宜しくお願い致します。
追記。
大棘地蜘蛛の討伐レベルが、原作をよく読んで見ると三つ星以来になっていました。しかし、月の女神の女性達が討伐したのは10数人で。さらに言えば、三つ星クラスはあまりいないようなので。単独討伐は三つ星。複数のパーティならば、六つ星に設定してみました。
原作をよく読まないとダメですね。
壮大な光景を誇るアレルドォリア山脈。その頂は、氷の精霊達に許されたモノしか近づくことが出来ない。その頂から遥か麓近くの針葉樹林帯。
アレルドォリア山脈において、『飛雪豹』と並び捕食者の頂点に立つ『大棘地蜘蛛』の領域であり。その存在を知る者達の軽軽な侵入を拒んでもいる。
その『大棘地蜘蛛』の領域で、見慣れない装備をした男が『大棘地蜘蛛』の死体を解体していた。もし、独りでこの魔獣を狩ったのならば、三つ星以上の実力を持ったハンターと同程度の
「くそう・・・第245星系の原住生物にもこんなのいたなぁ・・?2m程だったが、ウジャウジャ集団で動き回って襲ってきたよなぁ。勿論、全部吹き飛ばしたが、体液が粘っこくて気持ち悪かった。コイツも、似た感じで気持ちが萎えるなぁ・・。」
陽が中天にかかろうかとゆう、麗らかな陽気の下でブツブツと独り言を呟きながら、作業にいそしむヒデト。
「さて、こんなもんでいいか・・・?『ポケット』」
いちいち声に出さなくてもいいのだが、一応、作動確認も含めている。
視線の中ほどにウィンドウが表示される。視線に入っている収納可能なモノが緑のハイライトで表示されていた。
「便利なもんだな・・。あれ?他にも『収納』出来る物があるのか・・?ああ・・戦いで亡くなった男たちの装備か・・・。」
志半ばで、戦いに敗れ斃れた男達・・。どの様な人生を歩み、どのような思いで亡くなって逝ったのか・・。推測する事はかなわない。
この世界に、死後の世界などがあるか知らないが。雄々しく戦った者達の魂に幸多からん事を・・。しばし、瞑目するヒデト。
「さて・・この人達の遺体も運べたらいいんだが。10体近くの遺体・・、装備も含めると1トン近くになるから運搬限界を超えてしまうな・・。どうするか・・?」
同じ戦いを生業とする者同士、このまま遺体を放っておいて野獣達に食い散らかせてしまうのは忍びないし。家族が居る者もいただろうから、還らせてあげたい気持ちも強い。
『ポケット』の収納で一体か二体、状態が良い遺体を収納して運搬出来ないモノだろうか?もし、可能ならば、この先の集落か村で引き取ってもらい、その他の遺体を回収しに来ることも可能か・・?
それに、戦いで斃れた家族を届けた者を、ぞんざいには扱わないとも考えられる。希望的観測だったが、何も身分を証明できるものが存在しないのだから、それに頼るしかなかった。
そう考えて、『ポケット』の収納で胸を刺し貫かれて絶命した男を選ぶ。対象の男性がハイライトされたあと、『解体』と『運搬』の二つのチェックボックスが出てくる。
『解体』のチェックは表示が暗いままだが、『運搬』は可能の様だ。
「お・・・?行けそうだな。しかし、『解体』って出てきたがなんだ?これもスキルの一種なのか?」
試しに、スキル欄を確認してみるが『解体』の表示は無かった。ただ、蜘蛛を討伐したからなのかスキルゲージが少し増えていた。ほんとに微量だが・・・。
この調子じゃ、蜘蛛だけでも千体程度狩らないとスキルポイントは貰えそうにない。
まぁ、スキルは覚悟していた。『生命探知』だけでも十分すぎる。それよりもご遺体を『運搬』に入れておこう。残り255kgしか運べんな・・・。
そうだ、『解体』って、どこの項目だ?
