鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使   作:魔女っ子アルト姫

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明日からの手紙






第9話

テイワズの傘下となりタービンズの兄弟分となった鉄華団、歳星での取引やエクセレンのTDの技術契約による物資の搬入が終了した事で漸く鉄華団の仕事に入る事が可能となった。オルクス商会とは違い本当の意味で信頼出来る案内の元で地球を目指す事が出来る。一枚隔てた向こう側に広がる宇宙の海へと漕ぎ出して行くイサリビとハンマーヘッドを見送る三日月、雪之丞そしてエクセレン。彼らはバルバトスの完全整備とTDの搭載の為に待機し、それが完了次第追いかける事になっているが如何にも三日月は何処かさびそうに見える。

 

「寂しいのか三日月?」

「うん寂しいよ、皆と離れるってそんな無かったから」

「大丈夫よ。バルバトスとヴァイスの整備が終われば直ぐに追いかけられるから」

「まあね」

 

普段の強さから不意に忘れがちになるが彼もまだ子供なのだ。仲間の為なら、オルガの命令なら簡単に銃を手に取り嘗ての上司ですら容易く殺す。そんな恐ろしさと強さから子供っぽさのない事から子供というのが如何にも頭から抜けがちだなと雪之丞は笑う。雪之丞は出来るだけ対等な立場目線で話をしているが彼らを弟として、子供として正しく扱っているのは

 

「楽しみね~テスラ・ドライブ搭載型のバルバトス~♪」

「姉さんのヴァイスみたいになるのかな」

「それはそれで化け物染みてて見たいようでみたくないわね」

 

装甲が紙と言っても過言ではないヴァイスだからこそあの動きが出来るのであってバルバトスに同じような動きをされてしまったらもう手の施しようがないと思う、そうなったらヴァイスと同じ速度で敵陣に突っ込みつつメイスで相手を叩き潰していく悪魔が爆誕する事になるが是非ともそうなったら自分の立場が狭くなるのでご勘弁していただきたい。

 

「お~い三日月君にエクセレンさん!阿頼耶識のチェックとヴァイスのチェックを始めるからお願いよ~」

「う~す」

「はいは~い」

 

整備長の言葉を受けてそれぞれの機体へと乗り込んでいく、幾ら傘下に入れてもこんな大掛かりな整備はしてくれない筈だがどうやら三日月がマクマードに気に入られたからこそ予算上限無しという整備士にとっては夢のような条件下での整備が可能になったらしい。整備長は幻のガンダム・フレームを整備出来るというだけでテンションMAXだったのにTDという革新的な技術が搭載されたヴァイスという存在のせいでもうテンションゲージが振り切れているのかもう目がやばい事になっている。血走っていて怖い事になっている。

 

『ワハハハハハハッッッ!!鉄華団とタービンズの出発の二日という僅かな時間、本来なら開発すら出来ないだろうが今の私に不可能など無いのだぁぁぁぁっっ!!!テイワズ産テスラ・ドライブは既にバルバトスに搭載完了!!それにより性能は従来のフハハハハハハッッッ!!!!』

「うわぁ~い凄いスーパーハイテンション……攻撃力2倍どころの話じゃないわねあれ」

 

計器などチェックしつつヴァイスを体調を確認するが外から聞こえてくる整備長の狂喜乱舞している声が煩く聞こえてくる。あのエクセレンすら若干引くレベルのテンションの高さ、まあそのお陰で経った二日という長短時間でTDが完成したのだが……。

 

「何故かしら、お姉さん凄い事してしまった感が凄いわ……」

『あっそうだエクセレンさん頼まれてた特殊弾丸の準備とマガジンは積んでおいたしオクスタンランチャーに対応するようにして置きましたよ』

「アッチョンプリケッ!?というか正気に戻れるのね確り」

『ワハハハハハッッッ!!!テスラ・ドライブとガンダム・フレームの融合、なんて素晴らしいんだぁぁぁぁぁっっ!!!!』

「あっ駄目だ戻ってないわ」

 

取り合えず自分が名瀬を通して注文をしておいたデータが送信されてきたので目を通す事にする。タービンズの百錬との戦闘で感じたヴァイスの弱点、それは重装甲MSに対して滅法弱いということだ。ただの重装甲ならばまだいいのだがこのご時世のMSは射撃に強いナノラミネートが装甲に施されるので重装甲の場合、射撃主体のヴァイスには辛いとしか言えなくなる。それは装甲が厚めな百錬でも言えた事だった。

 

そこでエクセレンが注文したのが二種の特殊弾丸。一つは対ナノラミネートアーマーナパーム弾。ナノラミネートアーマーの攻略法はバルバトスのメイスのような"大質量の直撃"だがそれはヴァイスには難しい。よって装甲に蒸着している塗料を剥がす為のナパーム弾を発注した。そしてもう一つは貫通性能が極めて高い貫通弾、この二種を装填したマガジンをオクスタンランチャーに装着し撃てるようにして貰った。これで大分やりやすくなると思われる。

