ラブライブ!サンシャイン!!~Step! ZERO to OOO~ 作:白銀るる
ラブオーズ外伝も今回でラスト。
このお話で事実上の完結になります。
それでは……。
深く暗い闇の中。
俺の意識はその中にあった。
体はとうの昔に失われ、あるのは意識だけ。
動くことすら出来ずに闇という牢獄に囚われていた。
俺をこんな無様な姿に変えた奴の名は、仮面ライダー。
仮面ライダーオーズ。
一度ならず、二度、そして三度も俺をこの場所におくった忌々しい存在。
オーズはその力で俺を倒し、俺の野望を打ち砕いた。
“奴”に復讐し、ありとあらゆる歴史に存在する仮面ライダーを倒すという俺の欲望を。
だが、俺とてただ囚われていたわけではない。
俺は二度この闇から抜け出している。
時間をかけて力を蓄え、この忌々しい闇の力も奪いながら蘇るのだ。
そう……俺はもう一度蘇る。
今度こそ、俺の野望を果たす為に。
一つは、全ての仮面ライダーをこの手で討ち倒すこと。
一つは、最初に俺を倒した“奴”に復讐すること。
そしてもう一つ……、俺を二度もこの闇に葬ったオーズに復讐すること。
まずは準備を始めよう。
オーズに復讐する為には
だがこの世界には人間たちが腐る程いる。
さあ、人間たち! その欲望、解放しろ!
***
俺たちが日本を発ってから四年の月日が流れた。
四年前、この世界で過ごしたあの時間は忘れない。
いや、忘れられないと言った方が正しいだろう。
コアメダルを巡る戦い。
それは、哀しき過去を背負った一人の神と彼を利用した悪しき存在が巻き起こしたものだった。
最初は彼が生み出したグリードたちとの戦いだ。
強敵揃いの彼らを初めて相手にした時は、絶望すら感じたものだ。
それでも俺たちは諦めなかった。
千歌ちゃんたちの真っ直ぐな瞳が、純粋な想いが俺を立ち上がらせてくれた。
俺たちは何度も何度も戦った。
その中で俺たちは次第に心を通わせていった。
ウヴァが、カザリが、ガメルが、メズールが。
千歌ちゃんたちと触れ合い、変わっていったのだ。
みんなが笑っていられる、そんな時間がずっと続けばいいのに、って何度思ったことか。
だがそんな平和は理不尽な悪によって塗り潰された。
悪の権化とも言える仮面ライダーポセイドンの手により、世界は滅亡の危機を迎えた。
個人の怒りと欲望の為に世界を滅ぼそうとする奴を止める為、俺たちは立ち向かった。
結果、俺たちは奴を追い詰め撃退することが出来た。
しかし、その代償はとても大きなものだった。
ポセイドンの死に際、奴のエネルギーが怪物となり、世界を滅ぼそうとしたのだ。
怪物を討つ為、グリードたちはその力の全てを使い果たし、消滅してしまった。
彼らを失った悲しみを乗りこえ、俺たちは前へ進むことを選んだ。
いつか、彼らを復活させられるその日を掴む為に。
未来で、その時の自分に胸を張って彼らと再会する為に。
「耀太……」
入国の為パスポートを探していると、隣で寝息を立てている果南ちゃんが俺の名前を呼んだ。
幸せそうな寝顔で一体どんな夢を見ているのだろうか。
「千歌……鞠莉……ダイヤ」
俺の名前に続いてみんなの名前も呼ぶ果南ちゃん。
なるほど、彼女が見ている夢が分かった。
きっとあの思い出の日々を夢見ているのだ。
内浦でみんなで過ごしたあの時間を。
「もうすぐ着くよ。みんながいるあの場所にね」
眠る果南ちゃんの耳元でそっと囁く。
眠りにつきながらも、俺の声に反応したようで果南ちゃんは微笑んだ。
俺はバッグから手のひらサイズの小箱取り出し、それを開けた。
中にはおさめられているのは、翡翠の宝石がはめ込まれたエンゲージリング。
帰ったら果南ちゃんにこれを渡そう。
四年前の約束を果たす為に。
***
空港に着くと、やはりたくさんの人があちらこちらへ行き交っていた。
これから日本を発つ人もいれば、俺たちのように戻ってきた人もいる。
友人たちとの別れを惜しむ人、家族との再会を喜ぶ人。本当にさまざまだ。
「あ、来た来た! 待ってましたよ。耀太先輩、果南先輩!」
「二人ともー、迎えに来たよー!」
「チャオ、二人とも」
俺たちを呼んで手を振ってくれているのは、慎司と千歌ちゃん、そして鞠莉ちゃんの三人。
「久しぶり、慎司、千歌ちゃん、鞠莉ちゃん……って鞠莉ちゃんも!?」
「鞠莉、帰って来てたんだ」
「イエース。果南たちよりも少し先にね」
三人ともビデオ通話ではちょくちょく顔を合わせていたが、直接会うのは実に四年ぶり。
慎司は相変わらずの善子ちゃんラブで、連絡する度に惚気話を聞かされていた。
鞠莉ちゃんとは、ついこの間もビデオ通話をしたばかりだったが、まさかこんなに早い再会になるとは……。
それに俺たちよりも早く戻ってきていたことにも驚きだ。
そして千歌ちゃんも以前より成長し、画面越しでも薄々思っていたが、少し大人の雰囲気を纏った美人さんになっていた。
実は俺たちが日本を発ってすぐに晴也と交際を始めたらしい。
恋をすると女の子は綺麗になると聞いたことがあるけれど、まさかここまでとは想像もしていなかった。
「ねえ耀太。どうして千歌をじっと見つめてるのかな?」
「え? いや、これはその……なんと言いますか……」
「ダメですよ、耀太先輩ー。帰ってきて早々浮気だなんてー。それに千歌先輩はもうフリーじゃないんですよ?」
「分かってるから! 浮気なんて俺はしないよ!?」
「これは……スメルぷんぷん嫉妬ファイヤー!」
ジト目でこちらを睨んでくる果南ちゃんに、慎司と鞠莉ちゃんの一言。
更には、恐らく晴也の話が出たことで顔を少し赤く染めた千歌ちゃんと、傍から見たら軽い修羅場だ。
