軌道降下兵   作:顔面要塞

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 年内に一本お届けすることが出来ました。ひとえに、駄文に付き合ってくださる皆様のおかげです。
 さらに一本お届けするべく、働こうと思います。お気に入り登録、ありがとうございます。
 駄文の間違いや、感想などもお願いできるといいなぁ・・・。

 どこまで続けられるか分かりませんが、これからも宜しくお願い致します。


雪山、再び・・・

 アレルドォリア山脈の麓に広がる荒野。ドルガンにおいて辺境に位置するサレハドは、その荒野の中にあった。サレハド周辺は国からの支援も少なく、魔獣災害も頻繁に起きている場所で。日中でも油断のならない危険な地域であった。

 

 しかし、生まれ育った者には日常の中の出来事でしかなく。注意し、思慮深く行動すれば避けられた事でしかなかった。

 

 その危険な荒野に不可思議な風体の男が二人、何事か話し合いながら。荒野を不自然に転がる草玉を拾い上げてナイフで二つに切り、中から出て来た緑石を腰に下げた袋にしまい込む作業を行っていた。

 

 「しかし・・いくら仮登録の十つ星とはいえ、つまらん作業だな?タンスクに来ないか?もっと実入りが良い依頼があるし、面倒見の良い先導者がいるぞ?」

 膝までのローブを身に着け、フードを深く被った背が高い方の男が、もう一方のザンバラな髪を持った男に話しかける。

 

 「アレルドォリア山脈から離れるわけには行かないから、この辺りでいい・・。それに、身分を証明出来る物が在れば、ランクにこだわりは無い。」

 作業を続けながら、達観した様な雰囲気で言葉を返す。

 

 「そうかい・・。でも、自分の世界に還らないと困るんじゃないか?蔵人さんよ?」

 作業を止めて、体ごと男の方を向き。疑問の言葉を送る。

 

 「まぁ・・向こうに還っても大して変わり映えしない日常が待っているだけだし。待っている人も居ないしな。ヒデトはどうなんだ?」

 「兵隊稼業を長くやっていると、骨の髄まで仕事が人生になっちまってね・・。還らなきゃいけないのさ。それより、その話しぶりから察するに、コッチに重要な人でも居るかの様な受け答えだな?女か?」

 「女と言っちゃ、女なんだろうな・・・。師匠でもあるし、相棒でもある。幼いころは面倒を見たから・・娘?ではないし・・・。」

 「なんだそりゃ?謎々かよ?でも、大事なヒトなんだろうな。さっきと違って血が通った答えになっていたぞ。」

 「そう、思われたか?正直、良くわからない。しかし、失いたくはない関係かな。見てもらった方が早い。山に帰るが、どうする?」

 「そこまでイッパシの男を悩ます相手だ。一度はお目にかかりたいねぇ・・?それに、アカリって子も気になる。マクシームの野郎の心配事は、多分、そっちだな?ソンナ顔すんなって・・アイツが喋った訳じゃない。推測ってヤツだよ、ワトソン君・・?同じ異界の者同士、仲良くしようや?」

 「・・・わかった。争う事が本意じゃない。本業と事を構えるのは無理そうだし。」

 「賢い選択だ。なんて、偉そうに言える立場じゃないが・・。提供できるものがあるか、お互い相談しないとな?俺だって、死にたくはない・・・。」

 

 いったん、会話を中断して空を指さすヒデト。

 

 「気づいているかい?紺碧大鷲(スニバリオール)だ・・狙ってますねぇ。多分そっち?お手並み拝見だな?」

 言うが早いか全身に纏っていたローブが消え、荒野と同じような迷彩をした装備で這いつくばるヒデト。

 「そいつが『ポケット』の加護か・・しかし、魔力も感じられないし。迷彩を着込んだら見分けがつかんね。」

 「こんな加護でもなきゃ、やってられんよ?魔法が使えないってのは、滅茶苦茶厳しいからな。あ・・紺碧大鷲(スニバリオール)を狩るなら、地上に降りてもらって失血死させると高額で引き取ってもらえるぞ?がんばんな。」

