今回のお話は戦闘シーンになります。
なかなか苦戦しながら書いていましたが途中で楽しくなってきてしまい、分量が多めになってしまいました!
スミマセン!
でも、楽しんで読んでくれると嬉しいです。
また感想くれたら励みになります。
ではどうぞ、お楽しみに!
「勘弁してください!」
そんな悲痛極まりない叫びが俺の耳に届いた。
俺は声のした方向に視線を向ける。
すると、そこには齢50は超えているであろう初老のお婆さんが屈強な三人の衛兵たちに囲まれていた。
誰がどう見ても穏やかではない。
衛兵の男の一人が信じられないとでも言いたげな口調で言う。
「おいおい、勘弁してくださいって、それはないだろおー?」
それに続く形でもう一人の男も大仰に手を広げながら言う。
「こっちはもう3日も待ってやってるんだ、これ以上待てるかよ。」
吐き捨てるような言い方に、おばあさんは怯えたのかガクガクと肩を震わせながら、両手を拝むように合わせて言った。
「お願いします!どうかどうか堪忍を~!」
老婆の叫びを聞いて黙っていられる俺たちではない。
正義感の強いソフィーは俺よりも先に動いていた。
「待ちなさい!」
「ああ?」
老婆と衛兵との間に割り込み、そう叫んだソフィー。
屈強な衛兵三人に睨みをきかされてもまったくひるんでいない。
俺も彼女の横に走り込み老婆を衛兵達から隠した。
改めて三人の衛兵を観察してみると、一人はでっぷりと太った巨漢、もう一人は全身が骨張った細身の男、もう一人は筋肉質な巨漢である。
三人ともに腰には警棒をぶら下げている。
対してこちらは、ソフィーは片手に傘を持っているだけだし、俺に至っては完全な丸腰。
更に、俺たちはどちらも十二歳なので端から見ると大人が子供をいじめているようにすら映るであろう。
今も、後ろの老婆も心配そうな声で俺たちに向かって言っている。
「僕ちゃん達、私にかまわんでにげなさい・・・。」
俺とソフィーはそんな老婆にほほえみかけてこっちは大丈夫だと暗にほのめかす。
老婆が落ち着いたのを確認して俺たちは振り返り、衛兵三人と対峙する。
衛兵三人は自分たちを邪魔した俺達の事をもちろんよくは思っていない。
三人とも口元をひくつかせたり、眉間にしわを寄せたりして自分たちの怒りを表している。
だが、俺たちはそれくらいの威圧には仕事柄慣れっこだ。
一週間前も町で薬を裁いていたマフィアのアジトをつぶしてきたところだし、これくらいのメンチはいつも切られているのでこんなことでビビっていちゃ仕事になんかならない。
俺たちのそんな動じない様子に腹を立てたのか、おなかの出た太った衛兵が俺たちの前に一歩踏み出て、いらだった声音で言う。
「おい、ガキども。そこをどけ。今ならけがしないで済む。おじさん達も君たちみたいな子供をけがさせたくはない。」
まるで俺達の事を思って言っているのだとでもいいたい口調に俺は激しいいらだちを覚えたがそれよりも先にソフィーが一歩前に出て言った。
「・・・・おじさん達こそ怪我したくなかったら今すぐ回れ右して帰った方が良い。私たち戦い出すと手加減できないから。」
毅然とした態度でそう言い放ったソフィー。
味方である俺でさえもしびれるような言い方で、かっこいいと感じてしまった。
しかし、彼女にばかり良いかっこをさせているわけにも行かないので俺も彼女の横に踏み出して言った。
「そういうことだ。ま、死にたい奴から掛かってこいよ?相手してやるからさ。」
右手を前に突き出して、チョイチョイと指で挑発する俺。
こんな安い挑発に乗らないかも、と思いはしたが・・・。
「なんだと、このガキども・・・!ぶっ殺してやる!」
と効果覿面。
顔を真っ赤に紅潮させて俺たちに飛びかかってきた。
迫り来る赤い大きな丸顔。
こんなぜっぱつまった状況であるはずなのに、この男の顔があまりにもトマトに似ていて笑いがこみ上げた。
男はこの状況で俺が笑ったことに侮蔑を感じたのか、いっそう憎々しげな表情へと変わり、本当に俺を殴り殺そうとしている。
大ぶりな右のストレート。
確かにこいつの体格はかなり大きく、当たればいくら俺といえどただでは済まない威力をはらんでいる。
ただし、当たればの話だが・・・。
「・・・・っ!」
俺の目は男のパンチを完全に見切り、体を一足半右へとずらしただけで容易に躱した。
予備動作があまりにもわかりやすすぎて避けることはたやすかった。
だが、男は自分のパンチがあまりにも簡単に躱されたことに驚いたのか目を大きく見開いている。
しかし、驚きや戸惑いはこの戦場に於いて致命的な隙を敵に与えてしまうことを意味する。
男の体は今の驚きによって、微かに硬直し、隙を生む。
そして俺がその隙を見逃すはずなどない。
「フンッ・・・!」
男の体がパンチの勢いを殺しきれず前に流れていたので、俺は短い裂帛とともに左ストレートを男の顔面に向かって全力で振り抜いた。
