ラブライブ!サンシャイン!!~Step! ZERO to OOO~   作:白銀るる

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これまでのラブライブ!サンシャイン!!〜Step! ZERO to OOO〜
花丸とルビィを勧誘し、六人になったAqours。
次なるメンバー、善子を勧誘するため試行錯誤することに。
しかし、ダイヤから強い批判を受け、善子はAqoursへの加入を一度は断ってしまう。
堕天使であることを辞めると慎司の前で宣言した善子。そこへ、怪事件の犯人であったヤミーが現れる。
バースに変身した慎司は見事ヤミーを撃破。その時に語られた彼の想いを知った善子は、「自分は堕天使を好きなままでいい」と気づき、Aqoursへと加入するのだった。

カウント・ザ・メダルズ
現在、オーズの使えるメダルは?
タカ×2
クワガタ×1
カマキリ×1
バッタ×1
ライオン×1
トラ×1
チーター×2
サイ×1
ゴリラ×1
ゾウ×1
ウナギ×1
タコ×1


PVと進化と守りたいもの

 暗い夜の町を一人徘徊する少年。

 彼ほどの見た目の者ならば、年齢的にこんな時間に外出することはほとんどない。

 もしいていても、

「ちょっと君!こんな時間に何してるんだ!」

 このように見回りをしている警察官に見つかり、補導されるからだ。

「オーズとアンクが持っているボクのコアは最低でも四枚。どうやって取り返すか考えてたんだよ」

「メダル?何か盗まれたなら警察に任せて、君は家に帰りなさい」

「へぇ、キミが探してきてくれるの?」

「ああ。だから君は早く家に……」

 少年を呼び止めた警察官は言葉を失った。何故なら、

「ば……化け物!」

 少年“だった”ものが怪物へとなり変わっていたのだから。

「キミの欲望、解放してあげるよ」

 警官の額に挿入口が現れ、怪物──カザリはセルメダルを一枚投入した。

「うわああああっ!?」

 警察官はその体をヤミー、否、その欲望に支配された。

 警官が去り、カザリがそこに残る。

「そこにいるのは分かってるよ。出てきたらどうかな」

 カザリが嘆息すると陰から男がコートを羽織った男が姿を現す。

「見られるのは好きじゃないんだよね。キミ何者?」

「これはこれは申し訳ございません。出ていくタイミングを逃してしまったもので」

 なんとも苦しい言い訳である。

 カザリは不審な男に対して敵意を剥き出しにする。

「落ち着いてください。私は貴方の味方です」

「味方?」

「ええ」

「ふぅーん。で?ボクにキミを信じろっていうの?無理な話だね」

 カザリの言葉に男は笑い出す。

「何がそんなに面白いの?」

「失敬。貴方たちグリードから“信じる”なんて言葉がでるなんて思いもよらなかったもので。ではそうですね、これでいかがでしょうか」

 男は一枚、“メダル”をカザリに投げ渡す。

 カザリは受け取ったメダルを見て驚愕する。

「これはボクのコアメダル!?どうして……!」

「貴方にはオーズを倒して欲しいのです。その為には貴方自身が進化する必要がある!」

「進化?」

 男はさらにオーメダルを差し出す。

「はい。他のグリードのコアを取り込むのです。暴走しないようにコントロールすれば、さらなる力を手に入れることができますよ。完全体をも超える究極の力を」

「完全体を超える?」

「後で答えを聞きにもう一度お伺いします。良い答えを期待していますよ」

 不気味に笑いながら男は姿をくらました。

「完全体を超える進化……」

 今度こそ一人残ったカザリはそうつぶやいた。

 

 ***

 

「「統廃合!?」」

 