 

 それっきり気配まで消え去ったかの様に、反応が無くなるヒデト。その動きの無さに肩を竦めながら、腰に差したブーメランに手を伸ばし、紺碧大鷲(スニバリオール)に向き直る蔵人だった。

 

 タンスクに向かうサレハドの正門を、大きな紺碧大鷲(スニバリオール)を抱えて運ぶ男達が居た。しかも、紺碧の色を残したままの紺碧大鷲(スニバリオール)だった。

 この色を残したまま狩ったハンターや、見た者には幸運が訪れるというジンクスが存在していた。

 

 「結構な注目を集めているんだが。そんなに珍しいモノなのか?」

 ザンバラな髪をした男が、フードを深く被った背の高い男に話しかける。

 「その色を残したまま狩るのが難しいらしくてな。俺が狩った時も他のハンター達が祝ってくれたりしたよ?勿論、報酬は酒代に消えたがね。」

 前を歩くフードの男が振り返りもせずに答える。

 「報酬を使ってまで気を使わなきゃいけないのか?そんな事をせずとも、問題は無いだろう?」

 フードの答えに納得できないような顔つきで、質問を返す。

 「お前はいいだろうよ、蔵人?アレルドォリア山脈に住居があるからな。だが、俺はサレハドかタンスクにしか宿が無い。現地の連中と上手く行かないとイロイロ面倒に巻き込まれる確率が高くなる。お前も、そこらへん気を配った方が良いぞ?」

 「そんなものか・・・。」

 

 そこまでの遣り取りで地球での出来事を思い出す。確かに気の配り方で変わった事もあるだろうが、譲れない事があったから、今の人生になっている。器用に生きれない人間も多いのだ。かといって、そんな人間達の優しさにも触れていた。

 ゴミ出しに煩い家主の婆さんも、風邪を患った時などは差し入れをくれたし。隣のシングルマザーも、田舎が一緒な事もあって。イロイロとお互いに手助けしたりした。

 何気ない日常の一コマでも、暖かい光を放っていた。その事に思い至りながら秀人と出会った不思議さにも考えが及んでいた。

 

 「なにボサっとしてやがる?早く協会に行ってソイツを預けて来いよ。そんで、飯にしようや?」

 

 コチラの考えを知ってか知らずか・・、気楽な調子で飯の誘いを送って来る。

 「ああ・・わかった。先輩として奢ってくれるんだろう?」

 

 「もう、たかる気かよ?しゃあねぇなぁ・・。今回だけだぞ?俺は屯所に顔を出してくる。先に行ってくれ。」

 

 大仰な仕草で肩を竦め、屯所小屋に向かう秀人を見送り。凍らせた紺碧大鷲スニバリオールを抱えて協会に向かう蔵人だった。

 

 

 ドルガンの辺境に位置するサレハドには、ドルガン正規軍は展開していない。辺境を切り開き、魔獣達と戦いながら国づくりをしてきたドルガン人は戦にも強いからだと、言われていた。

 

 しかしながら、国の大半を魔獣ひしめく辺境では産業も上手く育たず、国家の財政も決して余裕がある訳では無かった為、辺境の防衛にまで国軍を派遣する事が出来ないのが実情であった。

 必然的に、住民達が自ら土地を護らなければならないから、ハンターを引退したものが指導や教育を行い魔獣災害を押さえていた。

 

 秀人の目の前に立つ人物も、その中の一人であった。

 

 「よぉ?グアディ。元気にしてたか?」

 ローラナに向かう正門・・ローラナ門の横に設けられた屯所で、椅子に座りながら欠伸を噛み殺しているグアディに話しかける秀人。

 

 「随分久し振りな気がするな?さっきの新人は知り合いか?」

 椅子に座ったまま、振り返りもせずに挨拶を返す。

 