「ガフッ!!」
男の前進する力と俺の膂力が加わった凄絶なる威力をはらんだ一撃に彼の体は一回転し、雨上がりの泥水へとたたきつけられた。
あまりにも衝撃的な一幕に一同は騒然とし、場が静まりかえる。
俺はその静寂の中、振り抜いた拳を引き戻し、自然体へと体勢を整え、衛兵達を見ると、二人とも俺のことを憎々しげな目で見ている。
俺はそんな彼らに勝気な笑顔で笑ってやった。
すると、激高したがりがり衛兵(勝手に命名)が警棒を振りかざし俺の脳天へと一撃くらわさんとした。
俺が微動だに動かないことを見て彼の口元にイヤラシい笑みが浮かぶ。
このままでは頭をかち割られてしまう。
そのとき・・・。
「シッ・・・!」
「ウグフッ・・・!」
短い気迫の声を漏らしながらソフィーが傘でがりがり衛兵の胸にすさまじい突きを見舞ったのだ。
あまりの衝撃にがりがり衛兵は数歩たたらを踏み後退している。
それもそのはず。
ソフィーは独学ながら、レイピアや細剣の天賦の才ががあり、、いくら傘といえども、ソフィーの手に掛かればあたかも鋼鉄のレイピアのごとく、堅く強く、鋭い一撃へと変貌してしまうのだから。
さきほどの一撃も見惚れてしまうほどに美しい一撃でありながらも、全体重が威力へと変換された、まさに必殺の一撃。
今の一撃を食らっては立ち上がることは難しいだろう。
がりがり衛兵は水たまりの中に、不自然な体勢で倒れ込み、ぴくぴくとけいれんしている。
日頃の任務で見慣れている俺でさえも戦慄する技の切れ味。
これが傘でなかったならばどれほどの威力になるのか想像も付かない・・・。
ソフィーは男の胸元を一衝きにした傘をクルクルと軽やかに回し、俺にちらとほほえみを向けた。
俺もそのほほえみに軽く頷きを返し、残り一人となった衛兵を見やる。
その男はポリポリと後ろ頭を掻き、倒れた二人の衛兵に目を向けていた。
「・・・・はあ。こいつらホントに使えない愚図どもだな・・・結局俺がやらなくちゃならんのか・・・。」
ぼそぼそ、と独り言のようにつぶやいていた男だったが、突然、俊敏な動きで腰のホルスターに手をかけ、警棒を抜いた。
カシュンッ!
そんな軽やかかつ硬質な音を立てて、警棒が展開される。
男は二度三度と確かめるようにぶんぶんと警棒を振ると、俺たち二人に顔を向けた。
口元にはどう猛な猛禽類を思わせる笑みが浮かべられ、ぴくぴくとこめかみは震えている。
明らかに先ほどの二人とは俺たち、とくに俺に向けられる視線の質が異なる。
男の顔を見ていると、俺は少し引っかかりを覚えた。
「お前・・・どこかで・・・。」
不覚にもそんなつぶやきを溢していた。
男はそのつぶやきを聞くと、彼は憤怒の色を浮かべて叫んだ。
「ふざけるなっ・・・!昨日、徽章を取ったのはお前だろう!!」
「ああ・・・!昨日の!気づかなかった!」
俺は本当に顔を忘れていたのだが、男は俺のそんな適当さが気にくわなかったらしい。
地団駄を踏みながら不平を垂れ流す。
「お前のせいで、俺はこんなへんぴなところで、こんな愚民どもを相手に租税を徴収するクソのような仕事に派遣されちまった。もう、あと少しで都暮らしの順風満帆な生活がまっていたというのにだ!あと少し、あと少しだったのに・・・それなのにお前が徽章を取ったりするから、俺の信用は失墜!すぐに出世の話は取り下げられ、どぶ仕事行きだ!こんなこと許されると思うか!?否!断じて許されるわけがない!お前の命以外にはな!」
ハアハア、と息を乱しながらそこまで言い切った衛兵。
右手に握られた警棒を俺たちに向け、敵意をむき出しにしている。
だが、俺の悪癖にこういうやつはもっとおちょくりたくなる、というものがあり、今もむずむずと欲求が去来していた。
だが、さすが幼なじみ。
ソフィーは俺のそんな心の内を読み切っていたのかコツンと肘で俺のことを小突く。
チェッ、と小さく舌打ちした俺はそれでも一言だけ言ってやりたかったので、先ほど同様に右手を前に突きだし、腰をかがめる。
そして・・・。
「・・・ご託は良い。さっさとやろうぜ?俺のこと、殺すんだろ?やってみろよ?」
と挑発したのだった。
ぷちん
そんな音が聞こえた気がした。
男は俺の挑発に堪忍袋の緒が切れ、すさまじい勢いと明確な殺意を持って俺に警棒を振りかざす。
なるほど・・・確かに、出世頭だっただけに警棒の振りは先ほどの二人とは比べものにならないくらい速く、正確だ。
しかも、、突進付きときている。
実に巧妙だ・・・。
警棒を躱そうと、身をかがめるだけでは彼の突進の餌食になる。
もちろん、警棒は丸腰の俺にはガードなどできるはずもない。
一見どうしようもない強烈かつ巧みな一撃。
だがしかし、それは普通の相手ならば、でありましてや今こいつの相手は俺たち二人、である。
迫り来る警棒。
勝利をかくしんしたのであろうか・・・。
男はニヤリと口角を上げた。
そのときだった。
ガキン!
