ラブライブ!サンシャイン!!~Step! ZERO to OOO~ 作:白銀るる
今年もペースの保持と、クオリティアップを心がけたいと思います!よろしくお願いします!
では、前回のおさらいを!
一つ、東京で開催されるスクールアイドルワールドにAqoursが招待される。
二つ、耀太がダイヤたち三年生の過去に関することを偶然知ってしまう。
そして三つ、東京へやってきたAqoursは、同じくスクールアイドルワールドに参加するスクールアイドル、Saint Snowと出会う。そしてついにスクールアイドルワールドは始まりを迎えたのだった。
カウント・ザ・メダルズ
現在、オーズの使えるメダルは?
タカ×2
バッタ×1
ライオン×1
トラ×1
チーター×1
サイ×1
ゴリラ×1
ゾウ×1
ウナギ×1
タコ×1
東京から内浦へ。
来た時と同じように何度か乗り換え、最後の電車に乗る頃には既に日が傾き、窓から覗く夕焼けはとても美しいと思えるだろう。
車内はとても静かで、その静寂が夕日をさらに助長する。
しかしこの場にそんなことを思える者は一人もいないだろう。
ここにいる全員が見ているのは、幻想的な風景ではなく、残酷な現実だった。
レベルの違い。
みんなは東京で、あの場所でのライブを成功という形で収めた。それも今までを大きく超える、最高の完成度で。
だけどそれでも届かなかった。
Saint Snow。
千歌ちゃんたちの前にパーフォーマンスしたグループ。神田明神で会ったあの二人だ。
期待の新星も謳われていた二人だったが、結果は九位。入賞すら出来ていなかった。
全然ダメだったわけじゃない。むしろその実力はラブライブ!の決勝進出経験のあるグループにも引けを取らない。
イベントが終わった後でもう一度、俺たちは彼女たちと会った。
『お疲れ様でした。素敵な歌でとてもいいパフォーマンスだと思いました。……でも、もしμ’sのようにラブライブ!を目指しているのなら、諦めた方がいいかもしれません』
『ちょっとあんた、そんな言い方……!』
『慎司』
カッとなって突っかかろうとする慎司を引き止める。
『………』
無理もない。
マネージャーとしてこれまでのAqoursの練習をずっと見てきた。いいライブが出来るように。みんなが楽しんでくれるように。そうしてきた彼女たちの努力をたった一言で否定されたのだから。
俺もそれには頭に来たが、鹿角聖良さんは間違ったことは言っていない。
そして聖良さんの妹、鹿角理亞さんは、
「泣いてたね、あの子。きっと悔しかったんだね……」
「だからって『ラブライブ!は遊びじゃない!』なんて……」
みんなは決して遊びだったわけじゃない。ただそう見えたのだ。
だからこそ、その言葉はみんなの心に突き刺さった。
だからこそ、悔しい。
それが一番強いのは、きっと千歌ちゃんだ。でも……
「わたしは良かったと思うけどな。努力して頑張って東京に呼ばれて、それだけですごいことだと思わない?胸張っていいと思う。今のわたしたちの精一杯が出来たんだから!」
「千歌ちゃんは悔しくないの?」
「それは悔しいけど……でもわたしは満足だよ──」
千歌ちゃんは“そう”は言わなかった。
「千歌ー!」
「みんな、来てくれたんだ」
沼津駅から出てすぐ千歌ちゃんたちのクラスの子たちが出迎えてくれた。
「どうだった?ちゃんと歌えた?」
「う、うん。今までで最高のパフォーマンスは出来たよ」
笑顔でそう答えるが、やはりぎこちない。
それでも気付かれてはいないみたいだけど。
「それってやっぱりラブライブ!の決勝戦もいけちゃうってこと?」
「えーっと……」
安堵したのも束の間、むつちゃんのその一言に千歌ちゃんは言葉を詰まらせる。
「そ、そうだねー。だと良いけど……」
笑って誤魔化す千歌ちゃん。一年生や梨子ちゃん・曜ちゃんの表情は暗くなるが、向こうで話が盛り上がっているのがあって気付いてはいないようだ。いや、いなかったようだ。彼女が来るまでは。
「お帰りなさい」
「お姉ちゃん……」
優しい声とともに現れたのはダイヤさん。そして……
「う……うぅ……うわぁぁぁぁ!」
「よく頑張ったわね」
お姉さんの顔を見たおかげで、気持ちを抑えきれなくなったのか、ルビィちゃんはダイヤさんの胸に飛び込んで泣き崩れる。
俺も、慎司も、そしてみんなも。
この光景を目の当たりにして、やりきれない表情を堪えることが出来なかった。
***
「得票0ですか。やはりそうなってしまったのですね」
泣きつかれて眠ってしまったダイヤさんは妹を撫でる。
