次回もなるべく早めに書きますが、遅くなるかもしれません
「とりあえずこの後…どうしようか?」
茶柱先生からの説明も聞き終えた俺たちはこれからの行動をどうするか話し合おうとしていた。この後の試験は俺たちが自由に行動することができるため、何をするか全く決まっていなかった。
「ねぇ、平田くん?トイレのことを早めに決めた方がいいんじゃないかな?」
特にこれといって決まっていなかった中、女子の誰かがトイレのことをどうしようかと話題に出した。
現状俺たちはクラスで男女兼用とされているダンボールの箱にトイレをしないといけないとされていた。
いくらなんでもそんなダンボールにトイレをすると言うのは俺でも嫌であるので、女子からすれば余計にそうであろう。
しかし、そんな意見に待ったをかけるのは、池を始めとしたダンボールのトイレを我慢できると言っている、ドケチな…いや、ポイントを極限まで節約しようといっている男子集団であった。
この意見は全く折り合いがつかず、ポイントを使って仮設トイレを買おうと言っている女子と、それに頑なに反対している男子たちの口論が先程からしきりに行われていた。
正直言って衛生環境を整えるためにも買った方がいいと俺は思っているが、そんな意見を俺が言う暇がないほど加熱していた。
もはやここで余計な口出しをすると余計にめんどくさくなると口を出さずその様子を外側側から傍観していたのだが、男子側から幸村が出てきて、女子の中でも特に嫌がっている篠原に対して、「本能のままで動くのなら猿にでもできる。女は感情論で動くから嫌いだ」などと言い放った。
幸村はクラスの中では堀北と同じ、自分を優秀と思ってる人間だ。他人を足手まといと見下してる気質がある。それが今回も出たのだろう。
そんな上から、それも女だからと見下した発言に気が強い篠原が黙ってるわけがなかった。案の定幸村に噛みつき、余計に話は混迷を極めていった。
そんな状況にどうしていいのか分からなくなり、クラスで意見をまとめる役割を担ってある平田も困っているようであった。
そして、そんな中、他クラスの状況を観察していると、有栖を欠き、クラスのリーダーが一人となっているAクラス、帆波をリーダーとしてクラス全体が大きな一枚岩になっているBクラスは意見がまとまったようで、行動を開始し始めた。ちなみにCクラスは言い争いこそ見えぬ様子だが、まだ動き出すようなそぶりは見えず、意見がまとまってはいないようであった。つまりこんな怒号を鳴らして言い争いをしているのはDクラスだけであり、いかにDクラスが他クラスと差があるかが露呈しているようであった。
そんな様子に言い争いをしていたやつらも気づいたようで、より一層焦りを見せ始めた。そんな状況に池が森の中へとスポットを探しに行くと言い出した。
その行動を平田は止めようとしたが、山内、須藤も一緒に行こうとしたため、止めるのを諦めて一人で行動しないように言っていた。
もう行動していいなら俺も一人で軽くこの周りでも確認しておきたい。どのみちここに残っても不毛な言い争いに付き合わされるだけで無駄な時間を過ごすだろうしな。
「俺もこの周りを少し探索しておきたい。と言うわけで失礼するぞ」
平田に一言告げて移動をしようとする。しかし、そんな俺を平田は止めてくる。
「何いってるんだい!?一人で移動するのは危ないよ!」
「そこら辺適当にほっつき歩いてみるだけだ。大丈夫だ」
「いやいや、危ないよ!みんなで行動して…」
「だったらさ、今の状況で行動できると思うか?」
俺の言葉に平田は黙る。今の状況でみんなで集団行動ができるはずもない。こんなにも言い争っているのに仲良くなんて今はできるわけもない。
「出来ないだろうな。これはある意味クラスの団結力を測る試験だ。どれだけ辛い状況を協力して生活できるかがポイントになるだろう。それなのにこんなに喧嘩をしてたらいつまで経ってもスタートラインにも立たないね」
「で、でも!幸村くんが!」
「この女たちが!」
俺の言葉を聞いてお互いに相手のせいにしようとする。そして、その言葉を聞いてお互いにさらに睨み合っている。
「だからそれがいけないって言ってんだろ。俺の意見を言わせてもらう。確かにポイントを節約することは大切だろうな。他クラスに追いつくにはそれが絶対条件だ」
「それみたことか。だから俺たちは我慢しろって言ってんだよ」
俺の意見を聞いて幸村たちが強気に出る。それを聞いて逆に篠原たちは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
「俺の話は終わってない。もう少し聞け」
俺が強い口調で言うと、幸村たちもそれ以上の言葉を言おうとはしなかった。
「続けるぞ。だがな、そんなキッチキチの生活で7日間も生活できると思ってんのか?そんなの絶対不衛生に決まってるじゃねえか。現にお前ら、あのテント見ろよ」
俺か指差した方向をみんなが揃って目を向ける。
「あれが何だって言うんだ?」
幸村が質問をしてくる。女子たちも何かと質問をしてくるので、答える。
「あれか?あれは、茶柱先生がトイレ用って言って俺たちにくれたテントだ。お前たちさ、さっきトイレに行きたいって言ってたやつのこと覚えてるか?」
そう言われてみんなが思い出そうとする。そして気づいた様子をするので、さらに言葉を続ける。
「要するにだ。少し汚いが、要するに須藤がトイレに行ったテントってことだ。さっき須藤がこっちに帰ってくるときに何か手に持ってたか見たやつはいるか?」
先ほど、あのテントに行く際に須藤はクラスで一つしかないと言っていたダンボールをあそこへ持って行った。そして、あのテントから帰ってくるときに、須藤は何も手に持たず帰ってきた。それが意味すること…つまり…
「ま、まさか…」
女子たちがその意味に気づいたようでとても嫌そうな顔を浮かべる。その女子の顔を見て、幸村たちも悟ったように目を背け始めた。
「あいつは用を足した後の処理を何もせずに森に行った。それが何を指し示すか分かるよな?トイレに反対してるお前たちは今からあのテントに行って片付けてこいよ。トイレはあっこにしかないんだから、出来ないのだが」
幸村にたちにわざとらしく言う。誰だって人がトイレとして使用したものを片付けたくなどないだろう。
その原因としてまず汚いと言うのもあるが、今は8月、それも今日は快晴だ。締め切ったテントの中で蒸されたテント。誰だって行きたいわけがない。行きたいって言うのならそれは相当な変態か、そう言うフェチでもある人くらいだろう。
だが、現状幸村たちの意見を採用しようと言うのならばあのトイレを回収しなければならない。
「…ちっ…確かにトイレにポイントを使うのは…あれだが…他を節約していくのなら…俺はトイレにポイントを使うのを認める…」
幸村の隣にいた男子生徒が折れ、ポイントの使用を認めた。それにつられるように幸村を除く男子たちはこぞって意見を逆転させ、トイレを使っても良いと言い始めた。
周りの奴らの意見の転換に幸村はまだ諦めた様子を見せてなかったが、俺が「そこまでポイント使いたくないなら、早くトイレを回収してきてくれよ」ともう一度言うと、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらも、幸村も心が折れたようで、ポイントを使っても良いと言ったのだった。
「じゃあ、意見もまとまったようだし、俺は少し探索に行く。周辺状況を確認したらすぐに戻るから問題はない。すぐに戻るから」
そう簡単に伝えて俺は森の中へと入って行ったのだった。