軌道降下兵   作:顔面要塞

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 何とか次の話が間に合いました。この先は予定が難しく成って来るんで、待っている方。今から謝っておきます。
 でも、間に合いそうなら年内に一話更新したいなぁ。

 御気に登録、ありがとうございます。淡々と進んでいくんで、読む人いるのかなぁ?なんて思いながら書いたので。素直に・・・嬉しいじゃないか!!です。

 では、また。妄想を暴走させて逢いましょう。


勇者・・・?

アレルドゥリア山脈に陽が落ちる。ドルガンの中心都市タンスクに生活の証しの火が灯る。中洲に築かれた憲兵の屯所にも灯りがつき、灯りに照らし出された仕事帰りの人達の影を、川面にユラユラと投げ掛けていた。

 

「よう!今日も大猟だな?…おお!今度は十六匹かよ?ヒデトのおかげで、草原モグラの被害も落ち着いてきたし。大したもんだ。」

狩りを終えたヒデトの、二つの天秤棒で吊り下げた草原モグラを見て声を掛ける守衛長のガトス。

 

「まぁ、魔力が常人よりも少ないのが役に立つとは思わなかったよ。それにガトスには先導者を引き受けてもらった恩もある。」

天秤棒を降ろし。腰袋から酒瓶を取り出し、ガトスに渡す。

 

「そんなに気を使わないでくれよ?まぁ、貰えるものは断らないがな。」

そうヒデトに告げて、後ろに居た部下に瓶を投げる。

 

「そう言ってくれて嬉しいかぎりだ。それと、草原モグラを見つけるのが難しくなってきたから、そろそろお役ごめんかな?」

「俺たちにとっては、喜ばしい話だがな。どうだ?そろそろ本格的な狩りを経験してみちゃ?アフレザも依頼を厳選していたぞ。」

「少し考えてみるよ。魔法は苦手だから、組んでくれる連中が居るか分からんしなぁ?」

 

自信なさげに肩を竦め、ガトスとの話を切り上げて天秤棒を担ぐ。

 

「お前は一人の方が上手くいきそうだからなぁ?また、話があったら遠慮せずに来いよ?」

「ありがとうよ、先輩。けれど、その度に薬草酒を持って来なきゃならん。」

「そいつが義理ってヤツよ!アフレザ に宜しく言っておいてくれ!」

 

草原モグラの依頼を受けてから一ヶ月が経過し、ハンターランクは九つ星へと昇格していた。最初の依頼を簡単にこなせた為に、農家から 指名の依頼が殺到。アフレザも積極的に仲介を行なったから、タンスクのハンター達の間では『モグラ狩り屋』とか『農家の守りて』などと呼ばれる事になってしまった。

実際には、狩るのが難しい草原モグラを簡単に仕留めるヒデトに対しての羨望と。タンスクの重要産業たる農業を、結果的に守る事になった害獣駆除への賞賛も含まれていたが。

 

困難な塩漬け依頼を瞬く間に達成して行くヒデト。協会としても、評価が下がる要因となる問題を解決してくれる新人に期待して、すぐさま先導者を紹介する事となったのだが、ここで問題が発生する。

魔力が極端に少なく、それ故に草原モグラを簡単に仕留めるヒデトに先導者が同行するのは、獲物を取り逃がす事と同義だからだ。かと言って、有力なパーティに組み込んでさっさと昇格させるのも、ヒデトに依頼が殺到していて、収穫が完了する一ヶ月先まで空きが無い。

頭を抱えた協会は特例措置を検討したのだが、ドラゴンに類する災害魔獣を倒した訳では無いからそれも難しい。悩んだ末に出した答えが…書類の偽造だった。

数多くいる九つ星の先導者の詳細なんて、誰も気にしないし。本部に送る記録にしても、支部全員が『知らなかった事』にしてしまえば良い。辺境の協会だから、往々にしてミスがある事は日常茶飯事。ヒデトを昇格させても誰も困らないし、むしろ関係者には益しか無い。

 

結論が出てしまえば官僚組織は行動が早い。先導者にはタンスクの守衛長で五つ星のガトスが推薦され、快く承知して貰い。ヒデトの昇格の手続きが完了する。ガトスは同じ農家出身者のアフレザと幼馴染だったのも大きかった。

かくして、ヒデトの九つ星昇格は完了する。魔獣被害が深刻な辺境らしい決着になったのである。

 