 「いや・・・。初対面だ。実は、マクシームに頼まれた。野郎、ケッコウ大変な立場になってんな?タンスクでも噂になっていた。」

 「何処までの噂だ?」

 「知っているんだろう?飛雪豹(イルニーク)を狩りに行ったザウルのパーティが、同行した勇者に裏切られて大棘地蜘蛛(アトラパシカ)に襲われて4人しか生き残らなかった。で、ハンターの裏切りを許さないドルガン議会によって、御尋ね者に勇者様がなってしまった・・とゆう噂だ?タンスクの人間は信じちゃいないがな?」

 「そうだ・・・ザウルが旧貴族に連なるもので。家族が議会に太いパイプを持っているのも大きい・・・。サレハドでも、信じてるやつは少ない。ボンボン莫迦と、か弱い少女だったらどっちを信じる?」

 「まぁ・・女の子だろ。マクシームの野郎、すっ飛んで行って助けたいはずだろうが立場がマズい。ローラナに行けば何とかなると考えて、全身真っ赤にして行きやがったよ・・。」

 「で・・・?その件に何処まで首突っ込んでんだ?」

 「酒飲み仲間に頼まれたのは、あの新人の面倒さ?」

 「お前は九つ星だろ?八つ星の先導は出来ないじゃないか?それに、いろいろと面倒そうな感じだったぞ?」

 「ハンターとしてじゃない。一人きりじゃ大変だろうから、星が一つしか違わない初心者同士が気が合うだろうって配慮らしい。」

 「赤筋肉に、そんな配慮が出来るとは・・。伊達に一つ星じゃないな?で、信頼してもらったのか?」

 「さぁ・・どうだろうな?だが、行くしかないだろ?なんせ、か弱い勇者様の命と名誉が掛かっている。それに、俺を手助けしてくれた誰かさんでも、同じことをしたんじゃないか?」

 「ふん・・・。ザウルの子飼いが増えてきている。お前よりもランクが上の者も少なからず居るから、油断すんなよ。で、マクシームに何か吹き込んだんだろう?」

 「女の事は、女に任せるのが面倒が無くていい・・・。」

 「月の女神の付き人(マルゥナ・ニュゥム)か・・・。」

 「浮かない顔だ?月の女神の付き人(マルゥナ・ニュゥム)って奴等は面倒なのか?」

 「不幸な目に遭っている女達を救っている団体で、ハンター協会にも発言力が在る。ただ、救う対象を迫害する者達を排除するのに手段を選ばない・・正直、関わり合いは避けたい。」

 「ドルガン議会のアホ共よりはマシな選択じゃないのか?」

 「あいつ等は俺達の代表じゃない。議会にこもって玉無しになりやがったのさ!!あながち間違いじゃない決断じゃないか?」

 「そう言ってくれると、嬉しいね。ああ・・コイツは土産だ。」

 

 グアディの目の前に回り、背負った積荷を足下に置く。

 「タンスクで、それなりの稼ぎを持つことが出来てね。礼儀は大事だろう?」

 そう言って、足元の積荷の中身を見せる。少し歪な形の酒瓶が12本入っていた。

 

 「ほう・・?タンスクオルド8年か。若いが、皆で飲むのには丁度良い。『心がこもった御礼だけでいい・・だが、品が在ると更に良い』」

 酒瓶を愛おしそうに撫でながら、厳かな口調で呟くグアディ。

 

 「誰の言葉だ?」

 「俺の爺さん。もっとも、本人は御礼だけの事がおおかったらしいがね・・・?」

 「難儀なことだな。」

 「だからこそ、御礼の品はヒトを動かす魔法に満ちているのさ?」

 「・・・・」

 

 グアディの尤もらしい言葉に呆れて頭を振る。何気なく向いた先にハンター協会に入って行く金髪の男が目に入った。

 

