違うクラスの女の子に目をつけられたんだが   作:曇天もよう

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よう実ロスに悩みながら生活している者です。
坂柳が好きなので書いてみたような見切り発車ですがどうぞ見ていってください。


プロローグ
始まりはトラブルとともに


現代社会において人は皆平等だなんて言われている。選挙をすれば、『男女が平等に立ち振る舞い、生きていく社会を作り上げていきます!』なんていう政治家もいるだろう。

 

自分たちの祖先にはこのように書いた人物がいる。

 

『天は人の上に人を造らず』

 

これはとても有名な言葉であろう。福沢諭吉著の『学問のすゝめ』の一節だ。

多くの人はこの言葉を知っているが、その先に何と書いているかは知らないだろう。『学問のすゝめ』にはこう記されている。

 

『天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言えり。されど人の世は賢き人あり、おろかな人あり、貧しき人あり、富めるもあり。人は生まれながらにして貴賎貧富の別なし。ただ学問を勤めて物事をよく知る者は貴人となり富人となり、無学なる者は貧乏となり下人となるなり』

 

たしかに福沢諭吉は人は生まれた瞬間においては、人は皆平等だと言っている。しかし、その後学問に励んだか、励んでいないか、その結果により、人は平等ではなくなると述べているのだ。

 

確かにそうであろうと思う。人は生まれてからの努力次第で何者にでもなることができる。それは自らの努力次第だ。そこは自分も同じ考えを示している。

だがしかし、人は生まれた瞬間は平等だ、という考えは自分にとって違うものだと考えている。

 

なぜそう思うのか?それは生まれながらにしてすでに体に差ができている。頭の良さ、体の丈夫さなどがそうだろう。そしていれば親による差もすでに存在している。

それこそ極端な例を言えば、江戸時代などにおいて、徳川家に生まれるのとそこらへんにいるであろう百姓の子に生まれたのではすでに身分に差ができている。

これは現代社会においてもそうだ。親が金を持っているかいないか、親に犯罪履歴があるか、言い出せばキリがないが、親によってできる差は無限にあると自分は考えている。

 

では自分はどのように考えているのか?それはこう考えている。

 

人は生まれながらにして複数枚のカードを持っている。その手札は変えることができなく一生自分の手元に残っているだろう。しかしその手札に加えて、自らの山札から追加のカードを引くことができる。そのカードには様々な種類があり、どんな種類のカードだって所有することができる。

大切なのは「どんなカードを与えられたのか」ではない。自分が考える本当に大切なこと、それは『与えられた手札をいかに生かす使い方をし、補うのか』なのだ…と。

 

 

 

 

 

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桜舞う4月。 暦の上では春であるというのに未だ肌を刺す冷気はたしかに感じられる気候の中、真新しい制服に身を包み、バスの中で揺られながら俺、桐生 司はバスに乗っていた。バスの中は人が多く、すでに座る席はないため、立っている人たちもいた。しかし、俺はバス後部の席を確保していたので、持参した小説を読みながらバスの揺れに合わせて揺れていた。

小説もクライマックスに近づき、展開が盛り上がってきたところで、バスの前方から大きな声が聞こえてくる。あまりに大きい声であったため、周りの人たちもその声をあげた人へと注目をする。

 

「聞こえなかったのかしら?席を譲ってあげようとは思わないの?」

 

静かなバスに似合わないような大声が再びバスに響き渡る。誰しもが、自らに言われた言葉ではないかと、不安そうに思って見つめているが、実際はその声を出しているOL風の女性の目の前に座っている男子学生に向けて発しているようであった。

しかしながら、注意をされている当の男子学生はそんなことに気を止めるような様子はなく、自分の髪をいじっている。

 

「そこの君、おばあさんが困っているのが見えないの?」

 

OL風の女性は注意したにもかかわらず、一切反応すらしない男子学生にイライラを募らせているようだった。先ほどよりもより強く男子学生に注意をした。

 

するとこの注意に男子学生はようやく反応を示し、女性に答える。

 

「実にクレイジーな問題だね、レディー。何故この私が老婆に席を譲らなければならないんだい?どこにも理由はないが」

 

「君が座っている席は優先席よ。お年寄りに譲るのは当然でしょ?」

 

「理解できないねぇ。優先席は優先席であって、法的な手段はどこにも存在しない。この場を動くかどうか、それは現在この席を有している私が判断することなのだよ。若者から席を譲る?ははは、実にナンセンスな考えだ」

 

 

