IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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実際には何をするつもりだったんだろうか……


演習

 朝食を済ませ、専用機持ちはとある岩場に集められた。まだ早い時間だが、誰一人眠そうにしていないのはさすがだと言える。

 

「織斑先生、何故私たちは別に招集されたのでしょうか?」

 

「お前たちは機材を運ぶ必要はないだろ。既に専用機を持っているのだから」

 

「演習ですか?」

 

「そうだ。だが敵がいるわけではないから、こちらで用意したターゲットを破壊してもらう。もちろん制限時間があるから、それなりに緊張感を持って参加するように」

 

「織斑先生、質問があります」

 

「なんだ、織斑」

 

 

 発言を許してもらう為に挙手をして声をかけた千冬に、一夏は視線だけを向けて発言を許した。

 

「ターゲットの破壊と仰られましたが、一番最初にやる人間が圧倒的に不利ではありませんか?」

 

「安心しろ。ターゲットの位置は一回ごとに換わる。だから他のやつの演習をモニターで見て位置を覚えても意味はないからな」

 

「そうですか。それともう一つ」

 

「言ってみろ」

 

「箒は他の専用機持ちと違い、遠距離武器を積んでいませんが、その辺はどうなるのでしょうか?」

 

「そうだな……篠ノ之」

 

「はい」

 

 

 一夏に呼ばれ、箒は今まで以上に背筋を伸ばして返事をする。

 

「お前、斬撃を飛ばす事は出来たよな」

 

「一応は。ですが、織斑先生や姉さんのように、百パーセント飛ばせるわけではありません」

 

「それでも構わない。今回篠ノ之は斬撃を飛ばす訓練だと思って参加しろ。あとのメンバーは射撃の腕を磨く目的だと考えるように。別にトップだろうがドベだろうが、何もないからな」

 

「分かりました」

 

「それでは、準備が出来次第始める。順番はそっちで勝手に決めて構わない」

 

 

 そう言って一夏はこの場を離れターゲットを操作すべくパソコンの前に腰を下ろした。

 

「というか箒、アンタ斬撃なんて飛ばせたんだ」

 

「さっきも言ったが、絶対に飛ばせるわけではない。空振りだったり、空気だけの時の方が圧倒的に多い」

 

「それでも十分凄いと思うけどね。ボクが真似しようとしたって、絶対に出来ないだろうし」

 

「そうですわね。私、箒さんが斬撃を飛ばすところを見てみたいですわ」

 

「なら、トップバッターは箒で決まりだな」

 

「おいっ! 簪も何とか言ってくれ」

 

「私も見てみたい」

 

「決まりだな」

 

 

 満面の笑みで箒の肩を叩いた千冬に、箒は殺気の籠った視線を飛ばしたが、千冬は素知らぬ顔でそれを受け流した。

 

「ではトップバッターは箒さんに決まりましたが、残りはどういたしましょうか?」

 

「この中で一番射撃が下手な千冬で良いんじゃないか? 上手い人の後にやって自信喪失されても困るだろうしな」

 

「お前、仕返しのつもりだろ」

 

「さぁな?」

 

「では、箒さんの次は千冬さんで」

 

「後はじゃんけんで決めれば良いわよ」

 

 

 自分たちの意見を言う間もなく順番を決められてしまい、千冬と箒はそろってため息を吐いた。

 

「言っておくが、私が斬撃を飛ばせる確率は三割も無いんだぞ」

 

「それでも十分だろ。そもそも普通の人間は、斬撃を飛ばしたり、殺気を形にして剣を伸ばしたりは出来ないぞ」

 

「はっ? 剣を伸ばす? 一夏さんや篠ノ之博士はそんなことまで出来るっていうの?」

 

「あの人たち相手に、間合いなんて関係ないからな……」

 

「気配を掴まれたら最後。何処に隠れていてもあの人たちの間合いだからな……」

 

「何それ怖い……」

 

「気配を掴む事すら、私たちには難しいというのに、さすがは一夏教官だな」

 

「ラウラ、その感想はおかしい」

 

 

 一人ズレているラウラに、シャルロットがツッコミを入れる。彼女の後ろで簪とセシリアも頷いているので、ラウラは自分がおかしいのだと自覚したが、何故おかしいと思われたのかは理解出来なかった。

 

「とにかく、期待しているところ悪いが、ほとんど空振りで終わると思うから、それだけは先に言っておくぞ」

 

「一夏兄も言っていたように、これは練習だからな。そんなに気負う必要はないぞ。何も景品や罰があるわけでもないんだからな」

 

「気楽に言ってくれるな、全く……お前だって斬撃を飛ばす訓練は必要だろうが」

 

「ISにおいて、私は遠距離専門だからな」

 

「こんな時だけ遠距離を強調しやがって……普段は文句しか言ってないのにな」

 

「まったくの素人だったんだぞ、こっちは。ゼロから始めるのがどれだけ大変か、お前だって分かるだろうが」

 

「何時までかかってるんだ。さっさと準備しろ」

 

 

 さすがに時間がかかり過ぎだと注意され、箒は覚悟を決めて開始位置へと移動する。

 

「頑張ってくださいませ」

 

「楽しみにしてるけど、気負わないでね」

 

「お前なら出来る」

 

「頑張って」

 

 

 千冬と鈴以外のメンバーに励まされ、箒は右手拳を上げてそれに応えた。

 

「こういう時は凛々しい感じよね」

 

「普段はポンコツ臭がしてるが、実力は確かだからな」

 

 

 鈴と千冬の評価に、箒は何も答えずに精神を集中させていたのだった。




三割でも十分に凄い
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