IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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やれば出来る子……なのか?


本音の真意

 簪と本音が完全に生徒会室から離れたのを確認してから、楯無は一夏に困ったような表情で尋ねた。

 

「本当に伝えたかった事は、あの二人には受け止められなかったですかね?」

 

「全て終わってからでも遅くはないだろ」

 

「そうかもしれないですけど……でも、簪ちゃんだってお父さんの事大好きだったから、もし病死じゃなかったらって思うと……」

 

「学園にいる限りは、いくら暗部組織だろうと手は出せない。簪はここにいた方が安全だとお前だって納得しただろうが」

 

「そうなんですけど……危ない目に遭うのは私と虚ちゃんだけで十分です」

 

「私は良いんですか?」

 

「だって、私が動けば虚ちゃんだって動かざるを得ないでしょ?」

 

 

 ニンマリと笑みを浮かべる楯無に、虚は「仕方ないですね」といった感じの笑みで応えた。

 

「そっちも大変だけど、今はナターシャさんの事件で暗躍してた組織の壊滅が先かしらね」

 

「そっちは束にも調べさせているから、お前らは判明してから動けばいい。だから今は、思う存分夏休みを満喫すると良い」

 

「そうは言っても先輩……私、明日からロシアで合宿なんですけど」

 

「国家代表として、国の品位を落とさないように気を付けてくださいよ?」

 

「何よそれっ!? 私がそんなことすると思ってるの?」

 

「えぇ」

 

 

 冗談めかして尋ねた楯無だったが、虚に即答されてしまい本気で泣きたくなり、一夏にしがみついた。

 

「一夏先輩、虚ちゃんが苛める!」

 

「苛めてません! お嬢様ならありえそうだと言っただけです」

 

「まぁ、楯無も時と場合を弁えているだろうから、虚もあんまり追い打ちをかけてやるな。それから楯無、何時までくっついてるつもりだ」

 

「こんな時でもないと、一夏先輩に抱きつけませんからね。もうちょっとだけ」

 

 

 誰かに甘える事など、立場的に出来ない楯無が一夏には甘えている。そんな光景を虚は少し複雑な思いで眺めていた。

 

「(お嬢様も頑張っているとはいえまだ高校生。誰かに甘えたい時もあるのでしょう。そしてその相手に、私では不足しているということでしょうね……)」

 

 

 自分も高校生だという事を棚上げしてショックを受けている虚に、一夏が困ったような笑みを浮かべる。

 

「気負うのは良いが、少し余裕を持っていないと、いざという時困るぞ」

 

「はい? 一夏先輩、どうかしました?」

 

「いや、刀奈じゃない」

 

「……そうですね。私も、織斑先生に甘えさせてもらいます」

 

「虚ちゃんまで……? 何なのよ、いったい」

 

 

 一人状況が理解出来ていない楯無は、頬を膨らませて二人を睨みつけたが、二人は顔を見合わせて噴き出しただけだったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋に戻ってきた本音は、廊下に誰もいないのを確認してから部屋の鍵をかけた。

 

「本音、警戒し過ぎじゃない?」

 

「だって、かんちゃんも狙われるかもしれないんだよっ!? 警戒して当然だよ!」

 

「そう…なんだ……」

 

 

 妙にやる気を出している本音に、簪は少し圧倒されてしまった。普段ののほほんとした空気は全く無く、今の本音には油断も隙も無い。

 

「おと~さんが『かんちゃんの側から離れるな』って言ってきたのは、この事を知ってたからだろうね」

 

「まぁ小父さんの立場なら、お姉ちゃんや虚さんから聞いてて当然だし、そうだったかもしれないけどさ……何で私のベッドに入ってくるわけ? 自分の使いなよ」

 

「だって、いざという時、かんちゃんの側にいられなかったら困るしね」

 

「部屋の鍵をかけて、窓も閉まってるんだから、部屋の中に侵入してくるような人はいないと思うけど。それに、部外者が敷地内に入った時点で、織斑先生が動くだろうし」

 

「確かに織斑先生は強いけど、かんちゃん一人だけを見てるわけじゃないし、あの人だって一応人間だから、万が一があるかもしれないじゃないか」

 

「一応って……」

 

 

 簪も薄々は人外だと思っていたが、本音もそんな風に思っていたなんてと、少なからず衝撃を受けた。

 

「とにかく、夏休みの間はずっとかんちゃんと一緒に行動するから。もちろんトイレも!」

 

「それはさすがにやりすぎ! 少しくらい余裕を持たないと駄目だよ!?」

 

「かんちゃんを守る為に私はここにいるんだから」

 

「普段怠けてるのに、何でこんなに極端になるのさ……中間くらいで良いよ」

 

「……かんちゃんがそう言うなら、もう少し怠けさせてもらおうかな~」

 

「だから、その中間くらいは無いわけ? ゼロか百かしかないの、本音は……」

 

 

 いきなり弛緩した空気を醸し出した本音に、簪は本気でため息を吐いた。

 

「これだって結構大変なんだよ~? 警戒しながらだらけるのって」

 

「警戒してるの? 私にはいつも通り、怠けてるようにしか見えないんだけど」

 

「だから、何時も通り怠けながら警戒してるんだよ~。この方が敵さんも油断してくれるだろうしね~」

 

 

 何も考えていないようで考えていたのかと、簪は本音に対する評価を検める事にしたのだった。




ある意味一番すごい気がしないでもない……
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