一般的に見れば自己中な男子学生な言葉に聞こえるだろう。道徳的考えなど微塵もそこには存在しない。しかしながら男子学生の主張も間違えているとは言えまい。優先席ではあっても必ずしも譲らないといけないわけではない。あくまで『優先』席なのだから。確かに俺もそうは考えるが、断れば周りの視線が痛いだろうし、変わるだろうが。しかしあの男子学生は一切気にしている様子がないな。あれは大物になるな。そして、男子学生の屁理屈のような返答に女性はさらに怒りを増している。あれはめんどくさい事になりそうだ。ここは無視に限る。

こういうときに誰かが席を変わりますと言えば解決するだろうが、誰だってそんなことはしようとしないだろう。あんなに怒気を撒き散らしてる女性に話しかける勇気がある人なんていないだろうし、面倒ごとは避けたい人が多いだろう。

実際バスの乗客は誰一人として席を譲りますという人はいない。

まあ、男子学生があの様子なら折れることはないだろうし、女性がいずれ諦めるだろう、そう思い再び手に持っている小説に目線を下ろそうとしたときだった。

 

 

「あの……私も、お姉さんの言う通りだと思うな」

 

女性が折れてしまう前に第三者が会話に介入していった。絶対的に不利な言い争いに介入したのは誰だろうと再び目線をそちらの方向に合わせる。

 

介入をしたのは金髪のショートヘアーをした、俺と同じ制服を着た女子生徒だった。因みに優先席に座っている男子学生も同じ制服だ。この時間に同じ制服をきた人がいるということは同い年で今日同じく入学する人たちなのだろうと思いながら、会話を聞く。

 

 

「レディーに続いてプリティーガールか。どうやら、今日の私には女性運があるようだ」

 

「おばあさん、さっきからずっと辛そうにしてるの。席を譲ってもらえないかな?社会貢献にもなると思うの」

 

「社会貢献か。なるほどねえ。だが、生憎と私は社会貢献活動に興味がないんだ。私は自分自身が良ければそれでいいと思っている。それとプリティーガール、先ほどから君らは私を責め立てているようだが、他の一般座席に座っている者はどうだ?本当に老人のためを思っているのなら、優先席かそうでないかの違いは些細なものだと思うがね」

 

あの手の人はいくら言葉で丸め込もうとしても絶対に折れないだろう。これはいくら説得したところで水掛け論になりそうだ。そう思っていると女子生徒は意外にも男子学生ではなく男子学生以外の座っている人たちにお願いをし始めた。

 

「あの、皆さん、誰か席を譲って頂けませんか?お願いします」

 

 

確かにあの男子学生の様子からして決して譲ることはないだろう。そう考えれば女子生徒の判断は正しい事であると思う。しかしながら、席を譲ってと言われて「はい譲ります」と言える人なんてほとんどいないだろう。特に日本人なら…、

なぜ日本人ならしないだろうと言えるのか。それは至極簡単、『誰か』がしてくれるだろう、そんな風に日本人は考えてしまう。日本人は良くも悪くもマジョリティに任せる傾向があり、一人違う動きをすることに恐れがある。例えば、授業を受けていて、『AとBのどちらかに手を挙げなさい』と言われたとしよう。自分はどちらか分からないが、なんとなくBだと思ってAの意見で手を挙げなかったときにクラスメートたちが自分を除いて全員Aの意見で手を挙げたとする。そのときどう思うだろうか?

きっと、自分が間違っているのだろう…そう思うだろう。

マジョリティに入っていれば間違えていても、みんなが間違えているのだから仕方ない、そう言い訳をすることも出来る。そう考えてしまうのが大多数の日本人だ。

話を戻そう。今回の場合、そういった心理も働いているが、金髪の男子学生とOLが変な空気を作ってしまったため、名乗り出ようにも出難い状況になってしまっているのも主な原因だろう。

 

バスの中では沈黙が続く。そして、女子生徒が再び呼びかける。俺はそんなことには興味がないので小説を読むことにしよう。一般座席に座っているのだから譲る義務はない。人でなしと呼ぶのも結構。まあ、いずれ誰かがしてくれるでしょう。こういった考えも大いに日本人らしいか…。

 

 

「あ、あの……この席、よければどうぞ」

 

 

やがて一人の女性が手を挙げて席を譲った。呼びかけていた女子生徒はお礼を言い、お婆さんをそこの席に座らせる。

朝っぱらからハプニングが起こるとは、気が滅入る。自己中な生徒と優しい女性が招いた出来事が、最後には自分たちに矛先が向けられており、このバスに乗っている奴らは少しばかり気分を落としたのに違い無かろう。

 

目的地にバスが到着すると、誰よりも早くバスから降車し、今日から通う事になっている高度育成高等学校の校舎に目もくれずに教室へと俺は向かって歩き出したのだった。

 

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