 部室どころか、体育館内にまで響き渡るみんなの声。

 これはまた大変なことになる予感です。

「それ本当なの!?」

「沼津の学校と合併して浦の星学院は無くなるかもって……」

「それっていつ!?」

「それは……まだ。来年の入学希望者数をみてどうするか決めるみたいですけど……」

 静まり返る部室。ようやく軌道に乗って来たっていうのにそんなことになっちゃったらショックだよな……。

 特に千歌ちゃんはAqoursの発起人だ。一番落ち込んでいる──

「廃校……キタ!ついにキタ!」

 ことは全くなく、たいそう喜んでいらっしゃった……。

「統廃合ってことは廃校ってことだよね!?学校のピンチってことだよね!?」

「ま、まあそういうことだけど……」

 あまりのハイテンションぶりに少し引き気味ながらそう答えた。

 曜ちゃんと梨子ちゃんは千歌ちゃんの心配をしだす。

 いやまあね、普通は心配になりますよ。学校が廃校になるかもって言われてるのに、それ聞いて喜ぶなんて。

 まあここで彼女が喜ぶ理由は分かるんだが、やはり一般的にその考えは解せないようだ。

「それってμ'sと同じってことだよね!?」

 突然部室を飛び出したかと思うと、クロックアップも真っ青な速度で帰って来た。

「わたしたちで学校を救うんだよ!そして輝くの!あのμ'sのように!」

「そんな簡単にできると思ってるの?」

「できるよきっと!」

「花丸ちゃんはどう思う?」

 ルビィちゃんの問いに花丸ちゃんは──

「統廃合!?」

 こっちもだった。

「ずら丸は昔から相変わらずね」

「相変わらずといえば相変わらずだけどな……」

 善子ちゃんと慎司の幼馴染二人も苦笑している。

「モノを感知して明かりのつく照明灯で『未来ずら~』とかやってたもんな……」

「そんなことしてたんだ……」

 花丸ちゃんの場合は沼津の学校と統廃合になればそちらの生徒になれるというのが、魅力的な話に聞こえたようだ。それには善子ちゃんも「いいんじゃない?」なんて言ってたが、

「そうなれば中学校の頃の友達に会えるね!」

「統廃合断固反対!!」

 よほど触れられたくない過去がおありになるようだった。

「というわけで、今日からこの浦の星学院を廃校から救うために行動します!」

 千歌ちゃんがそう言うと、

「ヨーソロー!そうだよね、スクールアイドルだもんね!」

 なんだかんだ言ってみんな結構やる気なようだ。

 やっぱり無くなって欲しくないという想いがあるのだろう。

 しかしここでまた一つ、新しい問題が浮上した。

「でも行動するって具体的には何をするの?」

 梨子ちゃんのそんな疑問が盛り上がっているこの空気を現実に引き戻したのだった。

 

「廃校を阻止する為にμ'sがしたことって、ランキングに登録して……」

「ラブライブ!に出場、優勝して音ノ木坂が有名になって生徒を集めただけだね」

 よくよく振り返ってみてもそれだけ。

「あれ?さっきまで気付かなかったけど、果南ちゃんは?」

 曜ちゃんがやっと果南ちゃんがいないことに気付く。廃校の危機!?(からの)流れるようにハイテンションな感じの所為で気が付かないのも無理ない気もするけれど。

「果南ちゃんは今日来てないんだよ。体調を崩したからって連絡があったみたいだけど」

「そうだったんだ。あとでお見舞い行かなきゃね」

 曜ちゃんがそう言い、俺もそれに賛成した。が、

「お見舞いは後で行くとして、Aqoursの方はどうするの?」

「それなら俺に良いアイデアが……」

 

 慎司が提案したのはPV作成だった。

 これはかなり良いアイデアだ。PVなら浦の星や内浦の魅力を映像を使って伝えることができるし、簡単に作れる。

 この案は翌日すぐに決行された。

 

 ───が

 

 ことが順調に進むことは無かった。

 少しというかかなりお手軽ではなく、出費もそこそこ。

 さらにはネタ切れまで起こす始末だった。

 結局松月に寄ることになったが、俺はアンクとタカちゃんに呼び出されてみんなとは別行動をとることになった。

「はぁ……なあアンク、グリードはTPOをわきまえないのか?」

「まだ誰も完全体になれてないんだ。頭ん中にあるのはコアメダルのことだけだろうな」

「ですよねー」

 グリードだもんね!

 畜生ヤミー早く出てこいや!

 なんて考えていると、

「た、助けてくれ───っ!!」

 男の人とその人を襲うライオンヤミーが現れた。

「とっとと倒して千歌ちゃんたちのところに戻るぞ!変身!」

「タカ!トラ!バッタ!タ・ト・バ!タ・ト・バ!タ・ト・バ!!」

 オーズに変身してヤミーに掴みかかる。

「カザリのヤミーってことは中に人がいるのか。アンク!メダル!」

 メダルを要求すると、アンクはすぐにチーターメダルを投げ渡してくれた。

 ヤミーを掴んだままバッタメダルと入れ替えでスキャンし直す。

「タカ!トラ!チーター!」

 地面を蹴り上げてその勢いでヤミーに蹴りを叩き込む。

 連続で蹴りのラッシュを決めて取り込まれていた人を助け出す。

「早く逃げて!」

 助けた人はその恰好からして警察官。襲われていた男はその不審な身なりから良からぬ人だったのだろう。

「『悪人を懲らしめたい』欲望のヤミーなのにバッタじゃないんですね……」

 そんな心の声を漏らしながらメダジャリバーを取り出し、セルメダルを装填。オースキャナーでスキャンする。

「トリプル!スキャニングチャージ!!」

 横に真一文字に振り、オーズバッシュを決める!

