今回の内容はこの作品にも大きく影響ありそうなので、結構気になってました
ネタバレは控えますが、一言言うなら山内、その場所変われ。
さて、本編は龍園初登場です
口調があやふやな気がしますけど…
森の中で偶然遭遇した椎名をCクラスの拠点に連れて行くことにした桐生は、椎名と2人で鬱蒼と茂る森の中を歩いていた。道は軽い下り坂になっており、いくらか歩きやすかったが、蔦や木が生い茂っていることで、歩きにくいことに変わりなかった。
そんな歩きづらい道を進みながらも椎名はいつも通り、桐生に本についての話を振り、話をしていた。
「桐生くんは『幻の女』という本を読んだことがありますか?」
「いや…見たことがないな」
「それは勿体ない…この本はミステリーとしても最高に面白いのですが、それだけでなく、友情の素晴らしさなども表現されており、とても面白いのですよ!私、今回の旅行に持ってきているので、この試験が終わったら貸すので読んでみませんか?」
「それなら読んでみようかな?ミステリーなのに友情ってのは少し変わってるように思えるし」
「はい、いつでも貸すので私の部屋に来てください。私の部屋は〜号室ですので」
普段から本が好きな者同士で読んだ本について語り合うことがあった。だが、本を紹介するのは大体椎名であった。逆に桐生が本を勧めても椎名はすでに読んでいるということが多かった。そのため、桐生は、紹介してもらった本を読んで、その感想を語り合うということをしていた。
それだと椎名は物足りないのではないかと毎回桐生は思っていたが、その度に椎名は、「自分の知っている本を紹介して、他の人に読んでもらうということがとても楽しいのです」と言うのであった。
今日もいつものパターンであり、既に3冊の本を紹介されていた。
椎名のオススメする本はどれも名作で、読み応えのあるものばかりなので、どんな本なのか、桐生は期待に胸を膨らませていると、不意に椎名がそれまでとは違う人物になったように静かに桐生に質問をしてきた。
「…桐生くんはこの試験についてどう思いますか?」
急な変化に少し戸惑った桐生であったが、真面目なトーンで話すため、こちらも真面目に答える。
「…どう…というと?」
「この試験について先生たちは自由にしていいと話していました。それでも、試験と言われたものですから、身構えて私たちは挑みました。しかしながら、現状先生たちからは何も言われず、まさに『自由』といったところです」
「確かにそうだな」
「ですが、本当にそれだけなのでしょうか?どうしても私は何か他に意図する目的があるのではないかと思ってしまうんです。そこで桐生くんはどう考えているのかと思ったので…」
椎名に言われてから少し考えてみる。この試験は確かに楽しむも我慢してポイントを貯めるも自由。何を食べ、どこで過ごそうが自由。まさに何をしてもいいと言った様相の試験だ。
しかし、ただ過ごすだけでなく、クラスポイントやプライベートポイントの増額といったボーナスもある。そう考えるとただの試験ではないと思う。何か俺たちに説明された試験の説明の裏に、学園側の意図する本当の目的があるのかもしれない。これが俺のただの考えすぎなのかもしれないが…
「私はこの試験について、生徒、もしくはクラスとしての情報力を見てるんじゃないかと思います」
椎名はきっぱりと言い切る。俺と同じような考えではあるようだが、更に突っ込んだところまで答えが辿り着いているようであった。
「椎名がそのように考えるのは…この試験のもう一つのポイントである他クラスのリーダーを見破るってところにあると思っているからか?」
「はい。この試験はクラスのリーダーであるキーカードを使うことでスポットの占有が可能ですけど、この瞬間などに情報を奪い取ることなどが求められていると思うんです。もちろんそれだけに限らず、他クラスの動向を伺うことで推測し、当てることもできます。こうした情報収集能力、及びその得られた情報から推測する力が図られているのではないか、そう私は思ったんです」
椎名の推測はとても納得のいくものであった。この学園の目標は社会で活躍する人材を育てるとしている。そのための特別試験というのなら、とても分かりやすい。
椎名がこちらの顔を伺っているため、自分の意見も話す。
「椎名の言う通りなのかもしれない。俺も椎名ほどはっきりとは考えていなかったが、何か表向きな自由に過ごすと言う目的の裏に学園が意図する真の目的があると考えていた」
「やはり桐生くんもそうなんですね。しかも今回のことについて、学園側は『今年度最初の』特別試験を開始する、と話していましたから、これから何度か特別試験があると言っていいと思います」
「そうだな…これからも大変な時間になりそうな気がする」
「特別試験ですからね。大変ではない訳がないと思いますよ」
「それもそうか…おっと、森が開けて来たな。あと少しで着くぞ」
