ラブライブ!サンシャイン!!~Step! ZERO to OOO~   作:白銀るる

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ラブライブ!サンシャイン!!~Step! ZERO to OOO~
前回の3つの出来事
一つ、ラブライブに向けて練習中の千歌たちの前にもう一人のアンクが現れる。
二つ、予防線としてアンクともう一人のアンクを離すため、耀太たちは十千万組と淡島ホテル組の二グループに分かれる。
そして三つ、二人のアンクの関係と真実を梨子たちに話し、片方は諦めるしかないという耀太だったが、諦めるのはまだ早いと果南たちに諭され、二人が和解する方法を見つけることを決意するのだった。

カウント・ザ・メダルズ
現在、オーズの使えるメダルは?
タカ×2
クジャク×1
コンドル×0
クワガタ×2
カマキリ×2
バッタ×2
ライオン×2
トラ×2
チーター×2
サイ×2
ゴリラ×2
ゾウ×2
シャチ×2
ウナギ×2
タコ×2
プテラ×2
トリケラ×1
ティラノ×2


アンクとみかんと託されたメダル

 ロストが俺たちの前に現れてから一晩が過ぎた。

 今日はもう少し二人に話し合ってもらおう、昨晩のうちにそう決め、俺は眠りについた。

 そして今日、十千万に戻る為に連絡船に乗ったところで一本の電話が入った。

『ロストと千歌先輩が見当たらないんです!』

 声の主は慎司。そしてその知らせは、最悪なものだった。

「分かった。今船に乗ったところだから、すぐにそっちに行く。それまでもうちょっと探しててくれ」

『了解です』

 そこで通話は終了。

 俺はスマホを持った手を強く握りしめる。

「何かあったの?」

 さっきとは打って変わった俺の様子を察知した梨子ちゃんが、俺に尋ねてくる。

「千歌ちゃんとロストが見つからないらしい……」

「「っ!?」」

「まさかもう一人のアンクさんが千歌さんを?」

「やっぱりな。あの時倒しておくのが良かったんだ。それを情なんかに流されやがって」

「仕方ないだろ!あの時は千歌ちゃんたちがいたんだ!目の前でそんなこと出来るわけないだろ!!」

「お前はいつも甘いんだよ!ポセイドンと戦った時も、その甘さが原因で死にかけたんだろうが!」

「なんだと!?」

 激しい口論。そして胸ぐらを掴み合う。果南ちゃんもダイヤちゃんも、そして鞠莉ちゃんでさえも。それを見て、みんな怯えた表情を浮かべる。

 

 「もうやめてッ!!!」

 

 ただ一人、梨子ちゃんを除いて。

 彼女の平手が俺とアンクの頬を打ち、俺たちを……恐怖を感じる心をも止めた。

「耀太くんも!アンクさんも!二人が争って何になるの!?何にも、どうにもならないよ!そんなことしても千歌ちゃんは見つからない!ううん、見つけられないよ!」

 目尻に涙を溜めながら絶叫する梨子ちゃん。その瞳には静かな怒りと悲しみが宿っている。

「梨子の言う通りだよ。今キミたちが争うのは、ポセイドン(アイツ)だけしか得をしない。ボクたちには利が一切無いんだよ」

「……うん?カザリ、今お前なんて言った?」

「え?ボクたちには一切利が無いってところ?」

「違う!その前だ!」

「その前?ああ……そういうことか……」

 この場で疑問符を浮かべる者はいない。

 確証はない。けど可能性としては一番高い。

 俺は持ってきていたノートPCをカンドロイドと接続し、十千万近辺の映像を映し出す。

 三十分前、誰も映らない。一時間前……映らない。二時間前もダメ……。三時間前は……ビンゴ!

