IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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抑圧されれてると大変だな


真耶の暴走

 少し離れたところで千冬たちのビーチバレーを見て盛り上がってる同級生を、本音は羨ましそうに眺めていた。

 

「本音、行きたいなら行ってもいいよ?」

 

「でも、かんちゃんの側を離れるのはな~。かんちゃんも一緒に行こうよ?」

 

「私はこの岩場でのんびり過ごしてるから、本音は遊んできても大丈夫だって。というか、普段護衛の仕事なんてしていないのに、何で今日はしっかりしてるの?」

 

「普段は学園内で危険も少ないからね~。だけど今日は何時襲われてもおかしくない状況だし、しっかりとしないとって思ったから」

 

「誰も私なんか襲わないって。というか、一応先生たちが周辺を警戒してくれてるんだし、本音が警戒する必要はないと思うよ? というか、本音が警戒したところでたかが知れてると思うし」

 

「酷いな~かんちゃんは。まぁ、私もそう思ってるんだけどね~」

 

「なにそれ。だから、遊びに行きたいなら行って来ていいよ」

 

「うん、分かった~。でも、かんちゃんも少しは日光を浴びて日焼けした方が良いんじゃない?」

 

「良いの。私はインドア派だから」

 

 

 本音を見送ってから、簪は日陰で読書を開始しようとして、誰かの視線を感じて振り返った。

 

「織斑先生?」

 

「布仏妹の言う通りだと思うがな。少しくらいは遊んできたらどうだ」

 

「それほど運動神経に自信はないですし、私にはこっちが合ってるんで」

 

「無理強いはしないがな。外で遊ぶのが苦手な子だって確かにいるだろうし、無理にあそこに混ざって熱中症にでもなられたら大変だからな」

 

「一夏さん、本音が漏れてますよ?」

 

「別に旅館に運ぶのが大変なわけじゃなく、その後が面倒だと思ってるだけだ。というか、何故俺の後を付いてくるんだ、お前は……」

 

 

 真耶がツッコミを入れたが、確かに自分が一夏に運ばれたとなれば千冬たちが黙ってないだろうなと思い、簪はますます帽子を目深に被った。

 

「周辺に怪しい人はいませんでした。織斑先生が警戒している人も、今のところ現れていません」

 

「真耶たちの前に顔を出すとは思えないんだがな……まぁ、今のところ周辺五キロに気配はないし、大人しくしているのかもしれないが」

 

「誰の話ですか? ひょっとしてお姉ちゃんとか?」

 

「更識姉は今頃ロシアだろ。試験が終わり呼び出されたと散々愚痴を聞かされたからな」

 

「お姉ちゃんが申し訳ありませんでした……」

 

 

 一夏が楯無と旧知で、姉が一夏を信頼して何でも相談しているという事は簪も知っている。だがまさか愚痴にまで付き合わせていたとは知らなかったようで、本気で申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「お前が謝る事でもないだろ。というか、布仏姉にも結構愚痴を聞かされてるから、お前の姉だけが愚痴ってるわけじゃないぞ」

 

「虚さんが? ですけど、虚さんの愚痴って、大抵お姉ちゃんが関係しているのではありませんか?」

 

「まぁ、八割がた更識姉関係の愚痴だが、それもお前が気にする事ではないだろ」

 

「お姉ちゃんが迷惑かけているのに、無関係だと言える程私は無神経じゃないです」

 

「気にする必要は無いんだがな、本当に……まぁ、これ以上謝罪を断ると簪が気に病むから、一応謝罪は受け入れよう」

 

 

 言葉と共に、簪の頭を軽く撫でて「これ以上気にするな」という意思表示をした一夏の表情は、とても優しさにあふれていた。

 

「一夏さんがたまに見せるその笑顔、本当にカッコいいですよね」

 

「何だいきなり……」

 

「織斑さんとか篠ノ之さんにも偶に見せているのは知ってますが、更識さんにも見せてたんですね」

 

「何のことだ……というか、自分の表情なんてあまり気にしたこと無いんだが」

 

「意図していないからこそ良いんですよ。あぁ、私も至近距離で見てみたいですね」

 

「簪、真耶の事は任せる。俺は周辺を見てくるからな」

 

「逃げないでくださいよ。こうなった山田先生の相手を一人で出来る自信がありません」

 

「たく……真耶、少し落ち着け。後輩が怯えてるだろ」

 

「……あれ? 私は今何を……」

 

「これがなければいい人なんだろうがな……」

 

「山田先生、興奮し過ぎると我を忘れちゃうんですよね……お姉ちゃんから聞いたことがあったけど、初めて見ました」

 

「普段は緊張して身体が動かなくなるんだが、たまに暴走するんだ……」

 

 

 一夏が呆れながら自分を見ていると気づいた真耶は、慌てて頭を下げた。自分では何をしたか覚えていないのだが、ろくなことはしていないだろうと自分でも分かっているからこそ、すぐに謝罪したのだ。

 

「もしかして、またやっちゃいましたか? 申し訳ありませんでした」

 

「自分でコントロール出来ないんだから仕方ないが、もう少し精神的に成長してくれると良いんだが」

 

「はい、精進します……」

 

 

 深々と頭を下げた真耶に、一夏は先ほどより若干苦めの笑みを浮かべたのだった。




この程度の暴走ならかわいい方だな
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