「えっ?ロンなんだって?」   作:マッスルゴナガル

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「フレッドとジョージがアイドルプロデュースするって」立ち上げ編

「え?ロン、なんていった?」

ハリーはロンが言ったことが信じられなくて思わず聞き返した。あまりに聞き慣れない単語が出てきたもので、脳の処理が追いつかなかった。

 

 

「だから、フレッドとジョージがアイドルをプロデュースするって!」

 

 

ハリーはアイドル?と繰り返した。アイドルってあの、歌って踊るやつ?

「それで、寮で一番可愛い子を挙げてほしいって」

「本気で言ってるの?」

「あの二人、衣装までデザインしはじめたんだ」

そんな馬鹿なと思いつつ、ハリーとロンは双子に直接話を聞くことにした。必要の部屋に篭ってるらしいふたりは赤、黄色、青、緑の生地に埋もれていた。

「おう、兄弟。悪いが手伝ってもらっても時給出せないぜ」

「猫の手も借りたいくらいなんだ。もちろん無賃でね」

二人はデザイン画を貼り付けたボードの前でうんうん唸っていた。

「本気でやるつもりなんだ」

ハリーは呆れ半分、感心半分で尋ねた。二人は当たり前だろ?という風に笑いあった。

「今一番儲かるビジネス」

「それは女子供に向けた、常に消費され続けるコンテンツさ」

双子はリリースする予定のグッツリストを広げた。生写真、ストラップ、CD。写真入りマグ…等などいろんなグッツ展開を考えているらしい。

「ところがどっこい。肝心のアイドルがいないんだ」

「なあロン、考えてくれたか?各寮で一番可愛い子」

「ああ…うん。一応ね」

「ハリーもよかったら一緒に考えてくれる?」

「あー…僕で良ければ」

ハリーは協力せざるを得なかった。

 

「ふーむ。グリフィンドールとレイブンクローがパチル姉妹か。ハッフルパフはハンナか。まあ悪くない。スリザリンは?」

「考えたけど、いないね」

「日常のいざこざは忘れろ!心をビジネスライクにして、一番かわいい子を公平に見つけなきゃいけない」

「まあ確かに可愛い子は…数少ないな」

ショージはふうむと唸った。

「パチル姉妹は俺たちも考えたよ。でも双子なら双子ユニットで売ったほうがいい」

「そうそう。俺たち駆け出しだろ?まずはホグワーツ内で売れるアイドルを目指すべきだと思うんだ」

「つまりもっと親しみやすい方がいい。勿論エロイーズくらいだと悩みどころだが…」

「そう?親しみやすさで言ったら彼女が一番だと思うけどね」

ロンがからかうように言った。

「親しみやすさか…」ハリーもじっくり考えてみた。

アイドルとは偶像という意味がある。つまりはキャラクターなのだ。

みんながわかりやすく感情を向けられる相手がいい。好意や共感を得られやすくて、それでいて可愛い子。みんながそのアイドルのことをもっと知りたいと思うような、そんな子…。

 

「ハーマイオニー。グリフィンドールはハーマイオニー一択だ」

 

「ええっ?!なんで?」

「ハーマイオニーはみんなの噂の中心だろ。あのゴシップ黄金虫のリータ・スキータが嗅ぎ付けるくらいに人を引き寄せる何かがある気がする」

「いや…まあ言いたいことがわかるけど、ゴシップってNGじゃないの?」

「いや、ハリーの言うことも一理あるぜ!」

訝しげなロンにフレッドが追い風を立てた。

「アイドルなんて話題になってなんぼ!ハーマイオニーがアイドルってなったら他の寮のやつもとりあえず見る気がする」

「ううーん。まあそうかもしれないけど…」

「なにより髪の毛をどうにかすれば可愛いってことは証明されてるしな。隠れファンがいるかもしれん」

ジョージはボードにハーマイオニーとデカデカと書いた。ハリーは頭の中でぐるぐる計算をし続けた。

キャラ…話題性…アイドル…各寮の特性を活かしつつグループ内の調和を保つ存在…

 

「レイブンクローはルーナだ」

 

ハリーが導き出した結論に早速ジョージが食いつく。

「不思議キャラ!いいね…インスピレーションが湧いてきたよ!」

「なるほどね…真面目キャラのハーマイオニーが突っ込むのか」

 

「いや、違う」

 

フレッド、ジョージは顔を見合わせた。ワンテンポ遅れてロンがそうか!とつぶやく。

「ハーマイオニーはボケなんだね?」

「その通り」

「ハーマイオニーがボケ…?なんでだ?説明してくれよ」

ハリーは立ち上がり、ボードにルーナ、ハーマイオニー、ハッフルパフ、スリザリンと書き双子に向かって解説を始めた。

「いいかい?アイドルに大切なのはやっぱりキャラクターだ。だとするとハーマイオニーはツッコミにするとキャラがこすぎるんだ」

 

ハーマイオニー…ゴシップ、リーダー

ルーナ…不思議ちゃん、奇行

ハッフルパフ…???

