ヒュドラの毒牙   作:蛇好き

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#6ヒュドラの覚醒

ダイナ達が、漁を終えると、母親がドクドクと血を流していた。

 モリが腹を貫いて、更に刃物で全身が斬られていた。

 

「見るな!」

 

ダイナの目を手のひらで隠し、外に出した。

 刹那、鋭い痛みが彼を襲う。

数秒、生き永らえた幸いというか、即死できなかった不幸と言うべきか。

背中を裂かれ、振り返って見ると、包丁とモリを持った島民達。

 その先には、ソイツらに囲まれたダイナが移る。

 

「やめ……」

 

渾身の絶叫を言いかけて、父親は肉塊と化した。

 

「とうちゃん!」

 

父親だったモノに叫ぶ。

 島民の一人から降り下ろされた包丁をすんでのところで回避し、もっとも華奢な一人にタックル。

 強引に道を開き、そこから逃亡に走る。

 

「まてこら!」

 

鬼の形相でダイナを追う島民たち。

 船に逃げ込んで、抵抗できる武器を探した。

 棒でも、モリでも、なんでもいい。

船の端から端まで、しらみ潰しに探す。

 モリを手にいれても、小振りのナイフを手に入れても、恐怖心が治まる気がしない。

 そこで思い出した。船の出口は押さえられている。

船を出そうとしたって、ロープをほどくために、一度外に出なければならない

詰みだ。完全に詰んでいる。

 

「十年で終わんのかよ。短けぇ人生だなぁ! おい!」

 

悲しくて、怖くて。

感情が昂って、思わず八つ当たりをしてしまう。

 

「あれ?」

 

そこであるものを見つけた。

 網に絡まって、全部を覗く事は出来ないが、果実であることが見て取れた。

 ナイフを使って、網を切ると、九つの頭を持つ蛇のような果物で、不自然な緑にグルグルの模様がいかにも不味そうなオーラをかもし出している。

 この模様は悪魔の実だ、と、フッ、と思い出す。

そして、生と死の狭間での出来事も。

 

「ヘビヘビの実 幻獣種 モデル ヒュドラ」

 

人知れず呟いて、その果実を口に運ぶ。

 想像を絶する程の不味さだが、今は四の五の言ってられない。

 今は、これを使って生きるしか道は残されて無いのだ。

 無理矢理飲み込み、ヘビになれ、と念じる。

一気に体が変化し、九つの頭を持つ大蛇に変身する。

 

「やってやるよ。やるしかないんだから」

 

ダイナは船の出口から正々堂々と出た。

 

「おい! なんだよあれ!」

 

ダイナの姿を見て、島民が口々に騒ぎ立てるが、すぐさま静かになった。

 その間、ダイナは微動だにしていない。

ヒュドラの能力の一種、毒気を吸って死んだのだ。

 

「ハハ、フハハ!」

 

彼は自分が最強であるという気になった。

 全能感が彼を支配する。

その頃にはもう父親を殺した島民もダイナを殺しに来ていたが、毒気の前には無力に過ぎなかった。

 次は村だ。村を壊滅させる。

少し坂を登った先にある村に、尾で地面を叩いてツチノコの要領で跳ぶ。

 空中で彼は九つの首を伸ばし、家を九つ壊す。

着地と同時に、毒気を放ったら、届かない範囲の家を丸のみにする。

 ――まだ、いる。

ピット器官と皮膚に伝わる心臓、そして匂いで判断した彼は、次なる殺戮の舞台を求めて、さまよう。

 

 

 

 彼は恨んでいた。

この島のすべてを。人を。環境を。

 今、彼をつき動かす感情は恨み、復讐。

たった二つ。たった二つで今までに島民のほとんどが消えた。

残るのは、あと数人だ。

 毒液を空に向けて発射した。

毒液は雨のように降り、彼はそれを受けてヘビの体で踊る。

 ――もう、いない。誰もいない。

そう判断した彼は、人の姿に戻る。

 

 

 

その島は、その日無くなった。

 人間だけじゃない。すべてを生き物や植物が、彼――ダイナを除いて全員死んだのだった。

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