今日も、いつもと同じ天秤棒を担ぐヒデトが協会に向かう光景が繰り返される。毎日のように張り出されていた駆除依頼が、数える程になり。ガトスの言う様に他の依頼をアフレザに相談しようと考えていた。依頼達成の報酬もたまり、魔獣討伐では貰える経験値が少ないスキル値が2ポイントたまっている。

どうやら、困っている人達の依頼を完了すると多量に経験値が増える様だ。『ポケット』のスキル欄を見ながら、広場を横断しようとしていたところで頭上から声が降ってきた。

 

「よう!!久し振りだな?ヒデト!!元気そうで何よりだ!!」

「あいも変わらず凄い筋肉だな?どう鍛えれば、そんな躰になるんだか…。」

「羨ましいか?そうだろ、そうだろう!!どんなに憧れても、こいつばかりは人種には無理だろうからな!」

「…まぁ…そうだろうな…」

 

上から降ってくる声が、重砲の弾幕破砕射撃音に切り替わる。盛り上がった筋肉を自慢げに見せ、暑苦しいポージングを極めるマクシーム。

こんな筋肉ダルマが一つ星に認定される協会の規約は、いったいどうなっているのだろう?もしかして、過剰なまでの脳筋がこの世界のルールなのか。正直わからなくなってくる。

なんとも言えない表情でマクシームの筋肉ダンスを見るヒデト。広場で行われる異常な筋肉ショーに人々の視線が集中すると、ますますヒートアップして行くスーパー筋肉漢ダンス…

 

「で…今日はどうしたんだ?」

流石に広場の往来を邪魔してきたためと、他の一つ星達の名誉の為に話題を変える。

 

「ああ、大した事じゃ無い。ローラナに戻らなきゃいかん用事ができて、サレハドからチョットひとっ走りしている最中に、お前を見かけたもんでな?」

『やはり、筋肉は至上だな…』などと呟きながら、観衆に手を振り。ヒデトに向き直る。

 

「 急ぎの用事なんだろう?こんな所で油を売っていて良いのかよ?」

命精による肉体強化によって、湯気が上がる程に熱を出している筋肉巨人を見上げる。

 

「肉体強化も万能じゃ無いのさ、身体が熱を持ちすぎちまう。で、少し冷やさないとならない。」

「精霊魔法の氷精で冷やしながら行けば良いんじゃ無いのか?」

「巨人種は命精は得意なんだが、精霊魔法は苦手だ。相性が良くないのかもな?」

「面倒な事で…酒場か?」

「お前も協会に行く所だろう?一杯付き合えよ?」

 

協会の大きなスィングドアに顎先を向けるマクシーム。未だ放熱を継続している肉妖怪の有無を言わさない態度に辟易しながらも、ついて行くヒデトだった。

 

「ほう…?九つ星か? さっきの窓口での遣り取りを聞くに、八つ星への昇格も近そうだ。」

透明度が高いとは思えない、燻んだグラスを傾ける肉キング。

「で…要件は?ああ…安心して良い。このタンスクにはブラゴイ家の息が掛かった連中はいない。」

どう見ても子供のオモチャサイズにしか見えないジョッキを見ながら、肉壁の目を見上げる。

 

「知っていたのか?」

「人の世に出回る噂ってヤツは真実を含んでいるから、皆の興味を引くのさ?それに、ブラゴイ家は此処では好かれていない。」

「何処まで知っている?」

「勇者サマが手柄欲しさにザウルを嵌めて逃げ出し。マクシームが必死になって救おうとしていて、空回りしている…で、民衆やハンターはブラゴイ家のアホな話しは信じちゃいない。そんなところだ?」

「だいたい合ってる…」

「おいおい…そんなにしょげるな?」

 

3m近い筋肉要塞が、酒場でしょげてる姿はなかなか見れない。周りのハンターや一般の酔客達も注目している。しかし、哀愁が漂っても良さそうだが、笑いがこみ上げるのは何故だろか?