「きた!あれは……ロストか」

 けれど、出てきたのはロスト一人。肝心の千歌ちゃんの姿が無い。

「もっと前の時間も見てみましょう」

 ダイヤちゃんの言葉に頷き、俺はさらに時間を遡る。

 巻き戻される映像。そして遂に……。

「っ!映った、千歌だ!」

 千歌ちゃん(探し人)の姿がそこにあった。

 けど何だ……。

「「何か変だ……」」

 アンクと声が、言葉が、そして考えが重なる。

「上手く言えないんだけど……ここに映ってる千歌ちゃんはいつもと違う感じがする……」

「寝ぼけてるとか?」

 鞠莉ちゃんがそう言うが、アンクがそれを否定する。

「違うな。アイツが寝ぼけた時はもっと酷い」

「そうなの?」

「……否定は出来ない……じゃなくて!こう何か……虚ろな感じが……!?」

 その瞬間、映像の中の千歌ちゃんに信じられない現象が起こった。

「消えた……!?」

「いや、一瞬、ほんの一瞬だけ映像が乱れた。何か妨害電波みたいなものの干渉を受けたのかも」

「なるほど……この時か」

「ああ、あの時の違和感の正体はこれだったんだね」

 何か心当たりがあるような反応を示すアンクとカザリ。

「何か知ってるのか?」

「今朝変な気配を感じたんだ。ボクたちに酷くそっくりな気配をね」

 グリードに近い気配……そう言えば……!今朝、少しだけ妙なものを感じて目が覚めたな。すぐ寝ちゃったけど……。画面に表示された撮影時刻に目をやる。俺が起きた時間とほぼ同時刻だ。

「あ、そろそろ着くよ」

 短い時間の中で得た情報は、千歌ちゃんとロストを見つけるうえでかなり重要な手掛かりになってくれるはず。そう信じて、俺たちは慎司たちが待つ十千万に向かった。

 

 十千万に着いてからすぐに船で見た映像を慎司たちにも見せた。

 もちろん女神さまにもビデオ通話で見てもらっている。

「これ……」

『この映像、改ざんされた痕があるわね』

「改ざん?」

『ええ。送ってもらった録画データを調べたのよ』

「いつの間に送ってたの?」

 何も知らない果南ちゃんが俺にそう問う。

 すいません、送ってません。

 が、正直に言えるはずもなく。

「さ、さっきパソコンを閉じる前にめが……じゃなくて神子さんに送ったんだよ。そ、それよりここ!」

 咄嗟に考えた嘘を()き、再びみんなの視線を画面に集中させる。

「手が加えられた箇所ってここでしょ?」

『ええ。ただ……』

「「ただ?」」

『科学では解析するのは不可能ね。魔法、もしくはそれに準ずる何かね』

「魔法だなんてそんな……もしそれが本当だとしたら一体どうやって調べて……」

「無いとは言い切れないですね」

「「言い切れないの!?」」

 真顔で女神さまに同意した慎司に対し、驚嘆の声を漏らすみんな。

 ……いや、多分ツッコむところはそこじゃない。

『!……たった今いい知らせと悪い知らせが入ったわ……』

 突然女神さまの声色が変わる。このタイミングで言うということは、千歌ちゃんが関係してることは間違いないか。

「じゃあいい知らせから」

『千歌さんの居場所が分かったわ』

「!?どこなんだ!?教えてくれ!」

『今データを送ったわ。送り主不明の文書をね』

 パソコンのメールを開き、送られてきたデータを確認する。

 背景に三枚のメダルがデザインされた文書。そこには確かに千歌ちゃんの居場所が示されていた。しかし、同時に悪い知らせもそこに書かれていた。

「『高海千歌さんは預かりました。返して欲しければ、下の地図に示された場所まで来てください。ただし、このメールが届いてから24時間以内に来なければ、彼女の命は保証しません』だって!?」

『これが届いたのは今日の午前四時頃……さっきの映像と合致するわね』

「クソッ!ふざけやがって!」

 久しぶりに心の底から怒りを感じた。果南ちゃん続いてみんなを狙い、今度は千歌ちゃんを。

「待って耀太!もしかして一人で行くつもり?」

「そんな無謀なことさせませんよ。俺と佐藤ちゃんも行きます!」

「ええ。奴を許せないのは俺も……いえ、俺たちも同じですから!」

 俺たち三人とアンクは、みんなに十千万で待っているよう言い、文書に記された場所まで向かうのだった。

 

 ***

 