「・・・?それじゃ他の欄かな・・・?」
気まぐれに『商店』に合わせて項目を調べてみる。相変わらず
確認してみると、以前は『稼働10分あたり1万円。買い取り、一千万円。』だった筈が『稼働一分あたり1万円。買い取り1億円』に変わっていた・・・。
「どうゆうこった?・・・・?ユーザーカスタマーに連絡してください・・?」
金額の説明文の下に、以前は無かった『緊急のお知らせ』が表示して在り。要確認の赤文字と一緒に、カスタマーサービスの連絡リンクが張ってあった。
気になったので、リンクからカスタマーサービスに跳んでみる。
『神界オンラインサーヴィスへようこそ!大天使ウリエルが承ります!!』
ウィンドウの端にサブウィンドウが開き、快活な声と肩まで綺麗にカットされた金髪ショートのボーイッシュな感じの女の子が対応に出て来ていた。
「あ・・?ああ・・。ウィンドウに表示されていた金額についてなんだが・・?」
ウリエルさんの勢いに飲まれて、つい質問してしまう。その前にイロイロとツッコミどころ満載なんだが、日本人の血は争えない・・。形式に抗うことが難しい・・。自分でも、どうかと思うが・・。
『はい!!有難うございます。質問の件は、『ポケット』の項目の『商店』の金額表示に対する緊急の告知の件で、お間違いないでしょうか?』
サブウィンドウに表示されたウリエルさん・・。ご丁寧にヘッドセットを身に着け、制服の胸元には顔写真入りのIDカードが留めてあった・・・。
「そうだ。その事についてリンクから跳んだんだが・・?ここで合ってるんだよね?」
大天使に質問しているよ・・俺・・・。いやいや・・・天使っていたのか・・?そうだ・・神もいるんだったっけ・・・。
『はい!!ヒデト様の仰るとうりです。こちらで、間違いございません。ご指摘の件はコチラのデーター入力のミスで誤表示されていました。誠に申し訳ありません・・。』
先ほどまでの明るい表情が消え去り、目線をカメラから落としながら気落ちした声で答えるウリエル。
「いや・・、君のせいではないから。誤表示だったのかい?」
どの時代の男でも、きっと赦してしまうに違いない、憂いを含んだ表情をされてしまったら、オッサンは降参するしかない。
『お心遣い、ありがとうございます!!本来の数値が反映されない状態がございまして。いま、アップデートをオンラインで行っております。お客様の顧客データは厳重に管理されていますので、流出する事はございません。あ、今、完了いたしました。これで、誤表示は解消されました!!』
「ああ・・ありがとう・・。少し、質問していいかな?」
『お答えできる範囲でしたら、ご希望に添える様に致します。』
憂いが一瞬で消え去り、抜群の笑顔で応対する。
「さっき・・他のサーヴィスの人の応対の会話が聞こえて来たんだけど・・エクスカリバーとか、グンぐにーるとか・・?」
『申し訳ありません!他のお客様の個人情報は、提供できないんです・・・。』
心底、申し訳なさそうな表情で、答えるウリエル。
『でも・・・・。データー入力の誤りは無かった筈なんですが・・・。『神』様が・・『そっちの方が、面白い』って仰って・・他の『勇者』や『転生者』の方も被害に遭われて・・・これ・・内緒ですよ・・?』
周りを一度確認してヘッドセットを外し、囁き声で答えてくれる大天使。仕草がいちいち可愛いのは何故だろう?
「ああ・・・?ありがとう。他に無いかな・・?」
マリブのビーチでいちゃついてるクソ野郎を思い出しながら、極力表情に怒りを出さない様に気をつけて応対する。
『今回は、これ以上はございません。ご迷惑をおかけして、誠に申し訳ありません。ささやかながら、後日お詫びの品が送られます。』
「ああ・・。ありがとう。助かったよ・・。」
『担当は、大天使ウリエルが承りました。今後とも、よろしくお引き立てのほどお願い申し上げます!』
初めて見せた笑顔を残してウィンドウが閉じられる。
「しかし・・・天使達にサーヴィスセンターを遣らせるとは・・・。あの『神』大丈夫なのか・・?」
思わず、疑問を口にしてしまう。
いや・・・そこがツッコミどころじゃない気もするが・・?イロイロあり過ぎて、流石に冷静な思考を維持することが出来ない・・・。
でも、ウリエルさん可愛かったなぁ・・。同年代の男達が、癒しを求めるのも頷ける話だ・・・。
そうおもって、カスタマーサービスセンターへの直リンクを保存するヒデト・・・・。
「いやいや・・・そこじゃない・・。そこじゃないだろ?」
自分自身でツッコミを入れるオッサン・・・。誰も見ていないのは確認済みだ!!でも、気持ち悪いなぁ。
いや・・ホントにどうかしているな・・。確認したかったのは他のモノだ。『商店』の欄の『解体』にポインターを持ってくる。
『解体』レベル1。10万円。『視覚内に存在する解体可能なモノが、手を汚さずに瞬時に解体され、『収納』されます。レベルアップと共に、『解体』可能な大きさが増え、『解体』技術も向上。『解体』物の損壊が少なくなり、品質・価格ともに上昇します。最大5レベルまで購入可能。
おお・・!こいつは凄い!!いちいち手を汚さずに『解体』出来るのは有り難いし、『収納』まで行えるなら安全に行動できる時間が増える。
『解体』最中に、匂いに惹かれて猛獣などがきたら目も当てられない。コイツは是非、購入しなければ。
そう思って、今解体し『収納』した大蜘蛛の査定金額を見てみる。・・・・7万6千円・・・二万四千円足りない・・・。どうするか?
