色々あり過ぎる酷い年になっていますw親は斃れるは・・・コロナになるは・・帯状疱疹になるは・・・入院はことわられるはw
まぁ、最低になったら上を目指すだけw
あ~あ・・俺も北みたいにデカイ花火を上げたいなぁw
鬱蒼としげる夜の密林を縫って、黒い影が凄まじい速度で樹々の間を駆け抜けて行く。
影の大きさを考えるならば、樹々の間に生い茂る低木を薙ぎ倒してゆきそうなものだったが。その巨体に似合わない丁寧さか。若しくは痕跡を残さない様に移動しているかのどちらかが考えられた。
一際巨大なアカスギの様な木の上に駆け登ると、今まで駆け抜けてきた遥か後方に視線を合わせていた。
三キロ程離れた場所に魔法の灯りと、それ以外の灯りを持った複数の人間が、何かを叫びながらコチラを追跡するのが把握出来た。その様子をしばし観察して、優秀な追跡者が少ない事に関心を寄せていた。そして、この現状を招いた自分の迂闊さに腹を立てる。
そもそもヤツが海を渡ろうと考えた処が間違いの始まりだったのかも知れない。自分の感覚が精霊の動きを掴んで居たけれども、強く反対をしなかったのも一因だったと思ってしまう。
其処でノー天気なツレの顔が浮かび上がる。子供の頃からヒトの後ろを付いてきて、その動きの鈍さに何度辟易した事か。しかし、赤ん坊の頃の自分の面倒を見てくれていたことも事実だったから、複雑な感情がない混ぜになってイライラが募ってきていた。
余りにも急いできた為、もう一方の相方が寄越してくれた音の鳴る変なモノは、女戦士に渡してきていから連絡も取れなくなっていた。
しかしながら、体毛が薄い事を気にしている相方がくれた身体に密着する荷物運び用の妙な帯は、非常に役に立っている。ヒトが扱う様に出来ていたソレを自分用に調整してくれ、我ながら器用に使える尻尾でモノを取り外したり、取り出せる様になっていた。
勿論。便利なモノの使用方法も妙に小さな人間が映り出すスリーディドウガ?とかで教えてくれたから問題もない。一番便利だった目に掛ける道具も預けてしまっていたから、遠くの連中の詳細は自分が本来持つ感覚にしか頼れない。いや、本来の自分の感覚を取り戻すにはちょうど良い機会かも知れない。便利なモノに頼りすぎるのは自分の為にはならない。
自分を鍛えなければ、アホの方のノー天気相方を守る事など出来はしない。
今、追ってきている連中が存在するのは、急ぐばかりに街道上を少しばかり走ってしまったのが原因だった。魔獣の中でも貴重種であるのは、母親の最後から学習したはずだったのだが。まだまだ、修行が足りないのだろう。薄毛の相方はソレが分かっていたのか、私の行動をサポートする必要なモノを揃えてくれていた。
そこまで考えたところで腹の虫が鳴る。
チョットシリアスな事を考えていたから気恥ずかしさは結構なモノだった。普段なら誤魔化しついでにアホの頭を叩くところなのだが………
器用な動きでボディスーツのラックに入っている簡易携帯糧食をカジリ、チューブが付いている経口補水液も飲む。程なく腹は収まり、少しして全身に力がみなぎって来る。空腹が治れば、落ち着いて思考も捗って行く。
相方も気になるが、自分のミスを帳消しにしてゆかないと。こう、何とゆうか小骨を歯に挟んだ感じで、どうにも嫌だった。一旦、相方の事は忘れて魔獣本来の態度で事に当たってゆこう。
相方達に言われた、生命が危険に晒さなければヒトを殺してはいけないとゆう決まりも、あの連中には丁度良いハンデになるだろう。
決意も新たに、闇を照らす月明かりに照らされた自分の身体を一瞥して、闇夜に跳び込んでゆくのだった。
その姿を見守る月の女神でさえ、美しいと思わせる
南国特有とはいえ、コチラに流されてから降られる確率が妙に高いんじゃないかと考えてしまう蔵人。そう考えが浮かんでしまえば、コチラの世界に跳ばされて以来あまり天候に恵まれた事はなかったから、自分自身の天候への関与でもあるんじゃないかと勘繰ってしまう。
勿論。そんな事は有り得ない事だから、何気にサレハドからの旅路の途中に秀人に話した時は驚く事になった。