人の目もあるので俺は慌てて弁明を試みる。
だが次の瞬間には、果南ちゃんはふくれっ面は崩して笑い始めた。
「なんてね。昔から言ってるでしょ? 耀太がそんなことする人じゃないのは分かってる、って」
どうやら果南ちゃんの方は演技だったらしく、俺は安堵しそっと胸を撫で下ろした。
「はあ……びっくりした〜……。そう言えば、前にもこんなやり取りしたな……」
「あれは確か閉校祭の時だね。あの時もそうだったけど、耀太のことからかうと反応が面白くてつい」
そう言いながら果南ちゃんは笑う。
彼女につられるように慎司や千歌ちゃん、鞠莉ちゃんとそして俺も。
いつの間にかみんな笑っていた。
ああ、なんて懐かしいんだろう。
それに、こうしているだけで幸せな気持ちが満ちてくる。
だが、あまりここで長話をしていると、他のみんなを待たせてしまう。
「それじゃあ、そろそろ行こうか」という言葉に頷き、俺たちは三人の案内で車まで向かった。
そこで見たのはいつぞやのマイクロバス。
ということは運転手は……。
「運転はマリーにお任せよ! 二人を迎えに行く、って言うからわたしが立候補したの!」
鞠莉ちゃんの気持ちは嬉しいが、彼女の運転は少し不安だ。
「その顔。耀太、わたしのドライブテクニックを疑ってるでしょ?」
「だ……だって、ねぇ?」
「むぅぅ、耀太ってばひどーい。オーケー、成長したわたしをそのアイでよーく見てなさい!」
「エンジンスタート!」という軽快な号令とともにマイクロバスは動き始める。
初めて見た時とはうって変わり、今回はちゃんとスタート出来ていた。
「おお、ちゃんと運転出来てる!」
「四年も一人暮らししてたんだもの。これくらい出来るようになるわ」
ふふん、と鞠莉ちゃんは自慢げに胸を張る。
「ところで鞠莉。一体どこへ向かってるの?」
「近くに小原の所有するヘリポートがあるの」
「今日はそれに乗って迎えに来たんですよ。まあ、流石に空港までは来れなかったんで、車で来たんですけどね」
「へ、へえ……流石鞠莉ちゃん……」
「これだから金持ちは」
果南ちゃんがそう言うとみんなが笑い始める。
こんなやり取り、本当に久しぶりだ。
四年前に進路を分かち、内浦を離れた俺たち。
そしてこの四年の間でも色々なことが変わっていった。
だけど俺たちの絆は何一つ変わらない。
どれだけの時間離れて暮らしていても、どれだけ離れた場所にいても。
「とーこーろーで」
四年ぶりのこの空間に浸っていると、車を運転する鞠莉ちゃんがミラー越しに話しかけてきた。
「耀太と果南はどこまで進んだの?」
「四年も一緒に暮らしてたんですから、何も無かったなんてわけありませんよね!?」
「ハグ? キス? それとももうそういう関係に!?」
「……黙秘させていただきます」
「もうケチね~。千歌っちだって晴也とどこまで進展したのか教えてくれたのに~」
鞠莉ちゃんがそう言った直後、千歌ちゃんは顔を赤く染める。
え……何言わされたの……?
「もう鞠莉ちゃん! 恥ずかしいからあんまり言わないでよー!」
「照れる千歌っちがベリーキュートだったからつい……てへぺろ」
「てへぺろ、じゃないよー! もう!」
「って鞠莉! 前! 前見て!」
完全に後ろに振り向いていた鞠莉ちゃん。
バスはぐりんぐりんと滅茶苦茶な軌道を描いて走る。
やっぱり鞠莉ちゃんの運転は怖い。
ヘリポートに着きヘリに乗ってからも慎司と鞠莉ちゃんの質問攻めは続いた。
俺たちは終始誤魔化し続けたが、二人とも何となく分かっているのだろう。
それでもしつこく追及してくる二人だったが、不思議と苛立ちや怒りは感じられず、この懐かしい感じをもう一度味わうことが出来る嬉しさが込み上げてきた。
***
やっとの思いで帰ってきた内浦。
バスごとヘリで飛んだ時は驚いたが、無事に帰って来れたので、まあ良しとしよう。
十千万に到着した俺たちを最初に迎えてくれたのは意外な人だった。
「お久しぶりです。耀太さん、果南さん」
かつてAqoursのライバルだったスクールアイドル「Saint Snow」の聖良さん。
彼女は卒業後に東京の大学に進学し、同じく東京の大学に進んだダイヤちゃんとは、休日や講義が無い日はよく会っていたらしい。
「久しぶりです、聖良さん。
「はい。ダイヤさんに招待していただいたので、卒業旅行もかねて」
「へえ、そうなんだ。まあ、何も無いところだけどゆっくりしていってよ」
「そんなことありませんよ。とても素敵なところだと思いますよ」
「今回は聖良さんの言う通りだと思うよ。内浦には良いところがいっぱいある。みんなが教えてくれた素敵な魅力がね」
俺は聖良さんの言葉に頷いた。
それは本当に心の底から思っていることだ。
「それにさ、ここは俺がみんなと出会った場所だから。ここから今の俺の全てが始まった。俺にとって内浦は特別な場所だよ」
俺がそう言うと、みんなは静かに微笑んだ。
「さっすが耀太先輩! 良いこと言う! でもちょっとは正直に言っちゃっても良いんですよ? 『みんな』じゃなくて『果南ちゃん』って」
「んなっ!? お前なあ!」
慎司が余計なことを口走り、果南ちゃんは顔を頬を赤く染める。
多分俺も同じくらい赤くなっているだろう。
「二人とも。そうやってじゃれ合うのも良いけど、みんな待ってるんだから。ね?」
「ええ、行きましょう。理亞もお二人と会うの楽しみにしてましたよ」
俺と慎司は鞠莉ちゃんと聖良さんに諭され、千歌ちゃんの案内で十千万の中に入っていろうとした時だ。
俺は妙な気配を感じた。
「うん……? 何だ、今の……」
「どうしました、先輩?」
「今、一瞬だけ変な気配を感じた気がしたんだ……」
