「えっ? ちょっと待ってください!? 家族いないって言ってませんでしたっけ?」
「いない。勘当されたんだ」
「えっ……」
「だから家族はじいちゃんだけだ」
取り敢えず因縁は十年以上前に遡る。
□ □ □
15年前。
「ねぇまさみちゃんぼくひろと」
「こんにちはひろとくん」
雅美とは家が隣同士だった。
そもそもそれが原因かもしれない。
「おかしあげるよ」
「ありがとうひろしくん」
この時は俺は幸せだった。
名前を間違えられた時点で殴っとけばよかった。
10年前。
「こいつ!」
「あんたむかつくのよ」
「こないで!」
「うえええええんいたいよぉぉぉぉ!」
雅美は小中学生時かなりいじめられた。
「やめろ! よわいものいじめするな!」
「なによどきなさいよ!」
「いやだ!」
俺は時々いじめられている雅美を守っていた。
大事な幼馴染だったから全力で。
だけど今思うと一緒に集団でリンチしとけば良かったと思った。
雅美の本性をまだ知らなかった。
3年前。
「雅美、好きだ付き合ってくれ!」
「えっと…………いいよ」
俺は雅美に告った。
中学2年生の時だった。
これが後悔することになった事はまだ俺は知らない。
2年前。
「やっぱアンタとは別れるわ」
「は………な、なんで?」
「だって金も無いし顔も悪い。それを他人からバカにされてんのよ? 私の迷惑を考えなさいよ」
「お前………金と顔で見てるのかよ」
「当たり前じゃない!」
「何で俺と付き合ったんだよ?」
「ノリかしら、広樹君。出てきていいよ」
「は?」
隣の部屋の扉が開く音がした。
で、兄貴が出てきた。
「この人が新しい彼氏」
「よぉ広人。俺がコイツと付き合うから残念だったな」
「は………?」
「お前みたいな劣等遺伝子が俺の弟だと恥ずかしいな!」
「本当よ! そんな劣等遺伝子が私とヤリたかったんだって~。アッハハハハハお門違いよ! アンタみたいな人間となんて誰も相手するわけないじゃない!!」
キレた。
俺は雅美に殴りかかる。
「このクズが!」
「うぐっ……」
兄貴に殴り返される。
続けて足蹴りを複数回される。
「何怒ってんだよキメェ」
「もう広樹君の部屋行こう。こんな奴の部屋にいたら体が臭くなるわ」
「アッハハハ言い過ぎだな。可哀想だろ~」
俺の部屋の扉が閉まる。
俺は体の痛みよりも心が痛かった。
涙が大量に出てきて止まらなかった。
隣の部屋からギシギシする音や高い叫声がBGMになって眠れなかった。
俺が体感じているのは地獄。
しかし更なる地獄はこれからだった。
それから1週間後、
「広人!!」
「? 何なの父さん?」
「このクズ野郎が!!」
「うぐっ!」
いきなり部屋にいる所を殴られた。
「何だ急に!?」
「本当に覚えは無いのか!」
といっても悪さした覚えはない。
広樹が悪さしても殴らないし怒らない父親だ。
「雅美ちゃんに乱暴したろ!」
「は?」
「コイツ!!」
「つっ!?」
雅美に? なにもしていない。
むしろこっちが被害者だ。
それで被害者の俺に拳を奮ってくる。
「そして妊娠したんだぞ! どう責任取るんだ!!」
「………は?」
えっ? 何の話だ………。
まだ俺は童貞なのに妊娠を?
「ふざけんなよ広人! 俺の雅美に何をするんだ! このクズが!!」
クズ兄貴も一緒にリンチに混ざってくる。
「お前みたいな人間なんざ育てなければよかった!!」
「お前が弟なんて末代までの恥だ!」
家族として最低なセリフだ。
正直聞きたくない。
「待て、俺は乱暴な事なんてしていない! だったらその証拠を出してくれ。殴るのはそれからだ!」
「このクズが!!」
「うぐっ……」
証拠も無いのに人を責めるのか?
話を聞かない時点でおかしいな。
「証拠ならあるぞ。広樹が見ていたからな」
「………は?」
お前が元凶だったのか……。
だったら止める筈だろ。
「窓から見てたけど駆けつけるのが遅かった……」
「いや、広樹は悪くない。悪いのは全部コイツだ」
「だから知らないって。証拠だせよ証言じゃなくてさ。お腹の子供をDNA鑑定すれば一発でわかるだろ」
「往生際が悪いぞ広人!!」
また殴られた。
話を聞く様子が見られない。
「あなた………もう嫌………」
「父さん……俺もコイツ嫌だ………」
「………」
俺もこんな人間と一緒にいたくない。
「広人、この家から出てけ。勘当だ」
「は?」
「高校の学費なんて出さない。生活費も自分でなんとかしろ」
よくよく考えてみれば兄貴だけ優遇されていた。
兄貴は小遣いは月一万、俺は二千円だ。
兄貴はゲームを買ってもらえるが俺は自費。
兄貴は名門の私立。俺は普通の高校に入学予定だ。
今、俺はかませ犬だって事を知った。
「おい! 雅美ちゃんに謝りに行くぞ!」
拒否したが行くまで何回も殴られた。
雅美の両親と雅美の目の前で、何回も地面に頭を叩きつけられ無理矢理土下座させられた。
後でわかった事だが頭を何針か縫った上に頭蓋骨にヒビが入った。
「明日には出てけ! 支度しろ!」
そして支度中。
「おい、広人。これもらってくぞ」
「俺のだ。やるわけないだろ」
「フンッ!」
いきなり殴られた。
「荷物が嵩張るから手伝ったのによ……お前はクズだな広人」
それを言った後に殴る蹴るの嵐だ。
そのまま色々持って行って部屋から出てしまった。
そして、
「もう二度と顔見せるなよ広人」
翌日、玄関に俺は出ており、家を出る。
両親、広樹はお見送りだ。
「ほらさっさと行け」
「………」
俺は玄関の扉を開け、外に出る。
そして扉を閉めると、
「やったぁぁぁぁぁぁ!」
「ふふっ」
「ようやく金食い虫がいなくなったな。今日は寿司だ!」
「大トロ食べたいわ」
とそのような声が聞こえた。
□ □ □
「それで仲良かったじいちゃんに引き取ってもらったんだ。元々父親とは仲が悪かったらしいし」
とまあみんなに説明した。
しつこく聞かれたのでつい吐いてしまった。
「ひどい………証拠も無いのに」
「何ですかその家族は! 最低ですよ!」
「………」
スノウは何か考え事をしているようだ。
あの後じいちゃんに抱き締められて泣いた。
「でも俺の事を信じるのか?」
「当たり前じゃないですか!! 先輩善行値高い方ですよ」
「私と暮らしていても手を出さないじゃない!」
「俺達も同じく」
あの家から追放されて良かったかもしれない。
コイツらと会えた。
「勝負の方法聞いてきた。選ばれたトレーナーで5対5の団体戦みたい」
「勝ったな」
どうせ木嶋に負けても他の奴が勝てば良いとかそんな感じの考えだろうか。
木嶋君以外のトレーナーの実力も知っておくべきだったな。
浅はかなり。