 

「よしっと。こっちはチェック終わったわよ~」

『こっちも終わったよ』

『よしそれではひっじょぉぉぉおおおおおに名残惜しいですが、約1時間後にバルバトスはクタン参型で。ヴァイスはそのままで行けるんでしたね』

「ええ。んじゃ準備進めちゃいましょうか」

 

そして全ての準備が完了するとバルバトスは巨大なブースターが装備されている輸送機のクタン参型の中に収容されるとクタンの操縦席へ雪之丞が乗り込むのを確認すると二機は先に歳星を出た艦を追いかけるように宇宙へと飛び出して行った。流石に大型のブースターがあるだけにクタン参型の速度は速くヴァイスも出力を上げて加速し並び立つ。

 

「やっぱり速いわね~。整備されて調子が良いヴァイスちゃんでも追いつくのがやっとよ」

『それでもヴァイスは元からこいつと同等かそれ以上の速度があるって事になるんだけどな、それでも十分やべぇよ』

『これなら直ぐに追いつくね』

 

結果としてはそれほど時間が経つほども無くレーダーにイサリビとハンマーヘッドのリアクターの反応を捕まえる事が出来た。が他の反応も拾った。

 

「っ三日月!昭弘のグレイズと未登録の反応が三つ!」

『分かった、一気に加速して突入する』

「行くわよ!!」

 

迷う事無く出力を全開にする三日月とエクセレン、イサリビをあっさりと抜かしつつ戦闘空域へと侵入するとバルバトスはクタンから出て単身で突撃して行く。

 

『お、おい待て俺は操縦なんかできねえぞ!?』

「大丈夫よおやっさん、確か自動操縦モードが合った筈。確か黄色と赤よ、んじゃ」

 

そういい残すとバルバトスと同じように加速して空域へと突撃して行くヴァイス、モニターに映っているのは複数の敵に囲まれながら銃弾を打ち込まれ続けているグレイズの姿、反撃はしているが相手のMSはずんぐりとした厚い鎧を纏っているかのようなMSでグレイズのライフルでは傷一つついていなかった。そして一機のMSが昭弘のグレイズに向けて斧を振り下ろそうとした時、頭上よりやって来た悪魔が首へと入れるように真っ直ぐと太刀を突っ込んだ。装甲の内部へと潜った太刀は機体の内部とコクピットを一瞬で破壊しMSを再起不能とした。

 

「わお流石三日月!」

『ね、姉さん!?み、三日月かあれ!?っというか二人早くねえか!?』

「まあ急いで来たからね~」

 

改めて新しくなったバルバトスを見てみる、全体的に確りとした形となっている。テイワズの整備長が厄祭戦当時の物を再現したと行っていたがあれが恐らく本来のバルバトスの姿に近い物なのだろう。そしてそこへと加えられた短い翼のような突起のTD、それによって全体的な性能が上昇しており三日月もその動かしやすさに驚きつつも笑っていた。

 

『エ、エクセ姉さん助かりました!』

「あららタカキ君まで居たのね」

『ええ。昭弘さんと哨戒に出てたんです』

「三日月は昭弘とタカキの護衛お願いね、お姉さんが殿やるから」

『分かった、無理はしないでね』

 

そういうとバルバトスは軽い動きでグレイズとタカキの乗った背負われたMWを護衛するようにイサリビへと向かっていく。その背後から迫ってくる緑色で何処かカエルっぽい印象を受けるMSにヴァイスは狙いを定めた。

 

「此処から先は通行禁止です事よ~!」

 

オクスタンランチャーのBモードで発射する、比較的距離は遠くないので距離による威力減衰は無い筈だがそれでも銃弾は弾かれてしまい敵機には大したダメージがあるようには見えなかった。矢張り重装甲タイプの敵はやりづらい。

 

『聞くかよそんなの!!』

「あらそう、そんな貴方に新商品!」

 

新しく装備されたマガジンをセットしてそれを構える、そして此方に向かって撃たれたライフルの弾を簡単に回避しつつお返しに一発放った。弾丸が敵MS、マン・ロディの腕部に直撃した。かなりの重装甲なので相手も大丈夫だと思ったのだろうがこれは先程と同じ弾ではない、直撃と同時に高熱を発しながら爆発を引き起こしマン・ロディの装甲のナノラミネートアーマーを瞬時に剥がしてしまった。そして透かさずそこへEモードを打ち込んでみると光は腕を貫通し破壊した。

 

「わぁお!想像以上の出来前じゃないこのナパーム!」

『うわああああっっ!!な、なんだよあれMS用のナパーム弾かよ!?しかもなんか光ったと思ったら腕が壊れた!?』

『くそっ!!兎に角動き回れ、隙を見せたらやられるぞ!!』

 

