もうじき9巻発売で楽しみですね。そんな中未だに3巻が終わらない当小説ですが…
橋下と別れ、流石に長時間歩き続けたために、疲れが出てきていた桐生は、大きな木に背を預けて休憩を取っていた。普段コンクリートで舗装された歩きやすい道を歩いているため、慣れない悪路を歩き続けるのは想像以上に体力を使う。それに加えて朝早くからの行動もあり、桐生の体力はかなり消費されていた。
そのため、少し長めに休憩を取っていた桐生であったが、いつのまにか眠気に襲われ、その欲求の赴くまま眠ってしまっていた。桐生が目を覚ました時、すでに陽はかなり傾き、綺麗な夕焼け空が鬱蒼と茂る森の隙間から露見していた。
起きてすぐに状況を確認して、何か他のクラスにものを奪われていないかを確認し、何も盗まれていないことを確認すると、少し一安心してから、再び移動を開始する。流石に1時間程度寝ていたせいか、身体は軽くなり、かなり動きやすくなっていた。
そうして移動をし、次の目的地である伊吹と昨日出会った場所にやってきた。
「ふう、ここまで戻ってくるのに以外と時間かかったな…意外とこの島広くて困るもんだ…」
島の広さに悪態をつきながらも、桐生は当たりの捜索を始めた。
桐生は正直なところ伊吹のことは半信半疑で疑っていた。いくら龍園が暴力的な生徒だとはいえ、いきなり追い出したりするようなことが起こるだろうか?ただ、暴力は男女関係なく行われていると聞いていたため、万が一も考えられていた。
しかしながら、今朝一之瀬と話をした時にBクラスにも同じように一人生徒がいるということを聞いていたため、疑問は確信へと変わった。
『伊吹澪はクラスリーダーを見つけるためにDクラスに潜入したスパイである』と。
伊吹はあの様子だと試験終了か、クラスリーダーを見つけるまでDクラスのキャンプ内に滞在し続けるだろう。だが、クラスリーダーを見つけた時、どうにかして龍園にコンタクトを取るのではないか…そう思った桐生はまず連絡手段となるものを携帯していたのではないかと思った。
朝キャンプを出る時にカタログを見ていると、コンパクト通信型トランシーバーが帰ることなどは把握して来ていた。そのため、トランシーバーを隠している可能性はある。もちろんそれは自身の荷物の中に隠している可能性はある。だが、まずキャンプに入る時や、俺たちと遭遇した時に荷物検査をされる自分の私服、私物は歩き」u<7可能性は高いと考えるはずだ。普通ならそう考えるのが妥当だ。となると、疑われざるを得ないような物体を持って入るだろうか?いや、持っては入らないだろう。
そうなると、どこかわかりやすい場所に隠している可能性がないかと桐生は考えた。
その隠し場所はCクラスの近くにはないだろう。もしそんな場所に隠すなら、直接Cクラスに戻り口頭で伝える方が早いからだ。それに加えてBクラス側にも隠しにくいだろうと思う。Bクラス側にも間者らいる訳だが、二人揃って同じ場所とは考えにくい。
そうなると、かなり隠す場所は限られてくるのではないかと思う。
そして俺が予想したのはここ、最初に伊吹が座っていた木の付近だ。
俺がここに目をつけた理由として、あの時の伊吹は少し息が切れていた。Cクラスから追放されてから走ることがあるかと言われたら恐らくないだろう。他クラスに見られたとしても同じように接近すればいい。そうなると、体を動かす理由がわからない。そうなってくると、他の理由としてはトランシーバーか何かをどこか、茂みや木の上、もしくは土の中に埋めたと考えるのが妥当だ。
そして、俺たちのキャンプへ帰ろうとする時に、伊吹の手を横目に見たが、爪の間に土が詰まっているのが一瞬ながら見えた。本当に一瞬では会ったが、髪をかき上げようとするその動作の時に見えたのだ。
以上のことから、どこかの地点に何かを埋めたと言うことが分かった。伊吹自身もどこに埋めたか変わらなくなる可能性があるため、どこかに目印になるようなものを残していると思われる。だからこの周辺を重点的に探してみることにした。
暫く辺りを探してみると案の定、一本の木に一見見逃してしまいそうになるが、意図的につけられたであろう傷の跡があった。そのため、その木の根元付近を見てみると掘り返されて土の色が僅かながら変化しているのが見つけられた。
その場所を近くにあった木などを使って掘り返してみると、案の定そこから雨が降っても大丈夫のようにジップロックに入れられたトランシーバーが出てきた。さらにそのジップロックの中にはカメラも入っており、完全に伊吹が黒だと言うことが発覚した。
伊吹が黒だと分かったことで、もしもこの場面を見られらとまずいので、すぐに元どおりに戻してその場を立ち去る。
これからの伊吹の対処を考えながら、Dクラスのキャンプへと戻ろうと歩いていると、1人森の中にポツンと立っている少女を見つける。何をしているのか、それを伺ってみることにするが、これと行って何をするわけでもなくポツンと立って森を見渡している。どうしたのかと思い、桐生は声をかけてみることにした。
「…こんなところで椎名は何をしているんだ?」
「……」
声をかけるが、返答は帰ってこない。もしかしたら聞こえていなかった可能性があるので、一応もう一回声をかけてみることにした。
「おーい、椎名?ここで何してるんだ?」
「…あら、桐生さん、こんなところでどうしました?」
「それはこっちのセリフだよ。俺はふつうに散策してたらここに辿り着いただけなんだけど、椎名は?」
「…私は暇をしていたので散歩をしていたら迷っちゃったみたいで。ちょっと帰り道がどっちか探してたら桐生くんに出会ったって感じですね」
「要するに迷子ってこと?」
「世間一般に言う迷子ですね」
淡々と顔の表情を変えることなく椎名は答える。普段から椎名の顔の表情はあまり変化するものではないが…
「それならCクラスのキャンプまで連れて行こうか?」
とりあえずここで椎名が1人で困っているのを見過ごして帰るのも気がひけるし、唯一読書について語り合える友人である椎名の困ってることだから助けないわけにはいかない。
「桐生くんはCクラスの場所が分かるのですか?」
「…まあ、今日一日島を歩いて地図を作ってたからその一環で知ったんだ」
「そうなんですね。もし、桐生くんがCクラスの偵察で知ってたとしても私は別に報告したりしないので安心してくださいね。私はCクラスの試験結果がどうなっても気にしないので」
「は、はぁ…」
やはり椎名はその表情も相まって考えを読み取ることができない。突拍子なことを言うことも多いため、果たしてそれが真意なのか図りかねる。普段本を借りてその感想を聞いて来るときは、普段の表情のあまり動かない様子とは一転して、すごく楽しそうな表情をする上に、積極的になるため、純粋に興味がないのだろうと思うが…
「桐生くんも帰る時間がありますし、遅くなって点呼に遅れたりしたら申し訳ないので、行きましょう?」
どっちが自分の帰り道なのか分からないのにも関わらず、椎名は自身があるように歩き出した。
「…こっちだぞ?」
「…私としたことが間違えてしまいましたね」
こんな時でもポーカーフェイスな椎名に素直に称賛を送りながらも椎名と一緒にCクラスのキャンプへと歩き始めたのであった。
多分あと8話くらいで3巻の内容は終わりそうですね……あと8ヶ月かかりそうだな…