「最初に言っておきます。あなたたちは決してダメだったわけではありません。スクールアイドルとして十分な練習を重ね、見る人を楽しませるに足りるだけのパフォーマンスをしている。ですがそれだけではダメなのです」
「ダメだったわけじゃないのに、それだけじゃダメって、どういうことだ……ですか?」
「7236。この数字が何か分かりますか?」
先の質問と合わせて、さっぱりだという顔をしている慎司を見る。その表情は次第に真剣なものになった。
「去年ラブライブにエントリーしたスクールアイドルの数ですわ。第一回大会から比較して、十倍以上。スクールアイドルの人気はラブライブの大会の開催によって爆発的なものになり、A-RISEとμ'sによってそれは揺るぎないものになった。アキバドームで決勝が行われるようになり、そしてそれがレベルの向上を生んだのですわ」
ラブライブの歴史において、偉大なる先人となったA-RISE、そしてμ's。彼女たちが競い合い、見せた数々のライブ。
そしてその二つのグループが中心となり開かれた、スクールアイドルのスクールアイドルによるスクールアイドルの為のライブ。
その影響を受け、スクールアイドルというものは、良くも悪くも高次なものへ昇華されていったということか。
ダイヤさんはさらに続ける。
「あなたたちが誰にも支持されなかったのも、わたくしたちが歌えなかったのも、仕方のないことなのです」
「ダイヤさん、それは……」
「いいのですわ。いつかは話さなければいけないことですから」
今度は千歌ちゃんたちの方が理解に追い付いていない。
「実は二年前、浦の星には既に統廃合になるかもという噂があったのです──」
それからダイヤさんたちの“過去”が語られた。
かつて浦の星にはスクールアイドルがあったこと。
そのメンバーはダイヤさん、鞠莉ちゃん、そして果南ちゃんの三人だったこと。
そして千歌ちゃんたちと同じく、イベントに参加して、しかし、他のグループに圧倒されてしまい、歌えなかったこと。
「あなたたちは歌えただけ立派ですわ」
「じゃあ今まで反対してたのは……」
「いつかこうなることが分かっていたからです」
自らが経験したからこそ、それを伝えられた彼女たちの心情は穏やかなものではないだろう。
その夜のこと。
部屋に戻り、布団に転がって考えた。
「また明日から練習、だけど……」
完膚なきまでに叩き潰されたも同然の結果に、みんな立ち直ることが出来るのか。
「なあ、アンクも何か考えてくれよ」
「知るか。俺が考えるのはメダルのことだけだ」
薄情なヤツめ。今日は少し見直したと思ったのに。
「……そうだな。一つ言えるとすれば、人間はそんな簡単に欲望は捨てない」
「欲望は捨てない……」
もし、アンクの言う通りなら俺がやらなきゃいけないことは……。
「!ヤミーだ。行くぞ」
「こんな時間になんて迷惑な」
誰も起こさないように、こっそりと十千万を出た。
***
波打つ夜の海に立つ二人の少女、鞠莉と果南。
時間にして、丁度千歌たちがダイヤからスクールアイドルと、そして自らの過去を告げられていた頃だ。
「ダイヤと……それから耀太から聞いた。千歌たちのこと。どうするつもり?」
「それはこっちのセリフよ果南。学校にも来ないで、一体何をしているの?」
問答に次ぐ問答。
果南は答えない。
「わたしはまだ諦めないつもりよ。学校を救うにはスクールアイドルしかない、だから……」
「無理だよ。ラブライブに優勝して学校を救うなんて」
「無理じゃない。千歌っちたちならそれが出来る。だから……果南」
鞠莉はそう腕を広げる。果南を抱きしめる為に、あの時の、あの頃のように。
「わたしは諦めた方がいいと思う。誰かが傷つく前に」
しかし、すれ違うように歩いていく果南はそう鞠莉に告げる。
「わたしは諦めない!必ず取り戻すの、あの時を!果南とダイヤと失ってしまったあの時を!わたしにとって宝物だったあの時を……!」
鞠莉の表情は一変し、叫んだ。
けれどその悲痛の叫びは果南には届かない。
鞠莉と別れたのち、果南にソレが近づく。
「『誰かが傷つく前に諦める』。賢明な判断ですよ、松浦果南さん」
「これはあなたの為じゃない。わたしの意志」
「分かっていますよ。ですが、真に誰も傷つかない為には……」
「………」
男はそれだ言って姿を消した。
「誰も傷つかない……」
一人残った果南はその言葉を反芻する。それがまたウソなのだと分かっていながら。
***
早朝。日はもう昇っているはずだけど、雲が空を覆っている所為でまだ暗い。
「千歌ちゃん?」
千歌ちゃんが海の方へ向かっていくのがベランダから見えた。
気になって後を追ってみると、そこに千歌ちゃんはいない。まさか……!
