魔法少女の「    」   作:戦艦大和

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第三話「これが私の力だね」

 11月27日、日曜日。日も少し傾き出した頃、まどかは見滝原市立病院のロビーに居た。

 別にまどかの体調が悪い訳では無い。むしろ健康体そのものである彼女には病院へ来る理由そのものがなかった。

 では何故ここに来ているのかと言えば、彼女自身ではなくその連れに理由があったからである。

 

「まどか、お待たせ。」

「さやかちゃん。」

 

 エレベータから出て来た連れ事、美樹さやかがまどかに向かって声をかける。病院に用があったのは彼女の方だった。と、言っても彼女も体調がすぐれないという訳でもない。

 

「上条君、どうだった?」

「まー、一応元気。体力も結構戻ってきてるし、リハビリも頑張ってるみたいだったから。」

 

 上条恭介。さやかの幼馴染であり、資産家の一人息子。年齢14にして「天才」とまで称される程のバイオリニストであり、

 

 先月中旬、交通事故に遭い、それ以降入院したままになっている人物でもある。

 

 話によると、バイオリンの教室から帰る最中のひき逃げ事故だったらしい。幸いなことに目撃者がいたことから即座に通報、搬送されたことによって一命は取り留めたのだと言う。

 しかし入院したころは連日意識不明。それも今月初めになって目を覚ましたのだが、今度は左腕の麻痺が発覚。現在は長期にわたって寝続けていたことによる筋力の衰えに加えて、左腕の麻痺のリハビリのために彼の入院生活はいまだに続いていた。

 

「まだ、左手は動かないみたいだけど……」

「そっか……早く良くなるといいね。」

 

 「うん。」とさやかが力なく返す。今月初め、目を覚ました時は本当に酷かったという。まどかは彼がどれだけバイオリンに入れ込んでいたのかは知らないが、それができないことが相当ショックだったようだ。

 数日すると何とか落ち着きを取り戻し、リハビリに集中できるようになったらしい。が、開始から既に数十日、その結果もあまり芳しくないという。

 

「……まどか、早くいこ!マミさん待たせるわけにはいかないからさ!」

「……うん。」

 

 さやかが暗くなった雰囲気をごまかすように言う。彼女らは今日も巴マミの`魔法少女体験コース`についていく予定であった。歩き出すさやかに、まどかがついていく。

 

「え-と、今日はマミさんの家に集まるんだったよね?」

「うん。そういえば、おとといのケーキおいしかったなぁ。」

「あれってマミさんの手作りなのかな?」

 

 当たり障りのない会話をしながら病院を後にする二人。その背中を、あの白い影が見ている事に彼女らは終始気づかず仕舞いであった。

 

 

 

 

 

 

「ハッ!」

 

 一面子供の落書きののような世界で、巴マミは跳ぶ。するとこれまた落書きのような見た目の使い魔の攻撃が、先ほどまでマミが立っていたところを突いた。マミは着地すると、手にしたマスケットでその使い魔を貫く。

 

「……ふぅ。すばしっこい使い魔ね。」

 

 とりあえず見える範囲では使い魔を殲滅し終えたマミが一息つく。

 

「大丈夫ですか?」

「ええ、平気よ。多分、ここを抜ければもう最深部だと思う。」

 

 まどかの案ずる言葉にマミは笑って返しながら、目の前の扉を見る。一見ただの落書きのような扉だが、そこから漂う邪気はそこに魔女がいるという事を如実に示していた。

 

「なんか昨日より早くないですか?」

「きっとこの魔女の力が昨日のよりも弱いからだと思うよ。」

「確かに、使い魔の数も少なかったような……」

 

 さやかの問いにキュゥべえが答え、まどかが納得する。

 

「まぁ、どの道危険な事に変わりないのだから、油断は禁物よ。あなたたちは昨日と同じ様に後ろに下がっててね?」

「ハイ!」

「わかりました!」

 

 魔女との戦いに入る前にマミが注意を促し、まどかとさやかがそれに答える。

 

「じゃあ、行くわよ。」

 

