ノーゲーム・ノーライフ I am a loser   作:飯落ち剣士

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Insufficient funds

ルーシア大陸上空を高速で飛翔するロケットに乗る海は、死にかけていた。

 

「あ、だめだ。これ……壊れる」

 

システムオールレッド。テテフの四重術式(クアッド・キャスト)による修復と大気圧縮魔法ももう限界。海御一行は割とマジで死にかけていた。

 

「ふふ。もうだめだ……カイよ。死のう」

 

悟りの境地に至った目と濁りきった魂石(ジェム)で、テテフはゆっくりと術式を手放す。

 

「こんなとこで死ねるかボケェ!しょうがねぇ、目的地までは後50キロくらいだろ、俺らにだけ防護術式展開しろ!エンジン暴発させる!」

 

システム修復を諦めることを即断、海は次の手を考えた。が。

 

「暴発ってことは……僕たちを上に吹き飛ばすって事ですかぁ⁉︎そんなのうまくいくわけないでしょお⁉︎」

 

超暴論だった。

 

「その通り、だよっ……!」

 

冷や汗をかきつつもコントロールパネルを弄る海。必死で防護術式を展開するテテフ。

 

「——行くぞ!機体爆破まで多分大体5秒」

 

「ちょっとは制御できてる感出してください!不安しかない言い方しないでくださいよ!」

 

「俺も不安しかねぇよ!」

 

なにせ人類には精霊が見えない。テテフの防護術式がどの程度なのか全くわからないのだ。

———そう、人類なんて、そんなもんなのだ。

精霊も未来も見えない。なんなら過去も現在も見えてるか微妙。実験は失敗する、ロケットは暴発する。必ずと言っていいほど間違える。

ならば。誰より間違えてきた男は、海は。

正しく人類であり、愛すべき——。

 

「なんとかなるさ!多分!」

 

アホだ。

 

 

暗闇で『彼女』の輪郭がおぼろげだが、見えている。横には『青年』が立っている。等間隔で鳴る音は心電図か。どうやら『あの時』のようだ。

……?

…………夢か。どうやらロケットの爆破の衝撃で気を失ったらしい。

そう海は結論を出して、『彼女』と『青年』を見つめる。

 

ごめんな。

 

———君のせいじゃないよ。

 

だって、俺が勝とうとしなければ。

 

———なんで、そんなに自分を責めるの?

 

だって、俺のせいで。

 

———まだ、私は死んでない。

 

そう、だけどさ。

 

……。

 

……。

 

頑張って、治すから。

 

……ああ。

 

……。

 

 

 

 

 

 

——この話の結末を、俺は知っている。

『彼女』はこの後、目を閉じたまま開かない。一応死んではいないようだが、目を覚まさないならそれは死んでるようなものだ。

そして、『青年』は———。

滑稽な、無意味な——。

 

混濁していく意識が、海の思考を止めた。

 

「カイさんっ!」

 

 

「カイさんっ!」

 

叫びながら肩を揺するファルに、無言で腹パンを寸止めする海。

 

「うるせえ」

 

「めっちゃ悪夢見てきたって顔に書いてありますよ。そんな人に凄まれても」

 

そう涼しい顔で返すファルの言葉に返す言葉が見つからずただ睨む海。そんな仲睦まじい(?)2人にテテフが呟く。

 

「……着いたようだな」

 

「そういえば、地面あるな」

 

気づいた海とファルは足元を見る。自分たちはルービックキューブの集合体に立っていた。

 

「いろいろあったけど、着いたな」

 

まずは一仕事と、ほっと胸を撫で下ろして、

 

「にゃ?飛んで来た猿を受け止めた命の恩人に、感謝の言葉もないのかにゃ?」

 

続いて隣にいきなり現れた天使の殺気に、心臓の鼓動が一瞬止まった。

 

「とりあえず、言っておくにゃ。

ようこそ、アヴァント・ヘイムへ。ただで返すと思わない方がいいにゃ」

 

溌剌とした、完璧な笑顔で、天使は笑った。

——まるで、人形のように。

 

海も笑う。自然に、ゆっくりと。

——透き通り透明な海のように。

 

「ただで帰るつもりはねーよ。安心しろ

むしり取ってやるよ。アヴァント・ヘイム」

 




次話から新章です。
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