 空間ごとヤミーは裂けて爆散、空間だけが元に戻った。

 ヤミーを倒すとそこに(多分飲み込まれていた)たくさんの人が現れる。

 これ全員悪いことした人だよな……。捕まえた方がいいのか……?

 そんなことを思っていると、

「あーあ。またボクのヤミーを倒しちゃったんだ」

「カザリ……!」

 カザリは俺とアンクを睨む。

 奴をの様子に少し違和感を感じたが、アンクがその正体を見破った。

「お前、コアメダルを取り戻したのか」

「まあね。予想外なこともあったけど、キミたちに教える義理は無いよ!」

 カザリは竜巻攻撃を繰り出す。

 俺はそれをかなりギリギリでかわす。

「今度こそボクのメダルを返してもらうよ!」

 次は強烈な水流による攻撃!?

「今のはメズールの……!?何故お前がその力を!?」

 あのアンクが動揺している。当然だ、何せカザリがメズールの属性の攻撃を繰り出したのだから。

「何故って言われても、ボクがメズールのメダルを取り込んだだけだよ」

 対するカザリはそれが当然であるかのように返す。

「コントロールさえ出来れば、他のグリードのコアを取り込んでさらに強くなることが出来るのさ。もちろんヤミーも、ね」

 カザリがそう示した先にヤミーがもう一体。しかも今度は合成ヤミーであるライオンクラゲヤミーだ。

「ウオ───ッ!!」

 ライオンクラゲヤミーは雄叫びをあげてこちらに突っ込んでくる。

「くそっ!」

 俺がそれを倒そうとするが、カザリがただ突っ立ているだけなはずがなく、案の定俺とヤミーの間に割って入る。

 爪で一撃。さらにヤミーの攻撃が直撃する。

「半分はメズールだが、半分はカザリか……ヨータ!メダルをコイツに変えろ!」

 アンクは合成ヤミーとカザリを考慮し、メダルを二枚投げ渡してくる。

「俺のメダルだけは絶対取られるな!」

「了解……っ!」

 元のメダル二枚をアンクに返し、渡されたメダルをドライバーに挿入する。

「クワガタ!カマキリ!チーター!」

 亜種形態、ガタキリーターにチェンジしてクワガタヘッドで放電攻撃。

「あまり手間をかけさせないでよね」

 ライオンクラゲヤミーにはかろうじて効いたものの、カザリはそれを防ぎ、もう一度竜巻を発生させる。

 チーターレッグで加速してかわすが、カザリの狙いはそれだったようだ。

 また強烈な一撃を貰い、三枚のメダルが全て吹き飛ばされて、変身解除まで追い詰められてしまった。

「フフフ。ボクのメダルはこれであと三枚」

 迫り来るカザリとヤミー。

 しかし──、

「アアアAAAAA……!?」

 突然ヤミーが苦しみ始め、カザリへ襲い掛かる。

「!?どうして……!?」

 味方であるはずのヤミーからの攻撃に戸惑うカザリ。

「よく分からんがここは退いとくぞ」

「あ、ああ……」

 カザリとヤミーが戦っているうちに、俺とアンクはこの場から去った。

 そこに傍観者がいたことを知らずに。

 

 ***

 

 ここ数日で完成させたPVを鞠莉ちゃんに見せに行った結果、

「すぅ……」

 寝てしまわれた。

「ね、寝てるし……」

「もうー!ちゃんと見てくださいよ!本気なんですから!」

「本気?このテイタラークでですか?」

 テイタラークって。

「そんな言い方しなくても……!頑張って来たのに……」

 と曜ちゃん。まあ鞠莉ちゃんの言いたいことも分からないでもないんだよなぁ。善子ちゃんも言ってたけど、実際そこまで面白いというわけではないし。

 PV作成を提案したご本人さまは下手な口笛を吹き始めた……。

「結果と努力は比例しません!それにこれは貴方たちがこのTownやSchoolの魅力を十分に理解していない証拠デース!」

 鞠莉ちゃんからの動画の評価はかなりの辛口だ。

 だが、それは決して嫌味でも、中身のない指摘でもない。

「じゃ、じゃあ理事長はこの町の魅力を分かってるっていうのかよ」

 下されたこの評価の低さに怒りを感じたのか、物申した慎司の口調はいつものような敬語(?)ではなく、タメ口になっている。

「少なくとも貴方たち以上は」

 しかし、そう言われると慎司は言い返せなくなった。

 

 「俺たちの知らないこの町と学校の魅力を教えて欲しいか」という鞠莉ちゃんの助言は、千歌ちゃんは丁重にお断りし、振出しに戻ってしまった。

「ねぇ千歌ちゃん、どうして理事長から聞かなかったの?」

「聞いちゃダメな気がしたんだ。自分たちで気づけなくちゃ、人に教えることなんて出来ないでしょ?」

 こういうところでこの娘はとても鋭い。

 俺もここに来てからたくさんのものを見たけれど、それは全部千歌ちゃんたちが教えてれたものだ。

 “俺自身が見つけた魅力”ではない。

 やっぱり彼女はAqoursのリーダー足り得る存在……

「あ!忘れ物とって来る!」

 ……だと信じたい。

 