 そう言ってマミはその扉を押し開けた。

 

 

 

────Albertine(落書きの魔女)────

 

 

 

 扉を抜けるとマミはまどか達の周りにリボンの障壁を張り、周辺を見回した。

 

 昨日と同じく円形の広場だ。壁はこれまでと同じように子供の落書きのような模様をしていたが、そこにはやけに大きな積み木やクレヨンが散乱していた。

 ざっと辺りを捜索するが、魔女の姿は全く見えない。

 

 と様子を見ていると使い魔が数体飛び出してきた。

 

「ぶううううううううん!ぶううう、ぶうううううううん!アハハァハァハァ!」

 

 子供の声真似のような声を喚かせながら飛び回る飛行機のような使い魔がマミに攻撃を仕掛けてくる。

 それに対してマミは軽くバックジャンプしながらリボンを取り出し、数丁のマスケット銃を生成すると使い魔を瞬く間に撃ち落としてしまった。

 

「わぁ!」

「すごい……」

 

 目の前の早業を見て、まどかたちが感嘆の声を漏らす。だが事態はこれではまだ終わらない。

 

 使い魔がまた物陰から飛び出してくる。数も先ほどより多い。

 マミもマスケットを大量に呼び出し、使い魔たちを迎撃していくが、物陰から次々湧出する様を見て内心舌打ちする。

 

(もたもたしてると物量で押しつぶされる……早く魔女を討った方がいいわね。)

 

 だがそう簡単にはいかない。状況を見るに魔女はどうやら小さめのようだが、障害物が多すぎる。普通に探すとなれば、かなり骨が折れる作業になるだろう。

 

(なら!)

 

 マミが二丁のマスケットを左右仰角高めに撃ち込む。リボンの尾を引きながら飛んで行った弾丸が壁に突き刺さると、マミはそのリボンを左右両手で掴む。すると、

 

「ハッ!」

 

 まるでそのリボンがゴムでできていたかのようにマミを持ち上げ、空中に打ち上げた。こちらへ向かってくる使い魔の間を通り抜けながらマミは上昇する。

 そして空中の使い魔より高いところまで上がると、今度は大量のマスケット銃を召喚する。直後、地上に照準が向けられたそれらが一斉に火を噴いた。

 

「ギヤアアアアアァァァァァァ!」

 

 放たれた弾丸は広場全体の地面に穴を穿つ。当然、銃と地面の間にいた使い魔は蜂の巣である。

 一瞬にして使い魔たちを一掃してしまったマミだが、まだ彼女の手番は終わらない。地面に空いた穴からリボンが伸びだし、周辺に有る物と言う物をからめ取りながら伸びていく。

 

 銃弾は床全体にばら撒かれていた。この空間にいる物はその殆どが彼女のリボンに囚われる事となる。

 

「あ!」

「マミさん!あれ!」

 

 と、なると体躯の小さな魔女がそのリボンに捕まる事は必然であった。マミは落下しながらもリボンに囚われ必死にもがいているヒトガタを確認すると、地面から伸びているリボンを数本引きちぎった。

 

「悪いけど、速攻でご退場願えるかしら!」

 

 その数本のリボンを円筒状に束ねると、巨大な砲を形作る。放たれるのは、巴マミのいつものフィニッシュブロー。

 

「ティロ・フィナーレ!」

 

 閃光が走る。

 

 その光がヒトガタを飲み込むと、瞬く間にその形を崩していき、その姿をこの世から消し去った。

 

 

 

 

 

 

 魔女を倒したことにより、結界が崩壊したそこは歓楽街の一角であった。西日が差して赤く染まる路地で、グリーフシードを拾い上げるマミにまどか達が近づいてくる。

 

「けがは無かった?」

「はい!マミさんがばっちり守ってくれたおかげで何ともないです!」

 

 マミの確認にさやかが元気良く返す。そんな彼女の様子に安堵したかのようにマミが笑いかける。

 

「なら良かったわ。途中、鹿目さんたちがいること忘れて思いっきりぶっ放しちゃったから、どうしようかと…」

「ええ!?」

「ふふ、冗談よ。」

 