そんな話をしていると、かなり歩いて来ていたようで、森が開け、足元に砂が少し見えるようになってきた。そしてしばらくすると、完全に砂浜に出て、ようやくCクラスの拠点にたどり着いたようであった。
鬱蒼と茂る森をぬけた海岸に存在するCクラスの拠点、そこに存在していたのは、DクラスやBクラスのように生活する上で最低限必要な物だけでなく、BBQをするためのコンロや大量に用意された食材、日差しを避けるための大きなテント、水上を颯爽と駆けていくモーターバイク。まるで同じ試験を受けているとは思えないような豪勢なものがこの空間には取り揃えられていた。ここまで来ると肉を焼く匂いが辺りに広がっており、一日中歩き回った桐生にとってはお腹が自然と鳴ってしまうような香ばしい香りであった。
ようやく辿り着いたことで、椎名は桐生にここまで送ってくれたことに謝辞を述べて、恐らくクラスで話すであろう面々の元へと向かっていこうとしていた。その時に桐生と椎名の元へ2人組の男たちが近づいてきた。
1人は柄の悪そうな中肉中背の男。もう1人は見るからに黒人の巨漢の男であった。
「あ〜?お前誰だ?」
柄の悪そうな男が桐生に突っかかって来る。
「Dクラス所属の桐生だ」
「Dクラスだ?あの学年のポンコツで使い物にならない不良品の?」
桐生がDクラスと聞くと、更に態度はデカくなり、とても偉そうにそして挑発的に桐生に向かって話す。その間巨漢の方は何も言うことなく、横柄な態度の男の後ろに鎮座していた。
「ああ、その不良品のDクラスさ。ところで?俺何か用でも?」
「用は大アリだ!他クラスの奴がここで何してやがる?ここが何処かだってわかっているんだろうな?」
「Cクラスの拠点だ」
「ほう?分かってここに来るとはいい度胸したんじゃねえか」
男は桐生の胸ぐらをつかもうとその手を伸ばして、桐生の体操服をつかもうとして来る。しかし桐生はその手を掴んで桐生は柔道の小外刈りの要領でその男を地面に突き落とす。それは下が砂浜のため、思いっきりしても怪我をすることはないと判断したからであった。
「テメェ!調子に乗るんじゃねえぞ!!」
急に転ばされたことで最初は呆けていた男は、立ち上がってすぐに桐生に殴りかかろうとする。それに合わせて後ろの大柄な男も同じように桐生に殴りかかろうとしていた。
「危ない!」
椎名が咄嗟に叫んだが、2人の拳は桐生には届くことはなかった。
「誰だ邪魔しやがったやつは!」
2人の腕は、1人の男によって止められたのだった。とてもその2人を止められそうには一見見えないが、その腕に掴まれた2人は微動だりすることができず、腕を掴んだ張本人を振り返って確認する。
「何だ石崎。随分と偉そうじゃねえか?それにアルベルトも勝手なことをしてるじゃないか」
「りゅ、龍園さん…?」
「……!」
石崎と呼ばれた男は、龍園を見るなり、今までの強気な姿勢は何処へやら、急に萎縮してしまっていた。同じくアルベルトも龍園を見るやその手を引っ込め、すぐに龍園の後ろに引き下がった。
「随分と飼い慣らしているみたいだな」
「暴力で飼い慣らせば犬みたいに尻尾を振るものさ。お前も同じように飼い慣らしてやろうか?桐生司?」
他クラスの、それも特に目立つようなこともしてない俺のことを知っていたのは驚いたが、隙は見せないように平常心を保って答えるように心がける。
「へぇ…Dクラスの一下っ端である俺のことを知ってるとは…光栄だよ、龍園翔」
桐生はCクラスの面々と須藤が揉めたとき、神室にCクラスについて調べてもらっていた。その時に、Cクラスを実質的に支配、指揮しているのはこの目の前にいる男、龍園だと聞いていた。その性格は冷酷で暴力的。暴力によって入学してすぐにクラスを掌握。逆らう者を支配し、Cクラスのリーダーの地位に上り詰めた。その暴力は女性でも例外なく、逆らうならば女性であっても手にかかるほどと聞いていた。
「一下っ端だ?笑わせんな。ただのDクラスの下っ端が坂柳に目つけられるとでも思ってんのか?」
「さあな。俺もあいつは読めないから分からないな。当人に聞いてくれ」
「はっ、坂柳の小判鮫かと思ってたが随分と言ってくれるじゃないか。面白い、気に入ったぜ。お前も十分に俺のことを楽しませてくれそうだ。覚えておくぞ、桐生司」
随分と俺のことを気に入ったようで、龍園はこちらの方を見てくるが、ジロジロと男に見られる趣味はないので、さっさと俺も戻ることにした。
「あ、桐生くん、送ってくれてありがとうございました。また試験が終わったら本貸しますので会いましょう。それではまた」
椎名は律儀に桐生の前に来てお辞儀をする。桐生もいろんな話をしたことで、タメになったと感謝を伝え、龍園にこれ以上突っかからないようにそそくさと退散したのであった。
私の住む地域にはメロンブックスがないので、特典SSが見れないのが難点です
有栖も出てるみたいで見たかったです…