめていた。

周りを見渡してみても、弓や精霊魔法を放つような人影や気配は無い・・・考えられるのは、在り得ない遠距離からの精密な攻撃だけ・・しかも、三体をほぼ一瞬で・・・

 

「デズ!!リーダーが遅れてちゃ話になんないよ!!」

ミナルが急かして言葉を放つ。其れに促される様に、仲間の向かう後方の拠点に向けて歩き出すデズだった。自分が捉えた光景の先にある誰かに、挨拶を見せて・・・

 

 

 

「この距離での皇12式強化ライフル(スメラギ)の攻撃に気付くか・・・。この世界の熟練者に対する認識を上げていかないと、足元を掬われるな・・」

 

マングローブの様な植物の林の樹上で、周りの色彩と同じにしか見えない場所から声が漏れる。不可思議な幻術なのか、声に合わせた様にピッタリとした鈍い光沢の皮鎧に身を包んだ男が姿を顕わし独り言ちていた。男が両手に構えた見慣れない槍の様な長い筒先からは、うっすらと煙が流れていて。現代兵器に詳しい者なら、それが皇12式強化ライフル(スメラギ)と分かるモノだった。

 

愛銃の弾倉が最終弾を薬室に送り込んだところで、『ポケット』から取り出した新しい弾倉を交換し。空の弾倉は『ポケット』に収納する。アンクワール南方域全体をカバーする様に飛ばしたドローンからの情報が、脳神経交感デバイスを通じて瞬時に脳内に反映される。様々な生体強化を施された神経と脳は、常人では耐えられない膨大な情報を処理し。必要な情報を反映してゆく。

 

「普段なら動きの鈍い岩蟹共も、キング出現と同時に統制され強化されるなんて・・まるで蝗害だな。しかもキング程ではないが、中級指揮官的な岩蟹まで出るなんて。御国の学者先生が見たら泣いて喜ぶぜ?そういや、ヘラン星系の軍隊蜘蛛も似たようなもんだったか・・学者の護衛で降りた先は、阿鼻叫喚の地獄絵図に変わっちまってて。研究団体の先生、右腕を食いちぎられながら『素晴らしい!!研究材料だ!!治療は良いから、捕獲したまえ!!』って・・・あの先生、良い具合に壊れてたな?良い指揮官に成れるぜ・・」

 

『装填完了。異常無し。発砲可能』

装填を完了したスメラギが異常なく、何時でも発砲可能なのが伝達される。

 

左前方306度方向、距離2332mで。連続した爆発音と中規模な火焔が立ち上がっていた。そして、上空には蝙蝠の翼を持った鳥人種が滞空していた。

 

「お~お・・派手にやってるな?空を飛べるって便利だよな。ナパームの原料になる、ヤシの実に似た成分の植物が大量に植生してるってのも有り難い話だ。増粘剤も海の中の朱藻類から抽出できるし。大量生産されても困るから、ナフサの抽出については協会と王室の協同秘匿事項にして貰ったが。でも、まぁ。その気になりゃ大増産が可能なのは秘密だ。飛行種族が多いラッタナ王国を侮っている北方諸国は驚嘆するだろう。王立空軍か・・・どこぞのラノベみたいだ・・設立者に俺の名前でも載るんかいな?」

 

高空に滞空するドローンから中継される、簡易製造ナパーム弾での爆撃は(この世界初の空爆か?)岩蟹集団に対して恐るべき惨状を引き起こしていた。精霊魔法に対して盤石の装甲として機能していた外殻は、化学変化による物理現象のナパーム火災に対してまったく機能しておらず、無残に焼けただれていくだけであった。更に広域に渡る燃焼により、体内にとどめたエラ呼吸の為の海水も沸騰し。呼吸困難に陥った岩蟹も大量に骸を晒す事になっていたのだった。

 

爆撃を敢行した蝙蝠系獣人種のハンターも。あまりの惨状と、嗅ぎ慣れない独特の臭気に眉をひそませながら、次弾を受け取るために本部へと進路を変えるのであった。勿論、爆撃の効果を確認して。

 