 まどかたちの驚いた様子にマミが笑う。さやかたちも後の言葉に自分たちがからかわれたことに気づいたようだ。

 

「び、びっくりさせないで下さいよ……」

「ふふ、ごめんなさい。……あら?」

 

 突然マミが怪訝そうな顔をして辺りを見回しだすと、ソウルジェムを取り出した。

 マミの突然の行動にさやかがソウルジェムを覗き込む。

 

「どうかしたんですか……って、ええ!?」

「さやかちゃん、どうしたの?……え!」

 

 驚いた様子を見せるさやかに、まどかもつられて覗き込む。そこには強い反応を示して輝く宝石があった。これはつまり、まだ周りに魔女なり使い魔なりが存在するという事に他ならない。

 

「そんな、魔女はさっきマミさんがやっつけたのに!」

「……いや、これはさっきの魔女じゃないよ。」

 

 驚きながら声を上げるさやかにキュゥべえが返す。その言葉にマミが続く。

 

「きっと、近くにもう一体魔女が居たんでしょうね。さっきの魔女とは少し魔力の波動が違うもの。」

「そうなんですか?」

 

 マミがさらに辺りを見回して歩き出す。そして路地をさらに奥に行った所で足を止めた。

 

「此処ね。」

 

 マミがソウルジェムを輝かせると、結界への入口が出現する。

 先ほどとは違う模様の入口。だがそれは、これまで結界の入口とは若干様子が違っていた。

 

「……なんかこれ、チカチカしてません?」

「あ、ホントだ。」

 

 まどかたちが結界の入口を見たのは二回だけなのだが、この入口はそれらと比べて揺らいでいるように見えた。マミもその様子を見て口を開く。

 

「……どうやら、先に誰かが結界に入って戦ってるみたいね。」

「え!?」

「じゃああの転校生が?」

 

 現状、見滝原に居る魔法少女は巴マミを除けは一人である。戦っているとすれば、その残りの一人である暁美ほむらしか考えられない。

 

「……万が一、と言う事もあるから。一応行っておきましょう。」

「え?手伝うんですか?」

 

 さやかがマミの言葉に思わず反応する。

 

「いいえ、余裕そうならそれでいいし、危なくなったら助けに入る。一応、貸は作っておきたいしね。」

 

 そう言ってマミが変身する。一丁のマスケットを生成すると、そのまま入口に向かっていく。

 

「じゃあ、行くわよ。鹿目さんたちは私から離れないようにね。」

「は、ハイ。」

 

 そうして一行は再び結界内に足を踏み入れていった。

 

 

 

 

 

 

 積み木や人形などと言った子供用のおもちゃがそこらに落ちている結界をまどか達は進む。

 

「……敵、出てきませんね。」

「そうね。」

 

 マミは警戒を続けながら返す。だが、一行らが結界に足を踏み入れてから既に数十分が経過しているが、未だ一度も使い魔の襲撃を受けていなかった。

 

(一体、どんな人がやったんだろう……)

 

 まどかが頭の中で不思議がる。結界に入る前はもう一人の魔法少女、暁美ほむらが戦っている物と考えていた。が、現在ではその可能性はほとんど消えてしまっていた。原因は、結界のそこらじゅうに刺さっている「ある物」のせいであった。

 

 剣だ。

 全長は一メートルと少し、幅四センチで両刃。全体に銀色で、三十センチ程の柄の部分は黄色の紐で覆われている。鍔は無く、代わりに薄黄色の宝石がはめ込んであった。

 そんな少し離れた所から見ると、ただの棒のようにも見える剣が、入口からここに至るまでそこらじゅうに刺さっていたのだ。

 

 

 最初はほむらの魔法少女としての能力かと思われたが、キュゥべえの証言によりその可能性は殆どなくなってしまっていた。

 

「僕を襲った時、彼女は軍隊で使っている拳銃で攻撃して来たんだ。彼女の能力とは、多分違うと思う。」

 

