「「あ」」
鈴とセシリアの2人が揃って間の抜けた声を出してしまう。放課後の第三アリーナで特訓をしようとした所偶然にも鉢合わせしてしまった。
「奇遇ね。あたしはこれから月末の学年別トーナメントに向けて特訓するんだけど」
「奇遇ですわね。わたくしも全く同じですわ」
2人の間に見えない花火が散る。
「優勝は譲らないわよ」
「わたくしの方も譲るつもりはありませんわ」
更に火花が散る。
「丁度いい機会だし、この前の実習の事も含めてどっちが上かはっきりさせとくってのも悪くないわよね」
「あら、珍しく意見が一致しましたわ。どっちの方がより強くより優雅であるか、この場ではっきりとさせましょうではありませんか」
お互いにメインウェポンを構え対峙した。
だが、超高速の砲弾が飛来する。
「「!?」」
鈴とセシリアが緊急回避した後、2人は砲弾が飛んできた方を見ると、あの漆黒の機体が佇んでいた。
機体名『シュヴァルツェア・レーゲン』、登録操縦者
「ラウラ・ボーデヴィッヒ・・・」
セシリアの表情がこわばる。
「・・・どういうつもり?いきなりぶっ放すなんていい度胸してるんじゃない」
鈴は連結した双天牙月を肩に預けながら、衝撃砲を準戦闘状態へとシフトさせた。
「中国の『甲龍』にイギリスの『ブルー・ティアーズ』か。データで見た方がまだ強そうであったな。まあ仕方ないか、下らん種馬と軍人モドキに群がるメスだからな」
「ねえセシリア。あたしの耳には『どうぞ好きなだけ殴って下さい』って聞こえたけど?」
「ええ。わたくしもそう聞こえました。その軽口二度と叩けぬようにここで叩いておきましょう」
ラウラの言葉で堪忍袋の緒が切れた二人は得物を握りしめた。
「二人纏めて、かかって来い」
「「上等!!」」
そして三人は激突した。
「今日使えるアリーナはどこだっけ?」
「確か・・・」
「第三アリーナだ」
廊下を一夏とシャルルと箒で歩きながら空いているアリーナを確認しながら第三アリーナに進んでいると生徒達が慌ただしい様子が伝わってくる。
一夏達がアリーナに着くとそこには機体がボロボロになった鈴とセシリア。2人とは対照的に軽微な損傷のラウラが見えた。
「くらえっ!!」
ジャカッ!と甲龍の両肩が開き、そこに搭載されている衝撃砲・龍砲が発射された。しかしラウラは回避をしようともしない。
「無駄だ。このシュヴァルツェア・レーゲンの停止結界の前ではな」
不可視の弾丸はいくら待ってもラウラに届くことは無かった。
「くっ!こうまで相性が悪いだなんて・・・」
「終わりか?ならこちらから行くぞ」
そう言い弾丸並みの速度で間合いを詰めた。
「『
「このっ・・・!」
鈴は連結させていた双天牙月を解いて両手に持った。その理由はラウラの六つあるワイヤーブレードとプラズマ手刀の猛撃に対抗する為だ。
再度鈴が衝撃砲を展開するが、ラウラの砲撃によって爆散した。そこにラウラはプラズマ手刀が迫るがセシリアが割り入り《スターライトmkⅢ》を盾に使いその一撃を逸らし、同時にウエスト・アーマーに装着された弾頭型ビットをラウラに向けて射出させた。
至近距離でのミサイル攻撃の爆発は鈴とセシリアも巻き込み、二人は床へとたたきつけられた。
「無茶するわね、アンタ・・・」
「苦情は後で。けれど、これなら確実にダメージが━━━」
セシリアの言葉は途中で止まる。何故なら、ほぼ無傷のラウラが佇んでいたからだ。
「終わりか?ならば━━━私の番だ」
