IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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少し真面目になる束さん


両親と妹

 束のリクエストに答えオムライスを作り終えた一夏は、束から貰ったリストに目を通していく。

 

「随分と多額の金が流れ出てるのに、何故刀奈たちは分からなかったんだ?」

 

「当主の座を継いですぐの小娘には気づかれないって自信があったんじゃないのかな~? うん、いっくんの料理はやっぱり美味しいね~」

 

「……少しは自分で作ろうとかしないのか、お前は」

 

「料理なんて、束さんがするべき事ではないからね~」

 

「自分の事なんだから、少しは自分でしたらどうなんだ」

 

「そんな暇無いって~。あっ、いっくんお茶ちょうだい」

 

 

 悪びれた様子もなく一夏にお茶をねだる束に、一夏は盛大にため息を吐いてみせた。だがもちろん、そんなことで束が動じる事は無く、当たり前のように一夏からお茶を受け取り一口啜った。

 

「その家の内部から亡国機業に金が流れてるのはほぼ間違いないと思うよ」

 

「それで、お前が前に言っていた、見覚えがあるような人物については、何か分かったのか?」

 

「全然思い出せないんだよね~。まぁ、多分気のせいだと思うし、そんなに気にしなくて良いんじゃないのかな」

 

「お前が見覚えがある、という事は、それだけ印象的な人物か、俺たちの両親かのどちらかだろ」

 

「織斑の両親? そうだったかもしれないし、そうじゃないかもしれないし……うーん、もう一回見られれば一発なんだけどな~。束さんが監視してるって事に気付いたのか、拠点を変えちゃったんだよね」

 

「まぁ、お前の監視など分かり易いからな……」

 

 

 悪びれた様子もない束に呆れながらも、一夏は別の事を考えていた。

 

「あっ、そういえばいっくんにはちーちゃんの他にもう一人、妹がいたよね? 確か名前は……」

 

「マドカ」

 

「そうそれ! その子って確か、いっくんたちの両親と一緒にいなくなっちゃったんだよね?」

 

「状況から考えて、両親が連れて行ったんだろうな」

 

「その子が順調に成長してれば、確かちーちゃんの一個下だから中三になるんだっけ?」

 

「そうだが、それがどうかしたのか?」

 

「いや、最近ちーちゃんとよく似た気配が、束さんの周辺にあるような気がして……」

 

「まさか、マドカがお前の周辺にいるとでも言いたいのか?」

 

「よく分からない……でも、ちーちゃんの気配ともちょっと違うから、不思議だなーって思ってたんだけど、もしかしたらそのマドカって子の気配なのかもね~」

 

 

 楽し気に言い放つ束に、一夏は本気で呆れたような視線を向けた。

 

「マドカが亡国機業にいて、お前の周辺を嗅ぎまわっていたとしたら、かなりの奇跡的な確率だな」

 

「織斑の両親が亡国機業の人間なら、あり得なくもないと思うけどね~」

 

「まぁそうだな……」

 

 

 自分たちを捨てて犯罪組織に身を寄せているのかと、一夏は記憶の彼方にしか残っていない両親に苛立ちを覚え、更にマドカを巻き込んでいるかもしれないという事が、一夏を更にイラつかせた。

 

「とりあえず、束はもう少し詳しく亡国機業について調べておいてくれ。万が一織斑の両親が関わっているのであれば、けじめは俺がつける。例えどのような結果になろうとな」

 

「いっくんが両親を殺そうとしてるのは分かるけど、それでいっくんが犯罪者になるのは賛成できないな~。もし本当に亡国機業に両親がいるのなら、正規の裁判で罪を償わせればそれでいいじゃん」

 

「お前からそんな言葉が出るとはな……」

 

「束さんだって、いっくんに人生を棒に振ってほしくないって思う気持ちくらいあるって。ただでさえ、束さんに付き合って半分以上棒に振ってるんだから」

 

「ほぅ、自覚があったのか」

 

「酷~い! まぁ、冗談はさておき……駄目だからね?」

 

「分かってる。お前らを悲しませるような結果には、なるべくしないつもりだ」

 

「なるべくじゃなくて、絶対にしないでよね! ちーちゃんや箒ちゃんだって、いっくんに犯罪者になってほしくないって思ってるんだから」

 

「はいはい。というか、いつの間に食べ終えたんだ、お前」

 

「そんなの、いっくんと話してる間に決まってるじゃないか」

 

 

 空になった皿を見て呆れている一夏に、束は胸を張って答える。束の特技の一つとして、喋りながら食べるという事があるが、それでいて行儀が悪く見えないのは不思議だと一夏は昔から思っていた。

 

「それじゃあ、織斑の両親やマドカって子が本当に亡国機業にいるのかどうか、詳しく調べておくね。たぶんかなり時間がかかると思うから、暫くいっくんに会えなくなっちゃうけど」

 

「お前に会えなくて嬉しいが、無理はするなよ」

 

「いっくんもね。それじゃあ、ご馳走様~」

 

 

 音もなく部屋から消えた束に驚くことはせずに、一夏は食器を片付けながらもう一度両親の記憶を呼び起こした。

 

「大した連中では無かったと思うが、敵と言うなら容赦はしない」

 

 

 自分は兎も角千冬やマドカの人生を狂わせたのならと、一夏は両親に対しての怒りを強く懐いたのだった。




原作も途中までしか知らないので、亡国機業が何の組織なのかイマイチ分からない……ので、内部などはテキトーに
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