 魔法少女としての攻撃手段があるのなら、拳銃など使う必要は無いはずだ、と言う。

 では誰の能力なのか?と言う事になるが、マミがさらにその剣を調べて分かった事は、彼女らにさらなる混乱を与えただけであった。

 

「この剣……あなたたちに掛かってた魔力と同じ物で出来ているわ。」

 

 マミのこの判定に二人は大いに驚いた。しかもこれは、今戦っている人物がほむらではないことを示しているらしい。

 なぜなら、「この魔法はほむらが掛けた物ではないか?」と言うさやかの問いに対して、マミがこう答えたからである。

 

「あまりあなた達を不安にさせないようにしようと思って黙ってたんだけど……

 その魔法、数年前から何度も重ね掛けされてる物みたいなのよ……」

 

 マミが効果もわからないその魔法を「安全な物」と判断したのは、その事もあっての事だったという。数年前から掛かっているにも拘らず、これまで一切何の支障も出さなかったのだから、と。

 そして当然、その頃にほむらとの繋がりなど有る筈が無い。また、マミの昔の知り合いが隣町に住んでいるようだったが、それも違うらしい。

 

 ここに来て、全く情報がなくなってしまったかと思いきや、一つだけ心当たりがあるという。キュゥべえがその事について語る。

 

「どうも誰かが、僕達の知らない間に魔女を倒しているようなんだ。」

 

 話によると、魔女が倒され出したのは、マミが魔法少女になる数年前からとの事だった。それはマミが魔法少女となった後も続いているらしい。

 当然、マミはこれまで何度も接触を試みた。しかしその試みは、悉く失敗に終わっていた。

 

「一度、結界が消滅した直後に行ったことが有ったけど、結局その時も会えず仕舞い……一体何を考えているのか……」

 

 

 そして今、これまで影も形も見せなかった人物が、ようやく尻尾を見せた。期せずして訪れた接触の機会にマミは緊張し、まどかたちは誰とも知らぬその人物に思いをはせる。

 

 そうこうしていると、一枚の扉が見えてきた。どうやら最深部のようである。

 この先に、自分より長く戦い続けていた人物がいる……そう考えると、マミの銃を握る手に力が入る。

 

「……入るわよ。鹿目さん達は絶対私から離れないで。」

 

 まどかたちが無言で頷く。それを確認したマミは、魔女のいる最深部への扉に手をかけた。

 

 

 

────Rosasgagn(玩具の魔女)────

 

 

 

 これまでと同じような円形の広場。だがその様相は、非常に荒れた物だった。

 

 恐らく使い魔なのだろう。デフォルメされた黒いカエルのような人形が、そこらじゅうで磔にされている。刺さっている剣はやはり先ほどの銀色の物だ。

 それを見ると今度はあたりを見回す。が、そこらにおいてある棚やおもちゃなどが障害物となり、全体の様子をうかがう事を阻まれた。

 と、ここまで状況を確認した時だった。

 

 激しい金属音が鳴り響く。

 どうやら少し離れた所で起こっているようだ。マミは近くにあった棚やおもちゃの壁に身を隠しながら覗き込む。まどかたちも同じ壁に寄り添い、おもちゃの間から戦場を覗き込んだ。

 

 魔女がいた。人型で、身長はまどかの腰ほども無い。頭に白い頭巾をかぶり、顔はつるりとした黒一色で、口などのパーツは一切見られない。

 とは言っても彼女は既にボロボロであった。服のそこかしこは解れ、肩には先ほどの剣が刺さっている。見るからに瀕死である。

 魔女の目の前が光る。どうやら使い魔を召喚したらしい、先ほど磔にされていたカエルが二体出現する。

 だが、次の瞬間

 

 剣が降り注いだ。

 

 雨のように……と言うほどでは無い。マシンガンで一薙ぎしたような降り方だった。

 しかし、それらはそこに居た魔女と使い魔を針山に変えるには十分だった。カエルも魔女も、瞬く間に地面に縫い付けられてしまう。

 

 四肢と胴体を複数の剣で貫かれ、縫い付けられた魔女。そんな彼女に近づく影があった。

 黒いコートの人物だ。顔は、まどかからでは視界の関係上伺う事は出来ない。

 

