ノーゲーム・ノーライフ I am a loser   作:飯落ち剣士

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お待たせしました。


ダウングレードエンド

具象化しりとりが終わり、仮想空間から帰って来たミハイール、海、ファル、テテフの4人。

即座に海は行動を起こす。まあ、もうあとは細かな調整だけ。余裕余裕、なんなら鼻歌歌えるなと舐め腐っているが。

 

「……で、結果はどうなったにゃ?うち達も見たかったんだけどにゃー」

 

ふてくされた顔で、胡座をかいて座っている全翼代理、アズリールがそう問う。

海はにこにこ笑ってさらっと答える。

 

「ああ、俺が負けた。知識はやるよ」

 

……嘘は、ついていない。海は死んだ、つまり負けた。

が、本当のことも言っていない。ミハイールも『恒星』に焼き尽くされ死に負けた、つまりは『引き分け』なのだから。

しかし、海はそれをバラさない。アズリールに警戒されるからではない。

直感に近い強引な推測だが、おそらくいずれここ、アヴァント・ヘイムを征服するだろう——『空白』に、警戒されないためだ。

 

「ってことで、ミハイールさん?」

 

「はい」

 

そして海は、仮想空間から帰ってきたから黙りこくっていたミハイールを呼ぶ。ミハイールはそれに短く返す。

 

「知識の引き出し方……電子書籍の使い方教えるから、エルキアまで俺らを連れていってくれ。ここでやるのは1人に渡すっていう約束が違うからな」

 

「了解しました、では。アズリールもそれで構いませんか?」

 

「ミハちゃんのうちへの敬語レアだにゃ……。いいにゃ、あとで奪い取るから覚悟するにゃ?」

 

そんな小さなやり取りを最後に、ミハイールはエルキアまで『転移』した。

 

「にゃぁ……にゃはは」

 

そうして海がいなくなったアヴァント・ヘイムで。アズリールは笑っていた。いや——。

 

「あの程度で、うちを騙せとでも思ったのかにゃ?最底辺(人類種)。全く片腹痛いにゃあ。にゃはははは……」

 

明確な殺意を持って、『嘲笑っていた』と言った方が正しいか。

 

「次は無いにゃ。全天翼種(フリューゲル)

———総員で、気取られぬように『海』を監視するにゃ」

 

「「「「了解」」」」

 

 

転移した先は、エルキア近郊の森。テテフがいたところだ。

 

「……バレたな、今すぐ会話を聞こえなくしてくれミハイール」

 

「了解」

 

転移直後にこちらに来るほど相手も馬鹿ではないはず、よって今は天翼種(フリューゲル)に聞かれていない。素早く海はミハイールに命令する。

直後ミハイールは、海と自身とファル、その周辺の空間を『断絶』する。

……かなり力を消費したのか、ドサッとその場に倒れこんだが。

 

「……えっと、バレたってどういうことです?」

 

きょろきょろと辺りを見回しながら、ファルがそう聞く。

 

「アズリールの態度見りゃわかる。あれは気づいてる」

 

海は悔しそうにそうぼやく。

 

「まーバレちまったもんは仕方ない、それは今度なんとかするとして。とりあえずはよろしく頼むわミハイール」

 

「ああ、よろしく頼むぜ。早速で悪いが……。1つ質問だ。

()()()()()()()()?」

 

そう、それはミハイールがしりとり終了から思った謎。勝てる勝負を敢えて引き分ける、その理由を彼女は欲していた。それは天翼種(フリューゲル)としての知的好奇心か、それとも——。

 

「あー、まあ、それは聞くよなぁ」

 

……まあ、今は関係ないことだと、海はそんな思考を取り消す。

 

「まあ単純な話、俺は勝てないのよ。そういう精神疾患」

 

サクッとバラして。

 

「まあ今はそんなことはどうでもいい」

 

サクッと流した。

 

「……その状態で、私をアヴァント・ヘイムから奪って、何する気だ?」

 

が、そう簡単に流れるわけもなく。ミハイールから問われるその真意。

——精神疾患が嘘の可能性もあるだろうと、空間断絶の代償でちらつく目を細めて。

 

「別に?ふつーに世界制覇狙ってるだけだけど。今はどうでもいいって言ったろ。

……それより大事な話があるんだ」

 

「……はぁ。まあいい、聞く」

 

()()()()()()()。その言葉が真実かどうかは——ここで聞いても意味がない。無益な話をこれ以上続ける必要もないと、ミハイールは自身の問いを捨てる。

 

「えっとだな——」

 

 

「なあ、1つ聞いていいか?

——それ、成功確率幾つだよ」

 

海の『話』を聞いた後の第一声。ミハイールはそんな言葉を口にした。

 

「しらね。まあなんとかなると思うよ?っーことで聞こえるように戻してくれ」

 

「……分かった。そして分かってるな?

——それ、失敗したら全員死ぬぞ?」

 

「知ってるよそんなの。ほら早く」

 

海に急かされ、ミハイールは断絶空間を解除して立ち上がる。そしてそれに伴って、()()()()()()()()声やその他諸々聞こえるようになる。

 

「テテフ、置いてけぼりにしてごめんな?」

 

「……ああ」

 

軽くそうテテフに笑いかける海。微妙な表情のテテフ。

 

「ミハイール」

 

その表情を見て、一息、ため息をつく。そして海はミハイールに合図を送る。

ミハイールは了解、と一言、精霊であたりを包む。

 

「なぁ、テテフ。

——騙せてるとでも思った?」

 

「……」

 

その一言と共に、海は尋問を始めた。

 

「だいたい不自然なのがお前がいた場所だ。この森にずっといる理由があるはずなんだよ。俺が真っ先に考えたのは……木材不足にして、エルキアの政治を低迷させるため。だけど、それはありえない」

 

……なぜなら、森精種(エルフ)、エルヴン・ガルドは、クラミー・ツェルを傀儡として、エルキアを手中に収める予定だった。低迷させることに意味はない。

 

「で、お前と数日過ごしてほかに色々考えて、おれの出した結論はこうだ。

——エルヴン・ガルドは一枚岩じゃなく、クラミー・ツェルを傀儡にした手柄を横取りするつもりだった、ってことだろ?

この森は単なる潜伏場所。目立ったのはお前が単にポカしただけだったとはな」

 

「……」

 

「当たりか」

 

無言を貫く、テテフ。しかしそれは、『____』()の前では悪手でしかない。

 

「で、だ。そしたら当然、今もお前は仲間と連絡を取ってる筈だ。横取り、なんてのはお前の知恵じゃないだろ?」

 

「……私にどうしろと?」

 

ひたすらに、今までの行動を並べられたテテフが、苛立ち混じりにそう呟く。

海は笑う。これを利用しない手はない。なにせ、これは世界最大の大国の綻び。

 

「お前を使って、エルヴン・ガルドを()()()()()()()()

行こうか、『エルヴン・ガルド』」




次回更新は1ヶ月後になるかと。
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