IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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優秀な護衛……なのか?


本音の本気

 生徒会長の席で寝ていた本音だったが、途中からは完全に目を覚ましていた。だがタイミングを逸し、寝たふりをしていたのだった。

 

「(先代が殺された? でもお医者さんの診断は病死だって……)」

 

 

 普段昼行燈を装っているが、本音も暗部の人間としての立ち居振る舞いは出来る。だから殺されたかもしれないと聞いても、大袈裟にリアクションを取ることはせずに、冷静に考えを纏めていた。

 

「(確かあのお医者さんは、反楯無様一派の息が掛かったお医者さんだったはず……もし先代楯無様が殺害されたのだとして、病死と診断したのなら……)」

 

 

 そこまで考えて、本音は小さく息を呑んだ。自分でもこんな考えにたどり着くなんて思っていなかったのと、もし自分の考えが正解なら、楯無たちが実家に寄り付かないのは仕方ないと思えたからだ。

 

「(自分たちが更識を牛耳りたいから、先代の楯無様を殺害し、刀奈様が楯無を襲名する事に反対した? でも織斑先生が介入してきたから仕方なく刀奈様に楯無を襲名させ、また同じように亡き者にしようとしたとすれば、いずれはかんちゃんにも危害が及ぶ可能性があるって事……お父さんが『かんちゃんの側を離れるな』ってメールしてきたのも、その可能性があるからって事だよね……確かあの日は、楯無様とおね~ちゃんが、織斑先生と更識本家でお話しした日……その時に何かがあって、先代楯無様が殺害されたかもしれないって考えに至ったのかな……でも何で今更になって? 先代が亡くなってからもう結構経つのに……)」

 

 

 誰かに相談したいが、気軽に他人に話せる内容ではないし、そもそも自分は今、寝ている事になっているのだから、この話題を楯無や虚にするわけにもいかない。そう考えて本音は、いっそのこと聞いていたと表明しようかとも思ったが、自分が姉や楯無にあまり信用されていない事を知っているので、それも出来なかった。

 

「(かんちゃんには言えないし……というか、かんちゃんに言ってパニックを起こされたら大変だし……)」

 

 

 楯無以上に、簪は父親に懐いていた。だからもし父親が殺されたかもしれないなんて知れば、冷静さを欠いて何をするか分からなくなってしまうと本音は思っていた。

 

「(というか、おね~ちゃんも楯無様も、何で私がいる場所でこんな重要な話を始めるのさ~! 私が本当に寝てるかどうか調べもしないで、世間話をするような流れでこんな話をされたら、私だって起きにくいじゃないか)」

 

 

 逆恨みだと本音自身も分かっているが、重苦しい話を聞かされた事への恨み言を言わずにはいられなかった。

 

「本音、起きてるんでしょ?」

 

「っ!?」

 

 

 自分が心の中で恨み言を吐き続けていた事がバレたのかとも思ったが、本音はそんなこと無いと考えを改めてから、大人しく顔を上げた。

 

「何時、気付かれたんですか?」

 

「最初っからよ。貴女、突っ伏して寝る事って滅多にしないじゃない? それに、さっきから小さく息を呑む音が聞こえてたもの」

 

「さすが楯無様です……それで、私が起きてると知っていてあの話をした理由は何なのでしょうか? かんちゃんには話しませんよ」

 

「それは当たり前よ。簪ちゃんにはまだ話せない内容だもの。本音に知ってもらった理由は、簪ちゃんを守ってほしいからよ」

 

「それは当たり前のことだと思いますが? 私の使命は、かんちゃんの身の安全を第一に考える事ですから」

 

「本音が簪ちゃんの事を大切におもってくれてる事は、私も理解してる。だけどね、普段の貴女を見るとどうしても信頼して良いのかって思っちゃうのよ」

 

 

 楯無の評価に、本音は仕方ないという思いだった。普段の自分は、間延びした喋り方に、赤点ギリギリの試験結果という、何処を信頼すればいいのかと思える程に、ダメ人間なのだから。

 

「だから本音の事を試したのよ。この話を聞いて、どう反応するか」

 

「それで、ご当主様の判断はどのように?」

 

「貴女を信じる事にするわ。だから、簪ちゃんの事だけは絶対に守ってよね」

 

「この命に替えましても。簪様の御身はお守りいたします」

 

「……本音の真面目口調は、姉である私でも違和感を覚えずにはいられませんね」

 

「何だよ~! せっかく真面目にやったのに、笑う事ないじゃないか~!」

 

「そうよ、虚ちゃん。私だって堪えてたのに」

 

 

 虚が噴き出したことを責めながらも、楯無も堪えていた笑いを我慢出来ず、口を押えて笑い出した。

 

「まったく、人が本気を示したって言うのに、おね~ちゃんも楯無様も酷いですよ~」

 

「それだけ普段の貴女がだらしないからですよ。もう少し真面目に働いたらどうですか?」

 

「でも~、かんちゃんがこっちの方が良いって言ったから~」

 

「まぁ、真面目な本音じゃ落ち着けないからね。とにかく、簪ちゃんの事、お願いね」

 

「分かりました」

 

 

 最後にもう一度真面目な空気を纏って応えた本音は、そのまま生徒会室から出ていったのだった。




本音を巻き込む楯無たち
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