ノーゲーム・ノーライフ I am a loser 作:飯落ち剣士
「……では、カードを配るぞ」
パラパラと、割と器用な手付きでトランプをシャッフルしていくテテフ。
「……」
海はそれを見もせずに、手を組んだり戻したり、手遊びをして待つ。
テテフの主人は、貼り付けられたような笑顔でテテフのトランプを見つめている。
……彼は、『
だが、まあ。
……魔法の優劣など、この戦いにはもうなーんの意味もない。あとはお前が気付くかどうか。
テテフが魔法で飛ばしてきた手札、4のワンペアに
「3枚捨てる」
海は、揃わなかった3枚を捨て、引き直す。ごくごく自然なこと、手つきもいかさましているようには見えない。誰もなんの違和感も抱かないだろう。
……いや、その自然さが、逆に不自然か。
引き直した三枚は、揃わなかった。ワンペアのまま、海は勝負する。
「ワンペア」
「ハッ。ファイブオブアカインド」
そして、テテフの主人は当然、ジョーカーを5枚揃える。
……ああ、当然だ。『必ずイカサマがバレない状況』で、イカサマしない奴などいるか?
「こちらの1勝だな」
「……そうだな」
ファイブカードを左手にキープした男のドヤ顔に、若干の苛つきを顔に張り付ける。
そのまま2戦目。海は揃わなかった手札を全て捨て、対戦相手に話しかける。
「なあ、一つ、聞いていいか?
……おまえ、なんでそこに座ってられたの?」
「は?」
ロイヤルストレートフラッシュを揃えたテテフの主人は、その言葉に反応して顔を上げる。
「いや、ごめんごめん。
……さっさとオープンしようか」
海が手に持ったカードを振りながら、そう急かす。
不信感を募らせ、男は、透視魔法を使用した。
——ジョーカーのファイブカードが、そこにはあった。
「……私は前回のカードを使おう」
しかし男は慌てることなく、前回のカードをオープン。開かれた相手のジョーカーに対して引き分ける。
……これで、双方の持ち札は0となる。
「テテフ、裏切ったな?」
3枚目を配られながら、男は呟いた。
配られた……いや、
テテフは答えない、淡々とカードを配り終える。
男は何も捨てず、海は3枚を変えた。
オープン。海はフラッシュ、男はロイヤルストレートフラッシュ。
「私の二勝目だ」
男は次の手札を催促する。海は不満そうな目でテテフを見る。
「何故
男はドヤ顔で、説明する。
「十の盟約で、俺の術式には干渉できないから、だ」
先に発動してあった、男の『ロイヤルストレートフラッシュを呼び寄せる』術式。それ自体に干渉するのは、十の盟約に違反する。
つまり、それは簡単な四文字で表せる。
即ち——先手必勝。
「さて、3戦目行こうか」
目を伏せた海に、男はその言葉を叩きつけた。
テテフは、カードを配る。海は目を伏せたまま、ノーチェンジ。
男もノーチェンジ。ロイヤルストレートフラッシュ。
海は自身の手を晒す前に、目を目の前の男に向けた。
その目は、暗く、濁って、しかし確かにある確信を持って、男を見据えていた。
海は、一言、呟く。このつまらないゲームを終わらせる一言を。
「テテフ、
「了解だ」
合図を受けたテテフは、魔法で窓を開け、自分の持っているカードを全て、開いた先に魔法で飛ばした。
「オープン。俺は役なし」
「……ロイヤルストレートフラッシュ」
窓に飛ばしたカードの意味がわからないまま、男は勝ち、海は3敗する。
「さて、俺の勝ち、だな」
……そして、
「は?
……何言ってんの?」
海は立ち上がり、窓の外を見る。
「アイツの勝ちだろ?」
そこには、通りすがりの、不思議な顔でカードを持つ
……は?
「ゲーム終了後にカードを一番多く持っていた者の勝ち。あの人の勝ちだろ」
誰だか知らないけど、そう付け足して、海はテテフにアイコンタクト。テテフはすぐに反応。窓に乗り出して、カードを持つ男に呼びかける。
「そこの方、そのカードは私たちの物だ。悪いが……。
そのカードに関する全ての権利を放棄しては頂けないか?」
もちろん礼はしよう、と、一枚のコインを取り出して。
カードを持つ男はこう考えることだろう。このトランプに価値はない、持っていても仕方がない。
「ああ、放棄するよ」
大人しく、カードを返すべきだと。
そしてテテフは、窓の外から飛んできたトランプを受け取り、コインを投げ返した。
男はようやく理解する。ゲーム内の全てはデコイ、ミスリード。
こいつらの目的は、ハナから。
「テテフの枷を外すこと、だったのか」
「んー?違う」
しかし即座に、海は否定する。
「別の目論見ももちろんあるさ。バラさないけど」
じゃあな、そう言って。テテフと海は去っていく。
男はやるせない溜息と
その3日後のことだ。
男は、とある
四重術者のテテフがいれば、もう少しマシな結果になったであろうゲームに負けて。
次回更新は大晦日っす