『そうだなぁ。俺達の軍でも、そんな事が何回も起こるとソイツに渾名がついちまうな。え?軍隊ってもっと現実的なモノだと思っていたって?まあなぁ…莫大な金を掛けてドンぱちやるからには、現状に対応した思考になるのは間違いが無い。でもな?突き詰めた状況下ですら、有り得ないことが間々あるんだな。どんなに優秀で信頼の厚い兵士でも、思いもよらない事で死ぬ事もあるし。こんなマヌケが良く教育隊を抜けれたなぁ?って奴が、作戦全体を成功に導くきっかけを作り出す事もあるんだ。で、そんな事が続けば何か自分達の関われないモノがあるんじゃないかと諦観しちまう。でも、そんな事を認めちまうと自分達の存在意義すら霞んじまう。だから、何気ない事に渾名を付けたり縁起を担ぐ様になる。死が身近にあればある程、そんな感性が磨かれてゆく気がするよ?なんて言うのかな?吹けば飛ぶ様な存在でも、一瞬の繋がりを保つ為に冗談や軽口を言い合うのさ。で、オマエさんもダンダンと死と隣り合わせで、感覚が変わってきたんじゃないかな?そうさな…『悪天候の蔵人』ってなネームをいただくかもな?』
サレハドからの移動の際の野営の最中。焚き火に薪を焚べながら、濃いコーヒーを淹れてくれた秀人が俺の言葉に真摯に応えてくれていた。焚き木に照らし出された兵隊の横顔は妙に穏やかで。幼い頃に両親と大晦日に訪れた寺に祀られている仏像を思い出させていた。
一瞬、思い出したことが家の屋根から落ちる滴がポンチョに当たり、大きな音を立てて流れ落ちてゆく光景で消えて行く。流れ落ちた先に視線を向けると、ヨビ…いや、スックとナバーの幸福の残滓である、可能性を奪われた小さな墓が映っていた。
ただ、生きて。未来に向かって歩き続けていた幼い生命。不条理な理由で、一瞬で奪われる人生。方や、自らの意思で祖国と民のために忠誠を誓い。その誓いの為に、不条理な戦いに赴く兵士。全く相反する存在同士だったが、今の自分には双方共に物哀しく、憐れみを抱く想いが浮かんでいたのだった。
小さく、汚れた傾いた木の杭を土精魔法でしっかりと固め。汚れを水精魔法で落とし。乾かす為に火精を周りに小さく浮かべる蔵人。魔法に熟達した古エルフでも難しい、同時多重展開を事もなげに行使していた。
そうして、土饅頭だったモノを。石精魔法も行使して立派なお墓に造り替えて行く。子供のお墓なのだから、御供物は菓子が良いかと思い。秀人から購入した、地球世界のチョコビスケットを供えてゆく。
一通り造り替えて石壁で覆われたお墓は。田舎の道沿いに見かけるお地蔵様の様な外見になっていた。異世界に来て、日本人らしさを消してきた蔵人だったが。自然と手を合わせ。輝くであろう可能性を奪われた小さな魂の為に、平安を祈られずにはいられなかったのであった。
うらぶれた我が家だったモノ。
3人で暮らしていた時は、これ以上無い幸せと輝きに満ち溢れていた家。家族三人で慎ましく暮らしていたけれども笑いが絶えず、その中にダーオの泣き声が響く。それがまた、ナバーと私の笑いを誘っていたあの頃。
そう、もう戻る事はない過去の出来事。
でも、新しい生き方を選んだのも私。ダーオの死の真相と、其れに対する復仇を果たす迄は、どの様な事になっても生きて行く覚悟を決めていた。
「誰だ?・・・・なんだ、お前か?今さら何の用だ?金ならソコソコあるぞ…まぁ、今のご主人様なら必要無いだろうがな?随分と金満なご主人様なんだな。街中の噂が、酒場と賭場にも流れてきてるぞ。上手くやったな?」
光精魔法の灯りを頭上に置いたナバーが、少しふらついた歩き方で家の入口から此方に向かってくる。
「ええ…良き方に拾って戴きました。変わって無いのですね…あの子が亡くなった時…いえ、翼が折れた日か…」
「止めろ!思い出させるな!酒が不味くなる…久しぶりに賭場で大金をせしめたんだ、余計なことなど口にするな!」
先程迄の茫洋と酒に酔っていた姿からは変わり、怒りと哀しみを含ませた声が響きわたる。
「そうですか…申し訳ない事を致しました。でも、あの子が亡くなった時の事は思い出して下さい!」