 「ザウルだ・・。お前に対する礼もしない不義理な野郎さ、仲間だった奴の葬儀にすら顔を出さん。ま、金だけは出したがな。」

 「初めて見るが・・・随分と面倒そうなヤツだ。」

 「勇者を嵌めた張本人さ?お前も気を付けろよ。さっきも言ったが、手下が増えてきている。」

 「ああ・・。そんじゃ、協会に行ってくる。またな?」

 

 協会に向かう秀人に見向きもせずに、酒瓶を数え始めるグアティ。その動きに呆れながらも、これからの事を考える秀人だった。

 

 

 アレルドォリア山脈は地元のハンター達によって三つの階層に分けられている。山脈の裾野に広がる『森林帯』、大棘地蜘蛛(アトラバシク)の生息域である『亜高山帯』、白幻の居のある『高山帯』。他にも、学者達によってこまごまとした分類をされていたが、狩猟を生業とするハンター達にとってはどうでもいいこであった。

 

 第一階層である森林帯を、大きな荷物を背負った男が二人亜高山帯に向けて歩いていた。わざわざ、危険な大棘地蜘蛛(アトラバシク)の縄張りに入り込もうとするハンターは少ない。

 

 だが、この二人の男達は危険地帯に向かう緊張感をまったく感じさせない雰囲気を持っていた。

 

 「だから、あんまり尖がった生き方は大変だぞ?長いモノに捲かれる事も、時には必要になる。地球で散々学んでこなかったのか蔵人?」

 背負った荷物の量が多い方の男が、後ろから声を掛ける。

 

 「性分だ・・・いきなり変えられん。それに、あそこまで横柄な態度をされたら誰でも譲らないと思う。まぁ・・秀人が話を纏めてくれたのは有り難いが・・・。」

 森林帯の外れ。亜高山帯との境目にある野営地に向けて歩を進める蔵人。

 

 「ザウル・ドミトール・ブラゴイ・・確かに、むかっ腹が立ちそうな奴だったな。育ちが悪かったとしか思えん。何処を間違えたら、あそこまで根性がひん曲がるのやら・・?だが、あんな奴はワンサカいる。いちいち相手していたら人生終わっちまうぞ?」

 「だが、アカリを嵌めたのはヤツだ。」

 「ごもっとも・・・。しかし、勇者様にそこまで義理立てする必要はあるのか?」

 「・・・・・俺も勇者だ。だが、加護を奪われてしまったが・・・・・。」

 「ほう・・・?随分と得難い経験だな。まて・・加護って奪えるのか?」

 「この世界に跳ばされる前に、俺達の世界の存在が与えてくれた。だが、俺の前に居た学生に奪われてしまったのさ。」

 「そこんところは、深く知りたいね。『召喚』に繋がる答えが在るかもしれん。・・・気づいているか・・?」

「なんの事だ?」

「ザウルの子飼い連中が尾けてきている。あんまり暗殺とか得意そうじゃないな…夜になったら、野営地で襲ってくるだろう。」

「そんなに恨みを買ったかなぁ?」

「こっちに覚えがなくとも、アチラさんには思い当たる節があるんだろうよ?アカリ絡みで100点加点されたのかも。モテる男は辛いねぇ?」

「野郎連中に、いくらモテても嬉しかないよ⁈女性ばかりだったら、お相手願いたいね。」

「そんなこと言っちゃって…後で後悔しても知らんぞ?で、どうする?そろそろ日も暮れる。」

「当てがある。アレルドゥリア山脈では並ぶものがなく頼りになる。人じゃないがな。」

 

頼りになるが、少し厄介な親族にでも頼むかのような口振りで答え、調子のハズレた口笛を吹き始めて、秀人の前を進んでゆく蔵人。

 

「やれやれ…顔つきだけみりゃ頼りにしても良さそうだが…音楽のセンスは無さそうだ。」

 

そう呟いて、音楽のセンスを感じられない口笛に辟易しながら。蔵人の後をついて行く秀人だった。

 

 

