運の月―Then go Beginners rack―   作:エステバリス

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 きっと、どこかで見たことのあるような物語




夜空の下で―Night raid―

 

 

 そして空を仰ぎ見る。綺麗に澄み渡った空だ。

 空を見上げる金の髪は月の明かりに反射して煌々と輝いて、メラメラと燃える炎が木の枝を燃やす様をハッキリと映すようだ。

 

「……私はね、きっとこの旅の結末はなんの変哲もない、凡百の終わりになると思うの」

 

 夜闇の中で金髪の根本から人の声がした。高い声……といっても極めて高いとか作ったような高さではない。普通の人の、声の主の年齢からすれば普通の人の高さだった。

 

「そうでしょうか? 貴方は決して凡俗ではありません。

 そんな貴方なのですから、その終わりが凡百のものとは、とても思えませんが」

 

 その声に応えたのは低い、大人の男性ものだった。けれどもその姿は見当たらない。それはきっと、暗闇だからなのだろう。

 その声は優しさを多分に汲んでおり、大人の声が金髪をどう思っているのかをよく表しているようだった。

 

「実のところ、私は何故自分が旅をしたくなったのかがよくわかってないんだ。

 旅は楽しいし、旅をすると決めたのは多分、ある意味当然の帰結。

 なんていうかタダさ、帰る場所のある私は、()()()()()()()()()()()()?」

 

「では、帰られますか?」

 

「まさか。帰んないよ」

 

「ならばそのままでよいのでは?」

 

 試すような声に苦笑して返答する。それの返事がまた的を射た言葉であったためだろうか。金髪の主はそうだね、 と頷きながら喋る。

 

「私、甘えん坊だからね。そのくせ頑固で手前勝手の性悪。

 だから家出した。

 ……それでも私は、私がなんで旅をしてるのかまるでわからないんだ。

 だから私が旅をするのは、旅をする理由を探すため。

 ほら、これだと旅が終わる時になれば私は必然と、旅の意義を見いだしているでしょう?

 死んじゃったらきっと見いだせないけど、私の旅はそうやって、当たり前の往生が待っている。

 だから私の旅の終わりは、とっても普通な終わり方」

 

「見つからないまま終われば、それは普通の旅ではなくなりますね」

 

「意地悪だな、カイトは。

 よろしい、今夜は特別に私の膝の上で眠る事を許す」

 

「断固拒否します。我々は耳聡い上に触覚は敏感なのです。

 ですから寝相の悪い貴方の膝の上で眠るなど、寝れる気が毛頭ありません」

 

「知ってる。からかってるだけだよ」

 

「次からはもう少しマシなからかい文句を期待しますね」

 

「耳が早い上に鼻が利く。ぷにぷに細かくって夜目も優秀で、おまけに口もいい。

 本当にカイトは私のお付き?」

 

「貴方が何も出来なさすぎなだけでございます。

 その貴方のために作られたのですから、それこそ当然の帰結です」

 

 そこで話は不自然に途切れた。大人の男は話しかけられないと話さないからだ。

 金髪の主は適当に石を詰んで焚き火を消すと、寝袋を用意してさっさと潜り込む。

 

「おやすみカイト。明日のご飯はうさぎ以外がいいな。食べ応えのあるやつ」

 

「では貴方が起きる前にライオンを準備しましょう。アレの肉はとても硬いですからね」

 

「……カニの肉とか、落ちてないかな」

 

 声はそのまま、虚空に消えていった。

 

 






 餅つきうさぎはライオンの味がするのか、それともカニの味か。

 あるいは、ヒトの味か
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