チーズ系転生者   作:カチカチチーズ

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剣鬼なチーズ主人公の続きです。
ランスロットも順調に進んでますよ?多分今日の十時過ぎには投稿するかなぁ?



霧に舞う剣士2:ハイスクールD×D

 

 

 

 

 未だ朝霧が消えぬ時刻に屋敷の庭で一人木刀を振るう。冷えた空気が寝巻きの間から入り込み身体を冷やしていく。

 しかし、そんなものは些事。

 冷気など一切切り捨て素振りに勤しむ。

 

 ふと、素振りをしながら少し前の事を思い出す。そう、アレは雪の降るクリスマス・イブだったか。

 あの日、俺はこの土地由来の化生らから悪魔とこの街の聖職者らが何やら会合しているという話を聞き、この街で暮らしている貴族悪魔の少女の事を思い出し人気の無い路地を一人警邏していた。

 そして、逃げる貴族悪魔の少女と何処かで見た記憶のある悪魔祓いの青年、二人を追う怪しい風体をした悪魔の団体。そんな光景を見かけた以上、見て見ぬ振りも出来ず更にはこの街で魔性───特に伴天連───が何やら面倒事を起こそうとしている、という大義名分もあり子供騙しな結界を踏み越え、悪魔どもを一刀の下に処分し貴族悪魔の少女と悪魔祓いの青年を保護した。

 

 いま、思い出してみればこれも原作の過去での出来事だったのだろう。

 

 保護した次の日に話を聞いてみれば貴族悪魔の少女はベリアル家の出であのディハウザー・ベリアルの従妹で彼から実の妹のように可愛がられていたらしい。一族の繋がりが強いというベリアル家にして皇帝の妹分ともなれば…………彼が後々にクリフォトに与した理由になるだろう。

 少なくとも彼女の恋人である八重垣正臣が蘇りクリフォトに与していた。

 

 さて面倒事に刀を差し込んだ以上、半ばで止めるのは道理に合わず。二人とついでに彼女の眷族らをまとめて匿う事に決め、伝手を利用し悪魔どもも干渉出来ん場所へと送り終わったわけだが…………

 

 

「ふむ……気がつけば既に」

 

 

 木刀を下ろし、庭から部屋の時計を見てみれば既に短針は六と七の丁度あいだを示していた。素振りを始めたのが大体五時始めと考えれば長い間振っていたようだ。

 

 予想外ではあるが素振りをこれ程続けていたなら朝のは終わりにしてもよかろう。

 

 

 汗をかいた身体を拭う為の手拭いを縁側から拾い上げ庭奥の井戸へと足を向ける。

 今日の朝餉は何だろうか。

 

 

 

 そういえば、俺の記憶について話そうと思う。

 先程の話から分かる通り、俺の中の前世の記憶は半分近くが薄れている。

 前世の自分及びその周りの関係者の記憶自体はまだまだ大丈夫ではあるが……だが主に刀に関する記憶以外が段々と薄くなっており、父親が刀を振る姿は思い出せるがその顔は思い出せないというのが時折あり、この世界についての記憶は細かい所が抜け落ちている。

 そして、はっきりと残っているのは一人の男に対する記憶。

 我が情景。剣士として新たに生を受けた俺が求める情景…………あの剣神に対する記憶。

 

 

 まあ、はっきりと残っているのがソレだからこそ今の俺がこのようになったのだろうがな。

 

 井戸で顔を洗い、手拭いを取ろうと手を伸ばし────

 

 

「どうぞ、三厳様」

 

「───すまんな」

 

 

 優しげな声と共に俺の伸ばした手に手拭いが差し出された。俺は礼を告げ、手拭いで顔を拭ってから顔を上げ、手拭いを手渡してくれた彼女を見る。

 

 

「おはよう、千鶴」

 

「はい、おはようございます三厳様」

 

 

 長く美しい白髪をポニーテールの様に結い上げた和服美人。

 柳生千鶴。俺がまだ若くより未熟であった頃に今の父から命ぜられた大化生討伐の際に拾った俺の二つ下の鬼種の血を引く少女。

 当時は大化生により肉親を喪ったという身の上を憐れんで侍女として引き取ったのだが……いまは愛い女だ。

 

 成長して俺がよく知る人物に瓜二つとなった時は頭を抱えたが別人と割り切りかれこれ長い付き合いだ。

 

