IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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立派な兄と、残念な兄


待ち合わせ

 事前に顔を合わせておいたお陰で、篠ノ之神社で行われる夏祭りの際に互いに探しあうことも無く、鈴たちと弾と数馬は合流する事が出来た。

 

「あれ? 箒は兎も角千冬はどうしたんだ?」

 

「千冬なら売り子のバイトに駆り出されたわよ。何でも箒に弱みを握られてるみたいで断れなかったらしいわ」

 

「アイツの弱みねぇ……」

 

「アンタのちっぽけな脳みそじゃ考えても分からないから止めておきなさい」

 

「おいっ!」

 

「昨日も思ったけど、鈴の五反田君のやり取りは面白いね」

 

「これを面白いって思えるシャルロットも、少し変だと私は思うけど」

 

 

 基本的に男子が苦手な簪は、弾と数馬から出来るだけ距離を取っている。一方のシャルロットは、持ち前の社交性からすぐに親しくなっている。

 

「まったく、お兄はダメダメなんだから」

 

「うっせぇ!」

 

「ん? 蘭も来てたのね」

 

「お久しぶりです、鈴さん」

 

「アンタが弾と行動を共にしてるなんて珍しいわね」

 

「私は友達と約束してるんです。目的地が一緒だったから、偶々お兄と一緒だっただけです」

 

「相変わらず妹になめられてるわね、あんた」

 

「うっせぇ……」

 

 

 それじゃあと蘭が去っていったのを見送りながら、鈴が弾をからかう。弾も自覚しているので、先ほどとは違い声に勢いが無かった。

 

「日本のお祭りは興味深いですわね。皆さん、普段とは違う服装ですし」

 

「あぁ、浴衣の事? 海外の人は確かに興味を惹かれるでしょうね」

 

「鈴だって中国でしょ?」

 

「あたしはほら、日本に住んでたことがあるし、着たこともあるからね。ぶっちゃけ動き難くてあたしは嫌いよ」

 

「浴衣で全力疾走するやつがいるかよ……」

 

「浴衣を汚して一夏さんに怒られてたんだっけか?」

 

「うっ……何で数馬がその事を知ってるのよ」

 

「あの場にいたからな、俺も」

 

 

 当時の事を思い出して、鈴は恥ずかしさと一夏に怒られた時の恐怖が同時に蘇り、少し居心地の悪さを感じていた。

 

「おっ、噂をすれば、あれは一夏さんじゃないか?」

 

「本当だ。隣にいるのは……誰だ?」

 

「あれって確か、篠ノ之束博士? あれ?」

 

 

 シャルロットが束の姿を見たと思った瞬間に、その姿は何処かに消えてしまった。

 

「おかしいな……確かに誰かいたと思ったんだけど……」

 

「俺も見たんだが、気のせいだったのか?」

 

「そういえば聞いたことがあるわね。一夏さんや篠ノ之博士のレベルになると、瞬間移動が出来るとか出来ないとか」

 

「それって人間の出来る事なのですか?」

 

「あの人たちはいろいろと人間を超えてるからね」

 

 

 衝撃を受けた表情で尋ねてきたセシリアに、鈴が苦笑いを浮かべながら答える。ここに千冬か箒がいれば答え合わせが出来たのだが、二人ともこの場にはいないので確かめようがなかった。

 

「一夏教官! このような場所でお会いできて光栄です」

 

「あぁ、ラウラか。今は外だから良いが、いい加減その呼び方はどうにかならないのか?」

 

「私にとって、教官は何時まで経っても教官ですから!」

 

「こんばんは、織斑先生」

 

「デュノアも来ていたのか」

 

「向こうに鈴やセシリア、簪たちも来てますよ。あと、鈴や千冬たちの友達も」

 

「五反田君と御手洗君か。相変わらず仲が良さそうで良かった」

 

 

 一夏が顔を向けると、丁度全員がこちらにやってきていた。

 

「お久しぶりです、一夏さん」

 

「お久しぶりです」

 

「あぁ、随分久しぶりだね。君たちも高校生になったんだから、もう三、四年ぶりか?」

 

「そんなに前でしたっけ?」

 

「千冬たちから聞きました。今はIS学園で教鞭を振るっているそうですね」

 

「半ば成り行きでな……それじゃあ、俺はもう行くが、みんなは楽しんで行くと良い」

 

「忙しそうですね?」

 

「大人にはいろいろあるからな。遊べるうちに遊んでおくと良い。ただし、やりすぎには気を付ける事」

 

 

 最後に一夏から釘を刺され、身に覚えがある三人は直立不動で一夏に応えたが、他のメンバーはきょとんとした顔で三人を見詰めていた。

 

「あっ、織斑せんせ~」

 

「何だ、布仏妹」

 

「さっき誰かと一緒にいませんでしたか~?」

 

「馬鹿ウサギがいたが、人の頭を見て酔ったとかいって消えたぞ。まぁ『人の』とは言ってなかったがな」

 

「やっぱり篠ノ之博士がいたんですね~。シャルルンが見たって言ってたけど、気付いた時には消えてたので不思議だったんですよ~」

 

「消えた? アイツは普通に帰ってただろ?」

 

「あれは普通じゃないと思いますよ~? まぁ、おね~ちゃんや楯無様なら出来なくはないかもしれませんけど」

 

「そんなものか」

 

 

 本音の言葉に小さく頷いて、一夏はあっという間にこの場からいなくなってしまった。それを見たシャルロットとセシリアは、慌てて辺りを見回す程あっという間だった。

 

「本当に消えちゃった……」

 

「世界は広いのですわね……」

 

「いや、世界広しと言えども、こんなことが出来るのは一夏さんと篠ノ之博士くらいよ……」

 

 

 大勢の人間がこんなことが出来て堪るかといった感じの言葉に、弾と数馬も頷いていたのだった。




出来たら移動は楽でしょうけども……
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