「変な気配? まさか先輩、まだ体の中にコアがあるんじゃないでしょうね?」
冗談めかして言う慎司だが、俺の場合冗談にはならない。もっとも、四年前だったならだ。
「きっと気の所為です。疲れてるんですよ、きっと」
「ならいいんだけど……」
千歌ちゃんに案内されたのは大きな宴会部屋。
そこには懐かしい顔ぶれが揃っていた。
音楽の勉強をする為に美術大学に進学した梨子ちゃんに、お父さんと同じ船長を目指して絶賛修行中の曜ちゃん。
十千万で料理人の修行をしている晴也。
花丸ちゃん、ルビィちゃん、善子ちゃんも今は大学生だ。
そして三人と一緒にいる理亞ちゃんに、曜ちゃんの従姉妹の月ちゃん。
東京の大学に進学していたダイヤちゃん。
そして、メダルの研究の傍ら、生計を立てる為に私立探偵を始めたというカムイ。
ビデオ通話は何度かしていたが、こうして直接会うのは実に四年ぶり。
鞠莉ちゃんたちと再会した時と同様、懐かしい気持ちが沸き上がってきた。
「久しぶり」と挨拶を交わした後は、和気あいあいとしたムードが部屋に広がっていった。
まるで昨日まで毎日顔を合わせていたような気がして、四年も会っていなかったのが嘘みたいに思えた。
「隣、大丈夫ですか?」
「ダイヤちゃん。どうぞ、今は誰もいないから」
立って部屋を出ていった慎司の席にダイヤちゃんが座った。
「果南さんとは上手くいってますの?」
「うん、大丈夫だよ。まあ、時々喧嘩する時もあるけどね。それでも俺は果南ちゃんを幸せにしてあげたいと思ってるし、今はすごく幸せだと思う」
「そうですか。それを聞いて安心しました。あの子はああ見えてとても繊細ですから」
「大丈夫。果南ちゃんを悲しませるようなことはしないよ。少なくとも、果南ちゃんの前からいなくなることは絶対にしない」
「ええ、お願いしますね」
かつて彼女とすれ違ってしまったことがあった。
お互いの守りたいものの為に。
ダイヤちゃんは、果南ちゃんに二度とあんな目に遭って欲しくない、きっとそう言いたいんだと思う。
果南ちゃんだけじゃない。俺は鞠莉ちゃんにも、ダイヤちゃんにもそんな目に遭って欲しくないし、幸せになって欲しいと願っている。
「先輩、先輩。ちょっと」
みんなと一緒に会話と料理を楽しんでいると、慎司が俺を手招きした。
「ごめんダイヤちゃん。ちょっと行ってくる」
ダイヤちゃんに一言断りを入れ、俺は部屋を出た。
部屋の外で待っていた慎司。その隣には晴也とカムイもいた。
三人とも、この再会の場には相応しくない深刻な面持ちだ。
「どうしたんだ? もしかして大変なことでも?」
俺がそう問い掛けると、カムイがタブレット端末を取り出して、周波数を読み取るようなグラフを見せてくれた。
「それは?」
「これはこの沼津市近辺で検出されたエネルギーの脈のようなものだ」
「エネルギーの脈?」
「はい。実は四年前にもこれと同じようにエネルギーが乱れたんです。その原因は平行世界からの侵略者でした」
その話は晴也から聞いたことがあった。
沼津に毒の雨を降らせ、ゆくゆくは地球に生ける全ての生物を抹殺しようとした怪人の話だ。
その怪人は仮面ライダーアクアとなった晴也によって倒されたのだが……。
「まさかまた侵略者が!?」
「いや、今回の事件は我々の管轄かもしれない」
「我々の管轄……?」
次いでカムイはカンドロイドが撮影したと思われる写真を見せてきた。
写真に写っていたのは大量の卵だ。
それもただの卵ではない。メズールが生み出すヤミーが孵る卵だ。
「嘘だろ……なんでヤミーの卵が……」
「わたしにも分からない。一つ言えることがあるとすればこの町で……この世界で、また何か良くないことが起ころうとしている。そんな予感がするんだ」
そしてカムイの悪い予感は的中してしまう。
ドカン、そう遠くは無い場所で爆音が鳴った。
***
あの後、俺たちの会合はお開きになってしまった。
爆音の正体はビルが爆発した音。
そして爆発したビルは、カンドロイドが撮影したヤミーの卵が産みつけられていたビルだった。
騒ぎがあった現場に向かった慎司と晴也、そしてサポート役のカムイからそう連絡が入った。
一方、俺は果南ちゃんたちと一緒に十千万で待機だ。
俺はもう仮面ライダーには変身出来ないから仕方ないことなんだ。
そう言い聞かせてはいるが、こういう時に何も出来ないのは悔しいし腹立たしい。
「耀太、顔怖いよ」
「果南ちゃん……俺、悔しい。慎司や晴也たちは出てるのに、俺だけここに残っていることが。分かってるんだ。俺はもう戦えない、仮面ライダーじゃないんだって。それでもやっぱり……。いや、ごめん。今のは忘れて。本当に情けないな、俺……」
今の自分の気持ちを果南ちゃんに吐露する。
すると、彼女は両手で俺の拳を優しく包み込み、俺に微笑みかけてくれた。
「情けなくなんかないよ。ずっとわたしたちを守る為に戦ってくれて、『諦める』ってことを知らないみたいに、何度倒れても必ず立ち上がってきた。たとえ変身出来なくたって、わたしにとって……わたしたちにとって耀太は『仮面ライダー』なんだから」
「……ありがとう、果南ちゃん」
ありがとう、彼女への言葉はそれ以外には見つからない。
果南ちゃんは、「耀太がいつも守ってくれた」と言うが、それは俺も同じだった。
果南ちゃんやみんながいたから俺は立ち上がれた。
いつまでもこんな顔はしてられない。
みんなの為にも、果南ちゃんの為にも、そして……アイツらの為にも。
果南ちゃんの手に包まれた拳を強く握り直すと、「それにさ……」と彼女は続けた。
「そんな耀太のことがわたしは大好きだから──」