「あれが……」

 

 マミがつぶやく。自分より先に、より長い間見滝原で戦っているという人物が目の前にいるのだ。彼女なりに思うところがあるのだろう。

 

 黒コートの周りに、六つの剣が浮いている。だがそれらは、直径十センチほどの薄黄色い光の環が鍔のように付いていた。切っ先は皆、魔女に向いている。

 だが黒コートはその剣をどうこうする事は無かった。代わりにその右手が上がり、とある物が魔女に向けられる。

 

 リボルバーだ。銀色で異様な大きさのそれが、魔女の頭に向けられる。

 魔女は必死にもがくが、脱出は叶わない。次の瞬間。

 

 閃光が、魔女の頭を撃ちぬいた。

 

 

 

 

 

 

 魔女の結界が解ける。おもちゃだらけだった空間が、その姿を崩していく。

 そして、元にどった世界で、彼女らは公園に立っていた。どうやら結界の中で歓楽街近くの公園まで移動して来たらしい。

 

 運のいいことに、黒コートとの間には遊具が立っていた。まどかは結界が解けたことで障害物が無くなり、発見されるかと思ったが、どうやら杞憂に終わったらしい。

 だが、次の瞬間まどかとさやかに驚愕が襲いかかる事となる。

 

「……とまぁ、これが私の力だね。お気に召しましたかな?……暁美、ほむらさん?」

 

 恐らく黒コートの物と思われる言葉に、マミが身構える。どうやら今の今までいないと思っていたもう一人の魔法少女も、またここに存在したらしい。

 まどかとさやかも予想していなかったことだが。今はそれ以上に別の事に驚愕していた。

 

「ええ、十分よ。それだけやれれば、足手まといにはならないでしょう。」

 

 先ほどの声。恐らく黒コートの物と思しきそれに、まどかたちは聞き覚えがった。

 

「いいわ、あなたの実力は認める。その時はよろしく頼むわよ。」

 

 ……いや、聞き覚えがあるどころの話ではない。彼女らはこの声を、ほぼ毎日聞いていたではないか。

 そう、この声の主は、まぎれもなく…

 

「……秋水、キッカさん。」

 

彼女らの友人である、キッカの物ではないか?

 

 

 

 

 

 

 26日にキッカが学校を休んだのは、実際の所風邪が原因などではなかった。

 ではただのズル休みかと言われればそうではない。常人にしては明らかに不自然な要素を多分に含んだ転校生、暁美ほむらの調査のためである。

 

 最もそれはキッカ自身がその「非常識」な存在であったからこそ気づいた物だったが、そこはいい。彼女を丸一日潰してまで調査したのはほむらが「非常識」な側の人間であるからではない。

 

 キッカの友人である鹿目まどかに対する異常なまでの執心。

 

 危険な域にまでは達してはいなかったが、それでも「非常識」な立場の人間に興味を持たれているのだ。何か危害を加える可能性を鑑みて、丸一日調査することにしたのだ。

 

 で、その結果はどうだったのかと言えば、「まどかに執着する理由は不明。ただし害意は無いようなので、とりあえずは無害と言う判断でよし。」と言う物だった。

 

 とりあえずの結果を出したのち、次にキッカがとった行動はほむら自身への接触だった。これまで「魔法少女」と言う物との接触を極力避けてきたキッカであったが、この後巴マミに鹿目まどかや美樹さやかに関する話で接触しようと思っていたのだ。いまさら自分の存在を隠しても意味は無いだろうという判断からだった。

 

 そして27日の夕方。キッカは、歓楽街の路地に足を踏み入れた。人気のないそこを少し歩くと、そこには暁美ほむらの姿があった。

 目の前には結界への入口。先ほど確認したが、どうやらマミ達一行がこの中に先行しているらしい。キッカは後からついていくように入ろうとするほむらを呼び止めた。

 

「ちょっと待ってくれないかな?」

「!」

 

 ほむらは驚いた顔でこちらを振り向く。誰もいないと油断しきっていたらしい、こちらを振り向いた瞬間は少し呆けているようにも見えた。

 