硬質な金属音があたりに響き渡った。
見ると、振り下ろされようとしていた警棒が横から突き出された傘のによって腹を衝かれ、パリイされている。
俺はその驚くべき現象をなかば確信していたので驚くこともなく次の行動へと移れたが、男は驚くあまり、目を見開くばかりで動けていない。
俺はその隙に男の懐近くまで入り込み両手を極限まで引き絞り・・・。
「ハッ・・・!」
という短い気迫とともに男のみぞおちを強打した。
「ぐふぉっ・・・!」
俺の強烈な突きを喰らい浮き上がった男の体は五メートル近くも吹き飛び、地面へとたたきつけられる。
「まだ、まだおわりじゃな・・・い・・・・・・。」
バタリと突っ伏すようにして倒れた衛兵の男。
最後の捨て台詞を吐きだしたのは敵ながらにあっぱれと思わざるを得ない。
普通の奴ならばあんなの喰らったら失神している。
「ふうー・・・。」
俺は深く息を吐き出すと、ソフィーの方へと拳を向ける。
相手も何をするのか分かっている様子で近づき、「グッジョブ!」と拳を合わせたのだった。
戦闘を終えた俺たち。
少し、泥汚れが目立つ俺に対して、なぜか彼女にはシミ一つも衝いていない。
あれほどの戦闘をこなしているのに、彼女の様子はあまりにも整然としすぎていて、やはりこいつにはかなわないかも、とは思わずにはいられない。
まあ、口には出さないけど、絶対!
俺は頭を軽く振り、思考を切り替えると、目の前には涙目で感謝を告げるおばあさん。
「ありがとよ・・・本当にありがと・・・感謝しています。」
「いえいえ。おけがはないですか?」
「ええ、おかげさまで。」
「そうですか、良かった・・・。」
胸に手を当てて心底安心したような様子を見せるソフィー。
雨上がりの湿気を含んだ、でも暖かな風が彼女の金髪を優しく撫でる。
フワリと広がったその髪はキラキラと輝き、彼女はまるで天使のようだ・・・。
「ありがとう。」
おばあさんは最後に俺にもお礼を言って、家の中へと戻っていった。
その姿を見送り、俺たちは歩き出した・・・。
「まだだあ・・・まだ俺は動けるぞ!こんどこそ、しねー!!!」
そう言って俺のすぐ後ろで倒れていた衛兵が立ち上がり、警棒を振りかざしている。
俺も不意を突かれて動けず、ソフィーも同様だ。
――やられる!