「ソンなことの為に、この刻の止まった家に来たのか?いいぞ、答えてやろう。あの日、珍しく親父に呼ばれてな。辛気くさい家に居てもしょうがないし、金も尽きて致し、金でもせびろうと実家に向かったのさ。そこで、つがれる儘に酒を飲んでな…酔いが覚めて家に帰ったら、お前ら二人が倒れて居たんだ…その後は、御前も覚えているだろう?」
何か苦しみを伴った、振り返りたくない過去を告げるように話していた。
「では、貴方は!あの子の死には関係が無いのですね!」
ナバーの言葉を受けて。悲しみを振り払うように、魂の奥底から叫び聞くヨビ。
「いや…前々から、親父達の嫌がらせはあったが。その日はシンチャイが来てな…妙にしつこい誘い方だったから、俺が居ては不味い事でもやるのかと、当たりはつけていたがな…」
酔いが完全に覚めた様子で、苦虫をかみつぶしたように話すナバー。
「父親でしょうに!私はどんな扱いでも構わない!でも…あの子は…貴方の血が流れる息子…なぜ…!」
魂の奥底に溜まった激情の澱を、哀しい怒りと共に吐き出すヨビ。
「ああ…!そうさ!片腕と共に全てを喪った憐れな父親さ!どんな事が出来た!生ける屍の俺に…!」
全盛期の片鱗を見るような、精気を取り戻した声で応えを求めるナバー。
「逃げれば良い…二人を抱えて。いや…片腕しかないから、抱えるのは無理か?だが、今だって其れなりの魔法力は在るだろうし。煤けたって、剣の扱いは一流だろう?この土地にしがみ付かなくとも、三人なら生きていけるはずだ。少なくとも、俺よりは強いと思うがな?」
いつの間にか、家の入口に上がってきていた蔵人が。二人の会話に、何時ものペースで割り込んできていた。
「ヨソ者が!訳も知らずに勝手な事を!」
「ああ…よそ者さ…アンタだって、ここから逃げれば同じ境遇だ。今は…もっと酷い屍みたいだがな?」
「そうさ!屍さ…!自分の出自から逃げれない屍だ…どうすれば良かったんだ…?」
「逃げれなければ、死ぬ気で抗えば良い!自分一人だけで死ぬもんか!死なば諸共。その覚悟があれば何にも苦にならん。まぁ…当時のアンタは目が曇っていたんだろうな…抗うのはアンタ一人だけでは無かったはずだがな?」
茫洋とした話し方から一転。精気溢れる覚悟を伴った声が、辺り一帯に響き渡る。
「………俺の目が曇っていた…?」
蔵人の云わんとしていることを理解しようと、自らが手放してしまった未来の残滓である息子の墓と。あれ程までに愛していた女の哀しげな横顔へと視線を流すナバー。
「俺は…自分自身で全てを…喪ったのか…?」
ふらついた体を壁に持たせ掛けて、自問自答するナバー。
「どうだろうな…?だが、まだアンタは生きている。なら、可能性を。未来を築く事が出来る。あんた達の息子と違ってな…」
ナバーに語り掛けるような話しの内容だったが。何処か自分自身にも言い聞かせようとする蔵人。
「……そうか…まだ、俺は生きていたな…ダーオの未来を閉じたのに…スックの献身にも応える事もなく、当てもなく彷徨う幽鬼のようだ…」
壁に預けた躰は崩れ落ち。力の無い仕草で顔覆う。
「…あの日、酔いが覚めた俺に、シンチャイが言い放った…『だらしのない奴だ…一族の面汚しめ!御前が処分出来ていれば、イグシデハーン様のお手を煩う事も無かったはず…やはり長子には御甘い…』とな…酔いが酷すぎて躰は云うことをきかず、意識も朦朧として何もする事が出来なかった…」
崩れ落ちた躰からは力の無い言葉が吐き出され、悔恨が滲み出ていた。
「…貴男の生きた気持ちを聞いたのは何年ぶりでしょうか…想うこと…整理がつかない感情はたくさん在りますが…一つの想いだけは確固として抱く事が出来ました…」
ナバーの言葉を受けて、儚い存在感しか無かったスックが。全てを裁ち切りつつも、何かを決意した雰囲気を纏う。
「
自らが名付けた名前とはかけ離れた輝きを放ち始めたヨビを見ながら、どう答えたか考える蔵人。
「魂とはなぁ…偉く大きく張ったもんだな?如何するよ蔵人。ここまで気合の入った女の決意だ、無下には出来んよなぁ?」