 千歌ちゃんが忘れ物を取りに行くと、そこにはダイヤさんがいた。

 ルビィちゃんたちのことがあってから、彼女は元々スクールアイドルが好きだったということが分かっていた。

 それから何かがあって、ダイヤさんのスクールアイドルに対しての姿勢が変わってしまった。

 だが、それが分かっても尚、千歌ちゃんはダイヤさんをAqoursに誘おうとした。

 ダイヤさんの返事はもちろんNOだった。

 それでもという千歌ちゃんだったが、ルビィちゃんがそれを止めて、結局今日は本当に何も進展しなかった。

 

 ***

 

 翌日、俺は朝早くから起こされた。

 海開きをするらしい。

「にしても眠い……」

「シャキッとしてくださいよ先輩。アンクだってちゃんと起きてますよ!」

 慎司はアンクを示して言った。

 アンクとはそこそこの付き合いになるけど、グリードって睡眠とかどうなんだろうな。いやでも今は人間の体に憑依してるから寝てるのか?

「あー……でもアンクはシャキッとしてるっていうよりイライラして目が冴えてるんじゃないのか?」

「チカの奴……今日はとびきり高いアイスにしてやる……!」

 うん、そうとうブチ切れていらっしゃる。

 千歌ちゃんのお財布をお陀仏させる発言を聞き流す。どうやら千歌ちゃんたちには聞こえていないようだ。

「あれ?耀太くんどうしたの?」

「いや、何でもないよ」

 千歌ちゃんに哀れみの視線を送っていたことを悟られぬよう返事をした。

「おはよう……」

「おはヨーソロー!梨子ちゃん!」

 眠そうな顔をして梨子ちゃんがやってきた。

 良かった、仲間がいたよ。

「はい、これ梨子ちゃんの分」

「あっちの橋から海に向かってやるんだよ」

 千歌ちゃんたちが梨子ちゃんの分の袋を渡そうとすると、

「ねぇ曜ちゃん」

「何?」

「海開きって毎年こうなの?」

「そうだよ。町の人たちみんなでやるんだ。もちろん学校のみんなも!」

 梨子ちゃんが何かを感じたように、いや感じたからこそ、ふとそう言ったのだと思う。

「これなんじゃないかな?この町の──内浦の良いところ」

 この海に集まった大勢の人たち。今この瞬間、彼、彼女らは確かに“一緒”になっていた。

 千歌ちゃんもそれに気が付いたようだ。

 それから彼女はこの場所にいる全員呼びかけた。

「みなさん!私たちは浦の星学院でスクールアイドルをしているAqoursです!学校を残すために……!生徒を集めるために……!みなさんに協力してほしいことがあります!」

 

 梨子ちゃんが気付いたのは景色とか名産とか、そういう形あるものではない。

 それは内浦(この町)に住むたくさんの人の一つの想い。

 内浦を、大好きな町をずっと残したいという。

 Aqoursの新しいPVにはそんな想いが込められている。

 

 千歌ちゃんたちはこの想いを紡ぐために歌う。

 

 そして俺はその想いを守るために……いや、守りたいから戦い続ける。

 




耀太)今回はマジでヤバかったな。
アンク)まさかカザリの奴がメズールのメダルを取り込んでるとはなぁ。
耀太)今回の戦いで取られたメダルの中にカザリのメダルが一枚、まだ強くなって来るだろうな。こっちも何か考えておかないと。
千歌)耀太くん、アンクさん!東京でスクールアイドルワールドが開催されんだって!
耀太)スクールアイドルワールド?
千歌)東京で開かれるんだけど絶対行くしかないよね!
耀太)東京へ行くことになり大興奮の千歌ちゃん。しかし、Aqoursにこれまで以上の強敵と苦難が立ちはだかる!
鞠莉)あの子たちならきっとわたしたちの超えられなかった壁を超えてくれる。
???)貴方たちのライブ、楽しみにしていますね。
耀太)次回ラブライブ!サンシャイン!!〜Step! ZERO to OOO〜「東京とそれぞれの想いと強敵」
作者)凄い次回予告っぽい!
慎司)毎回したかったら真面目にやれ!イッテイーヨ
作者)だからなんでシンゴウアックス待機してんのぉぉぉぉおお!!

カウント・ザ・メダルズ
タカ×2
バッタ×1
ライオン×1
トラ×1
チーター×1
サイ×1
ゴリラ×1
ゾウ×1
ウナギ×1
タコ×1

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