そう思った時だった。
「ぐふっ・・・!」
今にも襲いかかろうとしていた衛兵の頭がなにかにぶん殴られたかのように横にすっ飛ぶ。
俺は身をかばっていた腕をどけ、珍入者の姿を確認した。
「・・・ジーク!」
「やあ・・・!」
さわやかに手を上げながらこちらに近づいてくるジーク。
今のはジークの回し蹴りだったみたいだ。
あいつ、さわやかな顔して手加減とか容赦とかしないからな・・・。
俺は彼の行動と容姿の不一致にため息をつきつつ、近づく。
「おい、ジーク!もうちょっと加減ってのを知らないのか?めちゃくちゃ吹っ飛んでるだろ。」
「おいおい。油断してやられそうになっていた友を助けたのにその言いぐさはないんじゃないのかい?」
「それはそうだけど・・・まあ、とりあえず、助けてくれてありがとよ。」
「いえいえ、どういたしまして。」
恭しくお辞儀をする彼に俺はため息しか出ない。
彼はこういう恩に対する礼なんかを律儀にさせるタイプでここでお礼をしなかったらめちゃくちゃ怒ってめんどくさいことになるのだ。
そういうところもこいつの律儀でまじめなところなのだが、俺にはまじめすぎる気がしてならない。
しかし、ソフィーはそんなこと気にした様子もなくジークににこやかに近づき話しかけている。
「ジーク!あれどうしたのこんなところで?」
「ソフィー。あ、そうだ、忘れてた。大変なことが分かったんだよ!」
ジークが慌てた様子で言う。
「なんだ、大変な事って・・・。まさか・・・。」
「そう、そのまさかだよ・・・「バッドダーティー」はまだ死んでいない・・・。」
「な・・・!」
ソフィーも驚いた様子を見せている。
「バッドダーティー」とは、一週間前につぶしたといったマフィアの集団。
討ち漏らしたつもりはなかったが、そんな予感はしていた・・・。
乗り込んだアジトは薄暗く、何人ものマフィアを拘束したがその中にリーダーとおぼしき人物は含まれていなかった。
仲間の報告によると、俺たちの襲撃後すぐに建物の裏から辻馬車が走り去っていったという目撃情報も寄せられている。
なのでもしや、と思いはしていたのだが、まさか本当にまだ活動していたとは・・・。
「・・・まてよ。ジーク、なんでお前は奴らがまだ死んでいないと分かったんだ?」
「俺を舐めないでくれよ、バルト。この町に俺の情報網で捉えられない奴はいない。本気を出したまでさ。」
そう、こいつは諜報員のリーダー。
諜報班は五人しかいない。
だが、その後人は特に優秀な仲間で、情報集収に特に秀でたモノタチの集団である。
その優秀な班員の筆頭がこいつ。
だから、まあ優秀なのは分かるのだが、それにしても情報が速すぎる気がしてならない。
怪訝な目つきで俺が彼を見ていることに気づいているのだろう。
彼はバツが悪そうに鼻頭を掻くと、観念したように白状した。
「・・はあ。やっぱり、バルトには敵わないな。」
「当たり前だろ。何隠してやがる。あいつらを探し出すのにこれだけ時間が掛からないわけがない。いや、言い方が違うな。ずっと疑問に思っていた。お前達がいながらどうしてあいつらが逃げ出せたのか。」
「やっぱり気づいていたのか・・・。」
「もちろんだ。でも、なにか理由があるんだろ?例えば、誰かを引き釣り出すためとか・・・。」
ジークは目を閉じ、瞑目していたが俺の仮説を聞くと、目を開き応えた。
「バルトの言うとおりだ。俺は「バッドダーティー」の背後にいる奴らを引き釣り出すためにある程度泳がせておく必要があった。あいつらを完全に根絶するには必要な事だったからだ。」
「ああ、そうだな。あいつらは後ろ盾を持っているはずだ。あれほどの資金をどこから入手しているのかずっと疑問だった。で、どこの誰なんだ。どんな組織だ・・・?」
俺の質問にジークはまたもや瞑目する。
俺とソフィーはジークに注目し、あたりは静けさに包まれている。
再び目を開けたジークは、絞り出すようにしてこう応えた。
「通称「ハイエナ」。ダイヤルージュキングダムの傭兵集団だ。」
「・・・・・・!」
ダイヤルージュキングダム――それは俺たちの属する国の隣国。
圧倒的な武力を持ち、今、世界の中心とも呼ばれている国。
その国の傭兵集団「ハイエナ」の名前の通り、彼らは金のためならばどこからでも現れ、食い散らかしてはどこかへ消えてしまう。
そんな恐ろしい傭兵集団がこのへんぴな地域のマフィアと提携しているなんて・・・。
「本当なの・・・?ジーク。」
心細げにそう聞いたソフィー。
それに対してジークは小さく首を振り残念そうな声音で言う。
「ああ・・・おそらく確実だ。今日も他の諜報員から確かな情報を手に入れている、ほぼ間違いない。」
「そうか・・・じゃあ、いつになる、決戦の日は。」
「情報の裏取りにあと二日かかる。だから、三日後が決戦の日だ。」
「そうか・・・。」
こうしてハイエナとの直接対決が相成るのであった・・・。
いかがでしたか?
ハイエナとの対戦。
魔法や特別な技、などはまだ出てきていませんがお楽しみいただけているでしょうか?
序盤は喧嘩みたいな戦闘シーンが続きます。
しばらく辛抱してください。
また、感想くれたら嬉しいです。
では次話もよろしくお願いします。