ノーゲーム・ノーライフ I am a loser 作:飯落ち剣士
具象化しりとりが終わり、仮想空間から帰って来たミハイール、海、ファル、テテフの4人。
即座に海は行動を起こす。まあ、もうあとは細かな調整だけ。余裕余裕、なんなら鼻歌歌えるなと舐め腐っているが。
「……で、結果はどうなったにゃ?うち達も見たかったんだけどにゃー」
ふてくされた顔で、胡座をかいて座っている全翼代理、アズリールがそう問う。
海はにこにこ笑ってさらっと答える。
「ああ、俺が負けた。知識はやるよ」
……嘘は、ついていない。海は死んだ、つまり負けた。
が、本当のことも言っていない。ミハイールも『恒星』に焼き尽くされ死に負けた、つまりは『引き分け』なのだから。
しかし、海はそれをバラさない。アズリールに警戒されるからではない。
直感に近い強引な推測だが、おそらくいずれここ、アヴァント・ヘイムを征服するだろう——『空白』に、警戒されないためだ。
「ってことで、ミハイールさん?」
「はい」
そして海は、仮想空間から帰ってきたから黙りこくっていたミハイールを呼ぶ。ミハイールはそれに短く返す。
「知識の引き出し方……電子書籍の使い方教えるから、エルキアまで俺らを連れていってくれ。ここでやるのは1人に渡すっていう約束が違うからな」
「了解しました、では。アズリールもそれで構いませんか?」
「ミハちゃんのうちへの敬語レアだにゃ……。いいにゃ、あとで奪い取るから覚悟するにゃ?」
そんな小さなやり取りを最後に、ミハイールはエルキアまで『転移』した。
「にゃぁ……にゃはは」
そうして海がいなくなったアヴァント・ヘイムで。アズリールは笑っていた。いや——。
「あの程度で、うちを騙せとでも思ったのかにゃ?
明確な殺意を持って、『嘲笑っていた』と言った方が正しいか。
「次は無いにゃ。全
———総員で、気取られぬように『海』を監視するにゃ」
「「「「了解」」」」
*
転移した先は、エルキア近郊の森。テテフがいたところだ。
「……バレたな、今すぐ会話を聞こえなくしてくれミハイール」
「了解」
転移直後にこちらに来るほど相手も馬鹿ではないはず、よって今は
直後ミハイールは、海と自身とファル、その周辺の空間を『断絶』する。
……かなり力を消費したのか、ドサッとその場に倒れこんだが。
「……えっと、バレたってどういうことです?」
きょろきょろと辺りを見回しながら、ファルがそう聞く。
「アズリールの態度見りゃわかる。あれは気づいてる」
海は悔しそうにそうぼやく。
「まーバレちまったもんは仕方ない、それは今度なんとかするとして。とりあえずはよろしく頼むわミハイール」
「ああ、よろしく頼むぜ。早速で悪いが……。1つ質問だ。
そう、それはミハイールがしりとり終了から思った謎。勝てる勝負を敢えて引き分ける、その理由を彼女は欲していた。それは
「あー、まあ、それは聞くよなぁ」
……まあ、今は関係ないことだと、海はそんな思考を取り消す。
「まあ単純な話、俺は勝てないのよ。そういう精神疾患」
サクッとバラして。
「まあ今はそんなことはどうでもいい」
サクッと流した。
「……その状態で、私をアヴァント・ヘイムから奪って、何する気だ?」
が、そう簡単に流れるわけもなく。ミハイールから問われるその真意。
——精神疾患が嘘の可能性もあるだろうと、空間断絶の代償でちらつく目を細めて。
「別に?ふつーに世界制覇狙ってるだけだけど。今はどうでもいいって言ったろ。
……それより大事な話があるんだ」
「……はぁ。まあいい、聞く」
「えっとだな——」
*
「なあ、1つ聞いていいか?
——それ、成功確率幾つだよ」
海の『話』を聞いた後の第一声。ミハイールはそんな言葉を口にした。
「しらね。まあなんとかなると思うよ?っーことで聞こえるように戻してくれ」
「……分かった。そして分かってるな?
——それ、失敗したら全員死ぬぞ?」
「知ってるよそんなの。ほら早く」
海に急かされ、ミハイールは断絶空間を解除して立ち上がる。そしてそれに伴って、
「テテフ、置いてけぼりにしてごめんな?」
「……ああ」
軽くそうテテフに笑いかける海。微妙な表情のテテフ。
「ミハイール」
その表情を見て、一息、ため息をつく。そして海はミハイールに合図を送る。
ミハイールは了解、と一言、精霊であたりを包む。
「なぁ、テテフ。
——騙せてるとでも思った?」
「……」
その一言と共に、海は尋問を始めた。
「だいたい不自然なのがお前がいた場所だ。この森にずっといる理由があるはずなんだよ。俺が真っ先に考えたのは……木材不足にして、エルキアの政治を低迷させるため。だけど、それはありえない」
……なぜなら、
「で、お前と数日過ごしてほかに色々考えて、おれの出した結論はこうだ。
——エルヴン・ガルドは一枚岩じゃなく、クラミー・ツェルを傀儡にした手柄を横取りするつもりだった、ってことだろ?
この森は単なる潜伏場所。目立ったのはお前が単にポカしただけだったとはな」
「……」
「当たりか」
無言を貫く、テテフ。しかしそれは、
「で、だ。そしたら当然、今もお前は仲間と連絡を取ってる筈だ。横取り、なんてのはお前の知恵じゃないだろ?」
「……私にどうしろと?」
ひたすらに、今までの行動を並べられたテテフが、苛立ち混じりにそう呟く。
海は笑う。これを利用しない手はない。なにせ、これは世界最大の大国の綻び。
「お前を使って、エルヴン・ガルドを
行こうか、『エルヴン・ガルド』」
次回更新は1ヶ月後になるかと。