少しだけ赤くなり照れながら果南ちゃんは言う。
不意に四年前の情景と重なり、俺は改めて思わされた。
俺はたくさんの人に、そして愛する人に支えられているのだと。
***
爆破されたビルは無残な様になり、その周りには警察や消防が人の立ち入りを制限している。
「これは酷いな……」
「ええ。死人が出なかったのが不幸中の幸いですね……」
ビル、そして救急車で搬送されていく怪我人を目の当たりにし、現場の凄惨さを思い知らせれる慎司と晴也。
警察に詳細を聞きに行ったカムイを待っている間、二人はその光景を見て怒りに肩を震わせていた。
「遅くなって済まない、二人とも」
そこへ情報を仕入れたであろうカムイが合流した。
「どうだった?」
「やはり爆発の起きた現場には、爆発物の類の破片などは見つからなかったらしい。その代わりに水浸しになっていたと……」
「ということは、やっぱり爆発したのはあの卵が孵って……」
ヤミーがビルを爆破した、という答えが既に三人の中で出されていた。
そしてヤミーはこの場を去り、まだこの町のどこかに潜んでいるとも。
「被害が拡大する前になんとしてでもヤミーを見つけるんだ」
「ああ、戦えない先輩の分まで俺たちが……」
この町を守る、慎司がそう言いかけた刹那、タカカンドロイドが飛来した。
「ヤミーを見つけたんだな、タカちゃん!?」
慎司の問いに首を縦に振り答えるカンドロイド。
三人は近くに設置されていたライドベンダーを使い、カンドロイドとともにヤミーの出現した場所へ向かった。
カンドロイドの案内で着いた場所は宝石店。
爆発魔と化したヤミーから店を守るべく、三人は武装して店の中へ入った。
しかし、三人がそこで見たのは爆発の犯人と断定した水棲系ヤミーではなく、昆虫系のカマキリヤミーだった。
「カマキリヤミー!? メズールのヤミーじゃないのかよ!?」
「慎司さん! そんなこと言ってる場合じゃありませんよ! 早く助けないと!」
アクアは到着してすぐさまカマキリヤミーに掴みかかり、店の客から引き剥がす。
それからカマキリヤミーの体を殴打し、吹き飛ばして店のガラスウィンドウを打ち破らせた。
「メズールのヤミーにウヴァのヤミーまで……一体どうなってやがる……。まさか他の奴らのヤミーまで出てくるんじゃないだろうな……」
最悪なシナリオを予想し、独りごちるバース。
考え過ぎであって欲しい、そう思ったのもつかの間、彼の元に別のタカカンドロイドがやって来た。
「タカちゃん、まさか違うヤミーが出たってのか……?」
「うん」と言うようにカンドロイドは頷く。
その様子を見たカムイはタブレットのロックを解除し、カンドロイドとの連携システムのアプリを起動した。
「……慎司くん、大変なことになっているようだ……」
カムイが開いたアプリに届いていた大量の通知。
それらは全て、ヤミーを発見したカンドロイドから送られてきたものだった。
「嘘だろ……」
立ち尽くすバースとカムイ。
そしてカマキリヤミーを撃破したアクア。
そして沼津市は、ヤミーに覆い尽くされたのだった。
***
「うん……うん……分かった。気を付けるよ」
たった今、慎司たちから連絡が入った。
内容としてはかなり絶望的なものだ。
「慎司くんたち、何かあったの?」
俺の声のトーンから良くないことを察したのか、不安げな顔を見せる千歌ちゃん。
千歌ちゃんだけじゃない。
慎司に指示され、一つの部屋に集められたメンバー全員が同じ面持ちだった。
「今、沼津でヤミーが大量発生しているらしい……。慎司たち三人だけじゃ対応しきれないみたいだ……」
不安は驚愕へと変わり、更に恐怖へと移り変わっていく。
無理もない。今、外にでればいつヤミーに出くわしてもおかしくはないのだから。
いや、今のこの地域には安全と言える場所自体無いのかも。
「どうしてそんなことに……?」
「分からない。ただ……何か嫌な予感がするんだ。だから行かなくちゃ!」
「行かなくちゃ、って……耀太はもう変身出来ないんだよ!? 無茶だよ!」
オーズの力無しで出て行こうとすると、いつかの戦いの時と同じように果南ちゃんは声を荒げる。
そりゃそうだ。自分の恋人が死地と言っても差し支えない場所へ赴こうとしているのだから。
「本当よ。あんなにヤミーが溢れている中に生身で行こうだなんて、自殺行為もいいところだわ」
不意に聞き覚えのある女性の声が聞こえてきた。
自称「俺の叔母」で、俺や慎司、そして晴也をこの世界に呼んだ張本人。女神さまだ。
「えっと……知り合いみたいだけど……」
女神さまを見て頭上にはてなマークを浮かべる月ちゃん、聖良さん、理亞ちゃんの三人。
そう言えば、三人は女神さまとは会ったことが無い。
女神さまの表情は俺を見る呆れ顔から一転、三人に微笑みかけて会釈した。
「初めまして。耀太がいつもお世話になっております。叔母の島村神子です」
「は、初めまして……」
三人も女神さまより数秒遅れて礼を返した。
それから彼女は再び俺の方に向き、呆れた表情に戻った。
「話は聞かせてもらってたわよ。確かに今の状況を打破するには、アクアとバースだけでは無理よ。オーズの力は必ず必要になってくる。けど、その力を無くしたあなたが行くのは無謀じゃなくって?」
悔しいが反論することは出来ない。
俺の手元にあるメダルは力を失ったタカコア一枚だけ。
他のメダルも同じように力は宿っておらず、たとえ使えたとしても全て頭部を司るメダルだから変身は出来ない。
「……これを持って行きなさい」
深く溜め息を吐いた女神さまは、俺にメダルホルダーを差し出す。
中には、赤・黄・緑・白・青の銀縁のコアメダルがワンセットずつ収められていた。