スリザリン…???

 

「こう書けばわかるけど、ここにツッコミとか入れるとハーマイオニーだけ頭でっかちで濃すぎる。だからハッフルパフにツッコミの役割をわたす」

「ツッコミってちょっと毒吐くだろ?スリザリンのほうがいいと思うけど」

ロンの言葉にハリーは慎重にこたえた。今までどんなテストでもこんなに頭を使ったことはない。

「そうするとスリザリンがキツすぎる。ルーナに対して厳しいツッコミをしたら好感度が下がると思う。」

ハリーはハッフルパフの横にツッコミ。常識人。と書き足した。

「そこで、ハッフルパフだ。普段から脚光を浴びない寮だろう?だからこそこういうキャラ付がいいと思うんだ。変な三人の中に常識人がいたら目立つ上、常識人だから嫌われないし」

「なるほどなあ。ハーマイオニーはどうボケるの?」

「ずばりマグルボケ」

「!!!」

「ずれたマグルジョークや常識を持ち味にしてただの頭でっかちキャラから脱皮させるのさ」

「ルーナの天然ボケにハーマイオニーのマグルボケ。そこにスリザリンの強いツッコミ!けどハッフルパフがカバーし和やかな空気…もうなんだか行けそうな気がしてくるな!!」

双子はわくわくしてメモを取った。

「肝心のメンバーは?」

ロンは手を上げた。

「ハンナが良いと思う。純血だけどマグルを差別しないやつだし」

「スリザリンと対照的だけどそこが嫌味にならないのがいいな。俺も賛成」

「うんうん。それで問題のスリザリンだが」

フレッドは期待の眼差しをハリーに向けた。今ハリーはプロデュースの神がついてるのかというくらいに集中し、至高のアイドルのために思考を張り巡らせていた。

「スリザリンは………」

 

 

「マルフォイだ」

 

 

 

「……えっ?」

ウィーズリー三兄弟は思わず三人揃って口をあんぐり開けた。

 

「しょ、正気かよハリー。マルフォイってまず、男だぜ?」

「僕は正気だよ」

「考え直せ、ハリー」

「いいや、これがベストだ」

ハリーはまたも立ち上がり、ボードに書き足した。

 

ハーマイオニー…ゴシップ、リーダー

ルーナ…不思議ちゃん、奇行

ハンナ…ツッコミ、常識人

マルフォイ…毒舌、???

 

「この???に埋まる部分。これを持ってるのはスリザリンにはマルフォイしかいない」

「は、ハリー。僕は君が何を言いたいかわからないよ」

ハリーはやれやれとため息をついた。

「いいかい?スリザリン以外の三人に足りないのはアイドルとしての向上心だ」

ハリーは上三人の名前のところにおっきく向上心と書き足す。

加えてマルフォイの横に細かいプロフィールが付け足された。

「マルフォイは三人の中で一番向上心が高く、本気でトップアイドルを目指してる。だからたまにずれてるハーマイオニーやルーナと衝突しちゃうんだ。努力しなくても面白いメンバーに嫉妬していて、ハンナがたまにそれをそっと察して話を聞いてあげたりするってわけ。人一倍努力家なんだ。これで毒舌分の好感度は巻き返せるし、加えて四人の人間関係に厚みがでてきたろ?」

「すごい早口で言ったねハリー。でもなるほど…よく考えられてる」

「むしろマルフォイを応援したくなってきた。いいアイディアだ!スリザリン女子からの応援も期待できる」

ハリーは自分の提案が認められて少し得意げだった。

しかしジョージは深刻そうな顔をしている。どうしたのかと尋ねると「水をさすようで悪いんだが」と前置きしていった。

 

「スカウトは誰がやる?マルフォイだぞ」

 

うーんと全員が唸った。

「僕がやるよ」

しかしハリーは決断した。

 

 

「僕が必ず、四人をトップアイドルにしてみせる!」

 

 

こうしてハリーのアイドルプロデュースが始まった。

次回は地獄のスカウト編。お楽しみに!

 

 


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