自然と、食い残された装備に目が行ってしまう・・。試しに、視覚内に入った装備を『収納』し査定してみる。
雑然とした集団だったから、大した装備では無い様だ。目標金額まで残り八千円・・・。
ふと、『運搬』に入れた御遺体の装備の査定を見てみる・・・。表示額は八千九百円・・・。いや・・駄目だろう?仏様のモノに手を出すなんて・・・。でも・・・。
「やめた・・・。獲物は後から幾らでも仕留められる。それよりも、今は『ヒト』と接触しなければ。それに、運搬重量を越えてしまうしな・・・。」
自分の中の『声』に従ってここまで生きて来たんだ。それを変えるのは今までの人生を否定する事と一緒だ。賢い生き方じゃないかもしれないが、心に霧を被せたくはない。
声に出す事により、改めてこの世界で生き抜いていく決心を固める。お天道様が見てるってな?うん・・・?お天道様?
お日様と言えば、南国のビーチ!照り付ける太陽!美しく碧い海!白い砂浜!素晴らしい女達!!そして、黒の『神』!!!??
「くそう!!!よりにもよって、あのオタンコナスを思い出すとは・・・。絶対に還ってヤル!!!」
覚悟を新たにし、復讐の念を増大させた
谷間を抜け、先程の戦闘から逃げた男達の足取りを追跡する。体格的にも立派で、装備の重量もあったのだろう。痕跡を辿るのは、さして難しい物では無かった。
それに、追跡の途中で投げ捨てられたであろう盾や剣、槍なども拾ってゆく。あの蜘蛛、よほど恐ろしく凶悪な存在な事が推測できる。
その先にあった丘の上の野営地を通り越し、丘を降る辺りから夕焼けに染まりつつある村が見えてきた。ところどころに、夕餉の支度の煙が上がっていた。
村の様に見えていたが、その外観は堀と土壁にぐるりと囲まれていたし、
堀の幅は水こそなかったが小舟が行き交うこともできそうなほど広く、土壁は一般人の背丈のほどはありそうであった。
そして、野営地の丘から続く踏み均された道が、少しくたびれた感じの木造の門に向かって伸びていた。
雪山で、しょうもない会話ばかりでウンザリして。ヒトの気配を辿って麓に向かってみれば、大蜘蛛が人間たちを食らう場面に遭遇し。金を稼ぐために、蜘蛛の解体とゆう気の萎える作業をした後に目にした光景だったからか、非常に眩しく瞬いて見えた。
そういえば、この世界に来てから人の生存圏に辿り着いたのは初めての事だった。しかし・・慎重に行動しなければならない。
最悪、その場で処断されてもおかしくは無い。身分も証明できない、見も知らない格好の男が現れれば、疑ってかかるのは当然の行動だろう。
しかも、大蜘蛛に10名程の人員が殺戮され。生き残って帰って来た者が、警戒するように忠告したのは想像に難くない・・。
「さて・・どうするか・・?ここからが正念場だぞ・・。」
自分自身に言い聞かせる様に、独り呟くヒデト。
まず、戦闘服は論外。この世界のモノでは無いから見た事も聞いた事も無いだろう。勿論、顔の判別がつかないヘルメットなど、もっての外だ。
服は、どうするか・・?流石に全裸で、死体を抱えていくわけにも行かないだろう・・。俺だったら、問答無用で射かけるね。何かないか・・・?