 アレルドォリア山脈に夜の帳が落ちる。亜高山帯に向かう手前にある野営地に、ハンターが灯したであろう火精による明かりが、仄かに人の姿を浮かび上がらせる。

 浮かび上がった姿は、男が一人。男は何かを感じたのか、おもむろに火精を消した。そして、野営地を照らすのは青い月明かりのみ。

 

 その明かりに微かに照らされた影に向かって、風切り音と共に矢が二、三本突き立つ。しかし、矢が突き立った影は微動だにしない。

 しばらくして、火精を明かりに武装した男たちがゾロゾロと野営地に姿を見せた。そして、無言で手にした武器で影に刃を突き立てる。

 

 仮登録の十つ星なら、絶対に助かる見込みは無い、必殺の攻撃だった。けれども、男達の意に反して対象は崩れ去るのみだった。

 

 「くそ!!土精で作られた木偶だ!!」

 「奴は、何処に行った!?魔法の痕跡も辿れんぞ?!探せ!!」

 「こんな夜中にどこ探せってんだ。それにこないだマクシームを追った奴ら、ここで大棘地蜘蛛(アトラバシク)に襲われたらしいぜ。」

 「蜘蛛がこんなとこまでくるかよ。あいつら待ち伏せしかしねぇだろうが」

 「まあ、落ちつけ。どの道、こんな夜に動いたら命がいくつあっても足りねぇよ。それは奴も同じさ」

 

 いかなハンターとはいえ、夜は魔獣達の領域であり狩場だった。その事を十分に知っていた男達は、仲間の言葉に安堵するかのように、口々に同意を示し。帰路に着こうとする。

 

 しかし、安堵したのも束の間。一番先頭を行くリーダーの六つ星が、突然意識が切れたかのように前のめりに倒れる。

 

 「おい?どうした?躓いたのか?らしくねぇなぁ。」

 ふざけた口調で火精を伴い、倒れた男の傍に寄る。

 

 「うぉ!!!死・・死んでる!?」

 普段から防護魔法だけは展開しているリーダーの頭部が、防具ごと何かに貫通され、砕けた果実の様な惨状を呈していた。

 「何だ!!?何があった?!がっ・・・・!!!」

 声を掛けた最後尾に位置する男も、何が起こったか分からずに絶命する。

 「火精の明かりを消せ!!!ぐっ・・・・。」

 臨時パーティのサブリーダー格の男が、即座に声を上げ地面に伏せ様とするが、胸の中心を灼熱の棒が通り過ぎる感触を最後に、この世界から永遠に旅立ってしまった。

 「う・・・・。うわぁー!!!」

 リーダーの死骸の傍に居た男が、悲鳴を隠し切れずに森林帯に向けて逃げ出してゆく。

 

 ただの十つ星を殺すだけの簡単な仕事で。本当なら、今頃祝杯を挙げて娼館に繰り出すはずだったのに?なぜ?こんな事になってしまったのだろう?

 そんな事を考えながら必死に走る男。得体の知れない何かによって引き起こされた惨劇に。もう、生き残る事しか考えられなくなっていた。

 長年愛用してきた長剣など放り出して、惨劇の現場から一歩でも遠くに逃げ出さなければならない。疲労と混乱で塗りつぶされようとしている思考を押しとどめたのは、生物としての生存本能に他ならない。

 

 ただ、走る。生き残るために。何かが襲ってこない事を祈りながら。

 

 

 惨劇が起こった野営地から、亜高山帯に向かう道なき道を400m程上った脇の岩山の上に、一人の男と大きな雪豹が佇んでいた。

 

 「凄まじいな・・・。いくら月明かりが在るとはいえ、400mもの距離から的確に狙撃できるなんて。」

 足元の岩塊の表面に向かって話しかける男。

 「スメラギ社製12式強化ライフルにとってみれば、至近距離みたいなもんだ。外したら、教育課程からやり直しさ?それに、ドローンの支援もあったしな。」

 岩塊の表面にしか見えない場所から、壮年の野太い声が返って来る。よくよく観察してみれば、岩塊の表面の先から、うっすらと煙がたなびいていた。

 「最後の一人は何故残したんだ?」

 「警告さ?ちょいと高くついたな。はした金に自分の命をベッドするもんじゃないね。これで、ボンボンに付く人間が大分減る。」

 

