ノーゲーム・ノーライフ I am a loser 作:飯落ち剣士
「……もうちょい僕を考慮した飛行はできなかったんですか」
髪はボサボサ、服は乱れに乱れ、靴が片方脱げかけという格好で地上への帰還を果たしたファル。
「……すまん、正直忘れていた」
「おい」
本当に大丈夫かこの
「材料はこれらで合っているか?」
「あ、合ってるみたいです」
持参した資料を見ながら、倉庫内にある金属や燃料などを確認するファルとテテフ。
「では、始めるか」
「……本当に仕事やってなかったんですね。知ってたけど」
それらの金属を前に人類には見えない何かを動かし始めたテテフに目を向け、ファルがため息をつき、ここに来る前に海に言われたことを思い出した。
*
「じゃ、今から東部連合に向かう訳だが」
ローブをテテフに投げつけながら、海が言う。
「はい」
ファルがローブに袖を通しながら言う。
「俺の
「仕込み……ですか?どこにあるんですか」
そうフードで金髪を隠して問うファルに、海はとびっきりの笑みで答える。
「
……。
え?
「ファル、俺に仕事任した日あったろ?」
「ありましたね、ほとんど仕事片付いてて凄いなと思いました」
「あの日さ、俺。
……わっつ?
「え?えっ⁉︎じゃああの仕事は誰が」
「経済省の職員一同、全力で働かした。全員の空いてる時間に俺の仕事やらせといたの」
「え、いや嘘だ。そんな人数に言うこと聞かせるなんてカリスママイナスの海さんに出来る訳ないじゃないですか」
「……酷くね?事実だとしても」
素直に驚きを口にしたらしいファルだが、その言葉は海への口撃となった。
いやまあ話を戻すとな?
と、海が涙目で無理矢理話を軌道修正する。
「みんなのやりたいことをやらせればいいの。あの人数ならそれだけで大半は終わるし、残ったのは俺がやればいい」
その暴論にファルは正論で反論する。
「それじゃあみんなが好きな仕事しかしないじゃないですか」
その言葉にニヤッと、反吐がでる笑みを返した海。
「そいつらの好きなことは、こっちで決めちゃえばいいのさ」
「……」
ファルは思う。この男は気付いているのだろうかと。
そのレベルのことができるのはもはや
……
「で、その時間俺が何してたかというと」
しかし深刻な顔をしだしたファルをガン無視、シリアスなぞ知るかと海は続ける。
「東部連合のある場所に、『材料』を集めてた」
【一つ】この世界におけるあらゆる殺傷、戦争、略奪を禁ずる
そこに『所有物の移動』は含まれない。それを利用し、一か所に必要な物品を集め、
「材料……ですか?」
「ああ、アヴァント・ヘイムへ行くための材料をな。これ設計図」
そう言って海はファルに紙束を渡し、テテフに飛行魔法を使うように指示した.。
*
「……上手くやれてるかなぁ、ファルとテテフ」
海はコンテナに身を潜めながら呟く。それだけで数体の
かれこれ30分。触れようとする手は自分の致命傷になる部位に触れさせようとし《十の盟約》で止め、裏路地やら建物群やらでパルクールしつつ、マインド・リーディングを駆使して相手を誘導、
「……30分ありゃ出来てるだろ」
よって海はざっくりとした結論を出し、冷や汗をかきつつも次の手を切ることにした。
「包囲網を構築、焦らずゆっくり前進」
対する
そして、一体の
パンッという軽い爆発音とともに、コンテナから上空へと何かが打ち上げられた。
そしてその打ち上げられた物体は、赤い煙を出しながら上昇した。
した、だけ。海は逃げようとして至って普通に、当然に
「やっと……捕まえたぞ」
「そだね、あと2人頑張ってね」
そしてその海の言葉に、
海はその場に突っ立って、上空を見つめる。
「……まだかなー」
*
「よし、できたぞ」
「ギリギリでしたね、合図の煙もう出てますよ」
「分かっている、あとはここに奴を連れてくるだけだ、行ってくる」
「え、僕その間に捕まったらどうするんですか」
「なんとかしろ、お前を乗せていてはスピードが出ない。間に合うか微妙だ」
「分かりましたよ……先に乗っときます」
*
「よし、来た」
海が見つめる先には、物理法則を鼻で笑いこちらに飛んでくるテテフ。
「行くぞ」
着陸と同時、乱雑に海を抱えて飛び立とうとするテテフに、
「……なるべく安全運転で頼む」
海は聞かないと分かっているが一応配慮をお願いした。
「善処する」
その言葉を地面に置き去りに、テテフは高速飛翔する。
——ほら、やっぱりな?
その言葉を口に出すことは、残念ながら速度によってできなかった。
そしてわずか数分で、テテフとファルが潜んでいた建物へ到着する。
その外にはすでに数体の
「ファル!
——
「了解です!」
それに応えたコックピット内のファルが、書類を見ながらかなりシンプルな操作盤を苦戦しつつも操作し始める。
その操作が終わって、テテフと海が乗り込んだその時丁度、
海はニヤリと下衆の象徴のような笑みを浮かべて、言った。
「それでは皆さん、ご唱和ください」
この乗物が何のためのものか知らない2人が言う。
「了解です?」
「?承知した」
操作盤のボタンを押して、海は万感の想いを込めて『言ってみたいセリフ』第5位を言った。
「
「「
そしてその唱和と同時、人類の英知の結晶、多段式化学
「行くぞ、『アヴァント・ヘイム』!舌噛むなよ?」
「この乗物大丈夫ですかほんとにぃ⁉︎さっきから衝撃すごい来てますけど!」
「ああ、大丈夫だ!……最悪壊れかけてもテテフがいる!」
「不安しかねぇーーー⁉︎」
そして三人を乗せたロケットは、音の速さで空へと飛び去っていった。
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