朝食を済ませ、専用機持ちはとある岩場に集められた。まだ早い時間だが、誰一人眠そうにしていないのはさすがだと言える。
「織斑先生、何故私たちは別に招集されたのでしょうか?」
「お前たちは機材を運ぶ必要はないだろ。既に専用機を持っているのだから」
「演習ですか?」
「そうだ。だが敵がいるわけではないから、こちらで用意したターゲットを破壊してもらう。もちろん制限時間があるから、それなりに緊張感を持って参加するように」
「織斑先生、質問があります」
「なんだ、織斑」
発言を許してもらう為に挙手をして声をかけた千冬に、一夏は視線だけを向けて発言を許した。
「ターゲットの破壊と仰られましたが、一番最初にやる人間が圧倒的に不利ではありませんか?」
「安心しろ。ターゲットの位置は一回ごとに換わる。だから他のやつの演習をモニターで見て位置を覚えても意味はないからな」
「そうですか。それともう一つ」
「言ってみろ」
「箒は他の専用機持ちと違い、遠距離武器を積んでいませんが、その辺はどうなるのでしょうか?」
「そうだな……篠ノ之」
「はい」
一夏に呼ばれ、箒は今まで以上に背筋を伸ばして返事をする。
「お前、斬撃を飛ばす事は出来たよな」
「一応は。ですが、織斑先生や姉さんのように、百パーセント飛ばせるわけではありません」
「それでも構わない。今回篠ノ之は斬撃を飛ばす訓練だと思って参加しろ。あとのメンバーは射撃の腕を磨く目的だと考えるように。別にトップだろうがドベだろうが、何もないからな」
「分かりました」
「それでは、準備が出来次第始める。順番はそっちで勝手に決めて構わない」
そう言って一夏はこの場を離れターゲットを操作すべくパソコンの前に腰を下ろした。
「というか箒、アンタ斬撃なんて飛ばせたんだ」
「さっきも言ったが、絶対に飛ばせるわけではない。空振りだったり、空気だけの時の方が圧倒的に多い」
「それでも十分凄いと思うけどね。ボクが真似しようとしたって、絶対に出来ないだろうし」
「そうですわね。私、箒さんが斬撃を飛ばすところを見てみたいですわ」
「なら、トップバッターは箒で決まりだな」
「おいっ! 簪も何とか言ってくれ」
「私も見てみたい」
「決まりだな」
満面の笑みで箒の肩を叩いた千冬に、箒は殺気の籠った視線を飛ばしたが、千冬は素知らぬ顔でそれを受け流した。
「ではトップバッターは箒さんに決まりましたが、残りはどういたしましょうか?」
「この中で一番射撃が下手な千冬で良いんじゃないか? 上手い人の後にやって自信喪失されても困るだろうしな」
「お前、仕返しのつもりだろ」
「さぁな?」
「では、箒さんの次は千冬さんで」
「後はじゃんけんで決めれば良いわよ」
自分たちの意見を言う間もなく順番を決められてしまい、千冬と箒はそろってため息を吐いた。
「言っておくが、私が斬撃を飛ばせる確率は三割も無いんだぞ」
「それでも十分だろ。そもそも普通の人間は、斬撃を飛ばしたり、殺気を形にして剣を伸ばしたりは出来ないぞ」
「はっ? 剣を伸ばす? 一夏さんや篠ノ之博士はそんなことまで出来るっていうの?」
「あの人たち相手に、間合いなんて関係ないからな……」
「気配を掴まれたら最後。何処に隠れていてもあの人たちの間合いだからな……」
「何それ怖い……」
「気配を掴む事すら、私たちには難しいというのに、さすがは一夏教官だな」
「ラウラ、その感想はおかしい」
一人ズレているラウラに、シャルロットがツッコミを入れる。彼女の後ろで簪とセシリアも頷いているので、ラウラは自分がおかしいのだと自覚したが、何故おかしいと思われたのかは理解出来なかった。
「とにかく、期待しているところ悪いが、ほとんど空振りで終わると思うから、それだけは先に言っておくぞ」
「一夏兄も言っていたように、これは練習だからな。そんなに気負う必要はないぞ。何も景品や罰があるわけでもないんだからな」
「気楽に言ってくれるな、全く……お前だって斬撃を飛ばす訓練は必要だろうが」
「ISにおいて、私は遠距離専門だからな」
「こんな時だけ遠距離を強調しやがって……普段は文句しか言ってないのにな」
「まったくの素人だったんだぞ、こっちは。ゼロから始めるのがどれだけ大変か、お前だって分かるだろうが」
「何時までかかってるんだ。さっさと準備しろ」
さすがに時間がかかり過ぎだと注意され、箒は覚悟を決めて開始位置へと移動する。
「頑張ってくださいませ」
「楽しみにしてるけど、気負わないでね」
「お前なら出来る」
「頑張って」
千冬と鈴以外のメンバーに励まされ、箒は右手拳を上げてそれに応えた。
「こういう時は凛々しい感じよね」
「普段はポンコツ臭がしてるが、実力は確かだからな」
鈴と千冬の評価に、箒は何も答えずに精神を集中させていたのだった。
三割でも十分に凄い