言い終わると同時に瞬時加速で移動し鈴を蹴り飛ばし、セシリアに至近距離からの砲撃を当てる。さらにワイヤーブレードが飛ばされた2人の体を捕まえてラウラの元に手繰り寄せる。そこからはただただ一方的な暴虐が始まった。腕、脚、体にラウラの拳が叩き込まれる。あっという間にシールドエネルギーは減り
「おおおおおっ!」
一夏は百式を展開と同時に〈
「その手を放せ!!!」
ラウラへと刀を振り下ろすが、届く寸前でぴたっと一夏の体が止まる。
「な、なんだ!?くそっ、体がっ・・・!」
「ふん・・・。感情的で直線的、絵に描いたような愚図だな。やはり敵ではないな。この私とシュヴァルツェア・レーゲンの前では、貴様も有象無象の一つでしかない。━━━消えろ」
肩の大型カノンが接続部から回転し、ぐるんと一夏へと砲口を向ける。
「一夏、離れろ」
パアン
解放回線
「一夏2人は!?」
シャルルがアサルトライフルを二丁構え2人の容態を聞くと、弱弱しいがしっかりと言葉を発した為、一夏とシャルルは安堵した。
ラウラは銃弾が飛んできた方を見ては、カノンを撃った人物・ジンに向けた。
「貴様何のつもりだ?」
「それはこちらのセリフだ。あのままいけば鈴とセシリアは命の危険だったぞ?分かっているのか?」
「弱い奴が悪い。私の方が強いと証明しただけだ。丁度いい貴様にも私の力を味わってもらおう」
まさに一触即発の状況でラウラは遂にカノンを発射した。
「一度格の違いを見せてやるか」
小声で呟いたジンは神機をスナイパーからロングブレードに可変しカノンの砲撃を避けラウラに接近した。
「貴様も直線的だな!」
ラウラはワイヤーブレードでジンの四肢を拘束した。
「少しはやると期待したが無駄だったようだな。貴様も私達の敵ではない」
「はっ。そのセリフは確実に相手を仕留めてから言うんだな。そうじゃないと・・・」
ジンは体中に力を入れ、無理やりワイヤーブレードの拘束から逃れた。
「こんな風に自由になるぞ」
「馬鹿な!?ISならまだしも生身でワイヤーブレードの拘束を解くなど不可能だ!!貴様本当に人間か!!?」
「俺達ゴッドイーターは人ではない。俺達は半分アラガミみたいな物だ」
「なんだと!?」
ジンの言葉にラウラは驚きの声をあげた。一夏達も声を出していなかったが、驚いていた。
「オラクル細胞の塊であるアラガミに対抗できるのは、同じオラクル細胞だ。そして適正がある人間の体内にオラクル細胞を取り込ませ、戦える存在になったのが俺達ゴッドイーターだ。ただ、偏食因子が尽きるか、腕輪が壊されると一気にアラガミ化が進むデメリットもある。これが人間ではないと言った理由だ分かったか?」
「・・・」
ジンの言葉にラウラは無言だった。
あまりの告白にアリーナ内はお通や状態だ。
バンバン!!
「「「!!?」」」
突然の手を叩いた音にジン以外が驚きその音の発生源をみると、千冬が立っていた。
「この静けさの理由は知らんが、アリーナのバリアまで破壊する事態になられては教師として黙認しかねる。この戦いの決着は学年別トーナメントでつけてもらおうか」
「・・・教官が仰るなら」
間を開け素直に頷いたラウラはISの装着状態を解除した。
「織斑、デュノアそれに櫻羽、お前達もそれでいいな?」
「・・・あ、はい」
「・・・僕もそれで構いません」
千冬に聞かれ、一夏とシャルルも間を開けて返事をした。
「同じく」
ジンはいつも通りの返事をした。
「では、学年別トーナメントまで私闘の一切を禁止する。解散!」
パンッ!と千冬が強く手を叩いた。そして解散となった。