 

「正直、参っている…俺は謀略や策略なんかのまどろっこしいのは苦手なんだよ…」

話し始めてから20分も経っていないのに、十杯目に突入する赤毛ヒゲ。

「でも、一つ星なのだから駆け引きなんかも必要なんじゃないのか?」

パーティどころか、百人ものハンターを率いて魔獣の暴走(スタンピート)に対処しなければならない一つ星には、交渉や調整、運用のノウハウが必須。協会の資料にも記載されていた事だった。

 

「俺はそこんところは免れた。災害魔獣を協同で仕留めたから、特例措置が適応されたんだ。一緒に居た仲間が細々した事が得意で、任せていたのも大きいな。」

「考えるのが苦手なら、得意なヤツに任せれば良い。今回は勇者がらみだから複雑だが、女性を保護する団体があったよなぁ?」

月の女神の付き人(マルゥナ・ニュウム)か…」

先程までの迷った表情が消え、光明を見出したかに見える。

「そんな名前だったか?協会にも影響力があるんだろ?なら、知ってる有力者に当てはないのか?一つ星サン?」

「茶化すな…だが、アテもなくはないな…」

「考えがまとまった様だな。そんじゃ、巨人種らしく即座に行動だ!」

「言われるまでもない!!ありがとよ…。イキナリでなんだが頼みがある…この土地に由来がないお前にしかできない。」

「女性関係はムリなんだが…」

「何故分かった⁉︎」

「アタリかよ⁈でも、深刻そうだな。分かった此処じゃ流石に人の耳が多い、屯所に行こう?ツテがある。それと、顔芸の一つでもできる様にしろよ…表情に答えが出ちまってる。」

 

ヒデトに小言を言われながらも、中洲の屯所小屋に向かうマクシーム。苦手な教師に付き従う様な雰囲気を醸し出していた。

 

アレルドゥリア山脈の麓。サレハド周辺の荒野は、あいも変わらず魔草が転げ回っていた。

 

グアティへの忠告が実行されたのか、子供でも割に合わない草刈りに飽きられたのか。普段見かけるサレハドの子供達の姿は無い。

そのかわり、この世界では見た事もない格好の男が一人、草刈り作業を黙々と続けていた。

 

こちらの世界では見る事のない作業着、ザンバラな髪型。かといって不潔な感じは見受けられない。見た目は20代頃、中背中肉といったところ。顔つきや肌の色は自分と同じ東洋系に見えた。

近づくこちらに気付いたのか、作業をやめて警戒態勢に入る男。常在戦場とは言うけれど、チョット異常な雰囲気がある。ヒトに対して蓄積された不信感がありそうだった。

 

やれやれ…面倒な事を引き受けちまったな。しかし、約束はしたのだ信頼には答えなければならない。

 

「 よう!そんなにあからさまに警戒しなくても、何もしないさ?まずは、自己紹介だ。俺はヒデト、見ての通り九つ星の初心者ハンターさ。サレハドで登録したんだが、サレハド周辺には報酬に見合わない危険な場所ばかり。諦めて、タンスクに活動場所を変えたんだ。」

両手を上げ、武器がない事を示し。次に胸元にあるタグを掲げて見せ、とりとめも無い話をしながら近づくのだが。まったく警戒を解こうとしない。

 

 警戒の理由の一つは分かる。振り返った彼の表情が驚きに満ち、接近を赦した自分を叱責しているかの様に見える事から、ここまで簡単に近づかれることは無かったからだろう。でも、表情の中に近親者からの叱責を恐れているように見えるのは何故だろう?

 

 しかし・・けっこう問題あるじゃないか・・。昨夜のマクシームとの遣り取りを思い出す。

 

 『何を考えているか分からねぇ野郎だが、信頼は出来る。ただ、異様に警戒心が強い。ま、ヤツの生い立ちも関係しているんだろうが・・。流民らしいんだわ?しかし、読み書きは出来るし。魔法書も難解なモノを習得していた。正直、正体が分からねぇ』

 『女じゃねぇし・・。その人間不信そうな社会不適格者モドキと、どう関係するんだ?』

 『この先の関係は話せねぇ。すまん・・。だが、頼めるのはお前しか思いつかなかった。同じ巨人種なら、いくらでも心当たりがあるんだが・・。』

 『一緒に杯を掲げた仲だ、深く詮索はしない。それに、そいつに興味もある。聞いた風体が俺に似ている様だし、同じ民族かもしれん。』

 『お前の記憶は、まだ戻っていないのか?』

 『ま、そこまで深刻な事じゃないんだがな・・?手がかりになるかもしれんし。引き受けよう。』

 『助かるぜ・・。ローラナでの用事が済み次第、跳んで帰るぜ!!』

 『いいか?ゆっくり帰って来い。ゆっくりだぞ?もう、行っちまった・・・。』

 