「ん……ここ、どこ?」

 目を覚ました千歌がいたのは、自分の部屋ではない全く知らない場所。

 ところどころ壊れていたり、クモの巣が張っていて人が住めるような環境ではない。

「なにこれ、腕が……」

 手錠をかけられているうえに、柱に繋がれている為自由に動くことが出来ない。

「どうして?わたし……自分の部屋にいたはずなのに……」

 誰も答えてはくれない。答えてくれる誰かがいないのだから当然だ。けれど、

「それはあなたを操ってここまで来てもらったからですよ」

 誰もいなかったはずのこの場所に、その男は現れた。

「おはようございます、高海千歌さん」

「あなたは誰!?どうしてこんなことをするの!?」

「慌てないでください。一度に聞かれても答えられませんから。ではまずはわたしが誰なのか、教えてあげましょう。わたしはカムイ。あなたのお友達からは、“ポセイドン”と呼ばれている者です」

「ッ!?」

 ポセイドン……それは耀太たちと敵対しているという男の呼び名。

「ふふふ……恐れ慄くその表情(カオ)──いつ見てもいいものですね!」

 冷たい狂気を宿した綺麗な瞳を前に、心の底から恐怖を感じた。

「ですが安心してください。あなたのことは殺しませんので」

 男は一瞬だけ穏やかな笑顔を造り、

「彼らの……仮面ライダー(おともだち)の死に様を見届けてあげてください」

 口角を吊り上げ、歪んだ笑みを浮かべた。

 千歌の中で警鐘が鳴らされる。この男は危険だ、と。

 今すぐにここから逃げ出したい。けれど、冷たい手錠と鎖がそれを許さない。

 

「チカから離れろ!」

 