「あなたは……」

「アンタが一昨日転校してきたクラスの人間で秋水キッカって名前だ。まぁ、今後よろしく。」

 

 簡単な自己紹介。だがほむらのキッカを見る目は厳しい。敵なのか味方なのか測りかねているからだろう。

 少しキッカの姿を見た後、ほむらが口を開いた。

 

「……そう。それで、その恰好。あなたも魔法少女と言う訳かしら?」

「うーん。残念ながら、ハズレ。そんなファンシーな物になった記憶は無いね。」

 

 ほむらが驚いた顔になる。なんせ今のキッカの格好と言えば黄色のベストにクラバット、その上に黒コートと言う、どう考えてもコスプレ以外の何物でもないような恰好なのだ。そう思ってしまっても無理は無いだろう。

 

「…………なら、なぜそんな恰好をしているのかしら?」

 

 至極まっとうな問い。人気のない路地とは言え、街中でそんな恰好をする理由など見当たらないのだ。だがキッカはこれにもおどけて答える。

 

「実用を兼ねたコスプレだね。ふざけれる範囲なら、ふざける主義だからさ。」

「………………」

 

 ほむらが沈黙する。恐らくこれまで会ったことの無いような人種に少々驚き、あきれているのであろう。その彼女に対してキッカが言葉を投げかける。

 

「……で、まぁ私が何者なのかは後にでも説明しようと思う。それより、今日はちょっとアンタに聞きたいことが有るんだけど。」

「……何かしら?」

 

 おどけながらも後半部に含まれた真剣さを読み取ったほむらが反応する。キッカはそのまま口を開く。

 

「まず最初に、前提として私の行動原理を伝えておく。私は基本的に私と、それに連なる者……はっきり言うなら、まどかやさやかなんかに危害を加えるような存在の排除だ。その上で聞く。

 ……あんたの目的は一体なんだ。暁美ほむら。」

 

 先ほどまでのおどけた様子を完全に消し、真剣な様子で聞く。その問いに対して、ほむらはキッカの目を見て返した。

 

「……そう、なら安心していいわよ。その条件なら、あなたと私の利害が対立することは無いでしょうから。」

 

 ほむらが答える。その内容は、ある意味ではキッカが聞きたかった答えではあるが、彼女の問いに正確に答えている物ではなかった。

 

「それは、目的は言えない。と言う事でいいかな?」

「………………」

(……だんまりか。)

 

 沈黙。どうやら答えるつもりはないようだった。

 

 さて、どうするか。とキッカは思案する。

 

(暁美ほむらの目的は、このままだと聞き出せそうにないね。目的そのものについて把握していないとちょっと不安だけど。一応、さっきの「前提」に対して「対立は」しないと言っているし、嘘をついている様子もない。今日の所は一旦保留として、また追々調べればいいか……?)

 

 と、そこまで考えた時だった。

 ほむらが結界に突入しようと取り出していたソウルジェムが、突然輝き出した。ほむらがそれを見て驚いた様子を見せる。

 

「これは魔女?しかもこの波長……さっきの魔女とは違う。」

「どうやら、別の魔女が来たみたいだね。どうする……って、これじゃ選択の余地も無いか。」

 

 周囲の風景が歪みだす。どうやらキッカとほむらは魔女の結界に巻き込まれたらしい。

 暗い路地がおもちゃ箱の中のような世界に変貌していく……

 

「あなた、戦える?」

「やろうと思えば、魔女も屠れるだけの自信は有りますが、何か?」

 

 キッカが右腰に差していたリボルバーを引き抜く。同時に空中に六つの光の輪が浮かび、そこを起点に剣が生成されていく。

 

 それを見たほむらが少し考え込む様子を見せる。数泊おいてから、ほむらが口を開く。

 

「……今、目的は言えない。だけど、私はその目的のために戦力を集めている。」

「つまり、協力してほしいと。」

「あなたの実力によってそれは決めるわ。」

 