 あいつ・・また、メルトダウン寸前の炉心の様に真っ赤になって来るんだろうな?いや、今はコイツが問題か。コミュニケーション能力が高いとは思えないし、不信感が半端ない。

 ま、十中八九、勇者様なんだろうが・・溢れかえる自信とか、加護を貰った優越感とかが感じられん。攻撃しなければ害が無い毒虫みたいだが・・。

 

 さいわい、この荒野にはヒトの気配は無い。常時発動の『生命感知』で確認済みだ。誰にも会話を聞かれる心配は無い。直球を投げ込むかな。

 

 蔵人の手前10mで止まり、なるべくコノ世界では使われない話し方、及び、日本語で発声して語り掛ける。いかん・・アホな黒神の影響が出たのかも。隠す事柄も無いし、情報が共有できればコノ世界からの帰還の方法が分かるかもしれない。

 向こうの受け取り方次第では『魔法』で即死もあり得る。いまだ、『魔法』への対抗方法を準備できていないから、探りながら着地点を模索するしかない。

 

 「オーケイ!ブラザー?!そんなに怖い顔するなよ?LOVE&ピースの精神で行こうじゃないか?ニホンゴワカッリマスカァ?」

 

 

 マクシームと離れ、今日も魔草狩りに精をだす。子供の小遣い稼ぎと聞いていたが、サレハドの子供達は荒野に来ていない。

 もう、何個目になるのか分からない魔草を拾って、同じ作業を行おうとしたところ。不意に、声が掛けられた。

 

 「・・・・・・何者だ?日本人なのか?」

 三剣角鹿(アロメリ)の角を下すが、警戒は解かない。土精には、いつでも魔力を渡して妙な格好のオッサンを束縛出来る様にしてある。こんな距離まで接近を許すなんて、雪白が聞いたら尻尾で叩かれるに違いない・・。

 

 「その質問には半分イエスで、半分ノーだよホームズ君。あ、明智君の方が馴染みがあるかい?」

 大仰な仕草で肩を竦め、ダイコン役者の様に答えるオッサン。少なくともコノ世界の人間では無いかもしれない。

 

 「どっちでも構わない・・。まだ、質問には答えていない・・。」

 

 「オーライ・・自己紹介はしたが、コッチノ世界での身分だ。出身は地球、極東管区日本自治州の対馬だ。どうだ?コッチノ世界の人間なら、分からん単語ばかりだろう?」

 

 「馴染みのない言葉があったんだが?」

 

 「考える頭はあるんだな?そいつが重要なポイントだ。はた迷惑にもコッチノ世界の誰かさんが、あんたの世界に干渉して、あんた達を召喚してしまった訳だろ?そいつに俺も巻き込まれた訳さ。アホみたいな話だよな?今時、小学生だってマシな話をするだろうぜ?」

 

 「そこまで知っているのか?では、貴方は違うのか?」

 

 「そっ!巻き込まれってヤツだよ兄弟?ソッチノ世界でもコッチノ世界でもない。アチラの世界?ま、コイツはどうでもいいか?要するに、同じ境遇なのさ御同業。しかも、『魔法』は使えないオマケ付き。笑っちゃうよな?アンタは使えるのかい?

 

 「ああ・・。修行の末使えるようになった。」

 

 「マジかよ!!すんばらしぃ!!で?凄まじいモノなのかい?まだ、『魔法』ってヤツを見たのは生活魔法だけなんだよ?海を干上がらせたり、山を砕いたりすんのかい?」

 芝居がかった動きで、オッサンらしい想像力をフル稼働させたアクションで『魔法』を放つポーズをする。

 

 「いや・・俺が見たのはセコイヤ杉の様な火柱が立つところしか見ていない。それでも、まだ上位の魔法が存在する様だ。」

 予想だにしない動きを見せられ、思わず吹き出してしまう蔵人。

 

 「そいつは・・・マズいな・・。魔法の防御が出来なきゃ即座にお陀仏だ?凄まじい世界に跳ばされたもんだ・・。ま、いいか。改めて挨拶する。地球連邦宇宙軍、航宙艦隊軌道降下兵、高橋秀人伍長。」

 背筋を伸ばし、シッカリとした敬礼を行う。先程までのフザケタ雰囲気は微塵も無い。見事な態度だった。

 

 「蔵人・・支部蔵人だ。地球の日本で、高校の用務員をしていた。」

 

 加護を奪われた『勇者』と、髪の薄いオッサンの初めての出会いだった・・・。

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