 けたけたという笑い声を遮る炎。

 それは背中を焦がす程度にとどまるが、彼の注意は完全に炎を飛ばした人物に向いた。

「おや?誰かと思えば、アンクくんではないですか。一体どうしたんですか?君とわたしは“仲間”ではありませんか」

「僕は君なんて知らない!早くチカを離せ!!」

 ロストは彼の言葉を否定し、千歌を解放するよう要求する。

「それは出来ません。彼女は大切な人質ですから。どうしてもと言うのなら、力ずくで助けてみなさい」

「タカ!トラ!バッタ!タ・ト・バ!タ・ト・バ!タ・ト・バ!!」

 赤・黄・緑の戦士 神オーズに変身した男。その姿は耀太と瓜二つで、真逆の雰囲気を纏っている。

「はああああ!!!」

 ロストは炎を連続で撃ちながら神オーズに接近する。

 一方で、攻撃を受けているはずの神オーズはそれをものともせずに仁王立ち。

 そして徒手空拳での攻撃の間合いに入ると、ロストは神オーズに殴り掛かった。

 何度も何度も拳を当てていく。しかし、神オーズは立ち尽くしたまま。

「はっはっは。かゆい、かゆいですよ。かゆすぎて掻き毟りたくなりそうだ!」

 右手に持った剣でロストを斬りつける。斬られたロストは傷を負ったのか、その体からメダルが零れ落ちる。

「おやおや、強く掻き過ぎてメダル()が出てしまいましたね~」

「ぐっ……!」

「では今度はこちらから行きましょう!」

 横真一文字に剣を振り、縦にもう一振り。十文字の斬撃を受けたロストから再びメダルが零れた。

 さらに神オーズは剣を捨て、ロストの肩を掴み、空いた手で握る拳を作り、腹部にパンチを連続で撃つ。

 腹を押さえるロストに蹴りでの追撃を加え、跪かせる。

 立ち上がろうとする彼に、ダメ押しの蹴撃。ロストは転がって壁にぶつかる。

 あまりに一方的過ぎるそれは、戦いというよりはただの暴力にしか見えない。

「ふふふ……そうだ。君が記憶を無くした原因、姉さま(かのじょ)が細工をしたコアメダルを取り出したらどうなるでしょうね?やってみましょう」

 神オーズはそう言うと、トラクローを広げてロストの体に突き刺した。

「がああああああっ!?」

 それと同時にロストは苦しみ始める。

 廃屋に響く悲鳴。聞きたくない。今すぐ耳を塞ぎたい。

「やめて……やめてよう……」

 けど……。

「これですか?いえ、違いますね。どれなんでしょうか……ね!」

「ぎゃあああああ!?」

 彼は止まらない。もがき悶えるロストにさらに苦しみを与えていく。

 そして……。

「見つけましたよ……しかし、これはもう使えないですね……」

 爪の間に挟まっていた赤いメダル。神オーズはそれを投げ捨て、そのメダルは千歌のすぐそばに落ちる。

「………」

 メダルを抜かれ、ピクリとも動かなくなってしまったロスト。

 まさか死んでしまったのではないか、そんな不安が千歌の頭を過るが、やがてゆらりと立ち上がる。

「目覚めの気分はどうですか?」

「……最悪だよ。こんなことになるなんてね」

「仕方ありません。完全に記憶を失っていたのですから。しかし良かったです。奴らに毒される前に助け出すことが出来て」

 神オーズと戦っていた時とは別人のように、彼と会話するロスト。昨日からの彼とは様子がまるで違う。

「あのコは?」

「ああ、彼女は人質ですよ。オーズたちをおびき寄せる為のね」

「ふうん……」

 つまらなそうなものを見る目。それからロストは左手の掌を千歌に向けた。その手から赤い光、否、炎が発生する。

「おや、もう殺してしまうのですか?二十四時間は生かしておこうと思ったのですが……まあいいでしょう。死ぬのが少し早くなるだけです」

 火の粉を散らしながら手の中で燃え続ける炎。簡単に命を奪えるであろうそれは、千歌に向けて放たれた。

 しかし、それが焼き尽くしたのは、千歌と柱を繋いでいた手枷だけだった。

「……何のつもりですか」

「言ったよね?『チカを離せ』って」

「メダルを抜いたことで、君の記憶は完全に戻ったはず。つまりそれは君の意志ということですか?」

「そうだよ。僕はチカたちといた間に色々なことを知った。楽しいこと、嬉しいこと。それからみかんの美味しさ。それを教えてくれたチカを傷付けさせはしない!」

 そう叫んだロストは炎をオーズに向けて発射する。

「そうですか……とても残念です。ではあなたにも消えてもらいましょう」

 神オーズはトラクローでその炎を斬り裂く。そしてそれがゴングとなり、二人は再び戦い始めた。が、やはり戦況は神オーズの方が有利だ。

 ロストも攻撃を当ててはいるが、大したダメージは与えられていない様子。メダルが減ってしまったことと、さっきまでのダメージが響いてしまっているのだ。

「ほらほら、どうしました?先程より攻撃の威力が落ちてますよ?ああ、わたしがメダルを一枚抜いてしまったからですね。もっとも、一枚増えたところでわたしに勝てるとは思いませんがね!」

「ぐわああああ!?!?」

「既に君も用済み。メダルを頂きましょうか」

 そのセリフとロストの悲鳴。そして神オーズの腕の動きからきっと彼のコアメダルを探っているのだろう。

 やがてロストの体から神オーズの腕が抜かれる。その爪にはメダルが二枚挟まっていた。

「僕の、メダルが……」

 ロストの体からセルメダルが弾け飛ぶ。メダルを抜かれたことでさらに力を失ったのだ。

「……まだ……だ」

「ほう……立ち上がれるだけの力が残っていますか。けどこれで──」

 クロスさせた腕を勢いよく広げ、トラクローがロストの体を引き裂く。

「がは……」

「アンクくん?!」

「終わりです」

 ロストを足蹴にし、千歌の側まで転がした。

 彼を抱き上げる千歌。その瞳には涙が溜められている。

「……チカ、これを持って逃げて……」

 ロストは千歌の手にメダルを二枚乗せる。

「アイツの狙いはそのメダル……それをアイツに渡しちゃいけない……」

「な、ならアンクくんも一緒に……」

「僕はここでアイツを足止めする。だから……」

「出来る訳ないよ、こんな体で……!」

 無理矢理に立ち上がろうとするロスト。だが蓄積されたダメージは大きいうえに、メダルも足りない。それでは当然立つことが出来ない。

「そうです。今ここで楽になってしまった方が良いでしょう?わたしが苦しみから解き放ってあげますよ」

 振り上げた剣を下ろさんとする神オーズ。

 そして──。

 

「ハァ───ッ!!」

 

 廃屋の壁をぶち破り、彼らは現れた。

 