「それはカムイが完成させたメダルよ。ただ、これはまだ試作品、何が起こるか分からないから気を付けなさい」
「分かった。ありがとう」
俺はホルダーをしまい、女神さまにお礼をしてから部屋を出ようとした。
その刹那、「待って!」と果南ちゃんが俺の袖を掴んで引き寄せた。
不意のことで体勢を崩しそうになるが、なんとか踏ん張る
そして次の瞬間、彼女の唇が俺の頬に触れた。
あまりに突然の出来事で、俺だけでなく他のみんなもフリーズしてしまう。
「絶対……帰ってきてね」
少しだけ頬を赤くしながら果南ちゃんは呟いた。
「うん、約束する」
俺たちは小指を絡ませて指切りをする。
前にも今と同じことをしたことがあった。
果南ちゃんは忘れてしまっているけれど、俺はあの時と同じように「必ず生きて帰る」と約束した。
「じゃ、行ってくる!」
部屋を、そして十千万を飛び出し、女神さまが用意したと思われるライドベンダーに跨り、タトバコンボに変身して戦地へ向かった。
***
町に繰り出すと、慎司たちの報告通り至る所でヤミーが闊歩していた。
カンドロイドたちも応戦はしているが、成長しきったヤミーには手も足も出ていない。
早く慎司たちとも合流しなければならない今の状況に、一番適しているのは、やはりラトラーターとトライドベンダーだ。
「ライオン! トラ! チーター!」
「ラッタァ・ラッタァ! ラトラーター!!」
トラカンドロイドとライドベンダーを合体させ、俺自身もラトラーターコンボに変身した。
トライドベンダーが咆哮すると、ヤミーたちはこちらの存在に気付いて襲いかかって来た。
「久しぶりだけど、行くぞトラくん!」
俺の呼び掛けに答えるように、再び吠えるトライドベンダーは、ヤミーを蹴散らしながら町を駆け抜けた。
トライドベンダーと連携し、数え切れない程のヤミーを撃破した。
それも本当に減っているのか、と思うほど。
それでもやらないよりはと、ヤミーたちを屠り続けた。
しばらく走り続けていると、 何かを囲んでいるヤミーの集団が視界に入った。
その中からエネルギー弾や水しぶきが上がっている。
間違いない、慎司たちだ。
俺は更にバイクのスピードを上げ、その集団に近づいた。
トライドベンダーを操り、俺は二人を追い詰めていたヤミーたちを蹴散らした。
「先輩!?」
「耀太さん!?」
変身出来ないはずの俺の登場に、バースとアクアは驚きの声を上げた。
「悪い二人とも。遅くなった」
「ど、どうしてまたオーズに……? コアメダルはもう……」
「わたしが姉上に頼んだんだ。試作品のコアメダルだが、耀太くんに届けてくれと、ね」
バースバスターを持ったカムイが、二人に教えるように答えた。
やっぱりカムイが女神さまに言ってくれたんだな。
彼に礼をしようとしたが、それにはまだ早い。
倒したのとは別のヤミーがまた寄ってきた。
「行くぞ、みんな!」
俺はタトバコンボに戻り、メダジャリバーを召喚した。
数は多いが何度も戦った相手だ。苦戦するはずもなく、次から次へと遅い来るヤミーを斬り伏せた。
「やっぱり一体一体倒してたらキリがないな。今度はこれだ!」
「クワガタ! カマキリ! バッタ!」
「ガータ・ガタ・ガタキリッバ! ガタキリバ!!」
続いてガタキリバコンボにコンボチェンジし、ブレンチシェードを生み出して屑ヤミーを含めたヤミー軍団に突撃する。
総数五十体、百振りのカマキリソードは無数のヤミーを一瞬で斬り裂いていく。
「サイ! ゴリラ! ゾウ!」
「サゴーゾ! サゴーゾ!!」
ガタキリバで地上のヤミーを一掃し、次は空中のヤミーたちに標的を変える。
「スキャニングチャージ!」
コンボチェンジ後、すぐさまスキャニングチャージを発動し、オーズを中心に重力波を発生させる。
空を飛ぶヤミーたちは俺に引き寄せられ、その全てをゴリバゴーンで粉砕した。
「シャチ! ウナギ! タコ!」
「シャ・シャ・シャウタ! シャ・シャ・シャウタ!!」
サゴーゾからシャウタコンボにチェンジし、ウナギウィップを展開して残りわずかとなったヤミーに追い打ちをかける。
何体かが地中に潜り逃走を図ろうとしているが、それも無駄だ。
俺はオーズのボディを液状化させ、地中のヤミーたちを追跡する。
逃走から数秒も経たないうちにヤミーを捕らえ、地上に打ち上げる。
トドメに必殺キックのオクトバニッシュをヤミーたちにおみまいした。
慎司と晴也の方も終わったらしく、二人が戦っていたヤミーも全てセルメダルに還元されていた。
多分、ここら一帯のヤミーは一体も残っていないだろう。
「これでこの辺りは大丈夫そうですね」
「ああ、多分な。けど油断はするな。まだ敵は残っているし、なんだか嫌な予感がするんだ……」
「何言ってるんですか! 俺たちにかかれば、どんな敵がきたとしても問題ありませんって!」
「よく言うよ。この世の終わりを見たような顔で『もうダメだぁ……おしまいだぁ……』なんて言っていたクセに」
某王子のセリフとともに慎司の真似をするカムイ。
その時の本人の顔も安易に想像がつく。
少しの間、俺たちは戦場に身を置いていることを忘れ、声に出して笑った。
その後も俺たちは戦い続け、町に溢れかえっていたヤミーを一体残らず殲滅した。
だが俺の胸中の不安が拭われることは無かった。
***
俺がけしかけたヤミーがこうも簡単に片付けられるとは……。
所詮は使い捨ての駒か。
しかし、それでも完全復活に必要なメダルはもう集まったか。
グリードたちが人間の欲望に固執していたのがよく分かる。
……が、もはやそれも俺には必要ない。
時は来た! さあ、復讐の時間だ!
