IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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憶測が飛び交う


妹たちが考える決闘の理由

 放課後一夏の姿を見なかった千冬は、箒と共にお風呂でスッキリしてから食堂にやってきた。

 

「一夏兄は何処にいたんだろうな?」

 

「一夏さんも忙しそうだし、私たちに付きっ切りじゃいられないんだろう」

 

「それはそうなんだろうが……せっかく再会出来たというのに、ゆっくりと話す時間が無いのはどうかと思ってな」

 

「お前も大概ブラコンだよな」

 

 

 箒がしみじみと呟いた言葉に、千冬は顔を真っ赤にして否定する。

 

「別にそういう事じゃない! 私が生まれてすぐ両親が消息不明になったんだ。ずっと一夏兄と二人きりだったんだから、少しくらい一夏兄に甘えてもいいだろうが」

 

「別に悪いとは言わないが、少し年頃の娘として兄と距離を取った方が良いと思うんだが」

 

「唯一の家族なんだから、あえて距離を取る必要は無いと思うんだが」

 

「そんなものか?」

 

 

 千冬の家庭事情は、箒も重々承知している。彼女も普通の家庭とは言えない状況ではあるが、両親はともに健在、親戚付き合いもそれなりにあるので、千冬の気持ちを完全に理解する事は難しい。

 

「そんなに一夏さんに会いたいなら、一夏さんの部屋に行けばいいじゃないか、敷地内にあるらしいのだし、会いに行こうとすればそう難しくはないだろ?」

 

「こんな時間に寮から抜け出したら、一夏兄に怒られるだろうが」

 

「何のはなし~?」

 

 

 千冬の隣に腰を下ろした本音が、二人の会話に口を挿む。その隣には、少し複雑な表情を浮かべている簪もいる。

 

「今日の放課後、一夏さんが何処にいたのか、という話だ」

 

「織斑先生なら、放課後かんちゃんと一緒にいたよね?」

 

「そうなのか?」

 

「う、うん……いろいろと相談に乗ってもらってたの」

 

「いろいろ?」

 

「専用機の事とか、お姉ちゃんの事とか」

 

「一夏兄ならそれくらい解決するのも造作もないだろうな」

 

 

 束と同レベルの頭脳の持ち主だと噂されている一夏なら、専用機製造も問題なく手伝えるだろうし、人間関係の相談でも力になれるだろうと千冬と箒は納得した。

 

「その後、楯無様やおね~ちゃんと一緒にいたのを見たよ~」

 

「生徒会長と?」

 

「お姉ちゃんが仕事をサボって、虚さんに怒られて織斑先生に助けを求めてた」

 

「生徒会長にまで頼られるとは、さすがは一夏さんだな。だが、何故一夏さんが生徒会の仕事を手伝うんだ?」

 

「楯無様、基本的に大人を信用してないから~。でも、織斑先生だけは別みたい」

 

「大人を?」

 

 

 更識家内で起こった騒動を知らない千冬と箒は首を傾げたが、簪は本音たちから視線を逸らす。事情を聞かれたくないのだろうと理解した二人は、それ以上理由を聞こうとはしなかった。

 

「とにかく、一夏兄だけを信用しているという事で良いんだな?」

 

「日本代表の時にお世話になってたからって聞いたことあるけど、かなり懐いてるみたいだよ~。おね~ちゃんも、なんだかんだで織斑先生を頼りにしてるみたいだし」

 

「ところで、二人は訓練してたんでしょ? オルコットさん相手に何とか出来るの?」

 

「相手の実力が分からないから何とも言えないが、別に勝とうとは思っていない」

 

「だが、あっさり負けるのは気分が悪いからな。最低限戦えればそれでいい。一夏兄もそう言っていたしな」

 

 

 仮にも代表候補生であるセシリア相手に、IS素人の二人が勝てるとは簪も思っていない。だが、あっさり負けても構わないと言い切るとは思っていなかったので、かなり驚いた。

 

「負けても良いの?」

 

「そもそも最初からクラス代表になど興味ないからな」

 

「セッシーが自分だけ推薦されなかったからという理由で決まった決闘だもんね~」

 

「そんな理由で? イギリスの代表候補生って、随分と自惚れてるんだね」

 

 

 同じ候補生として、簪はセシリアの行動理由に呆れる。候補生としてプライドを持つのは大切かもしれないが、驕り高ぶるのは違うのだと簪は考えているのだ。

 

「簪の言う通りだと私たちも思うが、一夏兄が相手の気が済むならと決めたからな。私たちも最低限の闘いが出来ると分かれば納得するんじゃないか?」

 

「てか、明らかに格下の私たちを相手にして勝ったとして、それが自慢になるのか?」

 

「『織斑一夏』と『篠ノ之束』の妹に勝ったって自慢出来るんじゃないかな? まぁ、自慢したところで意味は無いと思うけど」

 

「そうだな。私たちは一夏さんや姉さんのような地位のある人間じゃないから、勝ったところで自慢にも何もならないだろうからな」

 

「セッシーはそう考えないかもね~。それか、二人の実力を認めて改心するかのどっちかかもね~」

 

「改心…ねぇ……」

 

 

 あの態度が自分たちと戦っただけで変わるとは思えない千冬は、箒と目を合わせて肩をすくめたのだった。




今のままじゃまず勝ち目はないですけどね
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