もう一機の言葉を受けて機体の見た目とは反した高い機動性を見せて此方の射撃を受けまいと動き始めるマン・ロディ、だがしかし唯激しい動くだけで当たらなくなるのでは高速移動している機体でまともに遠距離射撃など出来ない。エクセレンは笑いながら自分も激しく動きながら正確に頭部と胸部それぞれ通常のBモードの弾丸を寸分違わずに命中させて見せた。

 

『な、何だこいつ……!?やばい、やばすぎるぞこいつ!?』

『くそ一旦デブリの影に行くぞ!!』

 

ヴァイスとエクセレンに恐怖を感じたのか一目散にデブリの中へと逃げ込んでいく二機を見るとヴァイスはその隙に一気に後退し三日月の援護へと向かっていく、だがそこでは既にタービンズからの援護が到着していたのか三日月とマン・ロディを更に大型化させたような機体と交戦をしていた。そこから勢いよく遠ざかるようにしているグレイズを発見するとエクセレンはそちらの護衛につく。

 

「昭弘にタカキ君大丈夫!?」

『ね、姉さんタカキが!!タカキが!!!!』

 

昭弘のらしくない悲鳴のような声を聞きMWを見るとそこには拉げた装甲のMWがグレイズの手の中にあった。それを見た瞬間エクセレンの血の気が引いて行った。

 

「急いでイサリビへ!!!」

『タカキ、タカキ確りしろ!!!もう着くんだ、頼む確りしてくれ!!!』

 

 

イサリビのドッグへと戻ってきたヴァイスから飛び降りるようにエクセレンは拉げた機体からタカキを救出しようと奮闘している皆の元へと急いだ。カッターなどを使用し必死にMWの装甲を抉じ開けようとする中でライドの声が木霊する。そして開いたMWの中から出てきたのはスーツの中で激しく流血し意識を失っているタカキだった。それを見たエクセレンはドッグにある応急キットを取るとタカキの元へと立った。

 

「応急処置を始めるわ!シノまだ応急キットがある筈だから持ってきて!それと誰か包帯と輸血パックを何時でも出せるように私の近くに居て!後ライドはそのままタカキを呼び続けて!!急いで!!」

「は、はい!!おい応急キットって何処だ!!?そこか!!」

「輸血パックです!!」

「タカキ!!タカキィィ!!!」

「死なせるもんですか……!!!」

 

必死な応急処置は医務室から治療道具を持ってきたクーデリアとそれを受け取ったテイワズからの仲介役にしてお目付け役のメリビット・ステープルトンが来るまで行われた。メリビットが治療を行おうとした時驚いた、応急処置とはいえ自分がやる事がもうかなり少なくなり後少し行えば大丈夫というところまで来ていた。

 

「後は私がやります、エクセレンさんは医務室のメディカルナノマシンベッドを!」

「分かったわ」

 

そう言って去って行くエクセレンを見送ったメリビットは応急処置が行われたタカキの治療を行うが簡単な最終工程しか行うとそのまま数人の手を借りてタカキを医務室へと連れて行った。

 

「姉さんタカキは!!?」

 

医務室へと駆け込んできたオルガと昭弘、連絡を聞いてすっ飛んできたのだがそこには正常な心拍音を立てる計器と呼吸をしながら横たわるタカキを見守る二人の女性の姿があった。息を荒げながら入ってきたオルガに対してエクセレンはそっとサムズアップをする。それを見て安心したように力を抜いた。

 

「良かった……」

「こんなことなら確りと皆に応急処置のレクチャーしておけば良かったわね……他の事で手一杯で忘れたわ……」

「エクセレンさん、貴方は船医を兼任してるんですか?」

 

鉄華団の内部状況に詳しくないメリビットはそう尋ねると頷いた。

 

「大体私が皆が出来ない仕事請け負ってるの。鉄華団にはまともに教育を受けられてない子とか経験がないこが多い上にテイワズとの交渉で漸くまともなお金が入ってきたばかりだから、私が重要な所は殆ど」

 

それを聞いてメリビットは相当驚いていた。エクセレンの年は見た所20代前半、それなのにどれだけの苦労を重ねているのだろうか。そして苦労せざるを得ない鉄華団の状況の悪さにも驚きと心のどこかで船医が居ない事を責めようとした自分を恥じた。雇っていないのではなく雇えない状況だったのだから。

 

この後、自分達を襲ってきたのがブルワーズという海賊であることが発覚し加えてそこに昭弘の弟が居るという驚愕の事実までが明らかになった。そんな中エクセレンが口にしたのは

 

「だったら決まりね。作戦名、昭弘の弟君を鉄華団に迎えちゃおう!の決行よ!」

「いや賛成だけど姉さん、致命的なまでにネーミングセンスがねえよ」




昭弘「タービンズの人たちとあってから鉄華団の中である話題が出来た。

誰が一番美人かってそんなくだらねえ話だ。

タービンズで一番多いのはアジーさんだったな

うちの姉さんとは違ってクールでカッコいいもんな。

でもやっぱり鉄華団の皆は、口を揃えて姉さんだって言うぜ。

次回、鉄血のオルフェンズ 悪魔と堕天使

暗礁
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