***
ヤミーの大量発生は収束し、沼津に平和が戻った。
その祝賀会と中止になってしまった会合の二次会もかねて、また千歌ちゃんの家でパーティが開かれた。
みんなの笑顔や楽しそうな声で部屋は満たされているが、俺の中ではまだ嫌な気配が消えていなかった。
「先輩、なにボーッとしてるんですか?」
隣に座っていた慎司が、俺のグラスにオレンジジュースを注ぎながら尋ねてきた。
「……今回のことが気になってな。本当に事件は全部終わったのか、って……」
ヤミーは全て倒したが、原因は未だ不明のまま。
女神さまとカムイが調べてくれているが、沼津周辺に時空の歪みが多数起きている所為で、調査は難航するかもしれないと言われた。
「なるほど。確かに俺も気にはなります。けど、今は善子やみんなに不安な気持ちを与えたくない、そう思ったら辛気臭い顔なんてしてられませんよ」
「……凄いな、お前は」
「先輩には負けますよ」
普段はふざけていることが多かったが、時々慎司には敵わないと思うことがある。同時にとても頼もしいとも。
「たとえどんな敵が相手でも先輩なら大丈夫。なんたって世界を救った男なんですから!」
「……サンキューな」
女神さまとカムイから連絡が入ったのは、その夜だった。
時空の歪みをしらみ潰しに調べ、事件の元凶が潜んでいると思しき歪みを見つけた、とのことだった。
夜が更けてからみんなが寝たことを確かめ、俺たちは十千万を出て、その歪みのある場所までバイクを走らせた。
「まさかこの場所だったなんて……」
ヘルメットを外して呟いた晴也の視線の先にあるのは、今はもう使われていない学校。
四年前、俺たちが通っていた浦の星学院の跡地だ。
「俺たちの思い出の場所に巣食うたぁ、随分度胸のある奴みたいですね」
慎司の言葉に頷きながら、俺はこの場所での出来事を思い返していた。
楽しかった思い出だけじゃない。
ここでは辛く、苦しく、悲しい戦いもあった。
そんなこの場所に巣食う敵の正体を俺は悟った。
立ち入り禁止のバリケードを越え、校内に入るとすぐにそれは目に入った。
四年前に俺がくぐり抜けたワームホールと似た穴。
闇というより虚。虚空と形容すべきそこに映った影。
それは俺がもっとも
「久しぶりだな、仮面ライダー」
「出来ればもう二度と会いたくなかったけどな。ポセイドン」
奴は虚空をくぐり、俺たちの前にその姿を現した。
魚類を彷彿とさせるシルエットに、黄色い複眼。
得物である槍を地につき立て、俺たちを見据える。
「俺はお前に復讐する為に力を蓄えた。そして体も……。ヤミーどもを駆逐するのに必死になっていた姿は実に滑稽だったなぁ」
「テメェの身勝手な都合でこっちは迷惑被ったんだ。責任はキッチリとってもらうかんな!」
ポセイドンと対峙した俺たちは、各々のドライバーを装着して仮面ライダーへと姿を変えた。
「変……「変身!」……身!」
バース、オーズ、アクア。
最後の戦いの火蓋は切って落とされた。
ポセイドンは槍を振ってエネルギー弾を発射する。
それらをギリギリで回避し、俺たちは奴に接近した。
アクアとバースが先行し、連携してポセイドンに拳を叩き込む。
だがポセイドンはそれを槍で防ぎ、二人の体勢を崩して薙ぎ払った。
「以前より強い……!」
「俺たちだって強くなってるはずなのに……」
弾かれた二人とスイッチし、メダジャリバーをポセイドンに振り下ろす。
俺は剣を、奴は槍を持つ手に力を込めて鍔迫り合いになる。
「やはりお前は他の奴とは違うな。だがそれでこそ倒しがいがある!」
互いに武器を弾き、後方へ跳ぶ。
着地と同時に地面を蹴り、もう一度奴のもとへ跳んだ。
再び剣を振りかざす。
しかし、その一瞬の隙に奴の槍は振るわれ、剣は弾き飛ばされた。
「しまった……!」
「もらったぁぁぁ!」
胸部にバツ字の槍撃、さらに柄で一撃を浴びせられて吹き飛ばされてしまう。
ダメージが許容量を超えてしまった所為で、トラメダルでの変身が保てなくなってしまった。
「まだだ!」
「タカ! クジャク! コンドル!」
「タージャードルー!!」
トラメダルとバッタメダルを外し、クジャクとコンドルのメダルを使って、燃え盛る炎の真紅のコンボ──タジャドルコンボにコンボチェンジした。
俺は翼を展開して空へ。
更にタジャスピナーを召喚し、ポセイドン目掛けて火炎弾を雨のように撃ち出した。
ポセイドンと激突する直前で回避し、少しずつ上昇しながら慎司たちの方へ戻る。
「先ッ輩ッ!!」
二人のもとへ戻る俺を目掛けて、バースがメダジャリバーを投げた。
俺はすかさず剣をキャッチし、更に上昇する。
メダジャリバーには既にセルメダルが装填されていて、それが慎司の仕業だと理解した俺は、心の中で彼に礼を言いながら刀身にオースキャナーを走らせた。
「トリプル! スキャニングチャージ!!」
「はあああ!!」
メダジャリバーの刀身に炎を纏わせ、地上にいるポセイドンに狙いを定めて急降下した。
その過程で、刀身の炎はオーズのボディ全体を覆い、火の鳥となってポセイドンの体を貫いた。
「グゥゥゥ……フッ、フハハハ! どうした。前に俺を倒した時はこんなものじゃなかったはずだ!」
ポセイドンは胸に突き刺さった剣を抜き、なんと俺ごと剣を放り投げた。
投げ飛ばされて地面に激突し、その衝撃は痛みとなって俺の体に響いた。
倒れた俺を庇うように、バースとアクアが立ちふさがる。
「ウオオオオオオオ!!」
獣のように咆哮するポセイドン。
大気が震え、まるで地震が起きたかのように大地が揺れる。
仮にも仮面ライダーの名を冠し、整っていたポセイドンの装甲は醜く変化していった。
複眼は歪み、大きく開いたサメの口を彷彿とさせるクラッシャーが現れ、サメのヒレを模した装飾も破れたようにボロボロになる。
胸の傷は眼と同じ黄色に輝き、完全に塞がることは無かったが、それはより生物らしさを感じさせるものとなった。
体色も元々の色に黒が混じって一層禍々しさが増した。
