試合が終われば何時も通り、仲良しメンバーで簪・本音ペアの祝勝会が開かれた。
「いや~、まさか負けるとは思ってなかったぞ」
「シノノンが私の事を下に見てたから勝てただけで、最初から本気だったら分からなかったよ~」
「簪さんの射撃の腕、私も見習わないといけませんわね」
「セシリアだって、入学当初から考えればかなり強くなってると思うよ」
「教官の前で負けてしまうとは……私も鍛え方が足りなかったな」
「ボクが足を引っ張っちゃったからね……」
「シャルロットもかなり強かったぞ。勝てたのは時の運だ」
それぞれ称賛と反省の弁を述べながらも、簪と本音の事を本気で祝っている。
「はいはーい! 学年別トーナメント優勝のペアにインタビューしに来ました~!」
「黛先輩、相変わらずの地獄耳ですね。試合終わったのさっきですよ?」
「一年だけペアマッチになっちゃったから、それだけ注目度が高かったのよ。二年の部は順当にたっちゃんが勝ったし、三年の部は布仏先輩が勝ったし」
「お~、おね~ちゃんも参加してたんだ~」
「という事は、全学年更識関係者が優勝したという事か」
「まぁたっちゃんは別格だし、布仏先輩も強いから仕方ないと思うわよ。それじゃあさっそく――」
簪と本音にぐいぐいと質問していく薫子を見て、千冬たちは苦笑いを浮かべる。一夏程ではないが、千冬や箒もマスコミ嫌いで有名なので、鈴も苦笑いを浮かべていた。
「代表決めの時も思いましたが、黛先輩は積極的ですわね」
「遠慮なしとも言えるな」
「ラウラ、はっきりといい過ぎだよ」
「だが、そういう感想が出てくるという事は、シャルロットもそう思ってるんだろ?」
「まぁ、ちょっと遠慮してもいいかなとは思うけど」
インタビューが終わるまで、残りのメンバーでお茶会という事になり、鈴と千冬が全員の希望を聞いてケーキを買いに行った。
「それにしても、まさか本音に負けるとはな」
「それだけ実力を隠すのが上手だった、という事でしょうね」
「一夏教官が言っていたが、実力を隠すのも実力の内だそうだ」
「まぁ、織斑先生みたいに、明らかに強そうな人も嫌だけど、本音みたいに昼行燈を装ってる人も嫌だもんね」
「本音曰く『どっちも私だから』らしいぞ」
本音としては、普段ののほほんとした感じが本当の自分だと思っているので、仕事モードや戦闘中の自分はあまり好きではないのだ。
「ん? 千冬たちが何か持ってきたぞ」
「ケーキじゃないの?」
「それもあるが、別のものも持ってるぞ」
「はい、お待たせ」
「鈴さん、その箱は何ですか?」
「さっき一夏さんに会ってね。生徒会長から預かったものを簪に渡してほしいって頼まれたのよ」
「生徒会長って、さっき黛先輩が言ってた二年の部で優勝した人だよね?」
「そっ、現役の国家代表の」
実際に会った事はないが、ここにいる全員が楯無の事は知っている。一夏の後釜として期待されていたが、日本代表にはならずにロシア代表になり、現状第三回モンド・グロッソ優勝に最も近いと評されている人物だ。
「噂によると、かなりのシスコンらしくて、簪が優勝したって聞いてすぐに用意したみたいよ」
「家族を大事に思うのは大切な事だな!」
「ラウラ、少し黙ってようね~」
「な、何をするシャルロット!? もぐもぐ……相変わらずケーキは美味いな!」
ズレた感想を述べ始めたラウラを黙らせるために、シャルロットはラウラの口にケーキを運び黙らせた。
「そういえば生徒会長って見たこと無いんだけど、どんな人なの?」
「ネットで画像検索すれば出てくると思うぞ」
「写真はボクだって見た事あるよ。そうじゃなくて、同じ学校に通ってるのに、一度も姿を見たことないって事」
「それならあたしたちだって見たこと無いわよ? この中で見た事あるのは、妹の簪と、従者の本音くらいじゃないかしら」
「一夏さんは会った事があるようだが、何処で会ってるのか見たことがないんだよな……」
「昔からの知り合いらしいから、何処か別の場所で会ってるんじゃないか?」
「別の場所って、一夏さんの部屋か?」
箒が何気なく零した言葉に、薫子が機敏に反応して箒に詰め寄る。
「織斑先生の部屋ってどこにあるのかしら?」
「な、なんですかいったい……」
「敷地内の何処かにあるって噂は聞いたことがあるんだけど、その場所を誰も知らないのよね」
「まぁ、一夏兄に殺されたいのなら教えてあげますが」
「うん、止めておこう」
まだ死にたくないようで、薫子は千冬の提案を却下して箒から距離を取った。
「それじゃあ簪ちゃん、本音ちゃん、優勝おめでとう。来月の校内新聞、楽しみにしててね」
「一応おね~ちゃんに検閲してもらうと思いますよ」
「の、布仏先輩に?」
冷や汗をだらだら掻きながら、薫子は食堂を後にしたのだった。
何を書くつもりだったんだか……