IS学園・一夏先生   作:猫林13世

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当事者以外はお遊び気分


決闘当日

 土日に一夏に指導してもらったお陰で、多少は自信がついた千冬と箒ではあったが、最初から勝てるとは思っていないので、当日になってもそれほど緊張はしていなかった。

 

「おりむ~もシノノンも決闘当日だっていうのに普通だね~」

 

「元々クラス代表なんて興味がないからな。勝てなくても別に問題は無いだろ」

 

「でも、織斑先生に指導してもらったんでしょ? 少しくらいは善戦しないとまずいんじゃない?」

 

「別にあっさり負けるつもりは無いが、勝てるだなんて自惚れは端から持っていないというだけだ」

 

「そうなのか? 私は一夏さんに教わったお陰で、多少なりとも勝てるんじゃないかと思えるくらいには自信がついたが」

 

 

 箒の言葉に、千冬は少し呆れたように首を左右に振る。

 

「相手は腐っても国家代表候補生なんだぞ? それ相手に勝てるなんて、お前は本当にア箒だな」

 

「「ア箒?」」

 

「だからその仇名で呼ぶのは止めろ!」

 

「私は同じ土俵での勝負だから、どう頑張っても相手の方が有利だ。だがお前は近づければ勝てる、とでも思ってるんじゃないのか?」

 

「………」

 

 

 自分が思っていたことをズバリ言い当てられて、箒はゆっくりと千冬から視線を逸らした。

 

「一夏兄にも言われただろ。相手を舐めてかかってくるオルコットだからこそ、そこに活路があるかもしれないと。その相手をこちらが舐めて挑めば、それだけ隙が生まれるんだぞ」

 

「だが、アイツに武術の心得があるとは思えん」

 

「そうやって侮らせる腹積もりなのかもしれないだろ? 疑いだしたらきりがないんだ。最初から相手を強敵だと思って戦えば、それだけで善戦出来る可能性は上がるんだ」

 

「……一夏さんに指導してもらったからか、何処か慢心していたようだ」

 

「まぁ、昨日一昨日で感じた成果を考えれば、少しくらい慢心したくなる気も分からなくはないがな」

 

 

 実際に指導してもらえたのは数時間だけだが、その後二人で稽古した時の実感は、今まで二人だけで稽古していた時より遥かに好感触だったのだ。それくらい一夏の指導のお陰だという事が二人の中で大きな収穫だといえる。

 

「そもそもお前は私に攻撃を当てる事が、私はお前に見切られること無く攻撃を仕掛ける事が出来なかったからな」

 

「同じ流派だからな。見切ることくらいは出来る」

 

「……それってオルコットさんは見切れないって事にならないの?」

 

 

 簪が素朴な疑問を呈すと、千冬と箒はまず互いに見つめ合って、同時に簪に視線を移した。あまりにもシンクロした動きに、簪の方が視線を逸らしたくなるほどに、二人の息はピッタリだ。

 

「何を言ってるんだ、簪は」

 

「まったくだ。私たち程度に出来る事など、オルコットにも出来て当然だろ」

 

「そうなの……?」

 

 

 少なくとも、簪は相手の動きを見切って攻撃をよけたりすることは難しいと思っている。ましてや視線や動きからではなく、空気で相手の攻撃を見切るなど、それこそ達人クラスじゃなければ不可能ではないかとすら思っている。

 

「一夏兄なら、空気で相手の動きを見切ったうえ、それを相手に悟らせずに反撃する事すら出来るんだ」

 

「おりむ~とシノノンの常識は、私たちとは違う次元だったんだね~」

 

「そうだね……多分お姉ちゃんでも難しいと思うんだけどな……」

 

 

 ぼそぼそと話しかけてきた本音に、簪も思った事をはっきりという。それくらい二人が言っている事は高度な技術なのだが、その事に気付いていない二人を見て、簪は顔が引きつっているのを感じていた。

 

「とにかく、相手を舐める事無く挑めば、それなりにいい試合にはなると思うが、勝てるとは思えんな」

 

「勝ったところでクラス代表になるつもりなんて無いんだから、別に勝てなくてもいいだろ」

 

「でも~、クラスではおりむ~とシノノンが勝つ方に賭けている人が多いからね~」

 

「何だ? 賭け事の対象になっているのか、この試合は」

 

「織斑先生にバレたら怒られるだろうけどね~」

 

 

 楽しそうに笑う本音を見て、千冬と箒は複雑な笑みを浮かべる。確かに一夏にバレたら怒られるだろうが、果たしてそれだけで済むのだろうかと心配になったのだ。

 

「そう言うわけだから、あっさり負けちゃったらクラスメイトから怒られるかもね~」

 

「てか、最初から言ってる通り、IS初心者の私たちに賭ける奴が悪いんだろうが」

 

「こういうのは理屈じゃないから~」

 

「理不尽だ……」

 

 

 余計なプレッシャーをかけられたと、千冬と箒は先ほどまでの気楽な気分が一変し、変な緊張感に襲われる。

 

「というか候補生なのにあんまり賭けられないオルコットさんっていったい……」

 

 

 同じ候補生として、それは屈辱以外の何物でもないのではないかと感じた簪は、密かにセシリアを下に見ていたのだった。

 

「とにかく、セッシーのお陰で授業がつぶれたから、それだけはありがたいよね~」

 

「それで良いの?」

 

 

 どうやら一年一組の総意は本音の一言に集約されているようだと、簪は三人の決闘はただの娯楽だと思われているのかと、今度は三人に同情したのだった。




学食のデザート程度なら可愛いものです……
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