ノーゲーム・ノーライフ I am a loser   作:飯落ち剣士

16 / 20
第四章 敗北ゲーマーは布石を使い捨てたいようですが……?
クイックスタート


「……はぁ」

 

いつも通り、エルキア経済省にファルの溜息が零れる。

海とテテフの2人は、『エルヴン・ガンド』へ向かった。今頃策略を巡らせ暗躍していることだろう。それはまあいい、いつものことだ。

 

「……問題は僕ら2人、留守番組の方で」

 

ミハイール、ファルの2人はエルキアに残っている。要するに留守番なのだが。

ファルは『留守番』に考えを巡らせ、もう一度溜息。仕事机を離れる。

 

「じゃあ、朝言った通りよろしくお願いします」

 

「了解ですー」

 

そんな言葉を交わして、午前中だが経済省を後にする。そのまま近くの裏路地へ向かいながら、ファルは考える。

海から、留守番中の仕事を任された。それは決して簡単なものではない。なぜならそれは……。ファルは三度目の溜息をつく。溢れそうになる愚痴を抑え裏路地に入ると、そこにある木箱にミハイールが座っていた。

 

「手筈通りですか?」

 

「ああ、しっかし狂った作戦だよなぁ?」

 

「ほんとですよ……」

 

……エルキア国内、その全域に対『空白』用のゲームの仕込みをする。そんな過労死ものの難題を留守番として任されたファルは、足元に荷物を降ろす。

 

「今思えば……」

 

ボソッと、ファルがつぶやく。

 

「ん?」

 

「ああいや、なんでもないです、独り言」

 

海が仕事をすっぽかして遊びまくっていた、その遊び内容はこれだったんだろうなと、ファルはミハイールに応えながらそんなことを思う。なにせ、『 』(空白)が東部連合を手にしたいま、急がないと国政が安定してしまう。その前にしか仕込めないものもあったのだろう。

……さあ、溜息は一日三回まで。もういい。

ファルは口を笑顔の形に歪める。

 

まあ、楽しいからいいんですけど。

 

「お前()大概狂ってるな……」

 

嗤ったファルに、そんな言葉を漏らしたミハイール。

 

「まあ、狂ってないとゲームって面白くありませんから」

 

当然のことと、言葉を返したファル。

 

「それもそうだ」

 

2人は笑う。これからの暗躍へ向けて。

 

「「さあ、ゲームを始めよう」」

 

 

「例の男を連れてきました」

 

「でかしたテテフ、お前もたまには役に立つなぁ?」

 

所変わって、エルヴン・ガルド、ルーシア大陸領のとある屋敷にて。

……海は、テテフに捕縛されていた。

 

「できれば縄解いてくれると嬉しいなー、盟約の鎖があったら逆らえないでしょどーせ」

 

呑気にそんなことをのたまう海は、テテフの拘束魔法がかかった縄で両手を縛られて、テテフの主人の前に立たされていた。

 

「お前、自分の立場わかってんのかぁ?テテフに勝って、ちっと調子に乗ってるみたいだが。そいつに勝ったのはそいつが弱いのと、あとはたまたまだ。

……その証拠に、2回目のテテフとのゲームに負けて、拘束されたんだろ?」

 

「……」

 

海は、何も応えない。目を伏せて、ただヘラヘラと笑っている。

 

「まあいい。とりあえずゲームをしてもらおうか、経済大臣補佐様?」

 

テテフから、海の権利をテテフの主人に移すために。

 

「ああ、ただ十の盟約に従って、ゲーム内容はこちらが決める」

 

海は興味なさそうにそう答える。

 

「待て」

 

「ん?」

 

「……いや、なんでもない」

 

一度は反論しようとしたが、その気になればテテフにゲーム内容を変更させられる。それなら今後海の牙を折るために敢えてゲームを決めさせてやろうと、男は考えた。

……のだろうと、『____』()は考えた。

 

「さて、じゃあゲームを提示する。

……星取りポーカー、だ」

 

そして拘束を解除された海は、ヘラヘラとした笑みを消し、ゲームを提示する。

 

「ゲーム内容はこうだ。

・トランプは通常の52枚にジョーカー10枚を加えた合計62枚。

・通常のポーカーと同じく、5枚引いて役を揃える。一度まで好きな枚数捨てて同数を引ける。

・勝った側はその手を作った5枚を保持、次の戦いでそのトランプを使用してもよい、ただしおなじカードを二度使用することはできない。

・3回どちらかが勝った時点でゲームを終了、トランプを最後に一番多く持っていた者が勝利となる

——何か質問は?」

 

男は、黙って考える。

……どう考えても、魔法で持ち札を変更できる此方の必勝ゲーム。ジョーカー5枚を毎回イカサマして持ってくれば、こちらの勝利は確定。そして海が狙っているのもおそらくそれ。

……受けてよし。テテフの主人である男はそう判断する。

 

「いいや、ない」

 

「そうか。じゃあディーラーは俺が——」

 

「いいや、私がやる」

 

トランプの山を持ってディールを始めようとした海を、テテフが遮る。

……海のイカサマを危惧したのだろう。森精種(エルフ)である自分にそんなものは通用しないのだが、まあわざわざ断る理由もない。テテフに大人しくディーラーをやらせようと、テテフの主人は海に促す。

一悶着あって、渋々海はテテフにトランプを渡した。

 

「俺が賭けるのはもちろん全権、で、お前は?」

 

海はテテフの持つトランプを見つめていた目を男にずらして、自身をベット。

言外に、お前も何か賭けるよな?と挑発しつつ。

 

「……私らテテフの全権を賭けよう」

 

そして男は、やすやすとノッた。

そういうとこがつまんねぇんだよなぁプライド高いやつって、と、心の中で海に呆れられつつ。

 

「じゃあ、これよりゲームを始める。準備はいいか?」

 

「ああ、早くしろ」

 

そして、結果などわかりきった、つまらないゲームが始まる。

 

「「「『盟約に誓って(アッシェンテ)』」」」




次回更新は11月を予定してます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。