あっ・・・・?そういえば『神』が遊びで用意した装備があったな・・。あれを使うか。早速『ポケット』を念じて、装備交換を行う。布の服は、遺体の装備の下の服装に近い。木の靴は・・・無理そうだ。痛くて履けないしな。
ヒノキの棒・・・皮の盾・・・・駄目だろう?冗談にもならない・・。
布の服に、裸足。腰に大型ナイフを装備したヒデトが、二つの遺体を両肩に担ぎ、村に向かって歩き出す。この世界の命精魔法で強化しなければ行えない事を、苦も無くやって見せていた。
「さて・・・。どちらにせよ、行かなければならない。うまく幸運の女神が微笑んでくれると良いな。」
こんな事でいちいち女神さまにお祈りしていたら、女神さまのスケジュールが埋まっちまうな。
ぶつくさ言いながら、髪の薄い男が美しい夕日を背にして村の門にむかって踏み出していた。
「止まれ!!何者だ・・?!」
村の門の手前、30m程度の場所で誰何を受ける。心配だった言葉は明瞭に聞き取れていた。聞いた事も無い音声だったが、何故か聞き取れるし、理解も出来ていた。
「助けてください・・・!!大蜘蛛に襲われていた人が居ます!!」
意味を理解できたので、返事を返してみると。自分の言語が相手方の音声に変換されて発声されていた。なんとも、不可思議な状況に。助けを求める声が棒読みになっていないか心配だった。
「なに・・!?ザウル達の仲間が生きていたのか?!誰か!協会に連絡に行け!!他は、彼らの救護だ!」
門衛の中でもベテランに見える30代の男が、テキパキと支持を出している。その指示を受けて、夕餉の時間に成ろうとしていた村の門周りの雰囲気がざわついてきていた。
「ああ・・?!こいつはテリダスじゃないか・・・。」
門衛の一人が、体格のいい方の男の兜を外し、呻く。
「こっちは・・。ダーデイッシュだ・・・。息は・・もう無い・・。おい!!家族に知らせてやれ!それとブラゴイ家にも使いを出せ!」
もう一方の小柄で、狩人の様な軽装の男を見ていた別の門衛が、周辺に群がって来た村人に指示を出す。
二つの遺体を担いできたヒデトに対しては、門衛は警戒の色を隠さず。騒ぎを聞きつけて来た、村人達は好奇な視線を寄せていた。
「で・・事情を説明してもらいたいな?おっと・・名を名乗ってなかったなサレハド自警団長グアディだ。それと、サレハドのハンターの遺体を持ち帰ってくれたな・・感謝する」
先程から、的確な指示をおこなっていた男が。ヒデトに対して事情を聞いていた。
「ああ・・ヒデトです。雪豹に襲われて、逃げようとして雪山から滑落してしまい。戦いの音が響いてきたので、現場に向かったらお二人の遺体がありまして・・・。どうも、滑落した辺りから記憶があやふやで・・名前しか思い出せないのです・・・。」
なんとも年齢と体格、風貌に似合わない自信の無い話しぶりに。門衛や村の人々は憐れんだ視線を投げつけていた。
二人の遺体を担いでいたせいもあって、遺体から流れ出た血が全身いたるところに付いていて。しかも、その血が乾き始めていたから、凄まじい様相になっていた。
「そいつは・・・災難だったな・・。まぁいい・・。二人の遺体を持ち帰って来てくれた礼もしなければならん。それに、その格好では落ち着かないだろう?ヘルファン!!居るな!?湯浴みに案内して、サイズがあった服を勧めるんだ!」
完全に信じた訳では無いが、少なくとも危険人物では無いと判断したグアディがヒデトの様子を見て言った。
「有難うございます・・・。」
グアディの話を聞いて、感謝の言葉を掛けるヒデト。
「なに・・・ドルガン人は情に深い・・。辺境だから皆で協力しないと生きていけんしな?だが、支度が済んだら、より詳しい話が聞きたい?」
グアディのもっともな言葉に頷くヒデトだった。
サレハドを赤く染めていた美しい夕日がアレルドォリア山脈に沈み。サレハドの至る所の家や店で明かりが燈り、夕飯を囲む家族の声や、酒場の賑やかな話声が響いていた。
その楽しげな音が響く中、門のすぐそばの屯所でグアディ自警団長と机をはさんで向かい合って座り。事情を聞かれているヒデト。
事情を聞くといっても、尋問する様なものでは無く。世間話に興ずるようなものだった。
「で・・・、2人を担いでサレハドまでやって来たのか?」
机に出されていた、サレハド周辺で採れる薬草を煮込んだお茶の入った木のコップに口を浸けながらヒデトに確認を求めるグアディ。