 ***

 

 そこにいたのは、オーズに変身していたポセイドンと満身創痍のロスト。そして彼を抱きかかえる千歌ちゃんだ。

 いつかと重なるその光景は俺の怒りを滾らせるのには十分だった。

「ポセイドン……ッ!!」

「おやおや、怖い顔してるのが仮面越しでも分かりますよ」

 奴は煽り、俺は今すぐぶん殴りたい衝動に駆られる。

 けれど、

「「はああ!!」」

 慎司と晴也が奴に殴りかかった。

 それを見て、俺は千歌ちゃんたちの方へ足を向ける。

「耀太くん……」

「ごめん千歌ちゃん……ロストもありがとな、千歌ちゃんを守ってくれて」

「まさか……オーズにお礼を言われるなんてね……」

「っ!?まさかお前、記憶が……」

「それより……チカ……それを彼に渡して……」

 ロストが千歌ちゃんにそう言うと、千歌ちゃんはその手に握られていた三枚のコアメダルを俺に渡してくれた。

 クジャクメダルとコンドルメダルが二枚。

「これ……どうして……」

「アイツはコアメダルを集めて何かしようとしてる。……だからこれだけは渡さないで……」

「分かった──」

「それから……もう一人の僕、こっちに来て」

「何だ?メダルを渡す気にでもなったか?」

「ふふふ……違う、と言いたいところだけど、その通りだよ。手を貸して……」

 ロストの言う通り、手を差し出したアンク。そしてロストはその手を掴んだ。

「僕にはもう力は残されていない……。だから君に全部託すよ」

「………」

 赤い光がロストの左手からアンクの左手に移っていく。

 それと同時に彼の体は薄くなっていく。

「アンクくん……何を……?」

 ロストの異変に気付いた千歌ちゃん。けれど彼は答えない。しかし、その代わりと言うように口を開いた。

「チカ……ありがとう、僕にたくさん教えてくれて……。本当にありがとう。みかん、美味しかったよ───」

 千歌ちゃんにお礼の言葉を贈り、ロストは完全に消滅した。

「アンクくん……アンクくん……!」

 大きな声を上げ、涙を流す千歌ちゃん。

 ……俺は拳を強く握り、例の黒いプトティラコンボに変身したらしいポセイドンを見る。

 慎司も晴也も、変身は解けていなものの、息が上がっていて、力尽きてしまうのも時間の問題だ。

「ヨータ、これを使え」

 アンクが手渡してきたのは一枚のタカ・コアメダル。

 俺が変身に使っているもの、アンクの意志が宿っているもの、そのどちらでもない。ロストの意志が宿っていたであろうメダルだ。

「ああ、やってやるさ」

 ドライバーから三枚のメダルを外し、新たに三枚のメダルを装填する。

 そしてバックルを傾け、オースキャナーをスライドさせた。

「タカ!クジャク!コンドル!タージャードルー!!」

 赤い炎が俺のアーマーを覆う。

 ボディは読み込んだメダルに対応した変化を遂げていく。

「くっくっく……彼の力を使うあなたも!彼と同じ運命を辿らせてあげましょう!!」

 二人に興味を失ったポセイドンは、俺に飛び掛かって来た。

 黒いメダガブリューでの攻撃をタジャスピナーで受け止める。

「今度はコントロール出来てるみたいだな……」

「ええ、あなたへの憎しみと恨みのおかげ様ですよ!」

 隙だらけになった奴の腹部にパンチを叩き込む。

「!?……前よりさらに力を上げたようですね……。ですがそれはわたしも同じですよ……ッ!?」

 タジャスピナー越しに腕に伝わる奴の力。俺はそれを跳ね除け、エネルギー弾をぶつける。

「……今の俺は無性に腹が立ってる。だからこれで決めるッ!!」

 ドライバーにはめられたメダル三枚をタジャスピナーにセットする。

 そして再びオースキャナーをベルトから外し、スピナーのメダルを読み込んだ。

「タカ!クジャク!コンドル!ギン!ギン!ギン!ギガスキャン!!」

 俺は炎を纏い、廃屋を壊しながら飛翔する。

「わたしも最大級の力で迎え撃ってあげましょう!!」