「さて・・・いい具合に数も減って来て、キングへの道も開いてきたな。『ポケット』の『商店』から購入した兵器群を使用すれば、アッとゆうまにカタがつくんだが・・・それじゃ目立っちまうし。旧冒険者三種の方達に頑張ってもらいながら援護するのが、今んところの最適解かな」

 

今現在装備している武装をチェックしながら、ドローンから送られてくる映像を見る。海底遺跡から溢れたキングの軍勢は、そこかしこで迎撃に遭い。その数を大きく減らしていたのだった。

 

 

 

『オラァ!!クソカニどもが!盛って繁殖してんじゃねぇ!!!』

一際育ったマングローブの様な木の上で、遠浅の海岸線を注視している秀人の無線に、恐ろしい程の怒りを滾らせた通信が響く。

『……あ〜マクシーム?一人で突出すると連携がな………その、取れんのだが?』

本人に聞こえるているのか疑問を感じつつ、通信を送るのだが…怒りの獣神に化身した紅い魔神の応答は無い。

『無駄だよ秀人………奴さん、完全に怒りで我を忘れてる。ヤツの取りこぼしはコッチで面倒を見るから、駆り出された初級ハンター達の面倒を見てやってくれ』

マクシームの代わりに、長靴のアイコンが反転して蔵人が応答する。マクシームのヘッドセットから送られて来る映像は、視覚に入ったカニどもが一瞬で粉砕されてゆく様子を映し出していて。魔神の恐るべき戦いぶりを示していた。

『まぁ、お前ら二人が援護に入っていれば大丈夫だな?其れにしても………よっぽど頭に来てたんだな…』

『しゃあないよなぁ?カニどもが増え過ぎてキングが発生して。さらには迷宮からも魔獣が溢れて来るんだから。討伐要請は一つ星じゃ断れんよ………』

『そうか?奴さん、全てを無視して『南国夫人』に突撃しそうだったがなぁ?気持ちは分からんでも無いけど』

『その怒りをぶつけてるんだろ?余計な雑魚は俺の銃と、ヨビの空中からの攻撃で駆除しているから………ヤツの調子次第だが、もうすぐキングに辿り着きそうだ』

『了解。町に向けて進軍していた蟹どもも、あらかた掃除が終わったよ。精霊魔法は効かないが、純粋に油で出来た炎には弱いのな?焼きガニの大増産だ。蝙蝠系獣人種達の協力は大きいな?簡易製造したナパームもどき爆撃は大成功だ』

『病に伏せっている現王の代わりに王子が差配を握ってくれたのはデカいよ。まさかマクシームと知り合いだったとは。貴族階級の猛禽類や孔雀系は、気位が高すぎて使えないし』

『人の縁ってのは、そんな偶然を引き起こすから人生飽きないよな?これで蝙蝠系獣人種の地位も向上するだろう。相対的に貴族共の地位は低下するがな。なんぞ起こさなきゃいいが・・』

『革命か?いや・・この場合は反乱か?そこまでの根性も無さそうだが。ま、いいや。蝙蝠系の活躍に、ヨビも心なしか気負い込んでいる。それじゃ、また後でな』

『ああ。コッチも射程内にもう一体のキングを捉えた………明日には『南国夫人』で夕焼けを眺めたいもんだ。通信終了(アウト)

 

しかし、『南国夫人』で優雅に世俗の垢を落とすことから変わって、増え過ぎた蟹どもの暴走を駆除する羽目になるとは………マクシームじゃなくとも怒りが沸くのも当然だな。

事前調査で兆候を見逃していたのは何故だ?ラッタナ支部の調査能力はそこまで低いのか?いや、受け付けや他の協会員に無能な感じは無かった。政変に連なる混乱が在ったのだろうか?協会は独立した組織だが、結構な人数が国から派遣されくるしな。

 

皇12式強化ライフル(スメラギ)に焼夷徹甲弾が装填される。照準に入った巨大な岩蟹の頭部を見つめる秀人。ハンター協会の対応の不味さに不審を覚えながら、トリガーを絞るのだった。

 

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