あ、いたいた見つけた。
唯が太ったおっさんと話している。
「唯、迎えに来たぞ! さあ早く帰るぞ」
「嫌だ!! 帰れ!!」
「もういいだろう。拐った男はトレーナー部隊がギタギタにしているぞ。原型留めていないだろうな」
「後ろでピンピンしてるぞハゲ!!」
「は!?」
唯ってこんなに口悪かったんだ。
まあこんくらいが可愛いんだよ。
「なっ、貴様どうやって………」
「あいつらか? 弱かったぞ」
5分くらいだろうか。
トレーナーの格とかよくわからなかった。
あいつらポケモンが全滅した後にダイレクトアタックしてきたから返り討ちにしてやったよ。悲しいねぇ戦争って。
今は奴らはそこら辺でおねんねしてる。
「もっと強いヤツいないの?」
「ぐぬぅ………」
「ぐぬぅじゃなくてさ、土足で室内入るの止めてくれる?」
「貴様ぁ………」
うーんどうしよう。話聞いてくれるのかな?
「唯何か言ったれ」
「私は帰らない!!」
「いいのか唯!?」
まあ自分で決めたことだし尊重してほしい。
「だが約束がある………戻ってもらう」
約束?
「ポケモンバトルだ」
「「は?」」
いきなり? もうみんなデュエル脳みたいだ。
神様の仕業だろうか。何なんだろうこの世界。
(何言ってんだよお前の父親)
(こっちが聞きたいわよ)
唯の頭はデュエル脳になってないらしい。
玉川とアリスはもう頭を侵食されている。
「略取・誘拐罪だ。私は警察にも顔が利く。受けてもらうぞ」
「唯は勝手に着いてきたんだが」
「未成年者を保護者の許可無しで連れてきた時点でアウトだ」
やばい正論じゃねえか。
確かにこっちに非があるな。
「わかった、ただし勝ったら帰れよ」
負ける想像がつかない。
アルセウスを出せば勝ったも同然だ。
………あれ? アルセウスは何処に居るんだ?
「さあ唯、勝負だ」
「はい?」
「何を呆けてるんだ? 親子の問題だぞ、当たり前だ」
「どうする?」
そう来るか。俺とやっても勝ち目はないと悟ったのだろうか。
唯のポケモンは全部で2匹。
とあるメガストーンと道具を与えている。
このハゲには敗北の星しか無いな。
「やるに決まってんじゃん!」
「行くぞ唯!!」
「外でやれよお前ら」
□ □ □
「行け、ドータクン!」
「行け! アブソル!」
はい始まりましたポケモンバトル。
唯パパは3匹、ドータクンLv45か。ジャイロボールには気を付けた方がいいな。だいはくはつを使う可能性もある。
対して唯はアブソルだ。
森にいたのでスカウトした。Lvは42。
「ドータクン! ジャイロボール!!」
「つじぎり!」
残念ながらアブソルの方が早い。
ドータクンの回転し始めた時を狙いつじぎりが決まる。
そしてドータクンの回転が失速する。
きゅうしょにあたった。
「ドォ?!」
「何だと!?」
そう特性はきょううんである。
簡単に言えば急所に当たりやすいのだ。つじぎりで攻撃したから更に当たりやすい。
「クソ、戻れ。行け! ムーランド!」
懐かしい。なみのり覚えるんだよなこの犬。
「かたきうちだ!」
「つじぎり」
技を出す前に倒すのが正論だろう。
一閃そしてムーランドは倒れる。
「またか、戻れ!? いけ! エンニュート!!」
最後のポケモンはエンニュートか。
こいつの毒ガスって薄めれば香水が出来るんだって。不思議だねポケモンって。
ん? 唯はキーストーン使うみたいだな。
決める気か。
「アブソル、メガシンカ!」
「!?」
アブソルが光の玉にに包まれる。
徐々に光が消えていき、出てきてメガアブソルの登場だ。
「見せかけだ! いばる!」
あーコイツ知らないな。
こいつの特性は、
「な、どうしたエンニュート!?」
「ギィア!?」
そうマジックミラーだ。
変化技を跳ね返す恐ろしい特性だ。
どくどくを出されたら意味は無かったが。
「サイコカッター!」
「ギィア!」
「エンニュート!?」
サイコカッターも急所に当たりやすい技の一つだ。
そうして急所に当たりエンニュートのHPがゼロになる。
「これで私の勝ちよ……文句は無いわね」
「くっ」
約束だ帰ってもらおう。
守ってくれるよな?
