ノーゲーム・ノーライフ I am a loser   作:飯落ち剣士

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今回は割と軽めです。


end(先行3手)

エルキアの一銀行にて。金髪の青年、ファルは今日もぼやく、相手はもちろん海。

 

「大量の火薬とバッグ2つを経費で落とそうとするなよって、突っ込んじゃダメですよね……はぁ」

 

せめてバッグくらいは自費で払えよ。

森林へと持っていった荷物を経費で落とそうとした海に怒りつつ、彼は今日も仕事に励む。

 

 

人類最後の都市エルキア、その西部の領土に位置する森林。

なかなかの広さを誇り、エルキアの発展に貢献したことを感じられるその場所へ向かった敗北の天才、『____』海。

ここに大きなバッグ2つを背負って持った海が、何をしているかというと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああくっそ!また倒れた!」

 

水中棒倒しをしていた。

 

……どんな策略を立てているのかという期待を煽っておいて申し訳ないが、棒倒しをしているのだから仕方ない。

浅い湖に何本か木の棒をそっと立て、水をそっと波立たせて倒さないようにするというクソみたいな遊びだ。

「……飽きた」

そしてそのクソみたいな遊びは、当然続かない。棒は何本立たせたまま、海は湖から上がる。

そして海は、湖の上の崖を見上げ、

「今度はあんたも遊ぼー?」

そこに立っていた耳長の女に声をかけた。

「……そうだな」

冷静に応答する女----エルフだが、内心はいつから気付かれていたと驚いている。眉がピクリと動いた。そして、それに気付かない『____』ではない。

「そんな驚かないでよ、今からそっち行くからー」

そう言って彼は、持っていた2つのバッグの大きい方を湖のほとりに置いたまま崖を登っていった。

「いでっ」

……途中こけたが。

 

 

「って事で、僕に勝負を挑んで」

 

崖をなんとか登った海。最初は引きこもりらしからぬ動きでサクサク登っていたが、途中スタミナが切れヘロヘロになりながら登っていた。

海はローブは水遊びをしていたからか右袖が湿っていて、いたるところが裂けているみすぼらしい格好だった。エルフはそんな男を見下しながら言う。

 

「……なぜ私が挑まないといけない?」

 

十の盟約 【五つ】ゲーム内容は、挑まれた方が決定権を有する。挑んだ方が圧倒的不利なこの世界で、わざわざ自分から仕掛ける奴はいない。エルフのその問いかけは当然のものだった。

 

「ゲームは石合戦ね」

 

だがその問いかけをまるで聞いていなかったかのように、海は手に持っていたバックについている紐を弄りながら話を続けた。

 

「魔法で投げるのは禁止、石を相手に1発当てたら勝ちのシンプルルールって感じね」

 

そんなことをドヤ顔で言う目の前の馬鹿っぽい男に、エルフは笑いを堪えた。

 

(……まさか魔法で投げるのを封じただけで、勝てると思ってるのか?)

 

このルールでは相手の石は止め放題、エルフの負けなどない。そして海のバッグの中に大量の石が詰まっていて、左袖に火薬が仕込んであることも透視魔法で知っている。

だから彼女は----その勝負に乗る。

 

「いいだろう」

 

「わかった。あ!このままだと俺が有利過ぎるからハンデあげるよ。俺が遊んでた棒、全部倒しても要求一つ出来る事にしてあげる」

 

どこまで頭が能天気なのか。そう思い、エルフは当然肯定。そして言う。

 

「私の要求はお前がこの森に二度と来ないこと。盟約に誓って(アッシェンテ)

 

「僕の要求はこの森にくる権利。盟約に誓って(アッシェンテ)

 

海の薄笑いに、エルフが気づかないまま------。

お互い、向かいあって立つ。

 

「将棋って、先行3手目と後攻4手目が有利なんだ。それこそ3手目で勝敗が決まるくらい」

 

突然、そんなことを言い出す海。

 

「……それが?」

 

「3手で、あんたを詰めてあげるよ」

 

エルフは鼻で笑う。

 

「やってみな、そのバッグの石で」

 

「えっ嘘!なんで中身知ってんの?」

 

そんなことを言いながら、ゲームを始める海。

 

「この石が地面着いたらゲームスタートね」

 

そう言って海が石を思いっきり高く投げる。石が地面についた瞬間、

 

 

「2手目」

 

 

海がつぶやく。

さっきまでの馬鹿っぽい男はそこにおらず、意味もわからずエルフは冷や汗をかいた。

 

「よっと」

 

左袖の火薬の導火線にマッチで火をつけ投げつけ、バッグを開けて中の石を思いっきりぶちまける。エルフの方に数十の石と火薬が向かうが、

 

「……これだけか?」

 

土壁で石と爆発を防ぎきったエルフ。海は知らないことだが、彼女は四重術師(クアッド・キャスター)。充分過ぎるほど一流の術師である。

 

「3手目はもう終わったんだけど」

 

そう言って、右袖の千切れた(・・・・・・・)ローブを脱ぎ捨てた海。石を手に持ってエルフの方向にゆっくり歩き、エルフが投げた石に当たった。

エルフはその言葉の意味を理解出来ない。ただ勝ったということを理解する。

 

「3手で詰ませる?ふっ、夢のまた夢だったな」

 

勝ち誇るエルフに、しかし海は言う。

 

「いや?」

 

チェックメイト。そう言った海の声は、エルフにも海自身にも聞こえなかった。

突然湖から聞こえた爆音によって、その声がかき消されたため。

 

「……は?」

 

突然の事に困惑気味のエルフ。そして全てを知っている海は馬鹿の演技を完全に辞め、言う。

 

「チェックメイトだ」

 

「意味がわからないのだが」

 

なお困惑したエルフに、海は要求する。

 

「棒全部倒した。俺の要求一個聞いてもらう」

 

つまり、最初からゲームに勝つつもりはなく、棒を倒す事による要求狙い。

湿っていた袖は油に浸していて、それを火薬に火をつけるついでに火をつけ、裂け目で破る。バッグの紐飾りで巻いて投げやすくして下にあった火薬入りのバッグに投げ、引火。

これが事の全貌だった。

 

「って事でー」

 

俺の所有物になれ♪頭の悪いエルフさん♪

 

……ブチ切れたエルフと煽り続ける男が帰ってきて、ファルがため息をついたのは言うまでもない。

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