 「それは、やはり銃なのだろう?秀人。」

 「そうさ。スメラギ社製12式強化ライフル。まぁ、軍ではエス12で通っている。火薬を用いない、電気をつかったものでレールガンと言えば分かりやすいかな?SFモノに出てこなかったか?蔵人。」

 「そんなものまで、持ち込んだのか?」

 「まさか・・?労働の対価さ。タンスクでした、人助けの報酬が思いのほか多かったんでね。魔法が使えないんだ。この程度は無いとすぐに死んじまう。」

 「それも、加護なのか?」

 「ああ、言ってなかったな。隠すつもりはなかったんだが、説明をしようか。『ポケット』の加護は装備を瞬時に付け替えるだけじゃないんだ。『装備』『アイテム』『商店』『スキル』の四つに分類される。『装備』は、瞬時に入れ替える能力。『アイテム』は身に着けない使用品を取り出す。『商店』は、この世界で手に入れたモノをポイント交換する事によって、俺の世界の品々を手に入れることが出来る。最後の『スキル』は、自分が行った行動でポイントがたまり、スキルを手に入れるモノ・・・らしい。」

 「らしい・・・?」

 「未だに手に入れたのは『生命感知』のみ。他は、良く分からないんだ。ポイントの溜まり方とかな?コイツは200m以内で、生命あるモノであれば感知できる。あ・・。この世界にアンデッドとか居るのかな?協会の資料では、存在している事になっちゃいるが・・」

 「未だに、会ったことは無い。一応、存在は確認されているみたいだが。光精魔法で対抗できるし、モンスターならば聖願魔法で滅する事が可能みたいだ。」

 「まずいな・・・。どっちも使えん・・。そんなものが付与された魔法具でも手に入れないとな・・・。」

 「光精魔法は無理かもしれんが、聖願魔法は『願う』のが基本だから可能かもしれんよ?」

 「そうなるといいなぁ。対抗手段を確立せんと。何があるか分からない世界とは、恐ろしいもんだ。よっ・・帰還モードへ・・っと。」

 「あのドローンも加護の賜物か?」

 「ああ・・銃と同じさ。値は張ったがね。何事にも対価が必要なのさ?」

 

 秀人の話を聞きながら、どの世界でも対価が必要になるモノだなと感ずる蔵人。自分自身も精霊に魔力を渡して、何度も昏倒したのを思い出していた。

 

 「さて・・・改めて、お連れさんに挨拶しなければな?俺は、高橋秀人。訳あってこの世界に跳ばされた異界人だ。宜しくお願いする。え~と・・雪白さん?」

 今まで岩塊にしか見えなかった表面から瞬時に男が現れ、飛行してきたドローンを瞬時に『収納』し。蔵人の傍に佇んでいる雪豹に向けて、お辞儀をして挨拶を送る。

 

 異界のモノを身に着けた男を眺めながらも、大して興味を示さず。長い尻尾をゆらゆらとさせて挨拶の代わりにする雪白。

 

 「おっと・・・レディに挨拶するのに、贈り物を忘れていました。ツマラナイ物ですが、ご笑納下さい。」

 そういって、雪白の目の前に燻製にした草原モグラの肉を置く秀人。

 

 その肉を見ながら、こんな物では挨拶にもならないわね・・とでも言いそうな佇まいの雪白。しかし、その尻尾は大きく動いていた。

 

 「コイツがレディねぇ・・?食い意地の張ったデカイ猫だと思うんだが・・いてぇ!!なにしやが・・うごぉ!!」

 

 配慮の無い一言によって、無残に制圧される蔵人。

 

 その光景を見ながら、この二人の支配関係を悟る秀人であった・・・・・。

 

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