「駄目だ」
「は?」
「約束は守れない」
えーこの人面倒くさい。
唯も口が悪くなるのもわかるような気がする。
「私は唯を守らなければならない」
昔に何かあったようだが唯には迷惑だ。
家に帰るのが嫌だから土下座したんだぞ。
「全権力を使って貴様を破滅に」
「もういいんじゃないのかね真田剣兵君?」
「? 誰だ、は!?」
あれ、この声聞いたことが。
後ろを見てみると、
「いやー間に合いましたよ」
「久しぶりだな影山広人君」
アリスと黒田組の組長!?
何故ここに居る。
「な、何故"赤刀"の黒田がここに!」
「ん? 孫に呼ばれたからさ」
この組長はそんな二つ名で呼ばれているのか。
でも有名なのかこの組長?
「くっ、だが貴様が居ても少し被害が出るだけで変わらん!」
「じゃあワシがいたらどうかの?」
え? この声は爺ちゃん!?
なんでいるの?
「なっ"不動産の皇帝"が何故ここに居る!? くたばってなかったのか!」
「失礼な。黒田の奴に呼ばれただけじゃい」
「くっ!」
爺ちゃんにもそんな二つ名が………。
そういえば昔に相当有名だったと聞いたことがある。
唯パパの顔が険しくなる。
だが気合いで耐えている様な感じだ。
……何があったのだろうか。
「間に合いましたよ先輩」
「久しぶりだね真田さん」
「な、玉川先生!?」
「腎臓の調子はどうかね? おかしな所は無いかい?」
「何で"慈悲の右腕"の先生がここに………」
「孫に頼まれてね」
玉川と壮年の男性が現れた。
少し話がわからなくなってきた。
「よぉ廉三久しぶりだな」
「お前も苦労しているな、何回も斬りあったと聞いたぞ」
「お前もあの土地を買ったそうだな。ビックリしたぞ」
「二人とも元気そうで何よりかね」
三人共に知り合いなのか。
なんだろうかこの偶然は。
「嘘だろ………この3人が居るなんて………」
相当有名なんだねこの爺共は。
なんかカリスマ性ありそうなんだけど。
まあそれは置いといて、
「唯、父親に言ってやるんだ。自分が何をしたいかを」
「私は………」
唯が言わないと意味無いしさ。
「私は色んな場所に遊びに行きたい! 男の子とデートしてみたい! 化粧もしてみたい! 友達を作りたい! 昼まで寝ていたい! 私だって女の子だし青春を楽しみたい!!籠の鳥は嫌だ!!」
「唯、だけど社会は危険が沢山あるんだ」
「籠の鳥の方がストレス溜まるわ!」
唯が涙目になっている。
これが本音だ。
「そのやりたい事を全部この人が満たしてくれた。もう前のような生活は嫌よ!」
「唯………」
「昨日だって夜通し一緒に楽しんだんだから! 凄かったわよテクニックが!」
「「「え゛?」」」
俺、玉川、アリスが絶句した。
ゲームの事だよ。真に受けないでね。
もう唯のパパは諦めている顔だ。
「だからもう大丈夫! 私は平気だから。もしだめでもこの人が守ってくれる」
「いいのか………」
「うん、死んだママは許してくれると思う」
「うっ………」
唯パパの目に涙が出る。
親にしかわからないことだし俺には理解できない。
だけど唯の事を大事に思っていることは確かだ。
でも守る=束縛って訳じゃないし自由を奪って言いって事じゃない。多分この人は不器用な人間だと思う。
「おい……小僧」
「何でしょう」
「唯を一時任せる。後疎かにしたら全権力で貴様を叩く」
「その前に愛人関係を何とかしろよ。結構いるだろうが」
「唯!? 何故知ってる!」
この人も女関係多いんだな。
「ともかく唯を不幸にしたら許さんぞ。わかったな」
「努力する」
このおっさんの愛情は確かなようだ。
こうして唯のパパは帰っていった。
□ □ □
「先輩、大丈夫でした?」
「平気、額に実弾喰らったけど」
「「「は?」」」
やっぱり驚くよな。
この加護凄いよな。もう超人だ。
「ねぇ」
「何だ唯?」
「あの時何で私を拾ってくれたの?」
何ってお前。
「助けて欲しい様な顔してたし」
「そ、そう」
捨てられている犬や猫と同じ表情だった。
放置していたら可哀想だし。
第一可愛い美少女を放っておけない。
「ねえヒロ」
何だ気軽に呼んで?
「ありがとう」
なんだろうか女子に笑顔でお礼言われるのってってスゴい嬉しい。
俺はハズくて目を反らすのだった
ちなみにアルセウスは森の方からの侵入者を撃退していたらしい。
今回の話に自信がない…………
捕捉ですがふしょくの特性をもったポケモンがどくどくを吐き、マジックミラーで跳ね返されても毒状態には成らないそうです。