運の月―Then go Beginners rack―   作:エステバリス

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 あらあらまあまあ、あなたは寝るのが苦手な子なのね




よく眠る人 壱―Bad bias―

 

 

 それなりに設備の整った宿に朝の陽射しが入り込みます。それを浴びて日の出を悟った大人の声の者、カイトはベッドでぐっすりと眠る自らの主人、カエデをゆすり起こしました。

 

「起きてくださいカエデ様、朝でございますよ」

 

「あと、三年……」

 

「そういう御託は結構ですので、早く起きなさい」

 

「じゃあ5分」

 

「お黙りなさい」

 

 ぴしゃりと断じてカエデを起こします。カイトはカエデの着替えの服を持ってきます。

 

「ちょっと汚い……」

 

「カエデ様が微妙な冗談を言わずに手早く起きてくださればこうもなりませんでしたよ」

 

「だって、向こうだとまだ午前の……」

 

「時差と昨日の歩行量を言い訳にしない。

 明日やろうはバカやろうという格言があります」

 

 くそぅ、と従者に毒づきながらカエデはベッドから身体を出します。

 カエデはぐち、ぐち、ぐち、と文句を言いますが、これもカエデとカイトのルーチンワーク。一度太陽の光を浴びれば目はしゃんと冴えました。

 

「人が眠るのは早起きするより当たり前の行為なの……もうちょっと寝かせてよ……」

 

「遅寝遅起きよりは早寝早起きの方が当たり前の行為ですよ」

 

「カイトはああいえばこう言うね」

 

「そのお言葉、そっくりそのまま返しましょうか?」

 

 その言葉にカエデは完全撃沈してしまったようで、大人しく宿の食堂に向かいました。

 

 

 

 

「とっても美味しかった」

 

「早起きは成果を出しましたね。朝食ビュッフェはギリギリだったようで」

 

「ええ、ええ、欲しいものは本当に少ししかありませんでしたとも」

 

 悔しそうに、それでもとても満足したようにカエデはお腹を擦ります。カイトはそれを見てそれはなにより、とだけ返事をしてご飯を食べ終えた二人は宿から出ます。

 

「さて、見つかるでしょうか。カエデ様のお望みの場所は」

 

「そうは言っても、今のところはどこかに住むよりこうやって、二人で旅をしている方が好きだからなあ」

 

「いつまでもこのような生活を続けられるはずもないでしょう。

 ならば今のうちにしっかりと定住の目星をつけるべきです」

 

 といっても、カエデがここがいいんじゃないかな、と言った場所は今まで全部カイトにアレコレと言われて却下されているのが現状なのでした。

 とはいえ、カエデがいいという場所の基準も大概適当なものなので、いわゆる、どっちもどっちです。

 旅慣れた二人は気さくに街ゆく人々に話しかけてひとまずここがどういう歴史を持つ街なのかを調べることにしました。

 

「すみません、この街って何か歴史館みたいな場所はありませんか?」

 

「歴史館? それなら街のはずれにあるとも。

 察するにキミ達は旅人かな?だったら是非見てきてくれ」

 

 ありがとうございます、と頭を下げて二人は歴史館に向けてを足を進めます。途中でとても多くの人に出会い、その人達は皆が親切にしてくれました。

 一歩歩けば大人がここは良い街だ、と。一歩歩けば子供が元気いっぱいにお姉ちゃんもここに住む? と。

 主人の定住を探すということで結構厳しく見るカイトの目から見てもこの街はとても良い街でした。

 

「……しかし、この街の方々はとても早起きなのですね」

 

「うん。それは私も思った。

 最初にご飯を食べに行った時なんか、いつもと変わらない夜明けに近い時間に起きたのに、むしろ私が遅いみたいだった」

 

「ここで暮らせばカエデ様の寝起きの悪さも改善の兆しが見えるかもしれませんね」

 

「ここの国で暮らすのはナシ!

 さあさっさと歴史館行こう!」

 

 

 

 

 歴史館では早朝にも関わらず職員が多くいました。その全員が快く挨拶をしてくれたものなのですから、カエデもカイトも顔には出さないものの機嫌を良くしていっています。

 

「――以上がこの街の成り立ちです。

 どこの街とも劣らない素敵な場所です。もしよろしければカエデさんもここに定住致しませんか?」

 

 と、職員の女性が気持ちよく聞いてきました。カイトは期待するような目でカエデを見ますが、それでもカエデは申し訳なさそうな顔をしてうーん、という風にうなっています。

 

「でもなあ……私朝弱いし……」

 

「大丈夫です! この街では独自に健康的で過剰摂取しても身体に異常をきたさないドリンクが作られているんです。

 私達の発明の中でも特に画期的な商品で、外の国や月、火星にも輸出されていまや街の主要な収入源となっているほどなんです!」

 

「ほう、それはまた素晴らしい発明ですね。

 発明者の爪の垢を煎じてカエデ様に飲ませたいものです」

 

「そんな人の爪垢とかいらないよ……えっと、すみません。ひとまず保留にさせてください。

 確かにこの街は寝起きの悪い私から見てもとてもいい街なんですけど、私達はまだここに来て二日目なので、もう少しこの街の雰囲気とか、知ってから決めたいんです」

 

「……そうですか。ではごゆるりとこの街の雰囲気をご堪能ください。

 我々市民一同、心よりカエデさんが我々の一員になることをお待ちしております」

 

「あ、はい。ありがとうございました。それじゃあ私達はこれで」

 

「失礼致します」

 

「はい、また起こしくださいね?」

 

 






 ねんねんころりよ、おころりよ

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