ノーゲーム・ノーライフ I am a loser 作:飯落ち剣士
クイックスタート
「……はぁ」
いつも通り、エルキア経済省にファルの溜息が零れる。
海とテテフの2人は、『エルヴン・ガンド』へ向かった。今頃策略を巡らせ暗躍していることだろう。それはまあいい、いつものことだ。
「……問題は僕ら2人、留守番組の方で」
ミハイール、ファルの2人はエルキアに残っている。要するに留守番なのだが。
ファルは『留守番』に考えを巡らせ、もう一度溜息。仕事机を離れる。
「じゃあ、朝言った通りよろしくお願いします」
「了解ですー」
そんな言葉を交わして、午前中だが経済省を後にする。そのまま近くの裏路地へ向かいながら、ファルは考える。
海から、留守番中の仕事を任された。それは決して簡単なものではない。なぜならそれは……。ファルは三度目の溜息をつく。溢れそうになる愚痴を抑え裏路地に入ると、そこにある木箱にミハイールが座っていた。
「手筈通りですか?」
「ああ、しっかし狂った作戦だよなぁ?」
「ほんとですよ……」
……エルキア国内、その全域に対『空白』用のゲームの仕込みをする。そんな過労死ものの難題を留守番として任されたファルは、足元に荷物を降ろす。
「今思えば……」
ボソッと、ファルがつぶやく。
「ん?」
「ああいや、なんでもないです、独り言」
海が仕事をすっぽかして遊びまくっていた、その遊び内容はこれだったんだろうなと、ファルはミハイールに応えながらそんなことを思う。なにせ、
……さあ、溜息は一日三回まで。もういい。
ファルは口を笑顔の形に歪める。
まあ、楽しいからいいんですけど。
「お前
嗤ったファルに、そんな言葉を漏らしたミハイール。
「まあ、狂ってないとゲームって面白くありませんから」
当然のことと、言葉を返したファル。
「それもそうだ」
2人は笑う。これからの暗躍へ向けて。
「「さあ、ゲームを始めよう」」
*
「例の男を連れてきました」
「でかしたテテフ、お前もたまには役に立つなぁ?」
所変わって、エルヴン・ガルド、ルーシア大陸領のとある屋敷にて。
……海は、テテフに捕縛されていた。
「できれば縄解いてくれると嬉しいなー、盟約の鎖があったら逆らえないでしょどーせ」
呑気にそんなことをのたまう海は、テテフの拘束魔法がかかった縄で両手を縛られて、テテフの主人の前に立たされていた。
「お前、自分の立場わかってんのかぁ?テテフに勝って、ちっと調子に乗ってるみたいだが。そいつに勝ったのはそいつが弱いのと、あとはたまたまだ。
……その証拠に、2回目のテテフとのゲームに負けて、拘束されたんだろ?」
「……」
海は、何も応えない。目を伏せて、ただヘラヘラと笑っている。
「まあいい。とりあえずゲームをしてもらおうか、経済大臣補佐様?」
テテフから、海の権利をテテフの主人に移すために。
「ああ、ただ十の盟約に従って、ゲーム内容はこちらが決める」
海は興味なさそうにそう答える。
「待て」
「ん?」
「……いや、なんでもない」
一度は反論しようとしたが、その気になればテテフにゲーム内容を変更させられる。それなら今後海の牙を折るために敢えてゲームを決めさせてやろうと、男は考えた。
……のだろうと、
「さて、じゃあゲームを提示する。
……星取りポーカー、だ」
そして拘束を解除された海は、ヘラヘラとした笑みを消し、ゲームを提示する。
「ゲーム内容はこうだ。
・トランプは通常の52枚にジョーカー10枚を加えた合計62枚。
・通常のポーカーと同じく、5枚引いて役を揃える。一度まで好きな枚数捨てて同数を引ける。
・勝った側はその手を作った5枚を保持、次の戦いでそのトランプを使用してもよい、ただしおなじカードを二度使用することはできない。
・3回どちらかが勝った時点でゲームを終了、トランプを最後に一番多く持っていた者が勝利となる
——何か質問は?」
男は、黙って考える。
……どう考えても、魔法で持ち札を変更できる此方の必勝ゲーム。ジョーカー5枚を毎回イカサマして持ってくれば、こちらの勝利は確定。そして海が狙っているのもおそらくそれ。
……受けてよし。テテフの主人である男はそう判断する。
「いいや、ない」
「そうか。じゃあディーラーは俺が——」
「いいや、私がやる」
トランプの山を持ってディールを始めようとした海を、テテフが遮る。
……海のイカサマを危惧したのだろう。
一悶着あって、渋々海はテテフにトランプを渡した。
「俺が賭けるのはもちろん全権、で、お前は?」
海はテテフの持つトランプを見つめていた目を男にずらして、自身をベット。
言外に、お前も何か賭けるよな?と挑発しつつ。
「……私らテテフの全権を賭けよう」
そして男は、やすやすとノッた。
そういうとこがつまんねぇんだよなぁプライド高いやつって、と、心の中で海に呆れられつつ。
「じゃあ、これよりゲームを始める。準備はいいか?」
「ああ、早くしろ」
そして、結果などわかりきった、つまらないゲームが始まる。
「「「『
次回更新は11月を予定してます