いつの間にか居たのだろうか。蔵人やヨビには、ましてやナバーにすら感じ取る事が出来なかった存在が、家の側の大木の裏から出て来ていた。
「其処まていわれてはな…了解するしかないじゃないか?だが、鍛えるだけだヨビ…御前が考えていることは大体見当がつく。相手の実力は見当もつかないが…ヒデトが何とかしてくれるだろう?」
「おいおい…御前が所有者だろうに?何で俺に振るのよ?ただの兵隊デスよ?」
「ああ、そうだったな?ただの兵隊だな…異世界で宇宙戦争してる。用務員していたシガナイ一般市民には縁が遠い存在だ。だからこそ頼りになるかもしれないよな?ハゲの兵隊さん?」
笑いを含めた颯爽とした表情で。いつの間にか横に来ていたハゲのオッサンの肩に手を置く蔵人。
「ハゲデハナイ!!スタイルだ!ナチュラル経年変化スキンヘッド!ハゲとは違うのだよ!ハゲとは!」
「努力は認めるけと…鏡見せようか?見にくいならテンチョウブは手伝うけど…?」
可笑しさを堪えながら、自分より背の高いヒデトのテンチョウブを覗こうとする蔵人。
「まぁ良い…俺の頭に付いては今度ジックリと話し合うとしようか…」
そう言いながら、となりでジャンプしている蔵人に目にもとまらぬ足払いを掛ける秀人。
悲壮感だらけの雰囲気を、オッサンとオッサン入り際の二人が衛星軌道まで吹っ飛ばす。
そんな二人を呆れた表情で見るナバーとスック。しかし、直ぐさま考えを纏めて目を合わせる二人。
「待ってくれ…!スック、まさか親父に勝負を挑むのか?いくら何でも無茶だ!アイツの実力は本物だ…俺ですら正面切ってヤレバ返り討ちになるだろう…」
「…だからこそ、お二人に鍛えて戴くのです!例え敵わなくとも、ダーオの仇に一矢報いる…」
スックが決意を語りきる前に、蔵人が遮る。
「止めておけ、鍛えるのは構わないが仇討ちは無謀過ぎる…御前はオレの大切な所有物だ。命を懸けるなど許すことは出来ん」
「…しかし!仇をとるのが私の悲願…如何に
主人と奴隷。何方も大切な物の為に譲れない話になっていた。
「まぁまぁ、お互いに譲れないのは分かった。確かに元旦那が言うことは間違いがないよ、没落一方の家を持ち直した傑物だ。ヨビさんじゃ勝負にならん」
二人の間に割って入る秀人。
「…?何で知ってるんだ?」
「マァ…この国のエライサンから頼まれた事にヤッコさんが絡んでいてね」
「…やはり私では…」
オッサンコンビの会話に、自分の実力の無さを痛感するヨビ。
「そう悲観したもんでもないな。要は仇が討てれば良いんだよな?」
「そんな簡単な話なのかよ?安請け合いする話じゃないぞ」
「そこら辺は…マァ身内もいらっしゃるしなぁ…?」
視線をナバーに合わせて、話を濁す秀人。
「俺が居ては不味い話しなのだろうな?」
諦めたように、当てもなく歩き出すナバー。
「イヤイヤ…身内で跡継ぎのアンタが居てくれた方が話しが早い。蔵人、ヨビさん。席を外してくれると助かる。なに…大した事じゃないから。宿に帰って待って居てくれ?」
軽い口調だが、有無を言わせない雰囲気を纏った秀人に、うなずくしか無い二人だった。
ふたり連れ立って、宿に向かう道。
貧民街の外れに建つヨビの家からは、一度街の外に出てから正門に廻った方が早い為、寂れた裏門から外壁に沿って道が続いていた。
以前のような儚さは消えて、確たる目標を定めた決意漲る雰囲気を漂わせたヨビが、蔵人に付き従っていた。
「…気になるのか?」
蔵人の傍で影のように従うヨビは、其れとなく後ろ髪引かれる想いが動きに出ていた。
「…いえ。ヒデト様が行うことに間違いは無いでしょう。ただナバーが、どう係わるかが…」
「アイツに任せておけば、万事上手くいくさ?御前だって成長してるじゃないか?元旦那が気になるのは分かるが、先ずは仇の話しが先だな」
其処まで話したところで、警戒監視モードの滞空ドローンから警告が入る。
装備された索敵機器が走査線を飛ばして、対象の情報を脅威度も評価して蔵人に知らせていた。
突然ヨビを抱き上げ、身体強化を即座に行い。現在地から10mも離れる蔵人。
その瞬間に、薄暗い空から黒いモノが舞い降りたのだった。