「ああ・・・。いまだ、記憶が曖昧だがな・・。足跡から判断するに、巨大な蜘蛛の様な生き物だろう?」
年齢が同じ事が分かり、グアディも気さくに声を掛けてくるので、仲間に話す様に答える。
「
蜘蛛の話に大きなため息をつきながら目を伏せる。
「ああ・・・。多分、持っていたのだろうが滑落した時には無かった・・。記憶も戻らん・・。」
「仕方がないな・・。身分を証明ができなければ、サレハドに滞在することは出来ん・・・。」
グアディの言葉に、大仰な仕草で天を仰ぐヒデト。
「ふ・・、そう大袈裟になるな。方法が無い事も無いぞ?ハンターに登録するんだ・・・?」
グアディの提案に、身を乗り出すヒデト。
「興味が出たか・・?他にも探索者や傭兵などの協会が存在するんだが、サレハドは田舎だからなハンター協会しか無い・・しかも、かなり所帯も小さい。身分保障は俺がしてやる、武器は使えるか?まぁ完全装備のハンター二人を担いでアレルドォリア山脈から下って来たんだ。それだけでもやっていけそうだ?」
「これから登録出来るのか?」
俄然、興味とやる気が湧いてきたヒデト。
「この時間は・・・まだ、大丈夫だな・・。それに、閉店時間の方が煩い支部長もいない。スグに登録できるだろう。」
「よろしく頼む・・・。」
グアディに向かって深く頭を垂れ、感謝の念を表すヒデト。
門の側にある屯所から一本道を進んでいくと、煉瓦と石造りに木材を組み合わせた建物がハンター協会サレハド支部だった。
見た目は完璧に辺境にある宿屋と酒場をたして二で割り、さらに事務窓口を足した感じだった。
営業時間も差し迫っているらしく、事務窓口では二人の若い職員が今日の業務を纏めているようだ。酒場の方はヒデトより薄毛の度合いの強い中年のバーテンダーが、カウンターを拭いていた。
どうやら、事務と酒場では営業時間が違うらしい。
「おう・・!久し振りだな?ラーヘン。終わり際で悪いがハンター登録を頼む。」
協会の建物に入るなり、忙しく業務を行っていた若い二人の内、年かさの方に声を掛けるグアディ。
「グアディさん・・。もう、今日は終わりにするところだったんですが・・・?」
業務終わり際で、面倒な書類手続きをしなければならない新人登録など受けたくも無いと、表情と態度に表している。
「なに・・・書類を書いておけばいいだけだ。さして時間もかからん。お前も聞いているだろう?この男の事を。ドルガン人として受けた恩義は返さなければな?それに、お前の婚約者はテリダスの嫁さんと従姉妹だったろう?」
グアティの言葉に、苦虫を噛み潰したような表情のラーヘン。確かに自分の関係者が恩を受けている。それを返さないのはドルガン人の気質には似合わない。
「分かりました・・・。書類の記入だけにしましょう・・。コチラに名前と出身地を記入してください。ああ・・私が書きますので、口頭でお願い致します。」
面倒になって来たのか、自ら記入するラーヘン。
「では、登録完了です。六つ星のグアディさんの推薦あれば大抵は問題ないでしょう。でも、仮登録ですからグアディさんが先導者をして下さい。あ・・!?グアディさん。ハンターの細々したことは説明しといてくださいね。これは、登録証明書と十つ星のタグです。え?証明書の写しが欲しいんですか?分かりました、チョット待ってください・・・これです。」
面倒な事を隠さずに、不機嫌なまま手続きを行うラーヘン。就業時間はとっくに過ぎていて、もう一人の職員は『何も見ていません』とゆう様に帰ってしまった。
「何から何まですまんな?」
「いいんです・・・。彼女に叱られたくないですからね?それに、ハンターが増えれば、魔獣被害も少なくなるでしょうし。」
もう既に不機嫌な顔ではなく、少し満足気な笑顔を浮かべるラーヘン。
「有難う・・。恩は忘れない。」
「では、新人さん。明日からしっかり働いてもらいますよ?」
帰り支度も済んだのか、戸口に向かいながら言葉を返してくる。
「それじゃ、明日から十つ星ハンターさんだなヒデト?今日はもう遅い、家で飯を食っていけ?泊まるところは屯所のベッドが空いてるから其処を使ってくれ。」
ヒデトの肩を叩きながら歩いてゆくグアディ。そのグアディの後を、肩を竦めながらバーテンより髪が在る男が歩いてゆくのだった・・・。