 

「三厳様、朝餉が出来上がったのでお呼びにまいりました」

 

「ん、着替えてすぐにいこう」

 

「はい」

 

 

 千鶴を食卓へと戻し俺は一度部屋へと戻る。

 寝間着を脱ぎ畳み洗濯物入れの箱に入れておきいつも通りの和服に腕を通す。

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

 

 

 

「────なるほど」

 

 

 柳生家七郎三厳の持ち家である屋敷の大広間で家主である三厳は数人の三厳よりも長く生きているとわかる偉丈夫らと対面していた。

 菅笠を被る修験者を数人後ろに並べ唯一菅笠を脱いでいる初老の男は威圧感を漂わせながら三厳を見ているが三厳はその威圧感など柳に風の如く受け流す。

 

 

「では、そちらが件の娘を始末する際に私も同行、伴天連が魔性の相手を私がすれば宜しいのですね?」

 

「うむ……貴殿はあの黒き天使の相手さえしてくれればいい」

 

「わかりました。私としても伴天連の魔性───その神話に記された存在を斬るというのは願ってもない事。その仕事お引き受けいたしましょう」

 

 

 そう言いながら三厳は深々と目の前の初老の男に頭を下げる。

 実力を見れば分もかからぬ内に修験者らで血河を築く事が出来る程に差があるがしかし、この日本において家格は三厳よりもこの初老の男が上である以上、三厳は下に出ていた。

 三厳は初老の男はともかくその後ろの菅笠を被った修験者どもが三厳を、柳生家を武家上がりの新参者を見下している事を知っていた。



 それは実力ではなく歴史の長さ、血の貴さを見ての行動。柳生宗矩が再興した柳生家は歴史でも血でもなくその実力を良しとしているため、そこで育った三厳は彼らの考えが煩わしく逆さ鱗を撫でられている様に思えた。

 目の前の初老の男が見下さず三厳を、ひいては柳生家を高く見ていなければ此度の依頼など引き受けずこの場で血河を築いていただろう。

 下手人をそこそこの大化生に仕立てあげて。

 

 

「うむ、任せたぞ。三厳殿」

 

「ええ、任されました」

 

 

────ああ、任された。我が敵は雷光の魔性、端役など知らん

 

 

 再び深く頭を下げる三厳。だからこそ、三厳以外その表情がわからない。

 

 その表情は正しく剣鬼のそれだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「────え」

 

 

 鮮血が飛び散る。

 少女に降りかかる母とは違う血。

 それは今まさしく少女の愛する母を切り殺した修験者らのモノ。

 

 皆ただ一振りでその命を散らし鮮血の華を咲かせていた。

 

 

「────芥が」

 

 

 それを成したのは一人の剣士。

 血濡れた部屋の中で唯一、血に濡れていないまるで人形か何かの様に美しく白髪の少女。

 否、少女の如き姿をした隻眼の和装束。

 何時抜刀したのか、何時納刀したのか分からぬ程の早業に少女───姫島朱乃は何も言葉を出すことが出来なかった。それはきっと何か口にした途端、先程物言わぬ骸と化した修験者らのように鮮血の華が咲くのだろうと思ったからかそれとも本能的に喋ってはいけないと察したのか。

 

 

「さて、名も知れぬ少女」

 

「────」

 

 

 そして、その隻眼が少女を貫く。

 その視線から感じれるのは無味。少女の中に流れている魔性の血への蔑みは無く、母を殺され少女も殺される事への憐れみは無く、少女を殺させず生かそうとする救済の意は無く、そこにあるのは目の前の少女に対して何も抱いていない透明なソレ。

 

 

「お前の父を斬るために来た訳だが後どれぐらいで来る?」

 

「お、父様……?」

 

 

 まるで道端で名も知れぬ人に道を尋ねるかのような平坦な言葉だった。

 少女にお前の父親を殺す、と言っているのに関わらずそんな平坦な言葉を履いた。

 何故、そのような事が出来るのか。きっとそれを彼に聞けば彼は嗤いながら応えるだろう。────情景へと至るため、と。

 常人に理解出来ないであろう言葉を彼は平然と口にするだろう。それは前世では考えれなかったこと、全てはその在り方を、魂を僅かながらも変えられたが為。

 