「……御前か…。早かったな?」
いきなり抱き上げられたヨビは、蔵人の能力に驚き。更に、空から舞い降りた黒き幻獣の姿を見て戦慄する事になった。
しかも、蔵人からでた言葉は…この幻獣との関係が在ることを語っていたのだ。
幻獣に脅威を感じて居ないのか、私を降ろして近づいてゆく蔵人様…とてもではないが獣人としての本能が、絶対上位者である存在に対して、身を固める事しか選択出来なくなっていた。
無防備に近付く蔵人
「ナァンダァ…奇襲が失敗して悔しいのかな?フ~ン俺だって成長してるんだ。何時までも簡単にいなせるとは思わんことだな?大体だな、御前のガキの頃…」
そこまで言ったところで。一瞬、黒い影が蔵人に覆い被さり。その姿を搔き消してしまう。
悲鳴にならない声を上げるヨビ。
しかし、ヨビが想像した事にはならず。巨大な鼻先と前脚、長くしなやかな尻尾を使って蔵人に強めなチョッカイを掛けていた…
「ヤメロ!初激を躱されて悔しいのはわかる!痛い!爪っ…入ってル…!」
黒い巨大な幻獣に弄ばれる蔵人を見ながら、何もする事が出来ないヨビ。助けに向かうには雰囲気が緊迫しておらず、どうにも介入しようがなかったのだった。
滞空した状態から街を見下ろす。
ヒデトから説明された、風精を圧縮して後方に吹き出す魔法により圧倒的な跳躍力を手に入れていたユキシロ。
ハンター達を死なせずに撃退して、満更悪くない気分のまま跳躍と滑空を繰り返し、目的の街にたどり着いていたが。
いかんせん。幻獣単体では街に侵入する事も出来ずにいて。自分自身の迂闊さを呪うことになっていた。
三日と言われた行程を、僅か一日で到着したが。前述の理由もあり、街を伺いながら周辺で狩りをしていたのだった。そして手に入れた一角兎を平らげていたが…余り美味いと思わなくなっていた。仕方なくかぶり付きながら、ハンター達との闘いを復習するユキシロだった。
蔵人の場所まで急ぐ自分を見つけたハンター達を威嚇するように、樹上からしなやかな巨体を見せつける。
「オイ!あそこだ!北側の木の上!」
「いたぞっ!すげぇよ…本当に
「何呆けてやがる!油断するな!捕獲出来たら一生遊んで暮らせるぜ!」
「見るからに大物だ…だがな…雷に弱いのは知ってるぜ…雷精魔法を!」
何やら人間どもが騒いでいるが、闘う準備を整えた自分には意味を成さない。
ヒデトから受けた装備を確認し、ハンターの群れのリーダーに狙いを定める。未だに、此方を見つけた事に興奮して態勢を整えていない…
尻尾を器用に使い、装備ラックから連続して筒状の物体を等間隔に投げ込む。
瞬間。凄まじい爆音と閃光が周囲を覆い尽くし、ハンター達の視覚と聴覚を混乱に陥れる。
そして閃光が収まると、ハンター達全員が倒れ伏していた。
月明かりに照らされたユキシロが、弱者を哀れむように。脚先と尻尾に付けられた格闘グローブを誇らしげにかざすのであった。
思い返すだけでも、我ながら上手くいった闘いだったが。其れなりにヒデトの料理に慣れた舌は、生肉に飽きを示していた。
そんなときに、妙な獣人のメスを連れた蔵人を見付けたのだ…上空から舞い降りて、散々に意趣返しを企んだのだが…初撃を躱され、生意気な態度をとる始末…自分自身の腑甲斐なさと、今まで溜まった不満をぶつけても許されると思い、チョイと強めにぶつけテミタノダッタ。
雪白の強烈なスキンシップを受けて、失神する蔵人…
流石にやり過ぎたか?!と、考えて周りを見回して助けを捜すユキシロ
「おいおい…仲が良いのも大概にしなさんな?え?大丈夫だよ。そんなに柔じゃないって。心配してんのか?可愛い処もあるんじゃないの?イテぇ?!やめれ?蔵人の手当が先だろ!」
恥ずかしげに尻尾でチョッカイを掛ける雪白をいなしながら、治療を行う秀人。
「まぁ…久し振りだな相棒」
「変わりなくて何より。イラン心配をかけたね。オッ?其れなりに装備を使い熟してるね」
三人で?親しく話す姿を見て、落ち着きを取り戻すヨビ。
「話してなかったな…俺達の相棒の雪白だ。宜しく頼む」
少し誇らしげに幻獣を紹介する蔵人だった。