もはや仮面ライダーの面影はほとんど残していない。
ポセイドングリードとでも呼ぶべき存在と化した。
「これが俺が手に入れた力……お前を葬る為の力だぁぁぁ!!」
ポセイドンは一瞬でバースとアクアに接近し、その装甲を砕く。
たった一撃のパンチで二人は吹き飛ばされ、その変身は強制解除された。
「そんな……一撃で……」
「強さの次元が違う……。正真正銘の……化物だ……!」
二人を一瞬のうちに下し、ポセイドンは標的を俺に絞る。
奴に頭を掴まれて立たされ、その拳を何度も体に撃ち込まれた。
悲鳴をあげることも出来ない程の激痛を伴う攻撃は、一発喰らうだけで頭がどうにかなってしまいそうだった。
「そろそろ楽にしてやろう。これで終わりだ」
青く発光するポセイドンの拳。
それを受ければただでは済まないだろう。
だが避ける力すら俺には残されていない。
「耀太さん!!」
「やめろぉぉぉ!!」
晴也と慎司の悲痛な叫びが耳に入った直後、オーズのボディに拳が撃ちおろされた。
***
俺の目に入った景色は、どこまでも広がっている青い空だった。
見上げれば上には太陽が、周りを見渡せば雲に手を突っ込むことも出来た。
初めて死にかけた時と同じような感覚が俺を覆っていた。
……今度こそ、俺は死んでしまったのだろうか……。
「このバカが。お前はどれだけ無茶をすれば気が済むんだ!」
突然、俺は懐かしい声で罵られた。
振り返ると、そこには四年前に俺の隣に立っていたアイツが──アンクの姿があった。
「アンクだけじゃないよ」
俺の心の中を読んでいるかのようにカザリが現れ、ウヴァ、メズール、ガメルと、あの戦いで消滅したはずのグリードたち全員が俺の前に現れた。
「お前ら……どうして……!?」
「キミを助けてあげたんだよ」
「あのまま放っておいたら、本当に死んでしまうからな」
カザリとウヴァが俺の言葉に答える。
「しっかりなさいな、耀太。あなたが死んだら果南やみんなが悲しむわ」
「ルビィたちが泣くの……やだ!」
メズールとガメルが俺に叱咤する。
「もう十分ボロボロにされただろ。さっさと戻って片付けてこい」
アンクは、光輝くコアメダルを俺の手に握らせた。
その輝きは温かく、そして懐かしい。
「分かったよ、みんな」
アンクたちの姿が消えていく。
そして最後に笑ったみんなの顔が見えた後、視界はホワイトアウトした。
***
目を覚ますと、俺の変身は解けていた。
あの一撃でダメージ量が許容範囲を超えてしまったようだ。
だが不思議と痛みは消えていて、体力も全開している。
きっとアイツらの仕業だろう。
攻撃を受けてまだ間もないのか、俺のすぐ側で高笑いするポセイドンの声が聞こえる。
聞いていてとても不愉快な気分になる。
しかし、そんな声もすぐに聞こえなくなった。
「何がそんなにおかしいんだよ」
その理由はただ一つ。倒したはずの俺が立ち上がったからだ。
「……なぜ動ける。たしかにトドメは刺したはずだ」
「何度だって立ち上がるさ。お前を倒す為ならな」
「ならもう一度倒れろ。目障りだ!」
ポセイドンは再び拳にエネルギーを集中させ、俺の胸を目掛けて突き出す。
それをどこからか飛来してきた三つの光が阻止した。
「何ッ!?」
俺は三つの光を胸の前で手に納め、頷く。
それを手にした瞬間、みんなの想いが俺に流れ込んできたからだ。
「みんな、俺に力を貸してくれ!」
空になったドライバーのスロットに光を差し込み、オーカテドラルを傾ける。
最後にドライバーの上にオースキャナーを走らせて叫んだ。
「変身ッ!!」
「スーパー! スーパー! スーパー!
スーパータカ! スーパートラ! スーパーバッタ!」
「スーパー! タ・ト・バ! タ・ト・バ!! スーパー!!」
光はスキャンと同時に更に眩く輝き、俺の体を覆っていく。
タカヘッド・ブレイブ、トラクローソリッド、バッタゴラスレッグ。進化した武装が施されたオーズの究極進化。
オーズ スーパータトバコンボがこの世界に再誕した。
「その光……あの時の!? だが今の俺の敵ではない!」
吠えたポセイドンは一瞬にして俺の背後に回る。
そしてもう一度エネルギーを載せた一撃を浴びせようとするが、俺も奴と同じように一瞬で背後に回ってその腕を掴んだ。
「忘れたか? このメダルにはお前と同じ力があることを」
「ぐっ……調子に乗るなぁ!!」
俺の腕を強引に振り払い、拳撃のラッシュを始める。
ポセイドンの拳はオーズのボディに何度も撃ちつけられる。
避けられないのではない。避けるまでもないのだ。
どれだけ奴の攻撃を受けても、文字通り痛くもかゆくもない。
攻めているのは自分のはずなのに、ダメージを与えられず、ポセイドンは精神的に追い詰められていった。
俺はポセイドンの攻撃を妨害することなく、奴の腹部に強烈な拳打を叩き込んだ。
更に、展開されていたトラクローソリッドがポセイドンの体に突き刺さる。
腕引いてトラクローソリッドを引き抜くと、爪の間に二枚のメダルが挟まっていた。
トラクローソリッドにエネルギーを流し込むと、紫色のスパークが走り、メダルは粉々に砕け散った。
「お、俺のコアが……。オーズ、貴様ァァァ!!」
傷口からセルメダルを零し、激昴して拳を振るうポセイドン。
俺は右脚に緑色の電撃を纏わせ、回し蹴りでカウンターを決める。
吹っ飛びそうになるポセイドンだったが、俺は左足で踏み込んで重力波を発生させて奴を地に落とす。
ボロボロになりながら立ち上がった奴を風と水の刃で斬り裂いた。
「あの力……ウヴァとガメル、メズールとカザリの……」
「それだけじゃないですよ。コアメダルを破壊したのは、間違いなく紫の力……。あのメダルは消滅したんじゃ……」
俺の攻撃を受けたポセイドンだけでなく、それを見ていた慎司と晴也も驚愕の表情を浮かべていた。
今俺が変身しているのは、ただのスーパータトバコンボではない。
グリードたちやかつて俺が手にした力が宿った姿だ。