 

「何時来るか、いや」

 

 

 壊れていると自覚している隻眼の剣鬼はその腰の刀の鯉口を切る。

 そして、次の瞬間

 

 

「朱璃ィッ!!朱乃ォォォォォオッ!!」

 

 

 室内に飛び込む様に扉を壊さんばかりに入ってきた血濡れの偉丈夫。その背には魔性を表す黒い翼。

 男の名をバラキエル。

 聖書に記されし堕天使の一人にして、神の子を見張る者の幹部。

 そして、少女と切られ死んだ女の父であり夫である魔性の存在。

 

 嗚呼、然しそれは駄目だ。

 既に鯉口は切られている。

 

 バラキエルの視界に映るのは赤、赤、赤。

 家族が団欒と暮らしていた部屋には鮮血がこびりつき、愛しい妻は血を流して倒れ伏し、愛しい娘は死んではいなくとも血塗れ。

 首を刎ねられ息絶えた死体がいくつか、そして娘の目の前に立つ血に一切濡れていない一人の隻眼の剣鬼。

 どういう事情か、その仔細はわからない。

 バラキエルが知っているのは自分が留守の間に妻と娘を殺そうとする妻の家の者らが来ているということ。外にいた修験者らを殺し飛び込んできて見たのは血塗れの部屋と死んだ妻、生きている娘、そして血に濡れていない一人の剣鬼。

 

 そんな状況証拠だけでも十分目の前の剣鬼が下手人またはそれに準ずる何かなのは明白だった。

 

 故にバラキエルがとった行動は目の前の剣鬼を仕留めるそれだけ。

 

 

「貴様ァァァッ!!」

 

 

 雷光を纏った光の槍を創り出し剣鬼へと振るう。その速度たるやバラキエルのいままでの何よりも速かった。

 それはきっと、バラキエルの仲間で最も戦いを好むコカビエルにも勝るものだったのかもしれない、だがしかし────

 

 

───紗乱ッ

 

 

「この様なものか」

 

「ッ”ア”!?」

 

「お父様ッ!!」

 

 

 鮮血と共に飛ぶのは光の槍を握った右腕。

 バラキエルは右肩から肘の丁度あいだの断面を抑え叫びを噛み殺す。

 剣鬼はそんなバラキエルを見ず、刀を握った腕を軽く振るい斬り飛んだバラキエルの右腕を木っ端微塵に斬り刻む。

 

 

「妻の死、その怒りを以てこれか。所詮は伴天連の魔性か…………赤城山が大百足の番の方がもっと強かったぞ?」

 

 

 嗤う剣鬼は呻くバラキエルにそんな言葉を投げかけながら刀を納め、室外へと足を向ける。

 もはや、その眼には興味無しという言葉がありありと浮かんでいた。

 

 バラキエルの横を通り過ぎそのままバラキエルの背後の扉が無くなった出入り口から廊下へと足を踏み込み────

 

 

「不意打ちならもう少し上手くやれ」

 

 

 残った左腕で光の槍を持ち背後から突き殺さんとしたバラキエル、その槍は斬り落とされ腕の代わりにその左耳が斬り落とされた。

 

 

───紗乱ッ

 

 

 納刀と同時に刀の鈴の音が鳴り響き、それを最後に剣鬼は霧と共にその場からその姿を消した。

 

 

 

 

 

 

────────

 

 

 壊れている?歪んでいる?

 そんな事、とっくのとうに理解してるし諦めている。

 転生だか憑依だか知らないが、そもそも前世の俺はもう死んでるんだよ。

 ここにいるのは前世の都合の良い記憶を引き継ぎそれに侵され壊れたガラクタの人形だ。

 

 なら、人形は人形らしく壊れたまま歪んだまま踊るだけだ。

 

 目指すは剣神。至高天たる剣士。

 

 その為ならば例え悪と言われようとも構うまい────たとえそれが情景の認めないモノだとしても…………俺には俺の道しかないから…………

 

 

 

 

 

 




三厳は壊れてます。歪んでます。
だからこそこうも斬ることに躊躇いがありません。
愛しい女を捨てる以外なら大抵の事はします。

柳生千鶴
女 鬼種の末裔
見た目……アーチャー・インフェルノ


当たらないなら書けばいいじゃない(なお、別人)

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