 キッカのさえぎるような言葉に、ほむらが切り返す。それに対してキッカがさらに言う。

 

「それは、この魔女との戦いを以て判断するという事でいいかな?」

「まぁ、そう思ってくれても構わないわね。」

 

 キッカの言葉に肯定で返すほむら。

 と、ここで使い魔が飛び出してきた。しかしキッカは剣を飛ばして、それらを一瞬で磔にしてしまう。

 

「グケッ!」

 

 剣が射出された光の環に、再び剣を生成する。

 

「何を倒すつもりなのかは知らないけど。まぁせいぜいお眼鏡にかないような頑張るとしますか。」

 

 そう言ってキッカは結界の最深部に向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 魔女を撃破したキッカが結界が解けた後に立っていたのは歓楽街近くの公園だった。

 

 遊具の少ないそこで、キッカはすぐそこに落ちている黒い球体を拾い上げると、ほむらの方に投げつけた。

 ほむらがそれをキャッチしたのを確認して、キッカが口を開く。

 

「一応、私には必要ないものだからね。今回は譲るよ。」

「……そう。ならありがたく頂かせてもらうわ。」

 

 変身を解いたほむらが、私服のスカートのポケットにそれを入れる。

 

「これから私は巴マミに文句言うついでに、私について説明するつもりだけど。ついてくる?」

 

 そのまま背を向け立ち去ろうとするほむらにキッカが声をかける。

 

「遠慮しておくわ。あなたの話はまた今度にでも聞かせてもらうから。」

「そうですかい。」

 

 それに対しほむらは振り向くこともなく返す。だがキッカは特に気分を害した様子もなく彼女を見送った。

 

 

「……で、隠れてないで出てきたら?」

 

 キッカが突然声を上げる。既にほむらの姿は見えない。

 それを聞いたマミが影から出てくる。だがまどかとさやかは出てこない。恐らくキッカを警戒したマミがそうさせているのだろう。

 

「……あら、何の用かしら?」

「聞いてたでしょ?文句があるって。まぁ、立ち話もなんだし、場所を変えて話そうか。」

 

マミに向かいながら、キッカが提案する。相変わらず警戒した様子を見せるマミにキッカは続ける。

 

「私の家なんかどうだろう。安全は保障するけど。」

「……分かったわ、そうしましょう。」

「そっか、分かった。」

 

 マミは少し考え込んでから答える。それを聞いたキッカはマミに背を向けた。

 

「じゃあ私は一足先に家に戻る。私の家はまどか達が知ってるから、そっちに聞いてね。」

 

 そしてそう言い残して走り出し、近くの建物の屋根に飛び乗って行ってしまった。

 

 キッカが行ってしまった事を確認して、まどかたちが出てくる。マミがそちらを向くと二人に問いかけた。

 

「あの子、鹿目さんたちの知り合い?」

「は……ハイ。キッカちゃんっていう小学校の頃からの友達で……」

「あーもう!どうなってんのよ!何かキッカは魔法使ってるし!変な格好してるし!何か転校生とは話してるし!」

 

 まどかがかなり戸惑った様子で答える。さやかもかなり困惑しているようだった。

 

「そう……分かったわ。」

「あの、マミさんはどうするんですか?キッカちゃんのウチなら分かりますけど……」

 

 未だ困惑した様子を隠せないまどかがマミに問いかける。そんな彼女に少し考えてかマミは答えた。

 

「……あなたたちの友達みたいだし、大丈夫でしょう。鹿目さん、彼女の家に案内してくれるかしら?」

「は、ハイ。分かりました。こっちです。」

 

 マミが笑いかけながら返したことに、まどかは少し安心したのだろう。まどかは少し表情を緩めると歩き出した。

 

 そうして一行は、秋水キッカの家に向かう事となった。

 




 落書きとおもちゃの魔女戦で、やっとオリジナルな話がキター。

 でもなんか文章がしょぼい。展開早い。
 もっと私に誰か文才ください。

 後、キッカのキャラが安定してるのか非常に不安。

追記:投稿直後から修正の嵐でフイタ、なんでこんなに不注意なのやら……
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