俺が攻撃をする度、俺の目には彼らの姿が映り、その幻とともに攻撃を繰り出していた。
「これでトドメだ」
「スキャニングチャージ!!」
オースキャナーで再度メダルをスキャンする。
バッタゴラスレッグを変化させて跳躍し、虹色に輝く翼を広げてキックの体勢に入った。
タトバ、ガタキリバ、ラトラーター、サゴーゾ、シャウタ、プトティラ、ブラカワニ、そしてタジャドルの影と重なり、九色に輝くリングを抜けて技はポセイドンに炸裂した。
「また……負ける、のか……。だが、俺は必ず蘇る! お前を倒し、奴を……“火野映司”を倒す為にぃぃぃ!!」
ポセイドンの体は爆発四散し、セルメダルが雨のように降り注ぐ。
そして奴の最後のコアメダルが音を立てて砕け散った。
「俺たちは負けない。お前が何度も復活しようとも、その度にお前を倒してやる」
長かった戦いに終止符が打たれた。
変身を解くと、今まで光り輝いていたメダルはその光を失い、元のスーパーメダルへと戻った。
「また……いつかの未来で」
俺は空を見上げてそっと呟く。
俺の言葉に答えるように、夜空に浮かぶ星たちが輝いたような気がした。
***
十千万に帰ると、まだ日が昇っていないはずなのに、目覚めた果南ちゃんたちが俺たちを迎えてくれた。
みんなに譲ったメダルたちが輝き出して彼女たちを目覚めさせたらしい。
慎司も晴也もズタボロ、俺も服だけだがズタズタにされていて、各々恋人たちにお説教をもらってしまった。
「バカ……。本当に心配したんだから……」
「ごめん……ただいま」
「うん、おかえり……」
涙を浮かべて、しかし笑顔で迎えてくれた果南ちゃんを強く抱きしめる。
みんなが見ているが、そんなの関係ない。
「いつまでもしまってないで、とっととアイツの
不意にアンクの声が聞こえた。
だが他のみんなの様子を見るに、俺以外には聞こえていないらしい。
気の所為かと思ったが、直後に空から何かがやってくる。
目を凝らして見ると、それはタカカンドロイドだった。
だが少し様子が変だ。こちらに向かって来ているあのカンドロイドは何かを持っている。
それが何なのか、俺は数秒で理解した。
「アイツ……がらにもないことしやがって」
「耀太……?」
自然と口元が緩んでしまい、それを不思議に思ったらしい果南ちゃんは俺の名前を呼んだ。
カンドロイドが運んできたのは翡翠色の小箱。
本当にやってくれたな、アンク。
未だ戸惑いの色を隠せない果南ちゃん。
彼女の後ろで見ている何人かは既に察しが着いたらしく、俺たちのことを微笑んで見守っていた。
俺は息を吸い込み、果南ちゃんの瞳を、困惑の表情を浮かべる彼女に告げた。
「果南ちゃん、俺と結婚してください」
精一杯の俺のプロポーズ。
果南ちゃんは涙を流しながら、しかし、今まで見た中で一番の笑顔で答えてくれた。
「はい──」
そして開かれた結婚式。
隣にいるのは純白のウェディングドレスに身を包んだ果南ちゃん……いや、もう「ちゃん」付けはやめよう。
雲一つない青空のもと、俺と果南は結ばれた。
出会ってから今日までいろいろなことがあった。
たくさんの人と出会って手を繋いだ。
手を繋いで、そして結んで。
そうして今の俺がいる。
みんな、俺たちのことを祝福してくれた。
その参列者の中に、俺はあの五人の姿を見た。
その姿を見ることが出来たのは俺だけだったけれど、アイツらは確かにそこにいた。
俺たちはこれからも前へ進んでいく。
一人では無理でも、果南と二人でなら。それでもダメなら千歌ちゃんや慎司たちも一緒に。
みんなの笑顔が溢れる、そんな未来へ──。
今回も例の如く、最初は敵とオリジナル形態の紹介になります。
ポセイドングリード
今シリーズにおける元凶にしてラスボス、悪の仮面ライダーポセイドンが復活しパワーアップした姿。ポセイドンをより生物的にした姿をしており、その強さも強力なものになっている。仮面ライダーの頃とは戦い方が変わり、槍を使わず徒手空拳で戦う。バースとアクアを一撃で下し、オーズも戦闘不能寸前まで追い詰めたが、コアメダルを破壊されて弱体化し、最期は必殺キックを受けて死亡した。
仮面ライダーオーズ スーパータトバコンボ レインボーフェザー
虹色の翼を持つオーズ スーパータトバコンボ。元々のスーパータトバコンボの能力に加え、全てのコンボとグリードの力を使いこなすことが出来る究極のオーズ。かつて耀太が生み出したコアメダルにグリードたちの魂が宿ることで、想いと魂を一体化させ、コアメダルの力を限界を超えて引き出すことに成功した。変身に使われたメダルは常に輝きを放っていたが、ポセイドンを撃破すると同時に元のスーパーメダルに戻った。後にも先にも、今回限りの奇跡のコンボ。
前書きでも述べた通り、今回でラブオーズは完結となります。
第一話の投稿が2017年の10月12日、長いようで短かった一年と八か月でした。
最後にお気に入り登録してくださった方のお名前の読み上げと、この場を借りてお礼申し上げます。
146(名前考え中)様 戦駆王様 ユウタ様 嗣雪様 4.19様 それ散る様
ぱ~るる様 9回裏から逆転様 イマジン様 真空様 馬 東興様 ツバサ3616様
リーライナ様 大語様 クウ太様 クドウゼンキ様 緋炉様 ヨータ様
ケモミミ愛好家様 コアラのマーチ様 祐也000様 スプリングスノー様
よっすぃー様 フユニャン様 ともまる様 スターゲイル様 RODEO様
めんどくせえええ様 大根の味噌汁様 ナツ・ドラグニル様 咲麻様 リメイル様
植田 游様 鬼神 勇義様 巫女好きの満月様 free&peacemaker様 のぶたか様
kkakakaka様 (´・ω・`)王子様 M@TSUP様 旭鷹様 リゼアン様 ZENOS様
神様2001様 nobel0様 たこやきとお母さん様 シーチ様 セイ@ ∑ΛΓ様
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約一年と八ヶ月間の応援、ありがとうございました。