運の月―Then go Beginners rack―   作:エステバリス

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 お腹がすいたけど、ご飯食べようかな?




人を殴った人1―Super ego The first―

 

 

 密航が得意な人間にマトモな人間はいない、というのがカエデの持論でした。

 

「カイト。何故人は飢えを忌避するのだろう」

 

 密航が得意な人間は確実に変な人間である、というのがカイトの持論でした。

 

「カエデ様。それは人に限った話ではありません。犬とて同じです」

 

「ああ、そうだよね。私もキミも、種族が違っても生きてるのは一緒だった」

 

「それが答えですよ、カエデ様」

 

 日が昇っているにも関わらず、朝霜が見えるような気象で歯をガチガチと鳴らしながらカエデは鼻の付近まで伸びた金髪を煩わしそうに払い退けます。

 

 カエデはぶつくさと、

 

「こんな薄手のノースリーブと短パンで来るんじゃなかった」

 

 なんて言いながら雪のない寒冷地を歩き詰めています。

 その一方でカイトは厚手の毛皮に身をくるんで、

 

「以前寄った地球の熱帯民族の民族服を気に入ったばかりか改造まで施すカエデ様の自業自得です。

 宿に着くまで我慢なさい」

 

 と凍りつく大地を苦もなく裸足で歩いています。

 

「ねえ、宿はまだ?」

 

「船の船長から聞いた話によると、そろそろこの辺りに街があるそうです。カエデ様が私を食べようなどという考えに至ってしまう前に着くように頑張りましょう」

 

「……家来をたべる趣味はないかな」

 

 何か言いたげな顔をしていたカイトを無視するように、カエデは歩く速度を速めるのでした。

 

 

 

 

 それから本当に少しだけ歩いて辿り着いた街は、それまで歩き続けた凍土と同じ土地だとは到底信じられない程、普通の街でした。

 

 カエデとカイトは少し手間をかけて、二人が寝泊まりするのに丁度いい宿を見つけてチェックインをすると、カエデはそれまでの疲労を発散するように用意されたベッドに身体を放り出しました。

 

「疲れた……」

 

「少し寝たら街を見て回りますよ。貴方は旅を続けたいでしょうが、いずれ落ち着くことになる定住を見つけるためにも貴方本人の意見が欲しいのですから」

 

「ん……じゃあお昼には起こして」

 

 カイトの了解しました、という声を最後にカエデはぐっすりと眠りにつきました。

 カエデが眠ったことを確認すると、カイトは少しだけ苦戦しながら窓を開けて呟きました。

 

「さて、この街はどんな街なのやら。

 船着き場で聞いた話によると、格闘技が盛んな街なのだとか」

 

 街を歩く人を眺めていると、どうやらその話は本当だったようで、眼下にいる子連れの女性が「今日の試合は~」「明日のエキシビションマッチだと~」という話が聞こえてきます。

 カイトは試合に連れていった方がより確実かもしれないかと思って、今度は時計と新聞に目を移します。

 

「ほう、今時紙媒体の新聞とは」

 

 関心しながら記事を読み進めると、一枚の記事に目がつきました。カイトはその記事に直感で興味を示すとうん? と首を傾げます。

 

「おや……傷害罪で業界から追放された選手ですか。どの街や国にもこういうご法度に手を染めてしまう輩はいるものなのですね」

 

 カイトは一通り読み進めてみましたが、その内容はざっくばらんに言っても傷害罪を起こした選手の非しかないような内容でした。

 

『話題の若手格闘家〇〇〇〇選手、傷害罪で追放

 先日18:48分、格闘選手の〇〇〇〇選手(26)が市街大通りで一般の男性に殴る蹴るなどの有害行為を加えたとして連盟から無期限の除名処分が発表された。

 被害者の男性(54)は歯を折る等の怪我をしており、「サインを貰おうとしたら急に殴られた」と供述している。

 今回の権に関して格闘連盟会長の××××氏は「ひとまず最悪の事態に発展しなかったことについては安心しているが、今後またこういった事件が発生しないとも限らない。今後は個人の状態や性格などをより深く吟味した上で選手の選抜に当たりたい」と公表した。

 また、被害者男性の親族は「突然殴られる意味がまるで理解できない。〇〇〇〇選手には選手として然るべき処分を下した上で、人としても然るべき処分を求める」と語っている』

 

 その事件に目を通したカイトはん? と首を傾げました。

 するとすぐに宿の職員にこの新聞の他に別の出版社が出す新聞はないかと尋ねました。

 職員は私どもの個人的な趣味ですがありますよ、と返事をしました。

ではよろしければお貸しいただけませんか?と問うとすぐにカエデとカイトの部屋に三紙ほど持ってきてくれたのでカイトは職員に頭を下げました。

 そしてその新聞に目を通し始め、

 

『不当な傷害罪、〇〇〇〇無念の引退』

 

 その一文を見ただけで広げた新聞紙を閉じました。

 ゆっくりと息を吐いてこれは参った、とカイトは少し興味ありげに呟くのでした。

 

「自由報道、ですね」

 

 






 自由にご飯を食べるって素晴らしい。

 今日のご飯は、格闘選手だね。

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