「千歌ちゃーん!千歌ちゃーーーん!!」
精一杯の声を出して彼女の名前を呼ぶ。返事はない。
そんな……千歌ちゃん……。
しかし、そんな心配は杞憂だった。
海の中から千歌ちゃんが出てきた。
「千歌ちゃん……」
千歌ちゃんが早まらなかったことに安堵し、胸をなでおろす。
「何してたの?」
「何か見えないかなって思って……」
「見えたの?」
「ううん、何も見えなかった。でもね、だから思った。続けなきゃって。わたしまだ何も見えてないんだって。このまま続けても0なのか、それとも1なのか、10になるのか、ここでやめたら全部分からないままだって……だからわたしは続けるよ、スクールアイドル。だってまだ0だもん」
千歌ちゃんはわたしに笑顔を向けてくれる。だけどすぐにその表情は曇る。この空のように。
「あれだけみんなで練習して、歌も作って、衣装も作って、それからPVも作って。頑張って頑張って、輝きたいって……!なのに0だったんだよ!?くやしいじゃん!やっぱりわたし……くやしいんだよ……!!」
きっと今まで抑えていたものが爆発したんだ。必死にこらえて、けれどやっぱり自分を誤魔化すことは出来なかったんだね。
「差がすごいあるとか、昔とは違うとか、そんなのどうでもいい!くやしい!!」
紛れもない、心の底からの千歌ちゃんの気持ち。
「やっと──素直になれたね」
わたしは千歌ちゃんを抱きしめる。
「だってわたしが泣いちゃったら……みんな落ち込むでしょ……?みんな、せっかくスクールアイドルやってくれたのに……」
「バカね。みんな千歌ちゃんの為にスクールアイドルやってるんじゃないの。みんな自分で決めたのよ」
いつの間にか来ていたみんな。曜ちゃん、花丸ちゃん、ルビィちゃん、善子ちゃん、慎司くん。そして今この場にはいない耀太くんとわたし自身も。
確かにきっかけをくれたのは千歌ちゃんだった。けどみんな自分の為にスクールアイドルを始めた。
それぞれが輝きたいと願って。
「だから一緒に歩こ。一緒に」
「今から0を100にするのは無理だと思う。でも、もしかしたら1にすることは出来るかも!」
わたしは千歌ちゃんの手を取る。そしてみんなも集まって来る。
「出来る!絶対に出来るよ!!」
不意に聞こえた彼の声。
それがした方へ視線を向けると、アンクさんの肩を借りて立っている、ボロボロの状態の耀太くんが。
「ど、どうしたの、その傷!?」
「ははは……派手にすっころんじゃって」
「いやこれは転んだってレベルじゃないでしょ!」
流石にその言い訳は苦しい。曜ちゃんにもツッコまれてるし。
「行こうみんな。Aqoursならきっと0のその先に行ける0のその先へ!」
「うん!輝こう、みんなで!!」
こうしてAqoursは再起した。
超えられなかった壁を今度こそ超える為に。
だけど、本当に哀しく、辛い事件が動き出していることに、まだ誰も気づいていなかった。
千歌)東京でのイベントを経て、気持ちを新たに切り替えたわたしたち。
梨子)0から1に。そしてさらなる輝きを目指してAqoursは再始動する。
耀太)しかし、そんな彼女たちを待ち受けるのは悲劇の幕開けだった。次回ラブライブ!サンシャイン!!〜Step! ZERO to OOO〜「破られた約束と決別と悪しき力」
カウント・ザ・メダルズ
タカ×2
バッタ×1
ライオン×1
トラ×1
チーター×1
サイ×1
ゴリラ×1
ゾウ×1
ウナギ×1
タコ×1