「バク!バク!バク!バク!ゴックン!!プットッティラーノヒッサーツ!!」

 奴のエネルギー波と俺のマグナブレイズがぶつかり合う。

「「はああああああああ!!!!」」

 高エネルギー同士の衝突で壊れかけていた廃屋がさらに崩れていく。

「不味いな……おいチカ、逃げるぞ!」

「う、うん……」

 危険を感じたアンクが千歌ちゃんを廃屋から連れ出してくれた。

「……俺たちも退避した方が良さそうですね」

「だな……」

 慎司と晴也も負傷したらしい箇所を押さえながら外に出て行った。

 これで心置きなく吹っ飛ばせる!!

「今度こそ!お前をここで……!」

「ぐっ……まだあなたに一歩及ばないとは……。ここは一度退かせてもらいましょう……」

「な!?待て!!」

 奴はそう言ってこの場から消え、エネルギー波も消滅した。

 俺も技を止め、変身を解除した。

 廃屋は既に半壊。

「はぁ……逃げられたか……」

 外に出ると千歌ちゃんは晴也の腕の中で泣いていた。

 晴也たちによると、二人は本当の姉弟のようだったという。そんなロストを失った悲しみは、言葉で図り知れるものではないと思う。

 千歌ちゃんの中の深い悲しみ。

 その涙を、俺たちは忘れることはないだろう。

 

 ***

 

 あれから数日が経った。

 アンクに取り込まれたロストの意識は完全に消滅してしまったらしい。

 分かり切っていたことだ。けれど、千歌ちゃん(かのじょ)のことを考えると心苦しい。

 千歌ちゃんは気丈に振舞っているが、誰も見ていないところでは泣いていることがある。

「ああ……どうすりゃあ良いんだ?俺は……」

『こればかりはどうしようもねえ……』

『時間が解決してくれるのを待つしかないね……』

 ビデオ通話で果南ちゃん、曜ちゃんに相談に乗ってもらっているが、流石にこれにはお手上げのようだ。

 とそうこうしていると、

「ねえ耀太くん」

「な、何千歌ちゃん?」

「わたしの冷凍みかん知らない?」

「冷凍みかん?俺は知らないけど……うん?待てよ、さっきアンクがそれっぽいの持ってたような……」

「呼んだか?」

 俺たちが話していたのを聞いてやって来たアンク。その手には千歌ちゃんの冷凍みかんと思しきものが収められていた。

「あああ!!わたしの冷凍みかん!!どうしてアンクさんが!?」

「知るか。急に食べたくなったんだよ」

 左手でみかんをちらつかせている。

「!?……そっか、そう言うことだったんだ」

「あん?何だ?」

「ううん、何でもない!それよりアンクさん!冷凍庫から取ったのならちゃんと───」

 アンクの左手に何かを感じたのか、千歌ちゃんにいつもの笑顔が戻った。

『……何だか』

『いつもの千歌ちゃんに戻ったみたいだね』

「うん、そうだね。きっともう大丈夫……」

 

 そう、きっと────。

 

 

 




果南)千歌、大丈夫?
千歌)うん、少し寂しいけど……わたしはもう平気!
耀太)そっか……良かった。
アンク)また騒がしくなるなぁ。
耀太)寂しい雰囲気よりは良いだろ?
アンク)……まあな。
果南)アンクさんがデレた!?
アンク)あ?ぶっ飛ばすぞ。
耀太)まあまあ、落ち着け。てか果南ちゃんぶっ飛ばしたらアイス没収だからな。
果南)耀太…ありがとう♡
アンク)ちっ……まぁた始まりやがった。
千歌)ははは……それじゃあ次回予告いってみよー!
アンク)次回「閉校祭と妙案と準備」
耀太)閉校祭か……何となく嫌な予感がするなぁ……。
果南)……奇遇だね、わたしもだよ……。

カウント・ザ・メダルズ
タカ×3
クジャク×2
コンドル×2
クワガタ×2
カマキリ×2
バッタ×2
ライオン×2
トラ×2
チーター×2
サイ×2
ゴリラ×2
ゾウ×2
シャチ×2
ウナギ×2
タコ×2
プテラ×2
トリケラ×1
ティラノ×2
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